健康

2019年12月07日

骨粗しょう症の治療や予防には、医薬品、運動、食事などがあるが、簡単にできることは毎日15分間程度、日光を浴びること


「段勲(ジャーナリスト)著:熟年世代の診察室、す粗鬆症、週刊エコノミスト、2019.10.29」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.最近、猫背になっている、と妻から言われた。60歳の誕生日を迎えたばかり。まだ猫背になる高齢者ではない。帰宅し、壁を背にして頭、背中、尻、かかとを付けてみると「猫背」疑いの症状として、壁から頭と尻が離れた。猫背になる原因として、姿勢の悪さのほかに、高齢化に沿って骨がもろくなる骨粗しょう症がある。
2.総合病院で「骨粗しょう症」の主な検査である「血液検査」(骨のカルシウム吸収と排出せきのバランス)、「X線検査」(脊つい椎)、「骨密度検査」(骨の強弱)などを受けた結果、「骨粗しょう症」と診断された。それよりもショックを受けたのは、身体の測定で、高校時の174cmの身長が、いつの間にか3cmも減っていたことである。
3.東京慈恵会医科大学病院の斎藤充准教授(整形外科)は、「骨粗しょう症の患者数は全国に約1300万人と言われている。そのうち治療を受けている患者はだいたい15%。残りの85%は歳のせいにして、治療を受けていない。だが、早期に治療しないと、骨の強度がどんどん低下して骨折などを頻繁に起こすようになる。身長が若い時代に比べて4cmほど低下したら、骨粗しょう症を疑ってほしい」と、警告している。
4.骨粗しょう症の治療研究は、長い間、「骨密度」が中心になっていた。斎藤准教授は骨密度のほかに、「骨質」も重要な要因だと学会などで発表している。「骨は、鉄筋コンクリートの建造物に例えるとわかりやすい。鉄筋に相当するのがコラーゲンというたんぱく質で、コンクリートに相当するのがカルシウム。骨の健康を保つには、両方が重要な役割を持っていることを忘れてはいけない」と言う。
5.骨質の検査は、血液と尿を調べて、骨を支えているコラーゲンの老化状態をチェックする。その結果、A「骨質劣化型」(骨密度は高いが骨質が悪い)、B「低骨劣化型」〔骨密度が低く骨質はよい)、C「低密度+骨質劣化型」(骨密度も骨質も悪い)の大きく3種類に診断できる。同大の統計によると、骨折のリスクは、Aが健康な骨に比べて1.5倍、Bが3.6倍、Cが7.2倍と高くなる。
6.骨折と聞くと、痛そうに感じるが、痛みがほとんどない患者もいる。そのためにいつの間にか、骨が潰れる形で骨折し、1度骨折すると1年以内に5人に1人が別な部位の骨が折れてしまう。斎藤准教授は、「骨粗しょう症の治療や予防には、医薬品、運動、食事などがある。でも簡単にできることのひとつは毎日15分間程度、日光を浴びること」と話している。



yuji5327 at 06:47 

2019年11月08日

養生という趣味も、白秋期の健康を考える上で、大事なことである。義務としてでも、健康法としてでもなく、おもしろいから楽しみでやる。むずかしいことはやらない。

「五木寛之著:
白秋期、日経プレミアシリーズ、2019.3.13」は面白い。「第5章:孤独のユートピア」の概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
1.養生という趣味も、白秋期の健康を考える上で、大事なことである。趣味と言ったのは、私も養生はある程度しているが、義務としてでもなく、健康法としてでもなく、おもしろいから楽しみでやっている。
2.むずかしいことはやらない。面倒なことは、1日はできても3日はつづかない。ヨガにしても、気功にしても、それがすぐれた養生法であることは間違いない、あまりにも厄介で、面倒なことが多すぎる。続けることに悩んだら、養生ではなく健康強迫症になってしまう。
3.養生法についても「いい加減」につきあっていると、長つづきする。「転ばないように、どういうふうにするか」「誤嚥をしないように、どういうふうにするか」「腰痛にならないよう、どういうふうにするか」とか、さまざまな視点があり得る。そういう小さなことを、一つひとつやっていくことがおもしろい。
4.病気には「突然」ということはほとんどないと思っている。クモ膜下出血にしても、脳卒中にしても、心筋梗塞にしても、必ず予兆がかなり以前からあるはずである。体との会話をしている限り、そういうものが信号として伝わってくる。枕は高いほうがよいか、低いほうがよいか、自分で工夫して、「ああ、やっぱりこのほうがいい」というように考えることは、すごく大事なことである。
5.日常生活のディテールさじを大事にする。「神は細部に宿る」というけれども、小さな人生の些事というものを大事にしてきた。「いい加減」な素人判断だが、大いに役立ってきた。日常的に体と会話をするということも、孤独のユートピアの楽しみのひとつである。それは生甲斐にもなる
6.養生というのは、永遠の命を養うことではない。今日一日の生命を生き生きと生きることにある。明日、斬首されるのがわかっていても、石田三成は前夜供された柿を「腹に悪いから」と言って断ったエピソードは有名である。今日一日のために養生をするのだから、明日も続ける必要はない。明日になったら、その日一日を無事に生きるめに、なにか別のことをすればいい。そのような養生をつづけることが、今日一日ために大事なことである。
7.俺はなにも関心がない、という人には、養生という趣味も、白秋期の健康を考える上で、大事なことである。義務としてでも、健康法としてでもなく、おもしろいから楽しみでやる。むずかしいことはやらない。面倒なことは、1日はできても3日はつづきかない。ヨガにしても、気功にしても、それがすぐれた養生法であることは間違いないが、厄介で、面倒なことが多すぎる。
8.続けることに悩んだら、養生ではなく、健康強迫症になる。養生法についても「いい加減」につきあうので、長つづきする。「転ばないように、どうするか」「誤嚥をしないように、どうするか」「腰痛にならないようにどうするか」とか、さまざまな視点がある。小さなことを、ひとひとつやっていくことがおもしろい。
9.病気は突然 ということはほとんどない。クモ膜下出血、脳卒中にしても、心筋梗塞にしても、必ず予兆がある。体との会話をしている限り、信号として伝わってくる。枕は高いほうかいいか、低い方がいいか、自分で工夫してやっぱりこのほうがいいと考えることは大事である。
10.白秋期の年代には頻尿で夜中におきる。仰向けに寝ていると喉を圧迫して起きやすいから、ブッダは右側を下にして横向きに寝ていたという。誤嚥の起きる原因は、無意識にある。「いまからこれを飲み込むぞ」と、脳からしっかりと指令を出して、喉の気管を閉じる動作をする。床に落ちているものを拾うとき、「いまから腰を曲げて、床に落ちているものを拾うそ。膝をできるだけ深く曲げて、腰は曲げないようにして拾おう」と、一つひとつの動作を意識的にやる。
11.「ゴホンときたら、よろこべ」と、整体協会の創始者・野口晴哉さんは言う。風邪は普通に生活している人間の体のバランスが崩れたときにひくもので、それにともなう発熱や下痢は、体のバランスを取りもどそうとする反応である。それらの症状は、体の自浄作用の結果起きていることなので、決して、薬で抑えてはいけない。下痢と風邪は、体の大掃除ということになる。薬など人工的なもので抑えずに、蒸しタオルで温めて痛みを緩和させる程度にして、風邪をひき切ることが大切だと、野口さんは言う。注意しなければならないのは、ひき終わり。熱が下がったら、しばらくゆっくりしていて、様子を見ながら動く。以前は、風邪を誇っていたが、大きな間違いで、年に2度ぐらい、上手に風邪をひく。
12.足の裏とか、足の指などについては、早くから大切にしてきた。左右の足の指を、ケアをしてきた。仕事に疲れると、足の裏や足の指をもむ。ツボを意識するのではなく、。押して気持ちのいいところ、痛いところも、まんべんなく手でもみ、さする。足全体の血行が良くな。靴も気をつける。歩いていて靴を忘れているような靴がいい。免疫療法のひとつに、手足の指を刺激する療法に人気が集まっているが、理論的裏づけはないが、何十年も前から、我流でつづけてきた。脳や、心臓や、その他の重要なところは、末端の部分が生き生きしていなければ活性化しない。手足がいつもポカポカしているように心がける。テレビを見ているときや、タクシーに乗っているときなど、無意識に手をもんだり、足首をぐるぐる回したりする。
13.歯は心臓よりも大事だと思う。自分のの歯が、現在、何本あるか無頓着の人が多い。目をつぶって、自分の上下の歯列がイメージできれば理想的である。歯を磨くときは、そっと優しく磨く。さちんと手を抜かずにする。土下の歯ぐきを指でこするのも推奨され、歯よりも歯ぐきのほうが大事なような気がする。歯を磨いたあとで、大きく回して、歯の外側を回転させるぜつようにします。これは結構きつい。頬の骨がゴリゴリ鳴ったりする。
14.食事の量について、一様に、「腹八分目」という常識に疑問を持っている。「腹8分目」というのは、30.代ぐらいの働き盛りの人の適量で、10歳、歳を重ねるにつれて、1分ずつ減らす。40代は7分。50代は6分、60代は5分。70代は4分。80代は3分は冗談のようだが、案外、支持者も多い。最近、「人は食べずに生きられる」などという説も出てきた。森美智代さんという女性は、一日青汁一杯で20年以上も生きているという。ほかにも、1日1食で充分という説もある。どっちなんだと、頭を痛めるのです。
15.腰痛の持病は、腰だけでなく、なにか動作をするときには、まず「いいかい?」と、体にたずねる。体に準備をさせ、体に不意打ちをくらわせるのはやめる。「では」とか、「さーて」とか、「どれ一丁やるか」とか、言いかたはなんでもいいが、あらかじめ身体語を発しておく。ぎっくり腰というのは厄介で、外国旅行で重いトランクを不用意に持ち上げたとき、ギクっときて、楽しいはずの旅行でひどい目にあったことがある人は多い。「さあ、いまから重いものを持ち上げるぞ」と、体にひと声かけなかったための失敗である。

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2019年10月28日

高齢社会で心房細動が増えている。不整脈の一つで、心房が小刻みに動き、心房に血栓ができやすくなり、血栓が脳に飛ぶリスクが高まる。カテーテルアブレーション治療によって治る。

「鎌倉 史郎(国立研究開発法人国立循環器病研究センタ)、鎌倉 令(心臓血管内科部門不整脈科元臨床検査部長)著:心房細動といわれたら - その原因と最新の治療法、WEB、2015年7月1日 発行」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.高齢社会と共に心房細動という病気が増えている。心房細動とは不整脈の一つで、心房が小刻みに動き、けいれんするような病状を指し、それにより心房に血栓ができやすくなり、その血栓が脳に飛んで脳の血管が詰まるリスクが高まる病気と説明されている。また、カテーテルアブレーション治療によって治る病気ともいわれている。
2.医師からそのような説明を受けても、今一つよくわからない。なぜ心房細動が起こるのか、なぜ発作が起こると苦しくなるのか、どうして治療が必要なのか、「アブレーション」という治療以外に方法はないのか、などの質問をよく受ける。心房細動の治療はこの20年で大きく変わった。心房とは心臓は四つの部屋に分かれ、上の方の2つの部屋を心房、下の2つの部屋を心室という。4つの部屋は外側が筋肉でできており、中は空洞で血液がたまっている。筋肉が収縮すると、中にある血液が心臓の外に出て行くようになっているので、心臓は血液を送り出すポンプである。
3.心臓の血液は心房から心室を通って全身へ出て行く。心房は心室の手前の部屋にすぎないため、仮に心房にけいれんが起き、心房の動きが止まったとしても、心室さえしっかり動いていれば大きな問題は起こらない。心房と心室の筋肉が動くのは、心臓に弱い電気が流れるからである。その電気をつくる猗電所瓩砲△燭訃貊蠅脇況訐瓩噺世辰董右房の上の方にある。洞結節で心臓全体に伝わる電気がつくられる。洞結節でできた電気は心房に伝わるが、心室には房室結節だけを通って伝わる。筋肉の中には目には見えない電線のような組織が網の目状に張り巡らされていて、それを通って電気が伝わる。
4、電気は心房から心室へ直接伝わるのではなく、心房と心室の境界にある房室結節という、猜囘貼雖瓩量鯡椶鬚垢訃貊蠅鯆未辰匿桓爾愿舛錣襦K室七訐瓩脇況訐瓩ゆっくり電気を作る時は、それをそのまま通すが、洞結節や心房から多くの電気が流れてきた時は、それを間引いて通す。
5.心房細動の原因は人間は、胎児としてお母さんのおなかの中にいる頃は、洞結節以外に心臓内の種々の場所に猗電所瓩鬚發辰討い襪、生まれる前に、洞結節以外の猗電所瓩漏犬鬚気譴導萋阿鯆篁澆掘洞結節からだけ電気を送るようになって生まれてくる。しかし、年をとったり、甲状腺機能亢進症などの病気になると、この蓋が外れて変な場所から電気を流すようになる。その変な場所で最も多いのが、左房に直結する肺静脈(肺からきれいな血が戻ってくる血管で4本ある)の付け根にある個所である。ここは胎児の頃、発電所のあった場所で、再び発電を始める。胎児の心拍が速いのと同様に、非常に高い頻度で電気を流す。加えて、年をとると、電線の役もしている心房の筋肉が変質し、一部の電線は電気を伝えにくくなる。網の目状の電線回路の中で、断線したりショートしたりして、電気が旋回する。
6.心房細動のある人は、左房に直結する肺静脈の付け根から異常な電気が起こる。図では肺静脈は左右に2本ずつ計4本ある 。肺静脈から高い頻度で生じる電気だけでも心房が速く動くうえに、この刺激をきっかけに起こる電線回路内のいろんな場所での電気の旋回(これを医学用語でリエントリーといいます)によって、さらに心房が速く興奮し、細かく動きます。これが、心房細動の原因である。つまり心房細動ではこれらの電気的な異常興奮によって、心房が1分間に300〜500回もけいれんするように動く。
7.肺静脈からの電気興奮をきっかけに、心房の中で毎分300回から500回の異常な電気旋回(リエントリー)が生じ、心房細動が起こる。
これは、心房細動の主な原因が肺静脈からの異常な電気興奮であり、それらを起こす大きな原因が加齢であることを意味している。言い換えれば、心房細動は誰にでも起こりうる病気で、一生のうち4人に1人は心房細動になる。
8.心房細動になると、心臓全体も速く動くのではない。心房の電気は心室に伝わりますが、変電所の働きをしている房室結節が、伝わる電気の量を調節してくれるからである。例えば、心房が毎分300〜500回動いていても、心房の電気が5つに1つくらいの割合で伝わると、心室は1分間60回から100回程度動き、正常な心室の動きと変わらず、動悸などの症状は出にくくなる。
9.しかし、2つに1つ、または3つに1つくらいの割合で電気が伝わると、心室は1分間100回から200回ほどの速さで動くことになり、一生懸命に走っているときか、それ以上の心拍数となるので、動悸や息苦しさが起こる。突然そういう状態になると、心臓が送り出す血液量が減って、血圧が下がる。そのため、脳に行く血が少なくなって、ふらついたり、ひどい場合は意識を失ったりする。つまり、心房細動時の症状が出るか出ないかは、この房室結節の調節次第で決まる。
10.一般に3人に1人は、心房細動があっても自覚症状は出ない。その多くは房室結節の変電所としての働き(調節)がうまくいっているからである。房室結節の調節が全く利かず、心房でつくられた電気をそのまま通してしまうことは、ごく一部の特殊な心臓病の人以外では起こらない。心房がけいれんしているのなら、心室もけいれんするのではと心配される方がいるが、そういうことは起こらない。
11.心房細動では、房室結節での電気の伝わり方が不規則になるので、心室の動きも不規則になるので、心室の動きで生じる脈も当然、全くばらばらになり、多くは速くてわかりにくい脈になる。


yuji5327 at 06:44 

2019年10月27日

心房細動による脳梗塞は、心房細動を持っている人すべてに起こるわけではない。高血圧、糖尿病、心臓の機能低下、75歳以上の高齢などの一つ以上を持っている人の一部に起こる。

「鎌倉 史郎(国立研究開発法人国立循環器病研究センタ)、鎌倉 令(心臓血管内科部門不整脈科元臨床検査部長)著:心房細動といわれたら - その原因と最新の治療法、WEB、2015年7月1日 発行」は参考になる。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
1.心房細動で注意すべき点は2つある。1つは、房室結節の調節機能がうまく働かない人では、心室の動きが速くなって頻脈になることである。もともと心臓病を持っているか、いないかにもよるが、おおよそ1分間140回以上の頻脈が長く続くと、心臓(心室)の働きが悪くなって心不全という状態が起こる可能性がある。
2.人間の心臓は一生のうちに動く回数が決まっているので、早く動いてしまうと、早く弱ってしまう。このため、心房細動では、不整脈自体の治療として、心房から心室に電気を速く通さないように、または頻脈にならないように、薬剤(抗不整脈薬)で房室結節機能を調節するとともに、できれば心房細動を止める必要がある。
3.2つめは、心房細動では心房に血栓(血の塊)ができやすく、それが血流にのって脳などの動脈に流れ込んで、ふさいでしまう塞栓症(脳であれば脳塞栓症)を起こす可能性が高まることである。心房細動では、心房自体が震えるようにしか動かないので、血がよどんで塊ができやすくなる。これは心房細動が時々起こる「発作性心房細動」の人でも、常に起こっている「持続性心房細動」の人でも、その危険性は同じである。だから心房細動では、塞栓症を予防するため、血栓をできにくくする薬剤(抗凝固薬)を飲む必要がある。
4.心房細動によって起こる脳梗塞を心原性脳塞栓症という。これは心房細動を持っている人すべてに起こるわけではない。高血圧、糖尿病、心臓の機能低下、75歳以上の高齢、脳梗塞の既往、僧帽弁狭窄症(これらを脳梗塞のリスク因子といいます)のうち、一つ以上を持っている人の一部に起こるとされている。
5.血栓は発作性心房細動でも48時間以上続くような場合、または持続性心房細動で、できやすくなると言われが、このうち血栓ができるのは一部の人にすぎない。脳梗塞の予防薬は、古くからあるワルファリンのほかに、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)の4種の新しい抗凝固薬(NOACという)が発売されている。一般にNOACは、ワルファリンより出血などの副作用が少なく、薬剤や食物との相互作用(薬剤の効果を弱めたり、強めたりする作用)が少なく、脳梗塞予防効果はワルファリンと同じかそれ以上である。どの抗凝固薬を選ぶかは、腎機能、肝機能、年齢、もともと持っていた心臓病などを考えて決める。過去に脳梗塞になったことがなければ、抗凝固薬を正しく服用していれば、どんなに長く心房細動が続いていても、たいていの場合、脳梗塞を予防できると考えてよい。
6.心房細動が長く続けば続くほど、脳梗塞になりやすくなると心配される方も多いが、抗凝固薬を飲んでさえいれば、心房細動発作がすぐに止まらないからといって病院に駆け込む必要はない。一方、アスピリンなどの抗血小板薬は、心房細動による脳梗塞を予防する効果が弱く、テレビや雑誌などで話題になっている血液をさらさらにするという種々の食物なども、ほとんど予防効果のないことが証明されている。
7.心房細動では、心房から心室に伝わる電気の割合が多くなれば、心室が速く動き頻脈となって、動悸や息苦しさといった症状が出てくる。夜間や安静時に突然、胸が苦しくなって、時には胸の痛みなども伴い、心臓の血管が狭くなる狭心症とよく間違われ、ニトログリセリンなどを服用する方がいるが、心房細動には効かない。
8.動悸などの症状は、持続性心房細動よりも、発作性心房細動の人で強く出る。理由は、心房細動が長く続いていると、だんだんその脈に慣れてくるのに対し、正常なリズム(非発作時)と異常なリズム(発作時)の両方を持っている人では、異常なリズムの心房細動になった時に症状の違いを感じやすいからである。
9.心房細動の治療法は、/緩失抛阿糧作を止め、同時に発作を予防する薬が必要になる。そのためには、心筋細胞にナトリウムイオンやカリウムイオンが出入りするのを遮断して不整脈を防ぐ、10種ほどの抗不整脈薬がある。しかし、いったん心房細動が起こるようになると、これらの薬で心房細動を完全に生じなくするのは困難である。心房細動の停止薬・予防薬は、主として心房細動の回数を減らす、症状を軽くする、持続時間を短くする、などの効果を期待して使う。次に⊃看鐃瑤鯆汗瓩垢襦文困蕕后北瑤鰺僂い襦それらにはβ遮断薬という薬を中心に3、4種の薬剤があり、いずれも房室結節の機能を調節(電気を通じにくくする)してくれる。症状のある心房細動には、アブレーション治療の前に/緩失抛阿鯆篁漾ν祝匹垢詭瑤鉢⊃看鐃瑤鯆汗瓩垢詭瑤領省を使い、症状の改善を図る。ただし、脳梗塞を起こすリスク因子のある人は、これらの抗不整脈薬と並行して、抗凝固薬を服用する必要がある。
10.心房細動があっても、症状がないか、あまり動悸を感じない人がいる。一般に安静時の心拍数が1分間80以下だと、運動や仕事は普通にでき、運動時にもひどい頻脈にならない。したがってこのような人は心不全にもならない。これらの人には△凌看鐃瑤鯆汗瓩垢詭剤は不要である。また,凌緩失抛阿鯆篁漾ν祝匹垢詭剤も不要な場合がある。さらにアブレーション治療による根治療法も不要な場合が少なくない。
ただし、脳梗塞のリスク因子がある場合は抗凝固薬が必要である。持続性心房細動の人では、一度は正常なリズムに戻るかどうかを、薬剤または電気ショックを与える方法で試してみるのも良い。
11.頻脈なのに、症状のない、または少ない人がいる。こうした人では、いつの間にか心臓の機能が低下していることがあるので、症状がないからといって安心できず、症状のある場合同様、しっかりとした治療が必要になる。心房細動による動悸がおさまった時に、めまいやふらつき、失神が起きる人がいる。こうした人の多くで、心房細動による頻脈発作が止まったときに、極端に脈が遅くなる徐脈や、一時的な心停止が見られる。このような状態を徐脈頻脈症候群(または洞不全症候群)と呼ぶ。このような人に対して、心房細動が起きているとき、抗不整脈薬によって心房細動を停止させ、心拍数を調節する治療を行うと、頻脈は出なくなるけれど、徐脈がひどくなって、ふらつきや失神が増えることがあります。つまり、すべての抗不整脈薬は、頻脈を抑えることはできる反面、徐脈をもたらす可能性がある。これらの人では.▲屮譟璽轡腑鷦N鼎膿緩失抛絢体を起こさなくする、または△泙坤據璽好瓠璽ーを植え込んで、徐脈を起こさなくしたうえで、薬剤で頻脈を抑え込む治療をする。
12.心房細動がずっと続いていて、止める必要がある場合々撹埓位薬電気ショック(電気的除細動という)アブレーション治療、の3つの方法がある。抗不整脈薬には静脈注射と内服薬があり、この薬剤で心房細動が止まる確率は10〜50%である。電気ショックは、100ジュール前後の直流電流を一瞬、体に流して不整脈を止める治療法で、ほとんどの心房細動を停止させることができる。人が集まる施設で見かけるAED(自動体外式除細動器:心臓救命装置)も電気ショックを起こす装置だが、これは心房細動ではなく、心室細動を止めるために用い、心房細動時の電気ショックの2倍以上の強力な電気を流す。
13.心房細動を止める電気ショックでも強い刺激を与えるので、患者には、静脈注射で数分〜10分ほど眠ってもらい、その間に治療をする。初めてこれを行う場合は、最低1、2日間入院してもらう。ただし、何度も電気ショック治療を受けて慣れている患者さんには、日帰りで行うこともある。電気ショックは、薬剤を試した後に行うが、症状のひどい場合は直ちに行うこともある。ただし、心房細動をなくす根本的な治療法でないため、これで心房細動が止まったとしても、すぐ(数秒〜数時間内に)再発する人がいる。
14.数か月以内に再発した場合、再度電気ショックをしても効果は期待できないので、アブレーションが次の治療の第一選択肢となる。電気ショックでは1%前後の人が脳梗塞を発症する可能性があるので、受ける前と後の3週間以上にわたって抗凝固薬を飲む必要がある。できれば受ける前に、食道に超音波内視鏡を入れる「食道エコー検査」で、心房に血栓のないことを確かめた方がよい。


yuji5327 at 06:39 

2019年10月26日

発作のない時は運動をしても徐々に心拍数が上昇する。心房細動時には突然増えるので、心拍数が急に上がり、血圧がやや下がり、息苦しくなる、発作が続く時には無理をしない。

「鎌倉 史郎(国立研究開発法人国立循環器病研究センタ)、鎌倉 令(心臓血管内科部門不整脈科元臨床検査部長)著:心房細動といわれたら - その原因と最新の治療法、WEB、2015年7月1日 発行」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.心房細動の根治療法であるアブレーション治療は、主な原因が左房の肺静脈の付け根から出てくる電気的興奮だから、その電気が心房内に拡散しないようにするのが、この治療のポイントである。当初は電気の発生部位の一つずつに高周波電流を当てて筋肉を焼く(火傷させて発生部位を取り除く)方法だったが、うまくいかないことがわかった。そこで、右側2本と左側2本の肺静脈をまとめて、その周囲をリング状に焼き、電気が肺静脈から出て行かないようにする、つまり電気的に肺静脈を隔離する方法が行われるようになった。 左側2本ならびに右側2本の肺静脈をまとめて、その周囲にリング状に焼灼(焼くこと)する。
2.1回の通電で約5个猟垢気両銅泙できるので、2つのリングを形成するのに約30〜80回の焼灼が必要である。それにより焼いた部分の筋肉が変性し電気を通さなくなり、肺静脈内にある発電所からの興奮が心房に拡散しなくなる。焼いた後に筋肉が一部再生して、再び電気を通すようになると心房細動が再発する。現在では、これに加えて、4本の肺静脈の入口に順番に風船(バルーン)を押し当て、その部分を−70℃前後に凍らせる「冷凍凝固バルーン法」が行われている。
3. 肺静脈の付け根に風船(バルーン)を押し当て、凍結させるか、加熱して、肺静脈の入口の筋肉を変性させ、肺静脈からの異常な電気の拡散を止める。肺静脈は4本あるので、4〜8回バルーンを押しつける。また2015年度内には風船を高周波電流で暖める方法「ホットバルーン法」も承認される予定である。バルーン法は、風船を押し当てた周囲の心筋を凍結させるか、もしくは熱で変性させるため、肺静脈でできた電気が心房に拡散できなくなって心房細動が治る。いずれも患者が麻酔で眠ったまま治療でき、入院期間は、問題が生じなければ5〜7日間である。バルーン法は従来の方法に比べ脳梗塞などの合併症が少なく、治療時間が短く、再発率が低い(30%以下)と報告されている。
4.冷凍凝固バルーン法は、左房や肺静脈の形により、治療可能な人と、そうでない人があるほか、ごく一部の人には横隔膜神経麻痺などの合併症が起こる可能性が指摘されている。注意したいのは、心房細動が長く続くと、数年から10数年かけて徐々に左房が大きくなってしまうことで、一般に左房の直径が50舒幣紊砲覆襪函▲▲屮譟璽轡腑鷦N鼎寮功率が低下すると言われているので、根治を希望する人は、あまり左房が大きくならない前に治療を考えた方がいい。
5.このほかの根治療法に、血栓のできる場所(左心耳という)を、胸腔鏡を用いてはさみで切り取ってしまう方法や、カテーテルを用いて左心耳に小型の傘状の機器を押し込んで蓋をし、左心耳に血栓ができなくする方法も報告されている。
6.アブレーション治療では、治療前に最低1か月間、治療後に約6か月間は抗凝固薬を服用する必要があるし、多くの人では治療後も一定期間、抗不整脈薬を継続する必要がある。また、治療前に食道エコー検査などいくつかの検査が必要となる。
7.これまで述べてきたどの方法を試しても、心房細動を根治できず、発作時の自覚症状が残って苦しむ人がいる。その場合、最後の手段として房室結節をアブレーション治療で焼いてしまい、心房から心室に電気が伝わらないようにしたうえで、ペースメーカーを植え込む方法がある。心房細動が続いていても、ペースメーカーによって心拍数は一定になり、症状がなくなる。
8.発作が続いた時は無理に動かず、薬を飲んで治まるのを待つ。心房細動のある人は、発作が起こっているときに体を動かすと、房室結節が電気を通しやすくなる。発作のない時は運動をしても徐々に心拍数が上昇するのに対し、心房細動時には心房から心室に伝わる電気の割合が突然増えるので、心拍数が急に上がり、血圧がやや下がり、息苦しい症状が出やすくなる。発作が続いて苦しい時にはあまり無理をして動こうとせず、薬を飲んで心拍が治まるのを待つ。
9.心房細動の診療については、国立循環器病研究センター病院『不整脈科』のページも参照する。.



yuji5327 at 06:50 

2019年10月15日

心房細動は病気というより、一種の老化現象なので、いったん出始めると完全には元には戻りにくく、薬も効きにくい。ある程度改善するものである。、

「国立循環器病研究センター著:心房細動、WEB」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.心房細動は、時々心房細動が出現する「発作性心房細動」と、心房細動の状態がずっと続く「持続性(慢性)心房細動」に分けられる。心房細動によく似た不整脈に心房粗動があるが、心房粗動では心房の中で一定の回路を通って規則的な電気の旋回が起こっている。
2.心房細動は70歳を超えると、病気のあるなしに関係なく1割から1.5割の人に現れてくる不整脈で、原因は心房の筋肉の一種の老化現象である。若い人にも出ることがあり、多くは体質的な理由で起こり、高血圧、肺疾患、甲状腺機能亢進症、弁膜症、心臓の手術後では、より生じやすくなる。
3、心房細動自体は、危険な、命にかかわるような不整脈ではなく、元に心臓病がない場合は、心房細動のために寿命が短くなるというものでもない。心房細動があっても3分の1近くの人は自覚症状がないため、まったく正常な生活を送っている。
4.心房細動の治療は、原因となる病気がある場合はそちらの治療をまず行う。原因疾患がなく、かつ症状もない時は治療が必要でないことが多いが、動悸などの症状がある場合は治療が必要である。特に心房細動では、運動をしたり精神的に興奮したりすると一時的に房室結節の調節が利かなくなって、急に脈拍数が増加して息切れやめまいなどの症状が出ることがある。また発作性心房細動では発作開始初期に血圧が下がって意識を失うこともある。そのような場合、脈拍数をコントロールする薬剤や、発作自体を起こしにくくする薬剤が使われます。
5.心房細動が長く続き、そのため一時的に心臓の機能が低下したり、症状が強く出たりする場合は電気ショックで正常のリズムに戻すことがある。ただ発作性の心房細動では、このような治療を行っても発作回数が減らずに増えていく人がいる。この場合、病気が悪くなっているのではないか、慢性の心房細動に移行するのではないかと悲観する人がいるが、その必要はまったくない。
6.心房細動は病気というより、一種の老化現象なので、いったん出始めると完全には元には戻りにくく、薬も効きにくい。だから抗不整脈薬の多くは頻度を減らし、症状をある程度改善するものと考えてよい。心房細動を完全になくそうとすると、多種多量の抗不整脈薬が必要になる可能性がある。その場合むしろ薬剤の副作用の方が心配である。仮に薬が効かなくて発作を予防できなくても、たいていの場合はそれで心不全が起こってきたり、余病を併発したり、命が短くなるわけではない。
7.心房細動の症状は、心房細動を完全に予防しなくても、その時の脈拍数をコントロールすることで、かなり改善する。また発作性心房細動よりも、むしろ慢性の心房細動になった方が、体がその状態に慣れてきて、症状は楽になることが多い。
8.心房細動時には心房が細かく動くだけで、十分な収縮ができませんので、そこで血液がよどみ、血栓ができ、それが頭や手に飛んでいって血管が詰まる(脳であれば脳梗塞になる)ことがある。そのため最近では心房細動に対しては、脳梗塞を予防する目的で、血液を固まりにくくする薬剤(ワーファリンなどの抗凝固薬)が使用されるようになっている。
9.脳梗塞は心房細動を持つ人のすべてに起こるのではない。これは心房細動が48時間以上続くような人の中のごく一部に起こるにすぎず、特に心臓病や高血圧、糖尿病を持たず、家系にも脳梗塞の人がいない場合は、たとえ心房細動があっても、脳梗塞の発症率は正常人と変わらない。
10.適切な量のワーファリンを服用していれば、どのようなタイプの心房細動であっても、脳梗塞を予防できるし、大出血を起こすこともない。ワーファリン服用中であっても手術は可能だし、仮に出血しても、押さえてやれば、ちゃんと血は止まる。心房細動があるから脳梗塞になるのではないか、ワーファリンを飲んでいるので、出血するのではないかと、むやみに神経質になる必要はない。


yuji5327 at 06:28 

2019年10月08日

脳は情報を処理する生体器官である。その情報は外界由来のもの、体の中からくるものがある。脳の働きを理解するためには、取り扱う情報の性質を理解する必要がある。


「藤田一郎(大阪大学教授):大ざっぱと丁寧を使い分ける私たちの脳の情報処理システム、週刊ダイヤモンド、2019.08.24」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.脳はつまるところ情報を処理する生体器官である。その情報は外界由来のものであったり、体の中からくるものであったりする。従って、脳の働きを理解するためには、脳そのものだけではなく、それが取り扱う情報の性質についても理解する必要がある。
2.情報や通信の数学的な基盤を研究する学問分野は「情報理論」と呼ばれ、1948年にクロード・シャノンが発表した「通信の数学的理論」によって誕生したとされる。そしてその数年後の54年に、ブレッド・アトニーブが、情報理論の立場から視覚について考察した最初の論文を発表した。シャノンの論文ほど有名ではないが、選び抜かれた明快な言葉とシンプルな思考実験からなる、エッセーのようであり詩のようでもある素晴らしい科学論文である。
3.その論文でアトニーブは、「私たちが受け取る視覚情報のほとんどは冗長である」と主張した。彼によれば、
机の上の端に置かれたインク瓶の図があり、背景は白い壁、机は木製で茶色、インクは黒であるとすると、このような情景から目および脳が受け取る視覚情報は、この絵を画素に分解したときのその数ほどは多くない。例えば、この図を横方向に80、縦方向に50に分割し、4000個の画素に分けてみる.そして左下の角の画素から右に向かって一つずつ移動していったとき、それぞれの画素が白、茶、黒のうちのどの色だと思うかを被験者に当てさせてみても、何のヒントもないので最初は間違えるが、白が続くことにすぐに気付き、白と答える。机の左辺にやって来たときには、茶であると答えなくてはいけないのに対して白だと答える。その後は茶の画素が連続することに気付き、また正解が続くようになる。つまり、被験者が間違えるのは色が変化するところや輪郭の在り方が変化するときに限られる。言い換えれば、視覚情報として大事なものはそれらの部分に限られており、他の部.分から受け収る情報は冗長である。
4.視野の中のほとんどの場所において、その一点がどのような情報を持つかは、その周りの点がどのよ・妥情報を持つかによってたいてい正しく推定できる、これがアトニープの主張である。この主張をサポートするために、アトニーブが示したもう一つの例は、38個の点とそれを結ぶ直線だけから成るこの絵が、寝ている猫であることは即座に分かる。輪郭の中で方向が大きく変わるところ〔曲率が高いところ)だけを結び、その他の微妙な曲線の様子を全てなくしてしまっても、猫のように見慣れた物体を認識することは可能である。線画からは、猫の色、模様、毛艶の情報が捨てられてしまつているのでわからない。しかし、アトニーブと正反対のことを言うようだが、それらの情報があったとしても、私たちの認識は必ずしも正しいわけではない。注意深く眺める、これは陶器でできた置物なのである。つまり、色や模様の情報があったとしても、この写真が置物であって、本物の猫や、さらにはクロワッサンでないことを知るためには、詳細な画像情報を処理する必要がある。
5.脳は大ざつばな処理と精密な処理を両立させている。何かの課題を行おうとするとき、その達成に必要とされる時間と得られた結果の質の間にはトレードオフが存在する。身近な例として、数学の問題を解くときのことを考えると、早く仕上げようとして急いで解くと誤りを犯す危険性が高まる。一方、正確さを第一として丁寧に問題を解くと時間がかかる。脳というのは時に間違えてもよいから粗く速く計算を行う方式と、時聞がかかってもよいから精密な計算を行う方式を、さまざまな視覚の側面のそれぞれにおいて併用している。
6.2つの例がある。一つ目は、他者が威嚇をしてきたり、恐怖の表情を示していることは、何らかの危険が身の回りに迫っていることを示す重要な視覚情報である。そのような情報は、通常の顔認識の情報経路である大脳皮質での処理過程を迂回し、視床から感情や自律神経反応を制御している扁桃体へと直接伝えられる。90年代に提唱された説であるが、その厳密な証拠は、この数年になって得られつつある。もう一つの例は両眼立体視である。私たちが二つの目で見る世界は、片方の目だけで見るときには感じられない明確な奥行き感を持っており、真の3Dとなっている。これは、二つの目が左右に離れて顔に付いており、異なった視点から世界を見ていることに原因がある。目の前の数々の物体の像は、右目と左目では異なった位置にずれて投影される。どのくらいずれるかは、その物体が注視面に対してどのくらい手前にあるか、あるいは奥にあるかによる。このずれは両眼視差と呼ばれ、脳は目における映像の情報に基づいて、これを計算する。この際にも粗くて速い処理と、丁寧で精密だが時問のかかる処理を並列に行っている。これもこの10年で科学的な証拠が得られつつある。
7.心理学者・経済学著であるダニエル・カーネマンによれば、このようなデュアル処理は視覚に限らず、人間が持つ認知機能一般に普遍的な特性である。彼はこれらをオペレーションシステム1〔OS1〕、オペレーションシステム2(OS2)と名付けている。これらの提唱されている動作アルゴリズムの実体は、今後も神経科学的に探究されていく。


yuji5327 at 06:46 

2019年09月15日

ほとんどの不整脈は無害である。脈が一時的に速くなる事も心配ない。落ち着きを取り戻す事でほとんど解消する。不整脈は心臓のポンプ機能を悪化させる事もない。

「国立研究開発法人国立循環器病研究センターほかWEB:心臓リハビリテーションのすすめ 」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.以前は、心臓病のある人は、安静第一で、運動は避けるべきだと考えられていた。たしかに、心不全後の不安定な時期や心機能が著しく低下している状態で運動することは危険である。しかし、最近では、心臓病には運動は欠かせないものとなっており、心不全後の患者にもさまざまな「心臓リハビリテーション」が行われるようになっている。
2.リハビリテーションというと、骨折や脳卒中後に、動かなくなった手足を動くように訓練している場面を思い浮かべるが、心臓リハビリテーションの目的は、こうした機能回復だけではない。入院中に行われる「急性期リハビリテーション」は、急性心不全で入院した患者を早期に離床させ、日常生活に戻すために行われるものである。
3.高齢者では、入院がきっかけでそのまま寝たきりになってしまう危険もあるため、早期の社会復帰を目指す訓練はとても大切である。さらに重要になるのが、回復期および退院後の「慢性期リハビリテーション」である。有酸素運動を中心とした運動を続けることで、自律神経や血管の機能を是正し、心不全の悪化による再入院を防ぐこともできることが明らかになっている。
4.ただ、自己判断で不適切な運動を行うことはかえって危険である。心不全の患者や心筋梗塞後の患者のリハビリテーションでは、まず、心肺運動負荷試験(CPX又はCPET)を行い、最大酸素摂取量や嫌気性代謝閾値を測定する。それらのデータをもとに、個々の患者にとって最適の「運動処方」(どれくらいの強度の運動をどれくらいの時間行うか)を作成し、それに基づいた運動を行っていく。心肺運動負荷試験が行えない施設では予測最大心拍数をもとに運動処方を作成することもできる。
5.高齢者のなかには、認知症やフレイルがあったり、独居や老々介護といったさまざまな問題を抱えていることが多く、塩分制限や服薬管理などが、一人ではうまくできなくて困っている人もいる。こうした高齢者には、様々な職種の医療従事者が積極的に関与する必要があり、患者指導のきっかけとなる心臓リハビリテーションは、その一翼を担っている。
6.心不全の患者は、薬物療法に加えて日常の生活管理がとくに重要である。心不全の悪化の原因はさまざまだが、その原因の多くは患者のちょっとした心がけで回避できる。生活習慣を変えるためには、本人の自覚もちろん大切だが、高齢者の場合、家族や周囲の人の協力も不可欠である。
7.慢性心不全患者が気をつけるべき食事と運動のポイントは、食事療法で、一番重要となるのが食塩制限である。塩分の成分であるナトリウムは水を身体に溜め込む性質があり、摂り過ぎると血液量が増加して心臓に負担がかかる。軽症の人は、食塩摂取量を1日7g以下、重症の人は1日3g以下に制限するように努める。難しそうに感じるが、減塩調味料を使う、味噌汁は1日1杯、漬物や佃煮を減らす、香辛料やレモンなどをうまく利用する、味をしみこませず表面につけるなど、味付けや調理法を工夫すれば減塩できる。
8.心不全の患者では、水分の摂り過ぎにも注意が必要である。夏の暑い日に、水分を多く摂ることは必要だが、度が過ぎると体液が増加し、心不全悪化の誘因となる。過度な飲酒や過食も心臓に負担をかける。太っている場合は減量する。そのほか、気をつけるべき生活習慣として、禁煙が絶対条件である。タバコは心臓だけでなく、肺にも悪影響を及ぼし、がんの原因にもなる。また、長時間の入浴や熱いお風呂にも注意が必要である。入浴は血管が拡張して心臓が楽になる効果があるが、長すぎたり熱すぎると心臓に負担がかかる。お湯の温度は40℃くらいに調節し、水位は胸までの高さで、半身浴する。風呂場は、脱衣所と浴室の温度差で心筋梗塞を起こすこともある。
9.高齢者はもともと心機能が低下しているため、風邪を引いたり、寝不足が続いたり、少しのストレスがかかっただけでも、心臓に負担がかかる。できるだけ心臓に優しい生活を心がけるとともに、少しでも普段と違う症状があれば、念のため、病院できちんと調べてもらうようにする。
10.薬物治療は、心不全治療の基本となる。心不全の薬物治療の目的は2つある。第1に、息切れなどの症状を改善し生活の質(QOL)をよくすること、第2に、予後の改善、つまり心不全が悪くなって入院することを防ぎ、死亡率も下げる、つまり、長生きできるようにすることで、目的に適した薬を使う。第1の目的に最も適した薬は、利尿薬である。心不全になるとレニン・アンジオテンシン、アルドステロンなどのホルモンが多く分泌されて、体に水分とナトリウムが溜まる結果、血液のうっ滞が起こり、息切れやむくみといった症状が現れる。利尿薬は体に溜まった水分やナトリウムを尿に出すことによって、うっ血を改善し、心不全の症状を軽くする。
11.第2の目的に用いられる薬剤は、左室の収縮機能の低下が原因で起きる「収縮不全」では、.▲鵐献テンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ACE阻害薬が副作用などで使えない場合はアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、交感神経の緊張を抑えるベータ(β)遮断薬、アルドステロン拮抗薬、がある。これらの薬剤は、大規模臨床試験によって収縮不全の患者の寿命を延ばす。これらの薬は心不全の症状がなくても、心臓の機能が低下していることが分かった段階から始める。
12.左室の収縮機能の保持された「拡張不全」については、明らかに寿命を延ばすことが確認された薬は、残念ながら存在しない。心不全の症状をとるためには、収縮不全と同様、利尿薬が有効であることに加えて、拡張不全の患者では、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、心房細動などを合併していることが多いため、それらの治療をしっかり行うことも重要である。
13.心不全かどうかを診断するためには、まず、息切れや動悸といった心不全特有の症状があるか問診を行い、さらに、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などの検査を行って、総合的に判断する。診察の際に行う「聴診」は、聴診器で心臓の音を聴く検査で、心雑音やふだんは聴こえない群擦筬顕擦ないかどうかを確認する。心雑音がある場合は、弁膜症などの病気が疑われる。呼吸の音も重要で、心不全では呼吸に伴って肺がプチプチ、パリパリいう「ラ音」が聞こえることがよくある。「胸部X線検査」は、心臓が拡大していないか、肺に水が溜まっていないか、肺の血液のうっ滞がないかなどを調べる。正常の場合、心臓の大きさは肺の大きさの50%以内で、それより大きいと心拡大となり、心不全が疑われる。「心電図検査」は健康診断などでもよく行われる検査である。心電図の波形から、心筋梗塞や不整脈などの病気の有無が分かるが、心不全特有の所見はない。
14.「心エコー検査」は、心臓の形状を調べる検査である。心臓の壁の厚さ、弁の状態、心臓のポンプ機能などを調べることができ、聴診で疑われた弁膜症の確定診断を行う際にも、心エコー検査が重要になる。高齢者に多いとされる「収縮機能が保たれた心不全」(HFpEF)を診断する際にも、心エコー検査が用いられる。心エコードプラー法という心機能を調べる検査では、拡張機能を評価することができる。
15.心不全診療では、「血液検査」も有力な手がかりになる。採血を行って、心臓から分泌されるホルモンの一種である脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定する。BNPには、血管を広げ、尿を出す作用がある。血管が広がれば、心臓は楽に血液を全身に送り出せる。また、尿が出ることで、余計な水分や塩分が排泄させることで、むくみや息切れが改善される。心臓に負担がかかったとき、心臓が自分を守るために出すのがBNPである。一般的にBNPが高値であるほど症状は強く、重症になるとされている。
16.洞性頻脈、上室性頻脈といわれた、69歳 男性 は、大学病院の緊急外来の医師は何の処置もなかったっが、頻脈発症の心配のため競技テニスでなくクラブテニスで徐々に再開した。医師は、「洞性頻脈」は正常の脈がただ、早くなったという状態で、走ったり、運動したり、緊張して興奮したり、したときに起る、ありふれた頻脈なので、テニスを控えたりする必要はない。「上室性頻脈」は心房性頻拍ともいうが、頻脈の起源が洞以外の心房のどこかにあるという場合である。洞性頻脈と区別することは難しいが、突然に脈が速くなり、速くなった脈が突然に遅くなって正常化する、という特徴がある。「上室性頻脈」だったとしても、発作のときの脈の速さと発作の持続期間によって、対応が異なる。数時間程度しか続かない場合であれば、放置する。運動は何をしても構わない。テニスをしてはいけない頻脈ではない。
17.脈がたまに飛ぶ程度の人や、症状のない徐脈は心配のないことがほとんどである。また、運動や精神的な興奮によって脈が速くなる場合も心配はない。不整脈がある場合は、何が原因で起こっているか、元に心臓病がないかなどを、最低一度は心電図検査などで確認してもらった方がよい。安静にしている時に起こる頻脈のうち、数十秒から数分の間に脈が速くなるけれども、脈拍数はせいぜい1分間120までであり、その後徐々に遅くなる場合も、大抵は病的な頻脈ではない。救急車で病院に運ばれてくる人のなかに、息苦しさとともに動悸や両手足のしびれを訴える人がいる。脈が速く打つので、怖い心臓病ではないかと不安がつのって受診される場合がほとんどだが、そういう人に動悸の起こり方を聞くと、数分以上かけて徐々に脈が速くなり、徐々に遅くなるタイプであることが少なくない。“自分は心臓が悪いのではないか”という不安感をきっかけに、精神的な興奮によって脈が速くなったり、息をしすぎる、つまり「過呼吸」になったりしたために起こることが多いの。
脈拍が120以下で規則正しく打っておれば大丈夫だ、と自分自身に言い聞かせ、まず落ち着くことが大切である。
18. ほとんどの不整脈は、無害である。脈がたまに飛ぶ程度であったり、症状の無い徐脈等はほとんど心配の必要はない。運動や精神的に興奮した状態の時に脈が一時的に速くなる事も心配ない。不安や心配を持ち過ぎる事がきっかけになったり、過呼吸になったりする事で一時的に脈が速くなる不整脈は、落ち着きを取り戻す事でほとんど解消する。こうした不整脈は、何か悪い症状をもたらす事も、血液を送り出す心臓のポンプ機能を悪化させる事もない。



yuji5327 at 07:21 

2019年09月12日

市販薬があっても、病院で処方される医薬品の総額が2016年度で5000億円にのぼる。自己負担が原則3割と割安だが、残りは税金や保険料で賄われる。

2019/7/19付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 160,915部)は「ドラッグストア業界/医療費問題/かんぽ生命保険/ホテルオークラ/HIS」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日経新聞は4日、「始動・ドラッグ大型再編」と題する記事を掲載した。ドラッグストア、食品スーパー、コンビニの商材の重なりが
顕著になっていると紹介している。出店に飽和感が出始めた各業種がお互いの領域に進出するため、プライベートブランドの供給や店舗の融合を進めているためで、今夏にはマツキヨとスギ薬局によるココカラファイン争奪戦の結論が出るなど、業界の大型再編が始まる見通しとしている。
2.ラッグストア市場の売上高や店舗数を見ると、どちらも伸びている。売上高は7兆円に迫る規模です。このような状況の中で、2社でココカラファインの争奪戦を繰り広げるというのはもったいない。スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの全てが一緒になることを画策したい。業界5位、6位、7位の3社が一緒になることで、一気に1位のウエルシア、2位のツルハなどを超える規模になれる。
3.薬ジャンルの商品で利益を出せるため、他の商品価格をコンビニよりも安く設定できるのがドラッグストアのメリットだが、このくらいの規模になると、さらにコンビニに対して一定の力を持つことができるはずである。小さくまとまるのではなく、これくらい大きな視野で考えて欲しい。
4.市販薬があるにも関わらず、利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が2016年度で5000億円にのぼる。処方薬は自己負担が原則3割と市販薬より割安なことが要因と見られるが、残りは税金や保険料で賄われるため医療費の膨張につながる。風邪をひいて風邪薬を買うとき、市販されていても、安く購入できるので、わざわざ病院で処方してもらう人が多い。こうしたことを抑制する必要があり、そこで検討されているのが保険給付の見直しである。例えば、テニスなどで痛めた部位に貼るような湿布薬、アトピー性皮膚炎等ではない皮膚乾燥症に対する保湿剤など、治療の根本に関わるものでないなら、保険適用から除外するというものである。
5.主要国のGDPに占める医療費の割合を見ると、米国がダントツに高く約16%、欧州と日本は約10%に抑えられている。しかし、日本の場合にはGDPが伸びておらず、今後高齢者が増えていくので、この割合を維持するのが難しくなる。こうした日本の状況を考えれば、なおさら普通に市販薬で購入できるものを、わざわざ病院に行って購入するのは避けるべきである。
6.かんぽ生命と日本郵便は10日、不適切な保険販売が相次いで発覚した問題を受けて、改善策を発表した。郵便局員への過剰なノルマが不正につながったと見て、新たな契約を取った販売員に対する評価体系や報酬を見直す方針で、二重に徴収していた保険料の返還も進める。営業ノルマでドライブをかけたことが不正につながったとのことだが、かんぽ生命で起こっていたことは、驚くべきことである。結果、かんぽ生命は、保険料収入と経常利益が減少しているのに、当期純利益は伸びているという異常な状態になっている。
7.ひどいことが起こった理由は、かんぽ生命の役員構成を見ると、約30名のうち16名は旧郵政省からの天下りだからである。金融機関出身者もいるが、大半は金融の素人でありプロではなく、まともな経営者がいない。もともと単なる天下り先と思っている人たちでだから、売上を伸ばすとなっても、営業ノルマを課すことしか考えられなかった。問題の根本はここにあり、謝罪会見では頭を下げても、何も解決しない。こうした素人経営陣は退き、再出発するべきである。
8.ホテルオークラは、ロシアの投資会社アエオンコーポレーションの建設するホテルの運営を受託したと発表した。モスクワのシェレメーチエボ国際空港の近くに300室規模の大型ホテルを建設する計画で、和食レストランの他、温泉風の温浴施設も設け日本流のサービスを提供する。ウラジオストク、ハバロフスクなどを見ても、ロシアにはあまり良いホテルがないので、これは大きなチャンスである。モスクワ近辺なら、日本式サービスは受け入れられる可能性は大いにある。ぜひここで成功してロシア全土に展開することを期待したい。ホテルオークラはこれまでにも中国上海、アムステルダムなど積極的に海外進出を図ってきたが、大半は上手くいかなかった。今回は、同じ轍を踏まないように頑張ってほしい。
9.旅行大手HISは、ホテル事業などを展開するユニゾHDに対してTOBを実施すると発表した。現在の保有比率4.5%から大幅な引き上げを目指すものだが、ユニゾが提携協議に応じなかったので、敵対的TOBに発展する可能性もある。ユニゾHDは興銀系の企業で、不動産などをたくさん保有している。HISはすでに筆頭株主で、その他は興銀系の企業が多くなっている。借入が5000億円あるが、含み益が2000億円ほどあるため、株価が不当に安くなっていて、村上ファンド的に言えば「狙い目」の案件と言える。HISの澤田会長が、村上ファンド的な判断をしたと思われる。
10.HISが展開している事業の伸び悩みが背景にあると思われる。旅行事業などは値段が上がらずに過当競争に陥っているし、またハウステンボスも一時期の勢いがおさまり、頭打ち状態になっている。こうした状況を打開するために、HISの将来を考えたとき、やらざるを得ないと澤田会長が判断したと思われる。ホテルそのものはインバウンド需要も高く、圧倒的に数も不足しているから、リスクはそれほど高くない。
しかし、敵対的TOBになったとき、残り40%をHISが買い増していけるのかが問題である。すでに値段が跳ね上がっているので、難しいと思われる。



yuji5327 at 06:30 

2019年08月28日

小胞体ストレス応答を適切に制御することができるようになると、病気を治療したり、健康寿命を延ばすことができる。

「森和俊(京都大学大学院理学研究科教授)著:小胞体ストレス応答の仕組みと意義、學士會会報No.937(2019-)」参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.1989年4月の研究開始から31年目を迎えた筆者のライフワークである「小胞体ストレス応答」の解説である。小胞体ストレス応答を別の言い方にすると、タンパク質の品質を管理する細胞応答、もしくは私たちが持っている驚異の復元力である。細胞は生き物の基本単位で、ヒトは60兆個もの細胞でできている。
2.細胞内小器官、細胞の中はどうなっているかは、体内のいろんな臓器の役割分担をしているものである。肺があるから呼吸でき、心臓が血液を循環させている。胃があるから食べ物をどろどろにして、腸から栄養を吸収することができる。同じように、細胞の中にも小さな臓器(細胞内小器官と呼ぶ。動物の器官=臓器)がたくさん入っている。細胞を通常の光学顕微鏡で観察すると内部はとてもシンプルで、核、ミトコンドリア、ゴルジ体しか見えない。
3、子が親に似るのは、DNAを受け継ぐからである。このDNAが収納されているのが核という細胞内小器官である。生き物のエネルギー源はATPという化学物質で、ミトコンドリアという細胞内小器官がATPを作る。DNAとATPがあれば十分ではなく、細胞は生き物の基本単位だから単純ではない。生活をしていればゴミが生じるはずだが、ゴミを細胞が処理する手段は、従来のシンプルな細胞像が第二次世界大戦後に電子顕微鏡が細胞観察に用いられてから分かってきた。
4.細胞内部は実に様々な細胞内小器官で満たされていて、それぞれが役割分担していた。2016年にノーベル生理学医学賞を受賞された大隅良典先生が研究されているのが、リソソームという名の細胞内小器官で、不要になったタンパク質等のゴミ処理の場となっている。筆者が研究している小胞体は、細胞内小器官の一つで、タンパク質の製造工場という役割を果たしている。
5.タンパク質は、食物の成分の一つで、肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品に多く含まれるものと認識している。細胞が何でできているかは分析すればわかり、細胞を構成する成分の7割は水で、残りの3割が何らかの化学物質である。水の次に多いのがタンパク質で、化学物質の半分、全体の15%を占めている。DNAは全体の1%しかない。DNAが遺伝物質であるのに対して、タンパク質は生命活動の担い手といっても過言ではなく、タンパク質が働くから我々は動いたり考えたりできる。そのため細胞は多量のタンパク質を必要とする。タンパク質は、20種類からなるアミノ酸が数珠つながりで並んだ紐の状態で誕生し、DNAにこのアミノ酸の並び方が暗号として書き込まれている。
6、我々は3次元の世界に生きているので、紐状ではタンパク質は働くことができない。タンパク質が働くためには、それぞれの機能に最適な立体構造を形成しなければならない。紐状から最終的な立体構造に至る過程をタンパク質の折り畳みと呼び、英語ではprotein foldingである。紙を折り畳んで鶴などを作る折り紙を英語ではpaper foldingと呼ぶ。
7.品質とはタンパク質の立体構造の出来具合を指す。タンパク質の立体構造の重要性は、糖尿病という病気がの例が分かりやすい。社会の高齢化に伴って、糖が尿にでる病気である。糖尿病が悪化すると失明したり、足が壊死して切断しなければならなくなる。悪さをする糖が尿にでたことがこんな状態をもたらすとは考えにくい。糖が尿にでるのは結果であって原因ではない。血液中の糖濃度(血糖値)が高い状態が持続すると、糖が血管にダメージを与えると同時に尿に漏れ出す。注意すべき点は、病気になったから血糖値が上昇するのではなく、食事後はだれでも血糖値が一時的に上昇することである。しかし一時間もすれば元に戻るのは、膵臓という臓器に蓄えられていたインスリンというホルモンが血中に放出されるからである。
8.インスリンの役割は糖を壊すのではありません。インスリンというタンパク質が肝臓や筋肉の細胞の表面に存在するインスリンを受け容れるタンパク質(インスリン受容体)に結合すると、これらの細胞が血液中の糖を取り込む。その結果、血糖値が正常レベルに戻る。多くの生命現象は鍵と鍵穴の関係で説明される。車の鍵と鍵穴をイメージする方がわかりやすい。インスリンという鍵が、インスリン受容体という鍵穴に入ってぐいっと回すと車(肝臓や筋肉の細胞)のエンジンがかかって糖をせっせと取り込んでくれる。ここで最も大事なことは、鍵と鍵穴は一対一の関係にあることである。同じ車種であっても、他人の車の鍵では自分の車のエンジンをかけることはできない。インスリンとインスリン受容体がそれぞれ正しい形をしているときにのみ両者が結合して、食後に血糖値を下げることができ、私たちは糖尿病にならずに済む。
9.第二次世界大戦後まもなく、アンフィンゼン博士は単純な試験管内の実験結果から、タンパク質はそのアミノ酸の並び方の情報に従って、自発的に立体構造を形成すると結論付け、その学説が認められて、1972年にノーベル化学賞を受賞した。その当時は、DNAにアミノ酸の並び方がきちんと書き込まれていれば、タンパク質が作られ、それが勝手に(エネルギーも使わずに)最終的な立体構造になると考えられていた。
10.アンフィンゼン博士の学説が細胞内でも成立するかの問いかけが、1981年代になってから始まった。その結果、細胞内ではタンパク質濃度が非常に高く、タンパク質が自発的に立体構造を形成することは極めて困難であることがわかった。この問題を解決するために、細胞内には分子シャペロンと呼ばれる特殊なタンパク質が存在していて、タンパク質の立体構造形成を助けていることが明らかになった。シャペロンは専門用語ではなく、細胞の中で誤った立体構造を形成しないように一時的に寄り添うのが分子シャペロンである。
11.インスリンやインスリン受容体のようなタンパク質の折り畳みが行われるのが、小胞体という細胞内小器官で、それぞれのタンパク質が最も働きやすい立体構造に作り上げている。このタンパク質の製造工場はかなり優秀で、よく働くが、時にうまく機能しなくなり、構造異常タンパク質ができてしまうことがある。この状態を小胞体ストレスと呼んでいる。この悪くなった状況を元に戻そうとする復元力が細胞に備わっていることを米国テキサス大学のMary-Jane Gething & Joseph Sambrookというボス2人 が発見した。
12.小胞体ストレスを、元のよい状態に復元させるには、細胞は分子シャペロンが足りないから、いつも以上に不良品のタンパク質ができると考え、分子シャペロンを増やすことがわかった。増量した分子シャペロンが不良品タンパク質を修復し、正常な立体構造へと導く。ボス2人の指導の下、30年前からこの驚異の復元力(小胞体ストレス応答)の仕組みとその意義の解明に取り組んでいる。まず、酵母という単細胞生物を使って、小胞体の中の状況が悪化していることを感知するセンサー分子を世界で初めて発見し、1993年に論文発表した。帰国後この驚異の復元力が働く仕組みの解明に取り組み、酵母の細胞で小胞体ストレス時に分子シャペロンが増える仕組みを解明した。次いで、哺乳動物の細胞で小胞体ストレス時に分子シャペロンが増える仕組みを解明した。
13.受精卵がどんどん分裂していって胎児へと成長していく過程で、小胞体ストレスは生理的に発生しており、生じた構造異常タンパク質を修復している。様々な生命現象や生物進化を裏から支えているのが小胞体ストレス応答である。例えば血糖値の調節では、インスリンやインスリン受容体が主役だが、主役が主役として活躍できるように、立体構造形成を助けることで裏からこの生命現象を支えている。この仕組みが働かないと、糖尿病をはじめとして様々な病気を発症することになる。小胞体ストレス応答を適切に制御することができるようになると、病気を治療したり、健康寿命を延ばすことができる。

yuji5327 at 06:48 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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