2022年01月09日

人類の歴史は、その繰り返しでもある。コロナで悲惨な状況を経験した21世紀の世界からも、ルネサンスのような新しい文化が生まれることを期待したい。


「池上彰、増田ユリヤ著:ルネサンスの舞台 フィレンツエ  PRESIDENT 2022.1.14.」は興味ふかい。何度か観光したところだが新たな見方が参考になった。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2021年も世界は新型コロナウイルスに翻弄された。中国の武漢で発生が確認されてから、ちょうど2年。世界に広がり始めた当初は、イランとイタリアで感染者が増えた。イランには中国人労働者が多く、イタリアは現代版シルクロード「一帯一路」の拠点である。
2.過去最悪のパンデミックは、14世紀半ばのペストだった。内出血によって遺体に黒い斑点が浮かぶことから、黒死病と恐れられた。100年前のスペイン風邪では5000万人が亡くなったが、黒死病は7500万人。人口が少なかったことを考えると、大変.な犠牲である。ヨーロッパだけで、全人口の4分の1に当たる2500万人もの死若が出た。
3.このときのペスト菌も、中国から広まったと推測されている。当時の遺骨から菌が発見されてDNAを調べたところ、中国雲南省あたりの現在のベスト菌と一致したからである。
4.モンゴル帝国によって、シルクロードを通ってヨーロッパへもたらされたという説がある。ハンガリーやポーランド、トルコあたりまで領土を広げていたからである。中国大陸では1331年に流行が始まって、人口が半減した。ちなみに鎌倉時代の元寇は、1274年と1281年である。仮に日本が負けて半世紀後もモンゴルの支配下にあったら、ベストを持ち込まれていたかもしれない。モンゴル軍は1346年に、黒海に面したクリミア半島の港湾都市カッファ〔現在のフェオドシ〕を包囲した。その陣中でペストによる死著が続出したので、投石機で遺体を城壁の中へ投げ飛ばして退却した。
5.ヨーロッパでペストが大流行するのは、その翌年からである。カッファは.都市国家ジェノヴア共和国の植民都市だった。ベストを恐れて本国へ逃げ帰った商入たちが、イタリアへ感染を広げてしまった。フィレンツェでは、人口9万人のうち4万人が犠牲になった。
6.当時の人々は、カトリックの厳しい戒律の下で暮らしていた。ところが、どんなに教会で祈ったりしても感染は防げない。結果として教会に対する幻滅が生まれ、カトリックの権威は失墜した。このことが、ルネサンスの文化が花開くきっかけになった。どうせ命が助からないなら、人生を楽しもうという気運が芽生えた。
7.ルネサンスというフランス語は、「再生」や「復活」を意味する。生や死を改めて見直そうとしたとき、古代ギリシアやローマ時代の自由な空気に手がかりを求めた。絵画でルネサンスを代表するボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」や[プリマヴェーラ〔春〕]には、神話に登場する神々か描かれている。一神教のキリスト教から見れば、異教の題材である。またボッカチオの小説「デカメロン」は、まさにベスト禍のフ{レンツェを舞台にしている。
8.フィレンッェを象徴する「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」は、日本語に訳すと「花の聖母マリァ」である。1296年に起工されて、献堂式が行われたのが1461年であり、建築の最中にペストの大流行を経験している。ドームが世界.の大きさなので、「ドゥオーモ」という愛称である。そのてっぺんの「クーポラ」と呼ばれる赤い丸屋根の天蓋にあるのがフレスコ画「最後の審判」である。ミケランジェロの弟子であるジョルジョ・ヴァザーリと、後を継いだフェデリコ・ツッカリによって描かれた。
9.その後、16〜17世糺にかけてフィレンツェで活躍したのが天文学著であり、物理学者で数学者のガリレオ・ガリレイ。その当時のヨーロッパも、何度目かのペスト流行の最中であった。
10.ガリレオは、イタリア北西部の町ピサに生また。有名な「ピサの斜塔」の町である。正確にはピサ大聖堂の鐘楼で、建てられたのはやはり14世紀。建設の途中から、地盤沈下によって傾き始めた。ガリレオはここで、有名な実験をした。鉄製の球と木製の球を上から落として、同時に落ちることを確かめ、アリストテレスが唱えた「物体は、重さに比例した速度で落下する」という説の反証に成功した。ただし、この実験は伝承にすぎないという話もある。弟子が書いた伝記に出てくるが、ガリレオ自身はまったく言及していない。
11.シェイクスピアの名作、「ロミオとジュリエット」にも、ベストが絡んでいる。薬を飲んで仮死状態を装うジュリエットからロミオへの手紙を託された修道士が、道中でベスト患者と一緒に隔離されてしまう。手紙は届かず、早合点したロミオは自殺、覚醒したジュリエットも絶望して後を追う、悲劇の結末を迎えることになる。
12.舞台はイタリアで、ヴェローナという町。イギリスでの初演は1595年だが、シェイクスピアが暮らしていたロンドンでも直前までペストが流行いていた。観客たちは、さぞリアリティを感じて、若い2人の死に同情の涙を流したと思う。
13.文学作品ひとつとってみても、古来、感染症と人々の生活が切っても切れない関係にあることがわかる。さらに言うと、ルネサンスが宗教改革の素地をつくったためにプロテスタントが生まれた。するとカトリック側に危機感が高まり、海外で布教するために大航海時代が始まった。感染症が流行るとその時代の権威が揺さぶられ、新しい価値観が生まれる。人類の歴史は、その繰り返しでもある。コロナで悲惨な状況を経験した21世紀の世界からも、ルネサンスのような新しい文化が生まれることを期待したい。



yuji5327 at 07:12 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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