2020年07月07日

ヒトのY染色体の退化は現実に進んでおり、実際に精子の劣化にもかかわっている。乏精子症や無精子症の5〜15%の原因がY染色体の異常である。

「松田洋一(名古屋大学大学院生命農学研究科名誉教授):驚きの性の進化史、學士會 7ALUMNI 2020」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して自分のコメントもカッコ内に付記して纏めると以下のようになる。
1.性染色体とは、「雌雄が存在する生物において、雌と雄の間で異なる形や数を持つ染色体、あるいは雌と雄の違いを作りだす染色体」と定義される。ヒトは23対の染色体を持ち、そのうち1対のみ男女間で組み合わせが異なる性染色体はX染色体とY染色体と呼ばれる。精巣を作ることを決める性決定遺伝子が存在するY染色体を持てば男性(XY型)に、持たなければ女性(XX型)になる。
2.2002年2月のNature誌に、「性の未来」と題する論文が掲載された。それは、ヒトのY染色体は退化の一途をたどり、やがてY染色体は消失してしまうという衝撃的なものだった。このトピックスはマスメディアでも大きな話題となり、「女と男」と題するNHKスペシャルシリーズでも取り上げられた。ヒトのY染色体の退化は現実に進んでおり、実際に精子の劣化にもかかわっている。乏精子症や無精子症の5〜15%の原因がY染色体の異常であることがわかっている。
3.「ヒトのY染色体はこのまま退化を続け、男性はいつか地球上から消えてしまうのか」という問題について、性決定様式の多様性やY染色体の進化に関する最近の研究成果に基づいて考えてみる。ヒトは雄優性のXY(♂)/XX(♀)型の性染色体構成を持ち、鳥類や爬虫類のヘビ類では雌優性のZZ(♂)/ZW(♀)型の性染色体で雌雄が決まる。
4.ミツバチやアリなどの社会性昆虫では、雌雄は性染色体で決まらず、女王の胸先三寸で決まる。女王が卵を産む際、精子が蓄えられた貯精嚢付近を卵が通過するときに貯精嚢を開いて精子と受精すれば二倍体の雌が生まれ、開かなかった場合、卵は未受精卵のままで産み落とされ、それらが単為発生すると一倍体の雄になる。
5.動物には、遺伝ではなく生息する場所の温度や集団の構造によって性が決まるものもいる。例えば、ホンソメワケベラという魚は、集団の中で番大きな個体が雄で他の個体はすべて雌である。そのため、雄がいなくなれば一番体の大きな雌が雄に性転換する。一方、クマノミでは雌と雄が1匹ずついるだけで他の個体は決まった性を持っていない。そのため一番大きな雌がいなくなれば雄が雌に性転換し、性別のない個体の中で最も大きな個体が雄になる。多くの魚類やカメ類、そしてワニ類のすべての種では、孵卵期の環境温度の違いによって雌雄が決まる。
6.このように、動物は驚くほど多様な性決定様式によって雌と雄を生み出し、それを種の生き残り戦略として用いてきた。これらの性決定様式の多様性は、進化の偶然性と必然性が複雑に絡み合って生み出された進化の産物といえる。
7.ヒトのY染色体はどのようにして生まれ、現在の姿に変化してきたか、その進化の歴史はY染色体が持っ遺伝子に刻まれている。Y染色体とX染色体はもともと1対の常染色体対に由来し、一方の染色体が精巣の形成を決める性決定遺伝子を獲得したことによって雄特異的な性染色体、すなわちY染色体が誕生したことがわかる。なぜY染色体は一方的に退化の道を歩んでいったのか、それはY染色体がX染色体とは異なり、相方のいない一人ぼっちの染色体であることが原因である。X染色体を2本持っ女性では、ぺアとなるX染色体問で遺伝的組み換えが起こるので、突然変異によってX染色体が傷つき遺伝子が壊れても、もう一方に正常な遺伝子コピーがあるため、その情報をもとに異常なものを正常なものに胃き換えて、もとの遺伝子に戻ることができる。
8.ところが、Y染色体には相方がいないことから、細胞分裂によってDNA複製にエラーが生じたり、さまざまな外的な要因(放射線、紫外線、さまざまな化学物質、活性酸素など)によってDNAが傷っいた場合、身の安全を保障するスペアがないため、その傷を除去することができず、遺伝子に異常(突然変異)が生じることになる。そして、その異常を持ったY染色体が精子を介して次の世代に伝えられていく。そうすると、傷つき機能を失った遺伝子は、無用の長物としてY染色体からしだいに失われていくことになる。
9.その結果、Y染色体はどんどん削り取られ、X染色体には約1,100個の遺伝子が存在するのに対し、現在のヒトのY染色体には機能を持っ遺伝子が30個ほどしか残っていない。しかし、ヒト、チンパンジー、アカゲザルのY染色体のゲノムDNA配列の比較から、男性の生殖機能にかかわる重要な遺伝子は、最初にXY染色体間の分化が起こった2億4,000万〜3億2,000万年からずっと変わることなく残っている。
10.この結果は、今後ヒトのY染色体の劣化が進んでも、そう簡単には重要な遺伝子は失われず、Y染色体が消滅することはないことを示している。このように、ヒトのY染色体はしだいに退化し、やがては消えてしまうかもしれない運命を背負いながら、進化を続けてきた。ヒトは一夫一妻制という結婚形態を獲得したことによって、乱婚のチンパンジーにみられるような精子間競争がなくなり、精子の劣化を促進するという厳しい現実を受け入れることになりました。さらに、最近の生殖補助医療の発展によって、乏精子症の人や成熟した精子を作れない人でも、顕微授精法を用いて人為的に精子を卵:Fに注入してやれば、子供を得ることが可能になった。
11.このように、生殖補助医療技術の進歩にともない、生殖にとって有害な遺伝子異常がヒトの集団に残されるため、ヒトの精子やY染色体の劣化は、今後さらに進んでいくことになる。そして、生殖補助医療に頼らなければ次世代の子供を残せない、生殖補助医療に依存した脆弱なヒトの社会が形成され、それは世代を重ねるごとに加速していくことが予想される。
12.この問題は、何十万年、何百万年先にはヒトのY染色体が消えてしまうかもしれないという、遠い先の漠然とした未来を危惧することよりもはるかに現実的かつ切実であり、そしていま、私たちが直面している問題点といえる。




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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
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