2020年02月27日
論文での押しの弱さが女性のポスト獲得において機会損失となっている
「池谷裕二著:闘論席、週刊エコノミスト、2020.3.3」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.文章のスタイルにどんな男女文差があるのか、マンハイム大学のレルヘンミュラー博上らの調査結果が英医師会雑誌「ブリティッシユ・メディカル・ジャーナル」に発表された。
2.調査の対象は、2002年から17年の間に医学系・生物系の分野の専門雑誌に発表された約620万報の学術論文。同分野の論文がほぼ全て網羅された、きわめて大規模な調査である。
3.現代科学では大半の研究はチーム体制で行うため、論文には複数の著者が名を連ねる。著者リストで重視されるのは筆頭著者と最終著者である。実験を行った主たる研究者が筆頭著者で、研究プロジェクトをけん引した上司が最終著者となるのが慣例である。
4.レルヘンミュラー博上らは、筆頭も最終も女性研究者だった場合を「女性研究チーム」として、それ以外の著者陣による論文スタイルと何が異なるかを調べた。もっとも目につく差異は、女性研究チームの自己アピール度の低さだである。「先例がない」「顕著な」「ユニークな」など、発見の意義をポジティブに打ち出す単語の使用頻度が低い。なかでも差が著しかったのは「新規な」で、男性が含まれる研究チームの論文に比べ、59%も登場回数が少ないことがわかった。
5.レルヘンミュラー博上らは「論文での押しの弱さが女性のポスト獲得において機会損失となっている」と推測する。飛躍のある推測にも感じられるが、実際のところ、ポジティブな単語を使ってアピールされた論文のほうが、その後、参考文献として引用される割合が10%以上も高い。あながちトンチンカンな推測ではない。となれば問題は、こうした性の差異が、いつどこで生.まれるかである。