2021年05月13日

重要な役割を果たしたのは、両者を仲介したイラクである。イラクの首相の手助けで、協議が始まった。イラク自身のためでもある。

2021/5/7付けの 大前研一さんの「ニュースの視点」(発行部数 153,148部)は、「トルコ情勢/米トルコ関係/ウクライナ情勢/中東情勢〜イランとサウジアラビアの仲介をしたイラクの思惑」と題する記事は参考になる。。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日経新聞は先月20日、「黒海-地中海に新運河」と題する記事を掲載した。トルコのエルドアン大統領が6月からイスタンブール運河の建設に取り掛かる方針を明らかにしたと紹介している。ボスポラス海峡から欧州側に10数キロ離れた場所に開通させる計画だが、この海峡は条約で黒海沿岸国以外の通行を大幅に制限しており、運河ができればこの条約が無効になると懸念する声が挙がっている。
2.イスタンブール運河によって新しいルートが完成すると、これまでのボスポラス海峡の制限を無視してエルドアン大統領の思惑で渡航を許可することができる。すなわち、トルコの許可で黒海へ入ることができるようになる。これは黒海を実質的に支配しているロシアにとっては、当然面白くない。おそらく、今ロシアは相当ナーバスになっている。
とは言え、実際に完成するかどうかわからない。
3.トルコが45キロという長距離の運河を最後まで掘り切る財力があるか、あるいは完成するまでエルドアン政権が存続しているかもわからない。もし本当に完成すれば、軍事的な意味で大きな風穴を開けることになる。
4.第一次世界大戦中のオスマン帝国で起きたアルメニア人の大量殺害について、米バイデン大統領は先月24日、「アルメニア人に対するジェノサイドで亡くなった人たちに思いを馳せ、こうした残虐行為が2度と起きないようにする決意を新たにする」と声明を発表した。バイデン氏はトルコのエルドアン大統領に事前に通告するなどの配慮を示していたが、トルコは虐殺を否定しており反発は必至である。
5.オスマン帝国の後期、約150万人のアルメニア人を強制移住させたり、虐殺したと言われていて、アルメニア人のトルコに対する恨みは根深いものがある。また、昨年再び勃発したナゴルノ・カラバフ戦争でも、トルコはアルメニアと対立したアゼルバイジャンを支援した。
6.この問題については、かつてレーガン大統領も言及したことがあるが、米国にはアルメニア系の移民も多いので、米国にとって政治的に重要な意味を持つ。とは言え、バイデン大統領が就任早々に、この問題について言及し始めたのは意外だった。一歩間違えると
大きな問題に発展するかもしれないが、声明を発表する前に電話でエルドアン大統領に
説明済みとのことだし、問題はないと思う。
7.そもそも、オスマン帝国時代と言えば100年も前のことだし、トルコ共和国の初代大統領であるアタテュルク氏以前のことだから、近代トルコとの関係性は薄い。ゆえに、エルドアン大統領もそれほど興奮していないと見ている。
8.ロシアのショイグ国防相は先月22日、ウクライナとの国境近くに展開していたロシア軍部隊に対して、5月1日までに本来の駐屯地や基地に戻るように伝えたことを明らかにした。国境周辺には10万人以上のロシア軍が集結し、ウクライナに再び侵攻する可能性が指摘されており、緊張緩和に繋がるかが注目されている。
9.バイデン大統領とプーチン大統領がお互い顔を合わせてミーティングを実施することになったと伝えられている。今、プーチン大統領はロシア国内に数々の問題を抱えていて
大変だから、さすがにウクライナ方面を侵略するのは難しいと判断して国軍に撤収を命じたと思われる。ニュースを見て意外に思ったのは、ロシアはクリミア半島まで軍を派遣していたということである。
10.黒海の北岸・クレミア半島まで進軍していたということは、かなり本気だったはずである。そこまで進めた軍を撤収し、米ロで会談の機会を作るというのが真実なら非常に良いことだと思う。しかし、バイデン大統領とプーチン大統領の会談が実現したとしても、ミンスク合意レベルには戻るかも知れないが、それ以上の進展は厳しいと見ている。ウクライナには欧州側に付きたいという意向が見え隠れしており、ロシアとしてはそれを絶対に防ぎたいと思っているであろう。一旦クリミア半島から軍は撤収となったが、今後ウクライナがどうなっていくのか、目が離せない状況が続くと思う。
11.日経新聞によると、対立するイランとサウジアラビアが水面下で直接協議を開始したことがわかった、両国は代理戦争の様相を呈するイエメン内戦などをめぐり対立を続けてきたが、米国がトランプ前政権のイラン敵視・サウジ肩入れを修正し、双方に歩み寄る姿勢に転じたことを受けて、まずは協議の場を設けて双方がそれぞれの立場を確認したとのことである。
12.トランプ前大統領が歪めた中東情勢を、バイデン大統領がこれほど早いタイミングで修正に動くとは予想外だった。イランとサウジアラビアが話し合いを始めたというのは、評価できる成果である。トランプ前大統領のときには、イスラエルがイランを敵視するから、米国もイランを敵視するという単純な発想しかなかった。そんな前政権に対して、もう少しバランスを重視した立場に取ろうとしている。
13.ここで重要な役割を果たしたのは、両者を仲介したイラクである。イラクの首相の手助けもあって、協議が始まったと言われている。イラクが仲介役を買って出るのは、イラク自身のためでもある。イラクはサダムフセイン時代には支配層はスンニ派だったが、マジョリティーはシーア派であり、ある意味、スンニ派とシーア派による対立構造の縮図を表している国とも言る。それゆえ、双方の勢力が争い続けていると、イラク国内も2つに割れ続けてしまい、平和が訪れないと感じているのだと思う。
14.トランプ政権以降の様々な動きを見ながら、今ならうまく橋渡しできると思ってイニシアティブを取ったと思われる。どこか出来すぎたストーリーのようにも聞こえるが、中東問題の解決のためにもイラクが仲介した協議がまとまることを願っている。懸念点があるとすれば、最終的に駄々をこねる可能性が高いイスラエルをどのように抑え込めるか、ということである。



yuji5327 at 17:07 
共通テーマ 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード