2020年02月16日

心房細動の85%は肺静脈から起こるが、15%は肺静脈以外で発生する場合は、高周波カテーテルアブレーションを使用する。


「桑原大志著:発作ゼロ・再発ゼロをめざす心房細動治療、 幻冬舎 2016.11.15」参考になる。第3章 発作の恐怖と決別する。完治を目指すカテーテルアブレーションとは」の概要の続きは以下の通りである。
1.不整脈を治すためには、不整脈の原因となっている心筋を壊死させる。壊死させる方法が、近年までは高周波通電だけだったが、最近は高周波通電以外の方法で、心筋を壊死させる方法が臨床導入されている。1つ目の心筋を壊死させる方法は、冷凍凝固である。クライオ(冷凍)バルーンアブレーションと呼ばれる。クライオバルーン(風船)を肺静脈の入口に挿入し、液体窒素を注入してふくらませ、バルーンは急速に冷却され、マイナス50度程度になると、接している心筋は壊死する。これにより肺静脈を隔離し、心房細動起源をなくする。バルーンの直径」は28mmで、4本ある肺静脈を1本ずつ隔離する。隔離にかかる時間は1本につき3分、点状に少しずつ焼灼しでいくカテーテルアブレーションより、短時間で隔離できる。クライオバルーンアブレーソンの艮所は、手術時間が短いことと、術者により治療成績に差が出にくいことである。短所は肺静脈以外に存在する15%程度の心房細動起源が治療できないこと、ある一定頻度で横隔膜麻抑が発生してしまうことなどである。横隔膜麻痺は、右上肺静脈をグライオアブレーション中に、近くを走行する横隔膜神経を障害し、発症する。横隔膜の動きが麻痺もしくは低下し、呼吸がしにくくなるので息切れを自覚する。発生頻度は5〜10%程度であるが、多くは一過性である。
2.クライオバルーンアブレーションと高周波カテーテルアブレーションの、心房細動の治療成績を比較する無作為試験が、ヨーロッパで行われた。非常に質の高い、しっかりとした試験である。結果は両者とも治療成績は同じだった。発作性心房細動患者にアブレーションを実施し、1年後に洞調律を維持できた人は、どちらの方法を用いても65%である。65%とは低い成功率と思われるが、これは、どちらの治療方法も、肺静脈隔離しか行っていないからだと思われる。よってこの試験は、2つの治療方法の「心房細動の治療効果」を比較するのではなく、「肺静脈隔離ができたかどうか」を比較する試験と言る。
3.心房細動の85%は肺静脈から起こるが、15%は肺静脈以外のところから発生する。後者の患者は、そこを治療しないと、心房細動は治らない。これは、高周波カテーテルアブレーションを使用しないとできない。この治療を行うには、相応の技術が必要である。技量の高い術者が施行するならば、高周波カテーテルアブレーションを使用したほうが、心房細動の治癒率は高い。クライオバルーンアブレーションばかりしている施設では、カテーテル操作に優れた後継者が育たない。高周波カテーテルを用いて、肺静脈隔離を行う経験を十分に積んでいない医師が、肺静脈以外の心房細動起源を治瞭できるとは思えない。
4.もう1つは、2016年に公的保険適用の承認がおりたばかりの、ホットバルーンアブレーションと呼ばれる治癩法である。日本で開発され、基本的な原理はクライオアブレーションと同様で、肺静脈隔離にはバルーンを使う。クライオはバルーンに液休窒素を入れるが、ホットバルーンには造影剤と生理食塩水を入れて、それを温めて使用する。バルーンの温度は約80℃に上昇し、接触した心筋が温熱壊死する。
5.クライオバルーンは大きさが一定だが、ホットバルーンは入れる液体の量により、大きさを自由に変えることができる。肺静脈の直径や形状は、個人により様々のため、肺静脈ごとにホットバルーンの大きさを調整する。日本で行われた治験では、発作性心房細動患者さんに対してホットバルーンアブレーションを行うと、250日後で60%の患者んが洞調律を維持できている。主な合併症は肺静脈狭窄である。5%の患者に発症している。バルーンの大きさを自由に変化させることができるので、肺静脈隔離以外に、左心房の後壁も治療できる可能性がある。左心房の後壁は、心房細動起源が多く存在する場所である。将来性のある、治療機器と言える。
6.カテーテルアブレーションが登場する前は、開胸で心臓にメスを入れる外科的手術が、唯一の心房細動根治療法だった。その術式をメイズ法という。迷路を意味する英語mazeから名づけられている。その名の通り、心臓に迷路をつくる手術である。心房細動が持続するためには、電気的興奮が旋回するために、ある程度の広さの心房が必要である。その広さが小さくなれば、電気的興奮が旋回し始めても、すぐに興奮が停止してしまう。メイズ法では、この興奮領域を小さくするために、心房を切り刻み、再び縫い合わせる。電気的興奮は、縫い合わせた部分を通過できないので、心房細動が発生しても、他の領域に伝導されずに、すぐに停止する。しかしこの方法は患者への負担が大きいので、心房細動の治療のためだけでメイズ法を選択することは、現在ではない。他の心臓疾患の治療で開胸手術を行う際、心房細動もあればメイズ法も一緒に行うというのが一般的である。例えば、心臓弁膜症があり、かつ心房細動もあるといったケースで、弁膜症の治療のために開胸手術を行う際、メイズ法も行えば、心房細動も同時に治る可能性がある。
7.心房細動による血栓の多くは左心耳というところにでる。脳梗塞を予防するために、この血栓の巣窟である左心耳を切除してしまう治療方法がある。東京都立多摩総合医療センターの大塚俊哉先生ガこの治療の大家である。左心耳切除術の適応は次の(1)〜(3)を満たす患者である。
(1)心房細動が根治不能(2)心房細動による脳梗塞を繰り返す(3)何らかの原因で抗凝固薬が内服できない。何らかの原因とは、抗凝固薬を内服することにより出血を繰り返すことなどである。生来、備わっている左心耳を切除しても、問題はないのか。左心耳は収縮することで、左心室に血液を送り込む機能を持っている。実際のところ、切除しても臨床的に特に問題は生じない。切除術は胸腔鏡下で行われ、胸部に小さな傷が3カ所つくが、低侵襲で負担が少ない手術である。手術は1〜2時間程度で終了する。心房細動では、左心耳以外の心房にも血栓ができる可能性はある。そのため、左心耳を切除しても、100%血栓ができなくなるわけではない。しかし、そのリスクは大きく低減できる。前記(1)〜(3)のすべてを持ち合わせる患者は、考慮すべき治療方法といえる。


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健康 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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