2020年07月09日

精密重合で設計された、環境適合した分解型高分子や、精密制御できる触媒の開発などを通じて、捨てずに蘇らせる高分子材料などが期待される。

「澤本光男(京都大学名誉教授)著:ポリマーを美しく創る・精密重合と高分子の精密合成 學士會会報No.943(2020-)は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.高分子(ポリマー)は、分子量が数千から数百万におよぶ巨大分子をさし、その原料(モノマー)に由来する繰り返し単位が多数概ね鎖状に結合した構造をもち、しばしば真珠のネックレスにたとえられる。プラスチックなど高分子材料は強く、軽く、分解しないなど優れた性質をもち、現代社会の基幹材料として広範に用いられている。また人類はじめ地球上の生物も、水とともにタンパク質、筋肉、酵素、遺伝子などの生体高分子から形作られている。さらに、人類は古くから、絹、綿、ゴムなど自然に見出される天然高分子を繊維や樹脂などとして広く利用してきた。
2.このように、現代の快適、清潔で安全な社会は高分子材料なくしてはあり得ない。石器時代、青銅器時代など、人類の歴史をその時代の基幹材料で分類する場合があるが、これに倣うと、現代は占くからの鉄器時代の延長上にありながら、高分子時代といえる。重合反応スチレンやエチレンなどの重合は連鎖成長重合と呼ばれ、微量であるが高活性の反応中間体(成長種)によりモノマーが次々と結合して高分了を生成する。この重合は、開始、成長、連鎖移動、停止の各素反応からなり、開始で中間体が生まれ、これがモノマーを結合して高分子へと成長する。一方で連鎖移動と停止が起こると、中間体が活性を失って成長が止まるため、同じ反応容器で作られた高分子でも個々の分子量(大きさ)が不揃いになるとともに、様々な構造の高分子が生成する。このように、辿鎖移動と停止は、高分子の生成と構造の制御を妨げる副反応となっている。
3.この点は、タンパク質や遺伝子などの生体高分子が、酵素などにより精密に合成されるため分子量と構造が単一で、精緻な機能を発現するのと対照的であり、この差違の克服は高分子の人工合成の最も重要な課題とされてきた。精密重合と精密高分子連鎖重合のなかで、開始と成長のみからなり、連鎖移動や停止などの副反応が起こらない重合を「精密重合」(リビング重合)と呼ぶ。「リビング」という名称は、反応中間体が終始反応活性を失わない、すなわち「生きている」ことを意味する。
4.精密重合が実現すると、制御された分子量(鎖長)をもち、厳密に規定された構造と物による連鎖重合であるが、中間体(炭素カチオン)の性質を解明し、それに基づいて副反応を抑制する「炭素カチオンの安定化」を提唱して、精密カチオン重合を実現した。詳細は省略するが、そこでは、当時導入された分子量分布の新たなクロマト測定法による反応中間体の多様性の発見とカチオン源/ルイス酸触媒のこ成分開始剤系の開発が鍵となった。5.精密ラジカル重合の開発過酸化物などから生じるラジカルを中間体として進行する連鎖重合をラジカル重合といい、膨大な基礎研究が長年にわたり行われ、毎年世界で数百万トンの高分子材料が生産されている。このように、ラジカル重合は基礎と応用の両面からきわめて重要であるが、ラジカル中間体が特有の副反応(再結合と不均化による停止)を起こすため、その精密制御は困難といわれていた。1990年代になって、精密カチオン重合の研究で培われた中間体の安定化や触媒開発に基づいて、ラジカル重合の精密制御の研究に着手した。その結果、炭素ラジカルを重合に直接用いるのではなく、より安定な前駆体として炭素ーハロゲン結合などの共有結合化合物(休止種)を開始剤に用い、これを金属触媒で活性化してラジカル中間体を生成させると、副反応が抑制できることを見出した。
6.とくに、ルテニウム、鉄などの遷移金属錯体を触媒とすると、アクリル系やスチレン誘導体、酢酸ビニルなど、数多くのモノマーの精密ラジカル重合が可能なことを見出した。金属触媒による精密ラジカル重合の発見は国際的にある種の驚きをもって捉えられたが、同時に高く評価され、関連研究が世界各地で幅広く展開されるきっかけとなった。また、「休止種」に基づく重合制御の考え方は、今では精密重合の一般原理として広く認められている。
7.これらの精密重合は、分子量、末端基、側鎖官能基などの一次分子構造が厳密に設計・制御された機能性高分子の精密合成への途を拓いた。精密高分子は次世代の先端高分子材料として注目され、リチウム2次電池の固体イオン伝導性膜、先端界面活性剤、フォトレジスト、熱可塑性エラストマー、有害物質除去・回収剤等を目指して、実用展開研究が産官学で国際的に展開されている。
8.異なる2種以上の高分子鎖を共有結合でつないだ高分子を「ブロックポリマー」と呼ぶ。たとえば、スチレン(A成分)とポリエーテル鎖をもつメタクリル酸エステル(B成分)のABAーブロックポリマーは、その3元ブロック鎖構造から、各成分がミクロン単位の領域に規則正しく配列した特殊な微細構造(ミクロ相分離構造)を形成し、その柔軟で強靱なフィルムは優れたイオン導電体(高分子固体電解質)となる。
9.これにより、液体電解質を用いた従来型に比べ、電解液の液漏れがなく、安全で高効率のリチウムイオン電池が実現すると期待されている。精密重合を用いると、中央の核からいくつもの高分子鎖(枝)が放射状に結合した「星型ポリマー」も合成できる。ここでは、精密重合による直鎖状リビングポリマーに、2つの重合基(ビニル基)をもつ結合剤を少量反応させる。結合剤は局所的に架橋してミクロゲル核を形成し、これに枝分子が放射状に結合して球状の星型の高分子が生成する。星型ポリマーは、従来の1次元的な直鎖高分子と異なり、3次元的に規制された構造を持ち、その核は微小架橋空間(ナノ空間)を形成し、いわば可溶化されたゲルといえる構造をもつ。
10.架橋剤にフッ素化合物を用いると、1分子あたり数百から数千にもおよぶフッ素原子を核内部に集積できる。このフッ素集積核は、工業洗浄剤などに使用されるフッ素界面活性剤を選択的かつ高効率に捕捉・分離・除去できる。このように、環境保全に貢献する精密高分子も少なくない。
11.精密重合の発展で重要な点は、単に高分子化学にとどまらず、高分子物理や材料科学はもとより、有機化学、生物学、物理学、医学など、関連する諸分野にも精密重合が波及したことにある。これには、一つに、精密重合に触発されて、有機化学など関連する分野からの研究者の参入が相次いだことがあり、他方で、高分子合成を専門としない研究者にも、自らの目的のための自らによる高分子精密合成が拡がったことがある。さらに、一般性と拡張性に優れた様々な精密重合が開発され、その応用展開が国際的に精力的に進んでいる。
12.最近になって、使用された高分子材料が不注意に廃棄され、河川から海洋に流れて、いわゆる「微小プラスチック」や「海洋プラスチックごみ」問題を引き起こし、G20などの国際政治の場でも議論されるようになった。高分子科学も、学術や産業のみならず、このような喫緊の世界的課題にも貢献すべき使命を帯びている。たとえば、精密重合で新たに設計された、真に環境適合した分解型高分子や、重合の逆反応である解重合を精密制御できる触媒の開発などを通じて、高分子を創り、有効に使い、捨てずに蘇らせる高分子材料など、期待される分野は数多い。


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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
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・謙慎展(常務理事)
 青山賞、春興賞の受賞:2回
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