環境

2019年11月17日

日本ですらコントロールできない原子力発電は、ごみ収集もちゃんとできないのに管理できるわけない、とイタリア婦人が言った。

「半藤一利、池上彰著:
令和を生きる、幻冬舎、2019.5.30」は面白い。「第3章:原子力政策の大いなる失敗」の印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.非常用電源の、管理の重要性は痛いほど学んだはずだったのに、と思う。「原発は日本人ですらコントロールできない」と他国は学んだが、原発事故から学んだことも、あったにはあった。人びとの節電意識はいまや当たり前のことになった。再生可能エネルギーの施設増強が事故後、加速した。世界的にも新規投資が増え、それにともなって発電量も増えた。平成30年10月13日と14日の土日の2日間、九州では太陽光発電の一時停止、出力制御をした。朝の9時から16時までだが、使用予想電力を大きく超えて供給することになるから、原子力発電はそのまま供給しておいて、太陽光のほうを止めろ、と。
2.電力が増えすぎると供給が不安定になって、大規模停電が起きてしまう。ドイツでは、余剰電力を使って貯蔵できるようにする技術がすでに実用化されている。再生エネルギー発電の割合が急激に増えたことで、電力供給系統が不安定化していた。太陽光や風力などは気象条件しだいという面があるから、供給量が変動する。その調整を火力発霞がやっていたが、採算性の問題や環境負荷の問題などで次つぎと閉鎖された。そのため大規模な商用蓄電池プラントが求められ、ドイツ各地で、実用化がはじまっている。
3.日本の企業も参加している。日本では送電網をもっている電力会社の力が強いので、地域に合った発電・供給を実現する新しい取組みがうまくいかず、いつもギクシャクし、いまだに原子発電にしがみついている。ドイツは、メルケル首相が福島第一原発の大事故を見てエネルギー政策をすぐさま転換した。前の年にメルケルさんは従来の脱原発政策を緩和させて、運転延長の方針を打ち出したばかりだったが、あの事故を契機に原発廃止に明確に舵を切った。
4.「あの日本ですらコントロールできないものは止めるべきだ」と言った。イタリアでも、2011,年の事故後の6月、原子力発電の再開の是非を問う国民投票があって、政府の再開計画が否決されている。反対票を投じたご婦人が、ごみ収集もちゃんとできないイタリア人が、管理できるわけない、と答えていた。
5.当事国である日本の政治家は福島の大災害からまったく学んでいない。逆に、原発輸出に熱心になっている。原発問題は、平成が残した大課題である。事故後、国内の原発再稼働がままならず、ましてや増設もできなくなった。事故で多くのひとが避難生活を送るなか、原発の増設なんかとんでもない、というのが国民の偽らざる気持ちである。
6.あれから8年経つが、再稼働はいま9基である。事故前に54基あった原発は24基が廃炉の方針である。平成30年7月に閣議決定した新しいエネルギー基本計画でも、政府は原発の新増設を容認する、という文言の明記は見送った。政府はエネルギー基本計画で、2030年度までに総電力量に占める原発の割合を20%という目標を掲げている。この数値は30基を稼働させないと達成でないので無理である。
7.昨年末の、インドネシアの火山の噴火と津波のような天災が日本列島のどこかで起きたら、また原発がやられてしまう。日本には火山が山ほどある。いわゆる核のゴミ、使川済核燃料をどうやって最終処分するかという問題もまったく解決の目途がついていない。日本中、そこらじゅうに火山があり、あるいは地下水が豊富にあるから、核のゴミを埋めて超長期に安全に保管できる場所なんかない。
8.候補地を政府が勝手に選定したが、その第一段階の「文献調査」に入った自治体はひとつもない。いまフィンランドでは西部のエウラヨキ島という場所に、世界初の放射性廃棄物の最終処分場、「オンカロ」の建設が進められている。地下400m超のところに2020年から5000t以上もの廃棄物の埋設をはじめるという計画である。岩盤で地下水がまったーないところを選んで掘って、そこに、10万年貯蔵するという。
9.核廃棄物は水分による腐食が怖いので、鉄製の容器に入れた使用済核燃料を分厚い銅の容器に入れて地下坑に運ぶ。さらに地盤の揺れや浸水を防ぐ粘上状の素材で覆って、最終的にはトンネル自体もそういうもので埋める。日本はどこを掘ったって地ド水や温泉がふきだすから、無理ということで、国内にはもう展望なしと見て安倍政権は海外に活路を求めた。海外への原発輸出をアベノミクス、成長戦略の柱に据えた。官邸主導で民間企業の後押しをやった。安倍さんとトルコのエルドアン大統領のトップ会談で三菱重工の受注が決まったのが2013年である。ベノミクスは買いです。BuymyAbenomics!と宣伝したあ、翌年から台湾、ベトナムが、原発計画を凍結ないしは撤回した。
10.2017年に東芝がアメリカ・テキサス州の原発計画から撤退して、三菱もトルコの原発を断念(2018年)。2019年)に入るとすぐ、日立がイギリスでの原発計画を断念した。けっきょく原発輸出はことごとく失敗した。日本の企業が断念せざるを得なくなったのは、安全対策にコストがどんどん膨らんでしまって採算がとれないことがわかったからである。これが成長戦略の柱だったのである。
11.中曽根康弘氏は日本の原子力政策を推進したと自負しているが、原発事故を受けて「原子力の平和利用には失敗もあった」と言っている。「失敗」という言葉を使ったのは、初めて原子力発電研究に予算をつけたからである。1954年に国会に予算案を提出して成立させた。その額は2億3500万円。その金額の理由を問われてウラン235からとったと答えた。当時、中曽根氏は、読売の正力松太郎の参謀みたいな顔をしていた。この5年後には第二次岸信介内閣に科学技術庁長官として入閣し、原子力委員会の委員長になった。



yuji5327 at 06:55 

2019年09月16日

現在の二酸化炭素濃度は400ppmでは、この先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。直面する温暖化を食い止める知恵が求められている。


「木本昌秀(東大教授)著:現在は氷河期のはざまの温暖期 地球気温500万年の歴史、週刊ダイヤモンド、2019.7.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.今年は冷夏気味のようだ。今雨も多めのようである。冷夏気味とはいっても、温暖化も都市化も進む中、晴れた日には猛暑レベルになってもおかしくない。氷河期については、およそ1億年前、恐竜の時代の気候は現在より暖かかった。温室効果を持つ大気中の二酸化炭素が多かったことが主因である。それ以降、大陸移動、造山運動を経て地球はゆっくりと寒冷化してきた。
2.ヒマラヤ山塊の隆起は、大量の雨を伴うモンスーン気候を強化する。モンスーン、すなわち季節によって海から陸、陸から海へと主な風向きが入れ替わる現象は、陸と海の温まりやすさの違いによって生じている。夏には大陸が温まりやすく、海から陸への季節風が大量の水蒸気を運ぶため、大量の降雨を生じる。
3.大陸上の大規模山塊は、上空での昇温を助けることになるため、ヒマラヤの隆起とともにアジアモンスーンは明瞭となった。モンスーン雨域の西側では、雨域の上昇流を補う下降流となって乾燥した気候となる。砂漠と雨域の間に発達した広大な草原は人類の祖先の「出アフリカ」を助けたともいわれる。モンスーンでもたらされた大量の雨は、地表を流れ、激しく土壌を風化・浸食する。このとき、岩石中のケイ酸塩が大気中の二酸化炭素を取り込んで水に流す。このため、大規模山塊の隆起が二酸化炭素の減少、気候の寒冷化をもたらすのである。
4.ヒマラヤの隆起も終わりつつある約550万年前から現在までの地球の気温の推移を推足したものである。ゆっくりとした寒玲化を示している。恐竜の時代は、現在より5℃程度暖かかったことは間違いない。当初は4万年程度の周期が主に見られたが、約100万年前から10万年周期に変わった。われわれは、今からおよそ1万2000年前に始まった問氷期に生きている。南極大陸上に数干メートルもの高さで存在する氷の塊から得られたデータがある。長い年月をかけて形成された氷の塊なので、大昔の情報が得られる。
5.われわれの直接の祖先であるホモサピエンスの出現は今からおよそ20万年前である。氷期は現在より最大8℃程度も寒かったので、北半球にも巨大な氷床が形成された。現在と最後の氷期である約1万8000年前の北半球氷床の様子を数値計算で推定した。グリーンランドには現在も氷床が存在するが、氷期には北米とスカンディナビアにも巨大な氷床が存在した。
6.大気中の二酸化炭素濃度の推定値も重ねてプロットすると両者の変動はよく一致しており、比較的短い間氷期から氷期に向かってゆっくりと気温が下がり、間氷期に戻るときは比較的素早く気温が上昇する。気候が寒冷化してくると1年中0度を超えない地域が広がり、降った雪が融けないため、氷床の成長が促された。太陽光を反射する白い氷の面積拡大は、気温の低下を一層助長し、極端な場合、全球凍結に至ることもあり得る。一方で、太陽光が同じであったとしても、地球上に氷が全くない暖かい状態にもなり得る。このような地球気候の多重性が、氷期と間氷期を行ったり来たりするサイクルの背景にある。
7.実際には、地球の公転軌道、自転軸の傾きや歳差運動によつて入射太陽光の緯度・季節分布が数万〜数十万年スケールで揺らいでおり、氷期-間氷期のサイクルはこれに対する気候システムの応答と考えられている。最初の提唱者の名前を取って、ミランコビッチサイクルと呼ばれている。入射太陽光の揺らぎは、天文学的な計算で正確に見積もることが可能だが、多様な周期性の中から4万年や10万年という特定周期が選ばれるのは、気候システムの特性による。巨大な氷床に沈められた地殻が数万年のスケールで押し戻す効果や、気候変化に伴う海洋の深層循環の役割など、詳しくはまだよく分かっていない。過去の気候を知ることは、現在そして未来の気候をよりよく知ることにもつながる。
8.大気海洋だけでなく氷床のゆっくりした成長もコンピュータで計算し、地質データと比較する研究が可能になってきた。CO2も気温とともに変動していたが、このようなシミュレーションにより、二酸化炭素はこの時間スケールではサイクルの駆動源というよりはサイクルを増幅させる二次的な役割を果たしていることが分かってきた。ところで、地球は現在、間氷期にあるが、この後また氷期に向かうのか、そうならば現在の地球温暖化は心配するに及ばないか、近年の研究によれば、氷期の開始には日射量の変動はもちろんだが、二酸化炭素濃度も大きな制約要因となっていることが分かってきた。人聞の活動によつて、現在の二酸化炭素濃度は400ppmとなっている。このことを考慮すると少なくともこの先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。氷期を生き残ったホモサピエンスだが、5万年以上先のことを考えている場合ではない。直面する温暖化を食い止め、増加する極端気象に対処する知恵が求められている。



yuji5327 at 09:38 

2019年07月29日

長期的な太陽活動の盛衰は地球の気象に影響する。17世紀には、太陽黒点がほとんど現れない時期があったが、その時期に地球は全体として冷えてしまった。


「渡部潤一(自然科学研究機構国立天文台教授)著:圧倒的なエネルギーを放射 母なる恒星『太陽」の素顔 週刊ダイヤモンド、2019.6.22』は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.夏至も近くなり、太陽の威力を感じる季節になった。昨今の異常な暑さは気象学が扱う範疇ではあるが、少なくとも太陽が大本のエネルギー源であることは間違いない。われわれに恵みを与えてくれる母なる恒星だが、毎目のようにお付き合いしているせいか、当たり前過ぎて、気付かないことも多い。今回はそんな太陽の素顔を紹介する。
2.太陽は太陽系の主.。半径が140万kmもあって、地球が107個も並ぶ巨大さである。質量も地球の33万倍。重力は質量に比例するため、その強大な重力で太陽系の惑星たちを引き付けて離さないので、太陽系に属する全ての天体は、太陽の巨大な重力に支配され、ほぼ太陽を中心として、公転している。その影響は重力だけではなく、太陽は太陽系を温めるストーブでもある。圧倒的なエネルギーを放射し、太陽系全体の温度を決めてしまっている。われわれ地球にエネルギーを与える太陽系の恒星である。近ければ暖かく、遠いと寒くなる。地球は程よい距離にある。
3.太陽がエネルギーを出しているのは、20世紀半ばには原子核反応に関する理解が進み、内部で水素が融合して、ヘリウムに変わる核融合反応を起こすことが分かってきた。中心部の温度は1600万度で、密度は水の150倍もある。中心核の核融合で生まれたエネルギーはガンマ線などになって外へ出ようとするが、なかなか外へ出られない。太陽の中心で発生した光も、なかなか外に出られない。次第にエネルギーを失いながら、表面から3分の1ほどの所に来ると、ガスの対流によって徐々に表面に運ばれる。これを対流層と呼ぶ。
4.地球から可視光で見える太陽というのは、対流層の一番上にある表面部分で、ここを光球と呼ぶ。光球にはさまざまな模様があるが、最も小さな粒状斑は、涌きヒがる対流がつくる模様である。粒状斑の直径は約2000kmほどで、寿命はわずか10分程度である。光球からは、再び可視光などでエネルギーが宇宙空間へ放たれる。こうして、われわれに届くが、核融合で生まれてから少なくとも数10万年、一説では数100万年ともいわれている。5.太陽の表面で光り輝いているエネルギーは、少なくともわれわれ人類が文明を築く前に生まれたものである。、太陽表面の光球は一見すると何もない、のっぺらぽうに見えることもあるが、たいていは黒点と呼ばれる、黒い斑点状の模様が見つかる。光球の表面の温度が約5700度なのに対し、黒点は約4500度と相対的に低いため黒く見える。黒点は、人間でいえば新陳代謝が活発な時期ににきびが増えるように、黒点の数は太陽の活動の度合いを示している。約11年ごとの太陽の活動周期に合わせて増減を繰り返す。
6.静かな時期にはほとんど現.れないが、活発になると数が増加するだけではなく、専用フィルターを通せば肉眼でも見える、巨大な黒点が出現することもある。黒点が多い活動期を極大期といい、逆に少ない時期を極小期という。黒点は、太陽の内部にある磁場が、管のようになって浮き上がり、光球表面から飛び出してしまった場所である。一度、磁場に囲まれた管のループが浮き上がってしまうと、太陽の内部のエネルギーがこのルートを通じて外に放出される。トンネルのようなもので、このトンネルは磁場の力で空洞を保とうとする。管の外から電気を帯びたガスが入ることはできないため、浮き上がった管は強い磁場で守られた空洞となり、密度も温度も低くなる。
7.黒点の磁場は数千ガウス(地球の磁場は1ガウス以下〉と極めて強力である。黒点は通常ペアで出現するのも、浮き上がった管の出入口が表面に2カ所あるからである。黒点が太陽の縁に来たときに眺めると、その上に雲が立ちヒっているように見えることがある。これをプロミネンス(紅炎)と呼ぶ。高さは数万〜数十万kmほどで、普通は安定しているが、しばしば爆発現象を起こして吹き飛んでしまうこともる。これを太陽フレアと呼ぶ。
8.活動期に多くなるが、フレアの吹き飛ぶ方向に地球があると、オーロラの出現が活発になって喜ばれるのだが、 一方で電離網に暫が乱れて通信障害が起こったり、地上の電力網に誘導電流が流れて、深刻な被害を及ぼす。実際、1989年3月にはカナダのケベック州を中心に誘導電流により変竃所が故障して、600万世帯が停電する事態が生.じた。こうした被害を食い止めるため、フレア発生を監視・予測する宇宙天気予報の研究も進められている。
9.一方、長期的な太陽活動の盛衰は地球の気象に影響するといわれている。17世紀には、マウンダー極小期と呼ばれる、太陽黒点がほとんど現れない時期があったが、その時期に地球は全体として冷えてしまったとされている。太陽が静かになると、太陽系全体を取り囲む磁気圏が縮み、太陽系の外からやって来る宇宙線が増え、地球大気中で雲を生み出し、太陽光を反射してしまうからだというスベンスマルク説というのが有力だが、まだ賛.否両論あって、よく分かっていない。現在、太陽はかなり静かになりつつあるといわれており、17世紀のような寒冷気候が再びやって来るのではないかという予測もある。いずれにしろ、太陽活動は人類に多大な影響を及ぼすことは間違いない。


yuji5327 at 06:41 

2019年06月13日

イチロー選手が、「自分のバッティングに影響するため、下手な人のバッティングは見たくない」と言った。自身の動作に影響を受ける。

「藤田一郎(大阪大学教授):ヒトや動物が生まれつき持つ光の点から動きを検出する力、週刊ダイヤモンド、 2019.5.11」は面白い、概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.面接などにおいて相手の顔を見て話すことは重要であるとよくいわれる。目と目のコンタクトをしっかり取ることが有能さや誠実さといった好印象を与えるからである。これに加えて、あまり語られることのない注点がもう一つある。
2.私たちは、思っている以上に他者の動作に敏感である。他者の振る舞いのほんのわずかな変化を見ることで相手の意図や感情を読み取り、自分の次の行動や相手とのコミュニケーションに役立てている。これは.時に無意識のうちになされる。
3.ヒトがこのような能力を持つことは、グナール・ヨハンソン博士初めて示した。彼は、主要な関節に豆電球を取り付けた人物に暗闇の中でさまざまな動作をしてもらい動画を撮影した。この動画は、黒の背景に十数個のドットが動いているだけだが、それを見ると人物の動作がビビッドに感じられる。歩いているのか、走っているのか、ダンスをしているのかがはっきりと分かる。
4.ほんの十数個のドットの中に動作に関する情報が含まれている。その情報は想像以上にリッチである。私たちは、このような動画から動作の種類だけではなく、人物がどちらに向かって歩いているか、自分なのか他者なのか、男性か女性かが分かり、場合によっては感情まで読み取ることができる。この能力は「バイオロジカルモーション知覚」と呼ばれる。
5.十数個のドットから成るこの刺激は容易にかつ厳密に操作ができるという利点があり、それを利用して魅力的に見える動作はどのようなものかも研究されている。得られた結論の一つは、「速く歩く人は魅力的に見える」ということである。面接の話に戻ると、面接者が志願者から受ける印象は、志願者が人室して着席するまでの間にすでに形成され始めていることを意味している。のろのろ、もたもた歩くよりも、すたすたと席まで歩くことが大事である。
6、バイオロジカルモーションを示す刺激には、ドット集団が織り成す形の変化と、ドットの動きそのものの二つの要索が含まれている。これらの情報は、運動前野、側頭葉上部、縁上回など大脳皮質の複数の場所が処理.している。加えて、間脳の一部である視床でも処理されていることが、香港大学のドリータ・チャン教授、脳情報通信融合研究センターの番浩志研究.員らの最近の研究により明らかになってきた。
7.バイオロジカルモーション刺激が持つ動きの要素のうちでも特に大事なのは、ドットとドットの間の相対的な関係である。例えば、腕を振って歩いているとき、手首の関節は肘の関節に対して振り子運動をしている。私たちの視覚系はこのような相対運動を検出している。相対運動を検出する仕組みは、他者の動作を読み取るときだけではなく、他の物体の動きの知覚にも使われている。その良い例は、自転車の車輪に貼った小さなシールが回って動いて見えることだ。実際にはシールはサイクロイドと呼ばれる軌道に沿って動いている。
8.サイクロイド軌道は、平行移動〔自転車の進行方向への移動)と回転運動(車輪の回転方向の移動〕の組み合わせで生.じている。シールは空問の中ではサイクロイド軌道に沿って動くが、平輪中央のハブに対してはその周辺を回る回転運動をしている。脳は、後者の運動すなわちシールのハブに対する相対運動を計算しているのだ。
9.バイオロジカルモーション知覚は、ヒトだけでなく、サルやネコやハトも持っている。ジョルジオ・ヴァロルティガーラ博上は暗室で育てたひよこに、親烏が歩く様子を示す刺激と対照刺激(ドットの位置をスクランブルした刺激Vを見せて、どちらに歩み寄るかを調べた。ひよこはこのテストを行うまで視覚経験がないにもかかわらず、前者の刺激を示す映像の方へ近づいていった。
10.同様に、生まれて2日目のヒトの赤ちゃんがバイオロジカルモーション知覚を持つ.ことも実験的に確かめられている。ヒトでもニワトリでも.バイオロジカルモーション知覚は生まれつき備わっている。
11.他者の動作を知覚し現解する能力は、学習や経験の影響を受ける。スポーツやダンスの経験者は、自分の専門種目の動作に人並み外れた鋭い感受性を持つ。自身の経験によって、他者の動作の観察が精密になる。また、その逆に他者の動作を感じることが自身の動作に影響を及ぼすこともある。
12.池上剛博士とゴウリシャンカー・ガネッシュ博上は、ダーツのエキスパートに素人がダーツをしている映像を見せ、標的のどこに命中するかを予測してもらった。予測のたびに正解を伝えると、エキスパートはやがて素人のパフォーマンスを正確に予測できるようになる。驚くべきことは、そのようになったとき、エキスパート本人のダーツの命中率が落ちてしまう。ところが同じような映像を見せながら、予測が合っていたかどうかの正解を伝えないという実験を行うと、エキスパートは素人のパフォーマンスを予測することができるようにならず、自身のダーツの成績は高いレベルが保たれていた。
13.つまり、最初の実験でエキスパート自身の命中率が下がってしまつたのは、素人の下手な動作を見たこと自体が原因ではない。そのことが原因であるならば、2番目の実験でも自身のダーツの成績は下がるはずだからである。この実験結果は、他者の動作の結果を予測する仕組みと、自分の動作の結果を予測し、動作を正しく実現する仕組みが脳の中で共有されていることを示唆している。
14.かつて、ある新聞記事の中で野球のイチロー選手が、「自分のバッティングに影響するため、下手な人のバッティングは見たくない」と語っていた。他者の動作を見て、どういうスイングをすると打球はどのように飛ぶかを真剣に検討する選手ほど、自身の運動の予測シミユレーション、動作の実行が影響を受けてしまうのである。イチロー選手はそのことを実感していたのか興味ある。



yuji5327 at 06:48 

2019年05月15日

都市の昇温についてはよく知られているが、都市化によって乾燥化も起こっている。都市化率が大きいほど相対湿度が小さくなる。


「木本昌秀(東京大学教授)著:気温が上がり乾燥化する都会、都市化と気象のメカニズム、週刊ダイヤモンド、2019.04.13」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.キャンパスのある干葉県柏市は、東京から北東へ30kmほど、40万を超える人口を抱える都会のはずだが、公園を隣に控えるのどかなキャンパス環境のせいもあって、東京から来る柏は寒いという感想を言う客は少なくない。寒い冬の朝にはしばしば池に氷が張る。これから陽気がよくなって日中の最高気温が25℃を超える「夏日」が増えてくると、都市と郊外の気温差「ヒートアイランド」も話題になることが多くなる。
2.昨年のデータだが、墓兄・北の丸と柏に一番近いアメダス自動観測点である千葉県我孫子市の気温を比べてみたら、日中の最高気温もさることながら、夜間から朝方の気温差が大きい。
3.ヒートアイランドという用語は、都市部が周囲より暖かく、気温の等値線が島のような形になることからきている。都市化の昇温効果の数値シミュレーション結果の現象は大都市の英ロンドンでは1世紀にすでに知られていた。
4.ヒートアイランドは、土や植生など保水性のよい自然の陸面環境がアスファルトやコンクリートなどの人工被覆に代わることで.地面と直上の空気が暖まりやすくなること、そして、人間活動に伴う人工排熱が直接空気を暖めることで起こる。人工排熱の大きさを、地.面から大気への熱の流れで測ると、最大で真夏の日中の日射景の10%にも及ぶ。
5.ヒートアイランド現象を詳細に調べると、都市と周囲の気温差は、日中より夜間のほうが大である。日中は暖められた地表近くの空気が軽くなって上昇し、上空の少し冷たい空気とよく混合するが、地而からの放射冷却で地表の気温が下がる夜聞には、上空の大気との密度の差が小さくなり、上空との混合が抑えられる。季節的にも、上空との混合が大きい夏よりも冬の方が、都市と郊外の気温差は大きい。
6.ここでいう「上空」とは高度1km程度までを指しており、「大気境界層」とか「混合層」と呼ばれている。欧米では、夏の猛暑時に「アーバン・ヒート・ドーム」という言葉が使われることがある。広範囲を覆う高気圧の下降気流が都市部を覆う熱盆を低い高度に保ち、晴れることで日射量も増えて都市に猛暑をもたらすイメージをよく表している。
7.世界有数の大都市、東京では近年100年間に平均気温が約3℃上昇している。この3.分の2は都市化の影響とみられる。同じ気温上昇率を、日本の都市化影響の小さい観測所および都市化影響のない日本近海で調べると、両者とも約1℃で、これは温室効果気体の増加に起因する地球全体の温暖化を示していると考えられる。
8.人工排熱やビルからの照り返しによって暑い目に遭う都会人には深刻だが、都市化の効果は、都市胴辺、高度最大1km(大気全質量の約1割)、そして晴れて風の穏やかな日でないと顕著に現れないので、地球全体の温暖化への寄与は限定的である。
9.昨年夏は記録的な猛暑で、7月23日には埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41・1℃を記録したが、数値シミュレーション等を参照すると、熊谷では都市化の効果は大きくなく、他の高温記録を見ても、気圧配置や気流等の自然変動が人きな原因で、これに地球温暖化によるかさ上げが加わって記録.史新が頻繁になっていると考えるべきである。
10.都市の昇温についてはよく知られているが、最近の調査によると、都市化によって乾燥化も起こっている。都市化率が大きいほど相対湿度が小さくなる傾向がある。気温の上昇に伴って空気中に含み得る最大の水蒸気量は増加するが、人工被覆の広がりや植生面積の減少等により、実際に空気に含まれる水蒸気の量にそれに見合うだけの増加がないため、相対湿度が下がっている。
11.劇的なのは、大.都市化での.霧日数の減少である。データをさかのぽると、東京では1930年代には年間40日程度霧が観測されていたが、近年は激減し、2007年以降の霧日数はわずかに3日である。札幌、名古屋、大.阪、福岡等、他の大都市にも類似の傾向が見られる。霧は、地面に達した雲、すなわち水蒸気が飽和して凝結した小さな水の粒でできている。気温の上昇と乾燥化によって.大都市では霧を観測することがまれになっている。
12.08年.夏以来、いわゆる「ゲリラ豪雨」という言葉がよく使われる。この年の7月28日には、兵庫県内の都賀川の親水公園で鉄砲水によって子供を含む5人の命が失われ、続く8月5日には東京都豊島.区で局地的な豪雨による増水によって下水道工事の作業員5人が亡くなった。
13.増水や冠水など都市部で被害が大きいこともあり、都市化の効果、すなわち昇温やそれに伴う気流の収来、上昇気流の強化等が局地的な豪雨の増加傾向に拍車をかけているのではないかと推察したくなるが、そもそも頻度の低い現象なので、学術的な証明はまだできていない。
14.近年、シミユレーションの精緻化によって、気温だけでなく局地的な豪雨の増強への都市影響も評価できるようになりつつある。緑化や保水性舗装、ドライミストなど、都市の暑さ対策も進んできているが、地下街の多い都市部では豪雨にも一層の注意が必要である。

yuji5327 at 06:20 

2019年03月15日

遺伝子組み換え作物は一般的に、サイズが大きく、味がよく、害虫に強くなるように改良されている。さらに作付面積当たりの収穫量も高く、農地開拓を低減できるため地球にも優しい。


「池谷裕二著:闘論席、エコノミスト、2019.3.12」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.‥纏劼聾胸劼茲蠑さい、大気中の酸素は植物から来る、E形灰肇泪箸砲楼篥岨劼呂覆い、遺伝子組み換えトマトには遺伝子がある、こうした科学の正誤問題への回答から、その人の科学リテラシーがわかる。その上で「あなたは遺伝子組み換え作物に賛成か」ときくと、科学知識に乏しい人ほど反対する傾向がある。これは米コロラド大学のファーンバック博士らが、米国、ドイツ、フランスで行った調査結果である。
2.同調査ではさらに「科学リテラシーが低い人ほど自分の科学知識に自信がある」ことも示された。別の米国での調査によれば、科学者の88%は「遺伝子組み換え作物は健康に害がなく食してもよい」と返答するが、一般人では37%しか肯定的に答えない。
3.遺伝子組み換え作物は一般的に、サイズが大きく、味がよく、害虫に強くなるように改良されている。さらに作付面積当たりの収穫量も高く、農地開拓を低減できるため地球にも優しい。「ならば遠慮なく遺伝子組み換え作物を導入せよ」と主張するのは短絡的だ。なぜなら科学的な正しさと社会的な正しさは異なるからである。例えば「テレビを近くで見ると目が悪くなる」に科学的根拠はない。しかし近くで見て良いわけではない。世間には「目が悪くなる」という説がまかり通っており、この通念に背けば、周囲から注意されたり、人々を不快にさせたりと、自身にとっても周囲にとってもマイナス要素が大きい。
4.「テレビを離れて見る」ことは「夜に爪を切らない」「北枕で寝ない」と同じように、いわば社会マナーであり、科学的な正否とは別の問題である。遺伝子組み換え作物についても、同種の社会的制約が通底していることを、先の調査論文を読んで痛感した。


yuji5327 at 06:40 

2019年02月27日

気象予報士制度ができた1993年以降、年間売り上げは300億円前後で停滞。気象データの経済効果は年間1800億円と見積もられ、開拓の余地がある。


「木本昌秀(東京大学大気海洋研究所・教授)著:先に行くほど不確実な気象予測、ビジネス活用の伸びしろと注意、週刊ダイヤモンド、2019.2.23.」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.気象に関わって40年、この間天気予報の精度は着実に上がってきた。特に、2009年からは台風の進路予報が5日先まで延ばされ、「南海上で迷走中の台風は来週○曜日ごろに首都圏を襲う見込み」のような予報を利用できるようになったのは大変ありがたい。
2.気象予測が可能なのは、古典力学に従って気象現象が生じているからである。ニュートンの運動方程式は、物体の加速度(=速度の時問変化率)が物体に作用する力に比例することを述べているが、これは現時刻の力(と速度)が分かっていれば、次の時刻の速度が分かることを意味する。天気予報は、この原理を地球上の空気(=1大気)に当てはめて、現在の気象状況から将来の空気の動き(=1風)や温度の変化を高速コンピュータで計算して行われている。
3.予測の対象となる大気は、流体(連続体)なので、現在の状況はなるべく空間的に細かく把握しておかないと計算がうまくいかない。これが原理的には簡単でも実践が難しいゆえんの一つだ。そこで現在では有人の観測所はもちろん、人工衛星からのリモートセンシングも多数活用して、地球大気の状況を、天気予報に支障のない程度には細かく把握できる体制になっている。
4.ゲリラ豪雨のような時空問的に細かい現象の予報が難しいのは、そもそも実況が観測で把握できていないからである。実際、最新レーダーのデータを使ってスーパーコンピユータで計算すれば、急速に発達する局地豪雨の予測も不可能ではない。観測もさることながら、積乱雲の中での乱流の様子や、さまざまな大きさの雲や雨、あられ粒子の衝突、成長といった、陽に計算できないが、その効果は考慮する必要のある細かい現象の実態が科学的によく分かっていない、という事情もある。連続体なので、どこまで計算メッシュを細かくしてもそれより細かい現象は存在し、その効果を考慮する必要が出てくる。
5.これらの課題を克服すべく開発や研究が続けられているのだが、実際の予報を使うに当たっては、多くのユーザーが求めるピンポイ,ント情報と粗い計算メッシュの間のミスマッチに如凡て、「先に行けば行くほど予測が不確実になる」ことに留意せねばならない。初期値が誤差分だけわずかに異なる多数の「アンサンブル予報」で台風の進路予報が広がる。初期誤差が成長するため、ある町のある"の天気予報は2週問までが限界である。それでもその先の長期予報が発表されているのは、週や月、ある稚度以上の広さで平均した「天候」の傾向なら、つまり予測対象を限定すれば、ゆつくりと変化する海水温の影響などを考慮して、ある程度有用な予測ができるからである。
6.天気予報の精度が十分かといえば、決してそうではないが、同時に、ある程度の精度に達し、データも格段に容易に手に入るようになった現在、特にビジネス界における気象データ活用については相当に伸びしろがあるように思う。農業や交通、損害保険といった分野で気象の影響が大きいことは分かるが、小売りやサービス業でも売り上げや売れ筋商品の変化などに気象は大.きく影響するという。
7.全国清涼飲料連合会の協力を得た気象庁の調査によると、平均気温22℃以上では屋外自動販売機のホットのコーヒー飲料等の販売数はほぽゼロで、気温の低下に伴い急激に増加する。自販機をコールドからホットに切り替えるタイミングを決めるのに、2週間先までの気温予報を使うか使わないかで、売り上げに1台当たり100本程度の差が生じる。同様の気象影響は、アパレルや家電、コンビニでも確認される。
8.さまざまな業界でこのような気象データの利用は進んでいるものと思うが、気象予報士制度ができた1993年以降の20年ほどで見ると、民間気象事業者の年間売り上げは300億円前後で停滞している。その一方で、気象データによる需要予測の経済効果は年間1800億円と見積もられると、まだまだ開拓の余地がある。膨大な数値予報や衛星.データと、他のビッグデータとを掛け合わせれば大きな可能性を生む。
9.気象データのビジネス利用を考える際に、幾つかの課題に思い当たる。ほとんどのビジネスは気象だけに影響されるわけではない。判断の一助にしたいとは思っても、何をどう調べたらよいのか分からない。気象コンサルティングも、多様なデータから相関関係を抽出してくれるAI等の利用も有用である。気象に詳しくなくてもPOS〔販売時点情報管理)などの自社システムに気象情報を警入れることができるシステムにも需要がある。
10.数値天気予報や衛星など、気象のデータ量は半端ではない。本格利用には過去のデータも必要になる。緊縮財政の役所がユーザーに十分親切な大容量データサービスを用意できないのが問題である。特に予測データの場合、不確実性の収り扱いに注意が必要である。気象庁は今年6月をめどに2週問先までの気温予測を毎日発表する予定だが、誤差情報も加味した発表となる。
11.東京の90日先までの毎日の天気予報を掲載するウェプサイトもあるが、3カ月先を明日や明後日と同じように予測することは原理的にも無理である。何もかも気象庁が作成し、保証した形式でしか手に入らないでは、ビジネスチャンスを逃すことにもなる。人命に関わる防災情報は官の管理が必要だが、差し支えない部分は民に開放して可能性を広げるべきである。



yuji5327 at 06:26 

2018年11月08日

エルニーニョの予測自体もまだ十.分とはいえない.。エルニーニョが起こってもその影響がどの程度現れるかについてはもっと不確実である。


「木本昌秀(東大海洋研究所教授)著:気象、この秋にもエルニーニョ発生か、暖冬なら太平洋側も大雪に注意、週刊ダイヤモンド 2018.11.03」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2018年夏は、7月上旬、西日本を中心に220人以上の命を奪った「平成30年7月豪雨」、続いてそれ以上の熱中症死者を出したと見込まれる猛暑、そして毎秒50mに及ぶ強風と高潮で関西国際空港に浸水をもたらした台風21号、さらには同等の記録的な強風を束日本にももたらした台風24号と気象災害が相次いだ。猛暑や豪雨、台風といった極端気象は、地球温暖化の進行とともに頻度や燈度が増す傾向が加速すると予想される。これまで以上に常日頃からの心構えが必要である
2.メディアでも何度か取り上げているが、この冬には再びエルニーニョ発.生の予測がされている。気象庁の最新情報によれば秋の間にも70%の確率でエルニーニョ発.生が予測されている。ニーニョはスペイン語で男の子、定冠詞エルが付いて神の子=キリストの意で、東部赤道太平洋の海面水温が高くなって半年ないし1年以上続く現象のことをいう。エルニーニョと反対に海面水温が普段より低くなるラニーニャ(女の子)現象と数年程度の不規則な周期で繰り返すことが知られている。
3.気温が高いほど空気中の水分は多くなるので、暖かい熱帯の海水温異常は上空の雲の位置や量を大きく変える。そして、雲の大集団に伴う上昇気流は数万キロメートル以上にわたる広範囲の大気の流れを変え、世界各地に天候異常をもたらす。
4.エルニーニョは、古くから南米沿岸のペルーやエクアドルの漁師にはよく知られていた。毎年クリスマスのころに海水温が上がって漁が休みになるので親しみを込めて神の子と呼んでいた。20世紀になっていろいろと調べてゆくうちに、南米沿岸に限られる毎年の季節変化よりずっと広範囲にわたった数年規模の変動があることが分かり、気象庁では後者を区別して「エルニーニョ現象」と呼ぶ。
5.エルニーニョ現象が大気海洋柑互作用のたまものであることに最初に気付いたのは米国カリフォルニア大学のビャークネス教授で、1960年代のことである。赤道東部で海水温が上がると、普段は海水温の高い西太平洋にあ,る雲の集団が大きく東へ移動し、これに吹き込む海上の貿易風が弱まる。普段の東太平洋では、東から西へ向かう貿易風が赤道上にも束から西への海流を引き起こし、これを補うために冷たい海水が下層から湧いている(赤道湧昇という)ので西太平洋より低温になつているが、貿易風の弱まりによって湧昇が緩和され、海水温が上がる。そして上がった水温が一層貿易風を弱めて……という具合に大気と海拝の間で自己増強作用が働くためにエルニーニョが発達する。
6.大気や海洋が地図をあたかも知っているかのように赤道に沿って湧昇やエルニーニョ現象が起こるのは.地球の自転が赤道を挟んで南と北で反対向きになっているせいである〔地面に立っている人にとって北半球では反時計回り、南半球では時計回り)。貿易風が厳
密に東から西に吹いていたとしても、引きずられる海水の運動は、赤道から少し離れた北半球で北向き、南半球では南向きの、赤道から離れる向きの海流を生じるため、これを補う下層からの湧昇が起こるの。
7.エルニーニョとラニーニャの間の周期性についても、重くて慣性の大きい海水の運動が貿易風の変化に遅れて起こるためであることが分かってきた。
8.仕組みが分かってきたとはいえ、実際の赤道大気海洋の観測データが手に入らないと予測は行えない。83年、嵐によって米国サンタモニカの桟橋が流されてしまったが、当時起こっていたエルニーニョとの関連に気付く関係者はいなかった。この反省から国際研究計画が立てられ、赤道海洋を規則的に覆う自動観測網が設置された。海底に係留されたこれらのブイが時々刻々気象海洋データを届けてくれるので、コンピュータモデルによる予測が90年代から可能になった。
9.今では半年くらい先のエルニーニョ予測ならけっこう目信がある、と業界の誰もが思っていた。ところが、14年には久しぶりのエルニーニョ発生が予測されていたにもかかわらず翌年にずれ、肩透かしを食った。赤道海洋の水温の様子を見ると、前回のエルニーニョ、ラニーニャ時の水温の高低は明瞭だが、本稿の執筆時点では監視領域の水温上昇はまだはっきりしない。
10.このように、エルニーニョの予測自体もまだ十.分とはいえないが、仮にエルニーニョが起こったとしてもその影響がどこにどの程度現れるかについてはもっと不確実性が大.きい。世界各地の天候の変動はエルニーニョだけが原因で生じるわけではないためである。
11.日本についてはエルニーニョ年の冬は暖冬傾向になることが知られている。今年の春以来、地球全体で中緯度の気温が高い状態が続いていることもあり、気象庁の寒候期予報も暖冬傾向と言っている。厳しい寒さよりは、暖冬傾阿の方が歓迎されるのではないかと思うが、関東地方など太平洋側では暖冬年には大鴬が多いので注意が必要である。普段雪の少ない首都圏などではたった5cmの積雪でも交通機関への影響が大きく、慣れない都会の人たちは転んでけがをする人が続出する。
12.14年2月には甲府市の国道でたくさんの車が大雪のため立ち往生した。暖冬時には、冬型の気圧.配置が緩むことで、北の寒気と南の暖湿気塊の間の前線が日本の南岸付近まで上がることが多く、台湾や東シナ海から急速に発達しながら日本の南海上を東に抜ける「南岸低気圧.」が太平洋側に大雪をもたらす。
13.南岸低気圧は、勘と経験がものを言った天気予報の時代には、「低気圧中心が八丈島の北を通れば雨、南なら雪と習った。低気圧.が南にある方が関東地方の上空の気温は低いからである。今はコンピューダ予測がそうした機微も表現してくれる。直近の気象情報に注意が必要である。


yuji5327 at 06:44 

2018年10月11日

既存の省庁や内閣府では実行困難な、国家規模かつ長期の施策を一元的に実行する組織がこの国には不可欠である。


「巽好幸(神戸大学海洋底探責センタ一教授・センター長)著:地震と豪雨による複合災害、北海道胆振東部地震の教訓、週刊ダイヤモンド、2018.10.13」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.大阪府北部地震に続き、北海道胆振東部地.震が発生した。マグニチュード6・7、.震源の深さ約37kmのこの直下型地震は、北海道で初めて震度7を記録した。なぜこれほどの大地震が北海道内陸部で起き、士砂崩れが多数発生したのか?、まず指摘しておきたいのが、熊本地震や大阪府北部地震と同様、「地震が少ない北海道でこんなことが起こるなんて…」という声が報道機関でも流れていたことである。
2.北海道胆振地方は、ここ数年に限っても2014年と17年に震度5弱の地.震が起きた「地
震多発域」である。過去の地震の被害が大きくなかったために、人々は勘違いしていたようである。
3.今回の地震は.東日本大震災のような「海溝型」ではなく、プレート境界(海溝)から離れた内陸域で発生した直下型地震である。東北地方の直下型地震の例を挙げると、08年に最大震度6強を記録した岩手、宮城内陸地.震、1894年に死者726人を出した庄内地.震などがある。これらの内陸地震は、プレート運動によって圧縮された地盤が破壊されることで発生し、「逆断層」が生じる。胆振東部地震も圧縮による逆断層型の内陸地震なのだが、東北地方とは圧.縮のメカニズムが少々異なる.
4.太平洋プレートは日本海溝に対してはほぼ真っすぐに、千島海溝ではやや斜めに沈み込む。その結果、北海道中東部の太平洋側では、地盤が西向きに引きずられるように動いている。
5.小さなプレートのように挙動するこのような細長い地盤は「スリバー」と呼ばれる。この「千島スリバー」が西進すると、胆振地方ではスリバーとその西側の地盤が衝突し、ほぼ東西方向の圧縮が生じる。こうして逆断層タイプの内陸地震が発生した。
6.今回の地震では、土砂崩れが甚大な被害を引き起こした。発生前日の台風21号による豪雨が、斜面崩壊の呼び水となった。ここで注目すべきは、地質の特徴である。付近に樽前山や恵庭岳など活火山が密集し、火山灰や軽石が厚く堆積していた。この火山性堆積物が雨水で緩み、表贋部2〜4mが地震の揺れで崩壊した。
7.火山灰層の表層滑りと豪雨の関連は、火山灰層そのものは水はけが良いため、大量の水を蓄えて地層が緩み、崩壊することは考えにくい。典型的な火山灰地層の表層には、地表付近の植物が腐食してできた「黒ボク」や「赤ボク」と呼ばれる土壌があり、その下に火山灰層や軽石層が存在する。
8.これらの屡は水を通しやすく、雨水は地下へ染み込んでいくが、その過程でマグマが急冷されてできたガラスからケイ素を溶かし出す。こうして浸透する水は深くなるほどケイ素に富むようになり、今度はガラスと反応してハロイサイトという粘土鉱物を形成する。今回の場合.この反応は深さ3屑前後で起こっていたようである。不透水性の「ハロイサイト層」は水がたまりやすく、しかも粘土鉱物なので滑りやすい。地震による強い、揺れで、ハロイサイト層が滑り面となり、土砂崩れが多発したと考えられる。だから今回の土砂崩れは、まさに豪雨と地震の複合災害といえる。
9.火山大国日本では火山灰層は広く分布し、ハロイサイト層が形成されている揚所も多い。熊本地震の大規模な土砂崩れも、阿蘇山でできたハロイサイト層の存在が原因の一つに挙げられている。
10.最近の日本は「数十年に1度の大雨」が頻発している。今回の北海道の悲劇〔火山灰土壌の地震と豪雨による複合災害)は、今後、わが国では想定内の災害となる。
11.日本列島は降水量が多く、台風の影響も受けやすい。さらにこの地球上で最も地震と火山が密集する「災害大国」である。実際にわが国は例年、インドや米国、インドネシア、中国などと共に、自然災害発生国ランキングの上位常連国であり、災害被害額は、東日本大震災以前でも世界の総被害額の約1割を占めている。
12.この災害大国では「未曽有の災害」が将来必ず起きる。以下の4つの根拠がある。
/邑・機能が集中する地域を襲う首都直下地.震、南海トラフ巨大地震は今後30年に80%程度の確率で発生する。大阪府北部地震のように、直下型地震を引き起こす未知の活断層が多数存在する。C狼絏甲伐修砲茲蝓∈8紊旅覬・水害は巨大化、多発する、い海旅颪鮠播擇伐修后峙霏腑ルデラ噴火」は、今後100年に約1%の確率で発生する。こうした
災害のリスク評価には、「危険度」(想定死亡者数×年間発生確率)が参考になる。平均すると毎年どれくらいの犠牲者が出るかを示すものである。
13.古代より日本人は、頻発する災霧に対して自然と対峙するのではなく、災害を受け入れて諦める生き方を選んできた。災害のことは早く忘れて、明日の生活を立て直すこと〔復興)に重きを置いてきた。中世には、「はかなきもの」に美を感じる無常観を身に付けた。なかなか災害に備えることは難しくなる。
14.過去とは比べものにならないほど人口が都市に集中する現代の日本では、これまで通りの対応で難儀な状況を乗り越えることができないのは明瞭だろう。災害大国の民の安心・安全を守るための策として期待したいのが、「災害省」の設置である。災害後の対策に加えて、豊かな自然からの恩恵と引き換えに当然受けるべき試練の原因を科学的に解明するための観測や研究.、低頻度の大規模災害にも対処できるような長期的視点での減災対策、さらには災害大国にふさわしい倫理観の模索と教育など、取り組むべき課題は山積している。
15.既存の省庁や内閣府では実行困難な、国家規模かつ長期の施策を一元的に実行する組織がこの国には不可欠である。


yuji5327 at 06:46 

2018年09月25日

0.3个魏鴫鵑詒細なマイクロプラスチックを採集し、軽量する手法は未だ確立していない。私たちは、浮遊マイクロプラスチックの総量を、正確に定量する方法を持っていない。

「磯辺篤彦著者:浮遊マイクロプラスチックによる海洋汚染の現状と研究の最前線、學士會会報No.932(2018-V)」は参考になる。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
1.わが国周辺海域では、2014年から現在まで東京海洋大学の練習船2隻が、海面下1m程度の表層に浮遊するマイクロプラスチックの現存量調査を実施している。この調査は、2017年から、北海道大学、長崎大学、そして鹿児島大学も参加して5隻体制に拡充された。世界でも、これだけの規模で組織だった観測を継続している例はなく、わが国は海洋プラスチック汚染研究で疑いなく先進的である。環境省環境研究総合推進費の助成(研究代表は筆者)を受けて、著者たちの研究グループは、南極海に浮遊するマイクロプラスチックを世界で初めて報告した。
2.これらの調査結果によれば、日本近海の東アジア海域は、浮遊マイクロプラスチックのホット・スポットである。海面近くの海水1m^3当たりに浮遊するマイクロプラスチックの個数(以降、浮遊密度)は平均で3.7個を数え、この値は他海域と比べて一桁高い。海表面1平方凖たりの浮遊個数に換算しても、世界の海洋における平均値の27倍である。南極海における浮遊密度は、東アジア海域に比べて2桁は低かった。それでも、生活圏から最も遠い南極海で浮遊が確認された事実は、プラスチック片が浮遊しない海など、すでに世界には存在しないことを示峻する。
3.実際に、太平洋や大西洋、あるいはインド洋の中央であろうと、浮遊するマイクロプラスチックが発見されている。なお、材質のほとんどは、海水よりも比重の小さなポリエチレンやポリプロピレンであった。
4.自然に分解しづらいプラスチックであれば、投棄プラスチックの海洋流出が続く限り、地球に蓄積するマイクロプラスチックが今後も増え続けることは疑いない。しかし、私たちは、マイクロプラスチックが地球の何処を循環し、何処に滞留するのか、未だ明快に答えることができない。
5.ほとんどの研究者は、船で水平方向に網を曳いて、海面近くを浮遊するマイクロプラスチックを採取している。網の目合いは、動物プランクトン観測に準拠して0.3伉度であることが多いため、目合いを下回る大きさの微細片は網をくぐり抜けてしまう。破砕を繰り返すたびに等比級数的に数を増やすマイクロプラスチックは、実のところ、私たちの観測量をはるかに超えた数で浮遊している可能性がある。
6.0.3个魏鴫鵑詒細なマイクロプラスチックを採集し、軽量する手法は未だ確立していない。私たちは、浮遊マイクロプラスチックの総量を、正確に定量する方法を持っていない。自然には分解しづらいプラスチックであるが、一方、浮遊マイクロプラスチックが海面近くから消えてしまう事実も、最近になって多くの研究が指摘している。
7.海洋を漂ううち、生物が表面に付着することで重くなったマイクロプラスチックは、次第に海底に向かって沈降を始めるらしい。あるいは、海洋生物が摂食したのち、一部は糞や死骸に混じって沈降する。高緯度では海氷への取り込みがある。砂浜海岸での吸収も無視できない。これら海而近くからの移行について、優先的な経路の特定や、移行速度の定量化などは、今後に残された研究課題である。
8.浮遊密度の将来予測には、微細片化や移行過程を包括する海洋プラスチック循環の解明が必須である。新規な海洋汚染物質のプラスチックについては未解明で、本年度より研究プロジェクトが始まった。



yuji5327 at 06:45 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





地域別アクセス

ジオターゲティング

ジオターゲティング
livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード