2020年02月08日
中国では社債の債務不履行が常態化している。2019年にデフォルトに陥ったのは178件で、金額は約2・2兆円に上った。
「神宮健(野村総合研究所金融イノベーシ・研究部上席研究員}著:チャイナウオッチ中国視窓・過去最多の社債デフォルト政府系企業にも連鎖 週刊エコノミスト 2020.2.11)は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.中国では社債のデフォルト(債務不履行)が常態化している。報道によると、2019年にデフォルトに陥ったのは178件で、金額は約2・2兆円に上った。件数・金額とも18年を上回り、過去最多となった。背景には、景気鈍化の影響に加えて、金融・債券相場におけるリスク回避がさらに強まったことがある。
2.17年以降、金融当局の金融リスク防止・解消政策を受けて、金融機関のバランスシートには縮小圧力がかかり、信用力の低い中小企業・民営企業に資金が流れにくくなっていた。加えて19年5月には内モンゴル自治区の包商銀行が信用危機に陥り、公的管理下に置かれた。大口預金の一部が返済されないことになったため、暗黙の元利保証信仰が揺らいだ。市場における信用収縮圧力はさらに強まり、しわ寄せが信用の高くない民営企業で特に顕在化した。19年に新たにデフォルトした企業38社のうち34社は民営企業である。
3.資金繰り悪化は、「融資平台」と呼ばれる地方政府傘下の投資会社にも及んでいる。融資平台は、「都市投資債(城投債)」を発行して資金を調達し、インフラ投資などに充てる役割を担っている。城投債は地方政府の保証はないが、地方政府が背後に控えていることから、比較的安全とされ、低金利の中で比較的高い利回りを求める機関投資家などの投資対象となっている。
4.ところが19年12月、内モンゴル自治区の融資平台「フフホト経済技術開発区投資開発集団」の城投債でデフォルトが起き、返済延期となるケースが出たと報じられ、波紋が広がった。今後は城投債の選別が強まると予想される。企業のレベルでは、過剰投資といった経営判断ミスに加え、企業統治の問題も見られる。支配株主による関連会社への利益の付け替えや資産の譲渡、虚偽の財務報告発表などが発覚し、資金繰りがつかなくなるケースである。
5.20年の社債返済額は19年並みと予想されている。景気、市場心理、企業統治ともすぐには改善しない中では、デフォルトも続くと見られる。社債のデフォルトは14年に第1号が発生するまではゼロで、最終的には誰かが救済してくれるだろうというモラルハザードが市場で蔓延していた。その意味では、デフォルトが続くのは、市場の正.常化でもある。
6.足元では、制度面に不備があり、デフォルト後の処理がうまく進まず、債券保有者の権利保護に問題が生じるなどしている。市場で必要以上にリスク回避が進み、民営企業の債券がますます敬遠されて資金.繰りが悪化する悪循環に陥ることが懸念される。
7.既に当局も動いている。中国の最高裁は19年12月、人民銀行(中央銀行〉などの関連部門を集め、債券に関する訴訟審理について座談会を開催。人民銀行などは社債のデフォルト処理に関する通知(草案)を、銀行間市場交易商協会はデフォルトの処理ガイドなどを発表した。具体的には債券発行時の内容説明書を充実させ、債券の受託管理人と債権者会議制度を機能させることなどが挙がった。20年はデフォルトの処理面は改善することが期待される。