2020年03月15日
量子コンピューターを今後商用化するならば、サプライチェーンをつくらないといけない。部品・装置・材料メーカーを育てないと産業になり得ない。
「大矢博之、杉本りうこ(ダイヤモンド編集部)著:IBMの「虎の子」が日本上陸、週刊ダイヤモンド 2020.3.14」参考になる。印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して自分のコメントもカッコ内に付記して纏めると以下のようになる。
1.コンピューターの歴史の一里塚となったグーグルの論文に対して、異議を唱えたのが米IBMである。というのは、論文で比較対象となったのは米オークリッジ国立研究所の「サミット」である。1秒問に20京回の計算をすることが可能な世界最速のスパコンで、これがIBM製だった。
2.IBMの反論の骨子は、サミットの使い方を工夫すれば、1万年ではなく2・5日で解けるというものである。それでも、量子コンピューターの200秒よりは遅い。IBMは量子コンピューター開発.でもグーグルと鎬を削る。その開発競争は、対照的な戦略を取る
どちらが勝つのかも注目を集めている。片方はクローズ戦略で、もう一方はオープン戦略である。
3.いつもならばオープン戦略を取るグーグルが、今のところ自前主義のクローズ戦略を選んでいる。オープン戦略のIBMは、16年に5量子ビットの量子コンピューターをクラウド上で公開している。開発競争をリードすべく、次の一手を打ち川した。IBMが門外不出としてきた量壬コンピューターの実機を、日本に設置する。
4.2月13目、東京都内で開かれたイベントで、日本IBM執行役員の森本典繋は「日本に上陸する量子コンピユーターは2台で、20年中に設置される見通しであ。1台はIBMの最新の商用量子コンピューター、もう1台は試作機である。試作機を日本に設置して目指すのは、量子コンピューターの開発に日本のメーカーを巻き込むことである。
5.試作機の設置は、ハードウエア開発が目的で、量子コンピューターを今後商用化するならば、サプライチェーンをつくらないといけない。部品・装置・材料メーカーを育てないと産業になり得ない、と日本IBM東京基礎研究所所長の福田剛志はいう。量チコンピューターの心臓部は.マイナス273度に近い超低温である。そこに、室温下のケープルからマイクロ波を飛ばして量子ビットを制御することは、宇宙と通信するようなものである。試作機が日本にあれば、開発した部品が動作するかどうか、日本企業は検証しやすい。
6.日本に量子コンピユーターを置くことにはもう一つの狙いがある。将来、官公庁などが量子コンピューターの採用を検討する場台、日本にあることは大.きなアドバンテージになる。国外に送ることをはばかられるデータもある。量子コンピューターがどこにあるかは大事で、日本という場所に意味がある。現在の量子コンピューターの課題は、量子ビットがノイズに弱く、エラーをまだまだ無視できないことである。グーグルの量子ビットの精度は99%以上。それでも53個の量子ビットが全て正常に動作し、計算が成功する確率は1000回に2回しかない。
7.グーグルは今回の量子超越を発表した後の会見で、1903年のライト兄弟の有人初飛行に匹敵する意味を持つ、と意義を強調した。ライト兄弟の初飛行の距離はたつた256mだが、その11年後に始まつた第一次世界大.戦で、戦況を左右し、戦争の常識を変えたのは戦闘機だった。かつて夢物語だった量子コンビューターが、現実にスパコンを超えることが示された。今後飛躍的に性能は向上し、ビジネスの常識を変える存在になる日も、そう遠くない。