2020年01月20日

英国下院総選挙においても、ジョンソン首相によるシングルイシューの主張が通った形になったが、それが本当に英国の本質的な問題の解決につながっているのか大きな疑問が残る。

2019/12/20付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 159,948部)は「英EU離脱問題〜英EU離脱は英連合王国崩壊への第一歩かもしれない、英EU離脱問題 与党・保守党が単独過半数」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.英国の下院総選挙の投票が12日に行われ、開票の結果、ジョンソン首相率いる与党・保守党が単独過半数を獲得した。ジョンソン氏は公約に掲げた2020年1月末の離脱に向けて準備を加速させる考えを強調した。
2.英国のEU離脱に向かって「賽は投げられた」格好だが、まだ最終的にどのような決着になるのかわからない。最大2年間の移行期間中、英国はなるべく自分たちに有利な条件を勝ち取るためEUと交渉を行うはずである。
3.例えば、シェンゲン協定への加盟である。この協定は、ヨーロッパの国家間において
国境検査なしで国境を越えることを許可するものである。EUから離脱しても、シェンゲン協定に加盟できれば検問なく輸送トラックの往来などが可能である。これにより、「ドーバー海峡を渡る時に輸送トラックが2週間分滞留する」と言われている、EU離脱の懸念事項の1つ「北アイルランドからの輸送問題」が解決する。英国としては是非ともシェンゲン協定に加盟したいところでだが、EU側は拒否する可能性が高く、その交渉が行われることになる。
4.今回の選挙について、保守党の大勝という見方もあるが、労働党の自滅による惨敗という印象が強い。労働党のコービン氏は党内の離脱派もまとめきれなかったし、結局何を主張したいのか分かりにくかったのが致命的だった。
5.コービン氏は自らが首相になったら、EUと交渉し緩やかな離脱を勝ち取るとし、その「緩やかな離脱案」と「残留」の2択について、国民投票にかけたいと主張した。しかし、緩やかな離脱案がEUに許可されるかどうかも定かではない。国民からすれば非常に分かりにくい選択肢である。徹底的に「英国がEUに残留すること」のみを主張すれば良かったのに、小難しい論理を使ってしまった。
6.さらに、ユダヤ人差別的な発言などを問題視されたこともあり、急にユダヤ人へアピールをしてみたり、労働党としていくつかの産業で国有化を推し進めると言い出してみたり、全体的な主張にも一貫性が見られなかった。
7.今回の選挙結果で見逃してはならないのは、スコットランド国民党が48議席まで勢力を伸ばしたことである。というのは、これはスコットランド内では圧倒的な力を持つことを意味し、英国が大打撃を受ける可能性があるからである。
8.かつてスコットランド国民党は、英連合王国からのスコットランド独立を画策し、国民投票を行ったことがあり、そのときは、僅差で負けている。争点の1つは、英連合王国から独立すると、スコットランド単独ではEUに加盟できない可能性が高い、ということだった。EU加盟国の英国が反対をすると、EUに加盟することができないからである。ところが、英国がEUから離脱するとなると話は変わる。
9.スコットランドのEU加盟に反対する国はいないから、スコットランドに道が開ける。今回のスコットランド国民党の躍進は、スコットランド独立に向けた大きな一歩になる可能性がある。そして、スコットランドが独立することになると、北アイルランド、ウェールズなども追随する可能性が高く、英連合王国の崩壊につながっていくかもしれない。
10.北アイルランドは英連合王国から独立してEUに単独で残留できる可能性があれば、
再び南北の統一を目指す可能性がある。こうなると、イングランドが孤立する事態が発生する。今回の選挙結果を、保守党の大勝という見方ではなく、英連合王国崩壊の第一歩と見ることもできる。
11.もう1つ今回の選挙結果を見て感じたのは、民主主義の末期に見られる衆愚政治の特徴である。それは、本質的な問題提示ではなく、シンプルなシングルイシューの提示のほうが、国民に受け入れられやすいということである。例えば、難民問題を大きく取り上げて「メキシコに壁を作れ」と主張したトランプ大統領然り、「日本を取り返す」と主張する安倍首相然り、である。
12.本来政治的な問題の大半は総合的な判断が必要になってくるのが、ある特定の問題に関して強く言い切ったほうが国民に理解されやすく、またその主張が通ってしまう。しかし、それらは本質的な問題を解決するものではない。スローガンを掲げるのみで、何も実行に移されないことも多くある。
13.「アベノミクス」「3本の矢」「新3本の矢」など安倍政権がこれまで掲げてきた
“スローガン”を見ても明らかである。シングルイシューの主張は国民にわかりやすいため、選挙では強みを発揮するが、重要なのは1つでも良いので徹底的に実行することである。例えば、中曽根元首相が「三公社五現業の民営化」に、小泉元首相が「郵政民営化」に取り組んだように、徹底的に1つのことをやり抜いてほしい。
14.今回の英国下院総選挙においても、ジョンソン首相によるシングルイシューの主張が通った形になったが、それが本当に英国の本質的な問題の解決につながっているのか大きな疑問が残る。問題解決どころか、英連合王国の崩壊につながっていく可能性すらある。


yuji5327 at 06:25 
共通テーマ 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード