2019年11月15日
唯一勢いがあるのがソニーで、カメラに使われるCMOSイメージセンサーで他社を寄せ付けない圧倒的なシェアを誇る。半導体業界のカギを握るのが車載部門である。
「高橋玲央(本誌)他:日の丸半導体が生きる道、週刊東洋経済、2019.10.5」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. 日本からの半導体材料の輸入が止まれば、韓国経済が壊滅する」と、7月に日本の輸出管理強化に関するニュースが流れると、日韓両国に衝撃が走った。実際は禁輸ではなく管理強化にすぎないが、主要材料の1つであるレジストなどにおけるH本の化学・材料メーカーの強さを示した形である。
2. 材料や製造装置では日本メーカーの優位が続いているが、半導体産業そのものも、かつては日本の「お家芸」だった。東芝、日立製作所、三菱電機、NECといった大手電機メーカーがそれぞれ半導体部門を抱え、世界シェアの上位に名を連ね、先端技術の開発を主導してきた。データセンターなどに欠かせないNAND型フラッシュメモリーを発明したのも東芝である。
3. 日本勢は1980年代の日米半導体摩擦で状況が一変した。それは親会社の電機メーカーの衰勢とも軌を一にしている。日本の技術を得た韓国サムスン電子が大きく飛躍し、受託製造(ファウンドリー)に特化した台湾TSMCが勃興。米インテルもCPU(中央演算処理装置)への集中が功を奏した。
4. 市場規模が拡大する中でこれらの企業が巨大化する一方、本体の一部門という意識から脱しきれない日本勢は思い切った策を講じられず苦戦を強いられた。それぞれ巨額の費用がかかる設計と製造を別会社が担う「ファブレス/ファウンドリー化」の流れからも完全に取り残された。今の日本の主要半導体メーカーは、大きく3つに分けることができる。1つ目は日立、三菱電機、NECの3社の半導体部門が結集して生き残りを目指したもの。だが、DRAMのエルピーダメモリは経営破綻、マイコンのルネサスエレクトロニクスも、経営危機は乗り越えたものの競争力低下に苦しむ。東芝は本体の巨額損失の穴埋めのため分社化を余儀なくされ、東芝メモリ(10月に「キオクシア」に社名変更予定)として再出発した。ところが、最近はNAND型フラッシュ価格が下落。直近は赤字決算となっており、早期を日指していた株式上場も見通せない。
5. 唯一勢いがあるのがソニーである。カメラに使われるCMOSイメージセンサーで他社を寄せ付けない技術力を持ち、圧倒的なシェアを誇る。ただ、ソニーという巨大コングロマリットの中で企業価値を高められるか疑問視され、米投資ファンドから分社化を求められた。日本の半導体業界は再び輝くことができるのか。そのカギを握るのが、車載部門での成否である
6. 日本が強みを持つ自動車産業は、自動運転や電動化=「CASE」と呼ばれる変革期を迎えている。車載半導体の市場規模は、半導体全体の8%にすぎないが、スマホ向けの成長が鈍化した後は自動車向けが牽引するとの見方が強い。この自動運転の「脳」に当たる部分には、車両衝突防止技術で圧倒的な実力を持つイスラエルのモービルアイを傘下に収めた米インテルのほか、ゲーム用画像処理装置(GPU)から高い処理能力を誇るAI(人工知能)チップを開発する米エヌビディアなど、世界上位の会社も進出を狙う。独インフィニオンが米マイコンメーカー、サイプレスセミコンダクターの買収を発表するなど、再編は活発である。日本勢の生きる道はあるのか期待される。