2022年01月17日

先進国には財政規律がある。日本にも独立財政機関を設立し、政府、与党、野党の影響を受けない、独立した立場で財政の将来を警告する機関が必要である。


「加藤出(東短いリサーチ代表取締役社長)著:コロナでバラマキ、世界と広がる財政規律格差 週刊ダイヤモンド 2022.01.08」は興味ふかい。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本政府は過去最大の2021年度補正予算案を21年12月6日に国会に提出。同20日に成立した。22年度予算の基本方針では、例年明記されてきた聖域なき歳出改革が削除され、危機に対する必要な財政支出はちゅうちょなく行い、万全を期する、との文言が加えられた。当初予算としては過去最大規模になるもようである。
2.コロナ禍前から世界一だった日本の政府債務の経済規模比は、より一段と上昇していくことになる。ところが海外での財政の議論を調ベてみると、かなりの違いがあることに驚かされる。大半の先進国は、コロナ危機対応を徐々に縮小させつつ、政府債務の維持可能性を重視する方向へと明確にかじを切り始めている。
3.中央銀行に国債を買い支えさせれば問題はない、先進国の国債はデブ矛ルトしない、といったような楽観論は、海外からは聞こえてこない。世界の国々と日本の財政健全度と経済成長率を比較した。過去10年で国内総生産〔GDP)に対する政府債務の比率(政府債務GDP比)がどれくらい変化したかの推移と、その間の実質経済成長率を示した。
4.それを見ると、日本の財政悪化が段違いである一方、同期間の経済成長率は6%と、他国より桁連いに低い。この実態を踏まえた上で、世界各国で行われている財政の議論を見てみた。
5.英国のポリス・ジョンソン首相は21年9月上旬に、コロナ危機で資金が枯渇した国民保険制度を維持するため、22年から大規模な増税を実施すると発表した。同首相は、将来世代に対する責任の問題だとして次のように主張した。困難な点を考慮せずにパンデミックのための財政支山拡大は可能だと言うことは間違いであり、どうやって資金調達するのか貢任ある議論が必要である。また21年10月下旬発表の英財務省の予算・支出レビューではこう以下のように述べている。
6.政府の借り入れ、債務は歴史的な高水準になっており、巨大なリスクが存在している。金利が1%上昇する場合の財政への衝撃は、グローバル金融危機前の6倍、パンデミック前の2倍である。政府の資金調達の持続可能性を保証し、公共サービスに必要な長期の資金を供給するためには、増税という責任ある決断が必要である。
7.政府債務を減らしていくための新財政ルールも導入された。デンマーク政府は21年8月末に22年度予算案を公表した。メッテ・フレデリクセン首相は、コロナ危機下で赤字だった財政収支を22年度以降から黒字に転換すると述べた。また同国のニコライ・バンメン財務大臣は、これは、緊縮かつ責任ある予算案であると、財政出動の出口政策開始を明示した。
8.カナダ政府は21年4月に、政府債務のGDP比率を低下させ、財政赤字を巻き戻すための新しい財政アンカーを設定した。
9.オーストラリア政府は、財政の安定と政府債務のGDP比率の引き下げを狙う中期的な財政目標を21年5月に設定している。ニュージーランド政府は、財政赤字のGDP比率を25年度までに1%未満へ縮小するという見通しを21年5月に発表した。スイス政府は、22年度以降の財政収支を黒字化し、債務のGDP比率も引き下げていく見通しを21年6月に発表している。
10.このような海外諸国の基本方針は国際機関の推奨とも合致する。経済協刀開発機構〔OECD>は、財政フレームワークを見直して、今ある危機への対処と、公的ファイナンスの維持可能性確保のバランスを取る新ルールを確立すべきだ、と提唱しているからである。
11.ドイツの新連立政権は、前政権よりも財政赤字に寛容なスタンスだ、とはいえコロナ危機前のメルケル政権はブラックゼロ〔若干の財政黒字)を維持してきた。環境対策などへの支出を確保するためにそこから少々緩めても、日本に比べれば圧倒的に他全な水準にとどまると予想される。
12.一皆前に比べると国債の金利は世界的に低くなったからといって、無節操に増やしても構わないという声が主流の先進国は見当たらない。中央銀行が国債をどんなに大規模に買っても政府部門全体の借金は全く減少しない。国債が中銀当座預金という対民間債務に振り替わるだけである。
13.米バイデン政権と民主党左派は21年、大規模な財政拡張路線を推し進めてきた。基軸通貨国の場合、ある程度のむちゃは可能だろう。それでも政府債務のGDP比率は日本の半分程度である。しかし、共和党支持著、無党派層、民主党中道派支持著は、その帰結としての増税を警戒する。当初3・5兆ドルだったインフラ投資法案にプレーキをかけ、大幅に減額させた民主党中道派のジョー・マンチン上院議員は次のように述べた。さらなる数兆ドルの支出は、現在の経済の現実を無視しているだけでなく、将来の景気後退や国家の非常事態の際に確実にアメリカを財政的に弱体化させてしまう。統合参謀本部議長だったマイケル・マレンの強力な言葉、債務は国家安全保障にとって最大の脅威となる、を心に留めるべきである。
14.先進国の国債がデフォルトしにくいように見えるのは、先進国らしい財政規律を保っているからである。その点で、日本に独立財政機関を設立する方がよい。政府、与党、野党の影響を受けずに、独立した立場で財政の将来を予測し、警告を与える機関のことである。
15.OECD加盟の先進国38力国のうち28力国がこの機関を設症し、債務にルーズではないことを対外的にアピールしている。主要国で持っていないのは日本ぐらいである。米国の同機関である議会予算局(CBO)は30年先まで、英国の予算責任局(OBR>は50年先までの財政の長期予想を公表し、それをたたき台に国会で議論する。日本にはそれがなく、闇鍋状態で財政が運営されている。
16.独立財政機関があれば財政問題が解決するわけではないが、海外主要国との意識の差があまりに大き過ぎると、日本国債のさらなる格下げが近づく恐れがある。ここからの格下げは、日本の金融機関や企業の外貨資金調達コストを跳ね上げ、日本経済に激しいダメージをもたらし得る。米国のマンチン議員が触れていたマイケル・マレン氏とは.米軍制服組のトップだつた人物である。彼は16年に元国務長官、元国防長官、元国家安全保障担当大統領補佐官らと連名で超党派の声明文を発表した。われわれは、この国の長期的な債務は国家の安全保障に対する最大の脅威になると信じている、債務は、強力な軍隊、有効な外交のための資金調達に不可避的に制約をもたらし、経済成長にとって重要な投資や、国際祉会でのリーダー的役割を弱めてしまう。
17.米国は基軸通貨国であり、軍事的にも世界最強で、人口は堅調に増加していき、デジタル化でも世界経済をリードしていくと予想されている。その国ですら、このような主張に共鳴する人々は多い。日本にはそのような強みは全くないのに、なぜか危機意識が非常に希薄である。財政が伸び切ったゴムのような状態で、巨大地震などの次のクライシスに直面したら危ういことになる。日本の指導者たちは計画対象期間をより長くして議論を行つべきである。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
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