環境

2020年03月27日

中国の国家衛生健康委員会、新型肺炎、武漢市感染者の急増が止まる。湖北省全体、それ以外の地域は好転。


「金子秀敏(毎日新聞客員編集員)著:中国視窓、経済回復焦る習氏の「賭け」 新型肺炎対策緩和の吉凶 週刊エコノミスト 2020.3.24」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.中国の国家衛生健康委員会中(衛健委)は3月2日の記者会見で新型肺炎の感染状況について「(発生地の湖北省V武漢市では感染者の急増が止まり、武漢市を除く湖北省全体でも局部的急増が止まり、それ以外の地域の感染状況は好転している」と楽観的な見解を発表した。
2.一方、李克強首相は自身が率いる中央新型肺炎対策指導小組の会議で「感染状況は現在まだ重大な局面にある。防疫対策はいささかも緩めてはならない」と厳しい見方を述べた。李首相は今後、企業活動の再開後もできるだけ人の集まりを減らすなど感染予防拮置を取るよう指示した。
3.中国の指導部内では新型肺炎対策について、楽観的な習近平国家主席と厳しい李克強首相の違いが次第に表面化してきた。2月24日、3月開催予定の全国人民代表大会(全人代)の延期が決まった。習主席は延期に反対だったが、李首相は自分が全人代で行う「政府活動報告」の内容を新型肺炎の影響を踏まえて書き直す必要があると主張して延期させたと言われる。
4.しかし、習主席は2月26日の党中央政治局常務委員会で巻き返しに出た。「全国的に新型肺炎の防疫状況は好転している。今後は経済回復も加速しなければならない」と述べ、休業中の企業の生産再開、労働者の職場復帰などを指示していた。
5.衛健委の会見も、習主席の指示を裏付けるものだった。習主席の指示後、全国各地で新規感染ゼロの報告が相次いだ。国内の感染症専門家からは「交通、物流が復活して人の流れが増えたのに新規感染がないのは不自然。ここで緩めたらこれまでの努刀が水の泡になる」と疑問の声も上がった。
6.「習主席は賭けに出たのだ」という見方がある。習圭席にとっては新型肺炎と並び、今年の1人当たり国民所得を2010年の2倍にする目標達成が、政治的に重要だ。これが実現できないと2年後の共産党第20回大会で総書記3選が危うくなるからである。
7.新型肺炎はすでにイラン、イタリア、さらに米国など全世界に広がって世界経済への懸念が拡大。2月27日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価はl190ドル安と過去最大の下げ幅を記録した。2月29日には中国の景況感を示す2月のPMI(購買担当者指数)が発表された。製造業が前月比14・3ポイント低い35・7、非製造業が24・5ポイント低い29・6と2008年のリーマン・ショックを超える激しい急落となった。連休明けの上海株式市場は買い相場で3・15%高となった。
8.習主席の経済再開支援への期待を好感したと説明されているが、演出したのは習主席と盟友の王岐山副主席だ。PMI発表と同時に王副主席系とされる大型複合企業、海航集団(HNAグループ〉の公的管理による巨額債務救済策が発表された。
9.その2日前には習主席、王副主席がそれぞれ訪中したモンゴル大統領、セルビア第一副首相兼外相と会見し、新型肺炎の感染抑え込みの成果を強調した。これが伏線となって中国株は暴落を回避した。その代償が早すぎる新型肺炎対策の緩和だ。吉と出るかどうか、そこが習主席の「賭け」である。



yuji5327 at 06:20 

2020年03月26日

7300年前、鹿児島県南都海域の「鬼界カルデラ」で噴火が起き、九州南部の縄文文化が壊滅した。火山灰.や軽石が降り積もり、火山灰は関東地方にまで及んだ。


「巽好幸(神戸大学教授)著:鬼界力ルデラ掘削で見えた2度の超巨大噴火の痕跡 週刊ダイヤモンド2020.03.21」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.7300年前、鹿児島県南都海域の「鬼界カルデラ」で噴火が起き、九州南部の縄文文化が壊滅した。火山灰.や軽石が降り積もり、高さ40kmにも達した噴煙柱が崩壊して高温の「火砕流」が襲来した。豊かな森や内湾の環境が破壊された。火山灰は偏西風に乗って広がり、現在の関西地方でも20cm堆積し、降灰は関東地方にまで及んだ。
2.噴出したマグマの総量はおおよそ100立方km。日本史上最大の富士山貞観噴火では1.7立方kmだったことと比べると、桁外れの規模であった。ただこの噴火は、海底火山の活動だったため、未確認の噴出物が海の底に大量に分布している可能性がある。
3.鬼界カルデラ周辺の海底を掘削するプロジェクトが今年初めに実施された。主役は世界最高レベルの掘削能力を誇る地球深部探査船(ちきゅう)で地層をほとんど乱すことなく、100mの筒状試料を採取できる。これまでの神戸大学の地下構造調査で、海底下数10mまでに、少なくとも2つの火砕流とおぼしき地層が見つかっていた。そこには実際に何があるのか。超巨大.噴火の規模やメカニズムの解明を目指して、ちきゅうは鬼界カルデラ海域へ向かった。
4.鬼界カルデラの成り立ちはそれほど詳しく分かっていないが、数10万年前から活動を始めたようだ。そして、少なくとも2度、9万5000年前(鬼界葛原噴火〉と7300年前(鬼界アカホヤ噴火)に超巨大噴火を起こしたといわれている。大量のマグマの噴田によって地下にできた空洞が陥没し、巨大なくぼ地、カルデラが形成される。東西25キ。層南北15キ。財の鬼界カルデラもこうして形成されたが、二重のくぼみが存在する。
5.海底地形の特徴などから、内側のカルデラは7300年前の噴火でできたと考えられる。だが外側は、過去2度のどちらの超巨大噴火に伴なうものなのか定かではない。もう一つ、このカルデラには大きな特徴がある。それは、内側のカルデラができた7300年前以降に、カルデラ内に世界最大観模の溶岩ドームが誕生したことである。
6.カルデラ形成後、例えば桜島火山や阿蘇中岳といった小規模の山体が形成されることは多い。しかし鬼界ドームのように約40立方kmものマグマが短期間で畷出した例はない。しかもこのマグマは、鬼界アカホヤ噴火のものとは化学的特性が異なり、新たに地下深部から上昇してきたものである。従ってこの火山では、地下深部から活発.なマグマの供給が続いており、次の超巨大噴火の準備段階にある可能性が高い。
7.ちきゅうは1月5日に静岡市の清水港を出港。まず御前崎沖で過去の南海トラフ沿いの地震の履歴を探る掘削を行い、鬼界カルデラ海域へ向かった。紀伊半島―四国沖では、爆弾低気圧.による強風や大波に見舞われ、甲板へ出ることも危険な状況だった。ただ船内は極めて快適だ。新年らしいメニューの食事も楽しめた。ちなみに食事の提供は1日4回。12時間交代で作業するクルーや研究者に対応するためである。そして1。月10日に竹島沖の掘削地点に到着。掘削作業が開始された。
8.今回は比較的軟らかい火山砕屑物がターゲットである。このため、先端に鋭い刃が付いたパイプを海底に突き刺す手法で挑んだ。1回に刺すパイプの長さは10m弱。これを繰り返し、海底下100mまで掘削した。しかし、ちきゅうにとって初経験である火山砕屑物は、なかなか手ごわかった。海底の表層部を覆う礫状の火山性地層が崩れやすく、掘削孔をふさいでしまう。そこで掘削地点をわずかにずらして前回の深さまで新しい穴を開け、先端からピストンを突き刺すことを繰り返す方法が採用された。
9.神戸大が過去に実施した反射法地震探査によって、この地点の海底下200mまでに、少なくとも5つの地層があることが分かっていた。このうち第1層と第3層は広範囲に分布し、堆積以前の海底地形の影響を受けていることから、火砕流堆積物の可能性が高いと考えていた。掘削の結果、これらの層はやや粗粒の軽石と同質の細粒の火山灰から成る火砕流堆積物であることが判明した。ではこれらの火砕流は、鬼界カルデラの超巨大噴火によってもたらされたものなのだろうか?
10.第1で採取した試料はややオレンジ色を呈している。これは名前の由来になった鬼界アカホヤ噴出物の特徴である。この層が7300年前の超巨大噴火によって形成されたものであることは間違いないであろう。
噴火の火砕流〔幸屋火砕流)の堆積物は、九州南部の陸トでは1眉以下の厚さしかない。これにより噴出したマグマの総量は40立方キu麿程度と見積もられてきた。もちろんこれでも莫大な量だが、今回の第-層の採取試料を基.に噴出したマグマ量を求めると、100立方kmを超える。
11.7300年前の超巨大噴火は、従来考えられてきた噴火よりもはるかに大規模だった。陸上では火砕流堆積物は容易に浸食されるために、その総量を求めることは困難である。掘削と反射法探査の結果を合わせることで、世界で初めて超巨大噴火の親模を正確に見積もることができ。
12.もう1つの特筆すべき結果は、第3層の火砕流堆積物が、9万5000年前の鬼界葛原超巨大噴火に由来するいう裏付けが取れたことである。この噴火に伴う火砕流〔長瀬火砕流〕は竹島の海岸沿いで確認されただけだが、これまで知られている鬼界カルデラ由来の火砕流の中で唯一石英を含むものである。今回第3層から採取された軽石にもこれが含まれていた。今後、反射法地震探査の結果を再度精査して、この超巨大.噴火の規模を正確に求める検討も進める。
13.これらによって、この巨大海底カルデラ火山の地下で起きてきたマグマの供給や蓄積など、超巨大噴火に至るプロセスの理解が格段に進むものと期待される。掘削を成功裏に終えたちきゅうは1月15日に佐世保港へ入港し、現在ドックで検査を受けている。



yuji5327 at 06:26 

2020年02月26日

精密測定による1日の長さの変動の単位は1000分の1秒での変動があるが、大気がこれに敏感に呼応している。


「木本昌秀(東京大学海洋研究所・教授):熱帯の巨大雲塊の動きが影響? 微妙に変わる1日の長さ 週刊ダイヤモント 2020.02.22」は面白い概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.1日は24時間だが、精密に計ると1日の長さは毎日24時間ちょうどではなく、微妙に長くなったり短くなったりしている。地球の形や大きさを正確に求め、さらにそれらの時間的変化を明らかにする学問は、測地学と呼ばれる。地球上の大気の動きを調べる気象学は、かなり異なった両分野の関わ合いは以下の通りである。
2.1日の長さの地球の自転周期の精密測定は、はるか遠くの銀河系外の天体からの電波を利用して行われる。大きなものでは直径30mを超すパラボラアンテナで受けた電波の波形を地球上の2地点で比較することにより、片方が他方と同じ信号を受け取った時刻の遅れを計測し、電波の速さで割って距離を測る。電波は、1秒に30万kmという光の速さで進むので、この測定のためには、2地点間でピタリと同じ時刻を示す時計を使う必要がある。高精度の原子時計の登場がこれを可能にした。最新のものの誤差は、1000億分の1秒である。
3.多数の天体を用い、世界中の多数のアンテナのデータを解析すると、地球上の各点の位置やその動きが極めて正確に分かる。自転速度の変動も、その一つである。このような精密測定による1日の長さの変動の単位は1000分の1秒で、誰も気付かないほどの大.きさの変動であるが、大気がこれに敏感に呼応している。
4.自転軸を回る大気の、地面に対して相対的な動き、つまりは西風の強さと、その場所、高さの大気質量とを掛け合わせて、全球で足し合わせる。固体地球とその上に乗る大気の持つ角運動量は、外力が加わらない限り、一定に保たれる。これは、フィギュアスケーターが、フィニッシュのスピンで、最初は広げていた腕をだんだん縮めて回転を速めてゆくときに使っている原理である。
5.回転軸周りの角運動量は、回転の速度と回転軸からの距離、それに回転している物体の質量を掛けたものだが、これが一定ということは、腕を縮めれば、その分回転速度が上がる。この保存則によって、固体地球とその上に乗った大気の角運動蹟の合計が保存するので、片方が変化する、例えば固体地球の自転が遅くなれば、その分大気の角運動量(=西風〉が増加する。
6.大気の風は、必ずしも全球均一な稠密観測が行われていないのだが、観測所のデータに衛星などからのあらゆる情報を加えて天気予報のための全球解析値が毎日求められている。全く別の方法で求められた、1000分の1秒以下の大きさの自転速度変動の正確さで一致している。大気のデータは風だけではないので、このような変動がどんな気象現象に伴うものかも調べることができる。
7.赤道上での対流活動の東西の動きもわかる。赤道上の巨大雲塊とそれに伴う対流抑制域〔赤)のゆっくとした東進もわかる。全球大気角運動量は、熱帯での巨大雲塊の動きに伴って数10日スケールで変動し、それが自転周期の変動に反映されてる。
8.MJOの1カ月予測は、気象界のホットな話題であるが、自転速度のデータが予測に直接寄与するわけではない。しかし、測地学の精密測定が直接に気象予測のデータとして利用されている例もある。カーナビやスマホの地図アプリで用いられるGPSは.米国の衛星を使ったものの呼称である。GPSは、位置が正確に分かっている複数.の人工衛星からの電波信号の到着時刻の差から端末の位置を割り出す。ここでも正確な時計が重.要である。水晶時計の精度が限られるスマホの場合は位置特定の精度もそれなりだが、国土地理.院のGEONETのような本格的な受信システムでは位置特定精度が高く、それだけに電波が大気中を伝搬するときの遅延や屈折が位置測定にとってのノイズとなる。
9.逆に気象学側からすれば、これら大気による遅延・屈折を詳細に解析することで大気中の水蒸気景の情報を得ることができる。時空間的な変動の激しい水蒸気データは貴重.である。GPSを用いた水蒸気情報の取得には、大きく2つの方法があって、地上で直接受信した電波の大気遅延に基.つくものと、GPS衛星.からの屈折した電波を低軌道衛星.で受けるえんぺい法と呼ばれるものがある。前者は水平分解能に優れ、GEONETによるデータが日本付近の天気予報に用いられる。後著は水蒸気の鉛直分布の推定が可能で、貴重なデータとして全球の解析にも用いられている。
10.GPS水蒸気情報を使った場合と使わなかった場合の予報を比べると、GPS水蒸気情報の導入により、強い雨の予測精度が向上し、強過ぎる雨量の予報が改善されている。GPSえんぺい観測は、他にも観測の困難な大気重.力波や積雪深測定等にも応用されている。近年、揺れる海上の船舶でも川いることのできるGPS受信機の開発が進んでおり、貴重.な洋上での水蒸気情報を与えるものとして期待されている。


yuji5327 at 06:32 

2020年02月23日

国際海運で排出される温室効果ガスは、世界全体の約2〜3%、ドイツ1国分に相当する。排出ゼロへの取り組みは、ほかの産業にも影響を及ぼす。


「岡田広行著:脱炭素化で船舶が大激変 週刊東洋経済 2020.2.22」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して自分のコメントもカッコ内に付記して纏めると以下のようになる。
1.地球温暖化への対策が急務となる中で、海運や船舶のあり方が大きく変わろうとしている。100年以上にわたって主流となってきた重油などの石油系燃料から、温室効果を持つ、二酸化炭素〔CO2の排出が相対的に少ないLNG(液化天然ガス)への転換が急速に進みそうである。その先は、水素やアンモニアといった、CO2を排川しない燃料や、風力など再生可能エネルギーの利用も視野に入りつつある。
2.国際海運のルールを決める国際海事機関〔IMO〕は2018年4月に「温室効果ガス削減戦略」を採択し、「今世紀中のなるべく早期に、国際海運からの温室効果ガス排出ゼロを目指す」との目標を取り決めた。その際、30年時点での目標として「08年比で単位輸送量当たりの温室効塒ガス排出最の40%以上削減」に加え、50年時点での「国際海運全体での温室効果ガス排出総量の50%以上削減」(単位輸送量当たり温室効果ガス排出量の80%以上削減に相当、08年比)という数値目標が決まった。
3.エンジンの出力制限など30年目標達成に実効性を持たせるための具体的な規制内容については現在、日本やデンマーク、中国などが具体案を持ち寄りIMOの専門委員会で議論を続ける。30年目標については、「現在、考えられている対策でクリアできる」(大手海運各社)とみられている。一方、50年目標の達成については、越えねばならないハードルが多い。だが、どのようなルールが導入されるにせよ、既存の船舶を今までどおり運航させることは困難になるうえ、新たに建造される船舶についても燃料の転換が不可避である。
4.国際的な温室効果ガス削減の動きを見据えた仕組みが、国内でもスタートしている。日本郵船と商船三井、九州電力の3社は昨年12月、LNG燃料で運航する載貨重量9万5000トン級の大型石炭輸送船2隻の導入を内容とした基本協定書を締結した。この規模の石炭輸送船の建造は世界で初めてで、23年4月および6月に竣工する予定である。55.LNG燃料については、九電の子会社が福岡県北九州市に持つLNGの陸上出荷設備から2隻に供給する。LNG燃料の長所は、燃焼時の大気汚染物質排出が極めて少ないことにある。一般的な船舶燃料油であるC重油と比べて、硫黄酸化物についてはほぼすべて、窒素酸化物では約80%の削減が見込まれている。
6.一方、CO2排出の削減率は20-30%にとどまる。LNG燃料を用いるだけでは、IMOが目指す温室効果ガス排出ゼロや大幅な削減には届かない。だが、減速航行、船舶の設計改善、風力の活用などと組み合わせることにより、50年目標達成への有力な手段になりうる。加えて日本の強みも生かせる。というのは、海運大手3社はLNGの輸送実績で世界有数であるうえ、船員の訓練などオペレーションでも、従来のLNG輸送船の経験を生かせる。
7.LNG火力発電や都市ガス供給を通じて、日本は世界最大のLNG輸入国になっている。そのため、30以上の港湾にあるLNG受け入れ基地を改修し、供給機能を持たせることも可能である。造船業では数多くのLNG輸送船の建造実績がある。今後、船舶燃料の大部分がNGに切り替わると思う。今後建造する自動車輸送船の燃料についてLNG化する方針である。
8.商船三井は日本で初めてのLNG燃料フェリー2隻の建造を決定した。LNGを燃科とする自動車輸送船については、日本郵船と川崎汽船の発注によって、国内の造船所で2隻の建造が始まっている。いずれも20年秋に竣.工する予定である。LNG燃料を船舶に供給するためのインフラ整備も進みつつある。タンクローリーから船舶への供給方式に続いて、より大量の燃料を短時間で供給できるLNGバンカリング〔燃料供給〕船による供給も具体化してきた。
9.燃料価格の面でも、LNGに追い風が吹き始めた。今年1月に国際海運全体でSOx排出規制が始まったことにより、排煙脱硫装置を設置した船舶でなければ、硫黄分の多いC重油を燃焼させることはできなくなった。脱硫装置を設置していない船の場合、硫黄分の少ない「規制適合油」に切り替えなければならない。この適合油は従来のC重油と比べて割高である。
10.以前とは状況が変わりつつある。バンカリングに対するエネルギーメジャーの日の色も変わってきた」と指摘する。LNG燃料普及のカギを握るのが供給インフラの整備だ.日本郵船は従来の電力やガス会祉向けLNG燃料の輸送にとどまらず、船舶へのLNG燃科の供給業務を新たなビジネス分野に設定した。そのーつが、伊勢湾三河湾での合弁事業であり、九州・瀬戸内地区でも九電、西部ガスなどと協議を進めている。従来の輸送業のみならず、調達など関連分野にも広げる。海外でも、日本の海運会社はLNG燃料ビジネスを始めている。
11.LNGへの燃料転換は、温室効果ガスの排出最の抑制に効果があるものの、それ自体では排出ゼロにはならない。一方で、LNG化は船舶燃料の脱炭素化への移行をスムーズに進めるために有効である。LNG供給で用いられるインフラは、将来、有力なカーボンリサイクルメタンなど、脱炭素化を見据えた代替燃料にも活川できる。
12.IMOで取り決められた50年時点での温室効果ガス削減目標を達成するうえで、以下の2つのシナリオが有力だとされている。1つは、LNGおよびカーボンリサイクルメタンが、現在、船舶燃料のほとんどを占めている石油系燃料の大部分に置き換わるというシナリオがあり、さらに水素およびアンモニア燃料中心のシナリオもある。カーボンリサイクルメタンは、CO2および水素から合成したメタンである。天然ガスの主成分はメタンであるため、既存のLNGインフラに加え、LNG燃料船の技術も使用できる。ただし、生産過程でCO2を発生させないためには、再エネ電力で水を電気分解し、水素を生成しなければならない。それには再エネ電力のコストを抜本的に低減させる必要がある。CO2は、船舶の運航で発生する排ガスから集めることも検討されている。なお、カーボンリサイクルメタン自体が、新たに環境負荷を生まない「カーボンニュートラル」であるとの評価を得られることが前提になる。
13.一方、水素およびアンモニア燃料中心のシナリオでは、メリットとともに、特有の課題がある。水素およびアンモニアは燃焼時にCO2が発生しないため、ゼロエミッション燃料となる。ただし、水素は液化したときの熱量当たり体積がC重油の約4・5倍と大きく、船内に燃料貯蔵のスペースが必要である。また、液化ではマイナスー62度のLNGよりもはるかに低いマイナス253度に冷却する必要があり、供給インフラも一から造らなければならない。アンモニアはガスタービンでの燃焼実績があるうえ、水素と比べて熱量当たり体積が大きくないことから輸送しやすいといった長所もある。一方、毒性や強い臭気に関して設備や安全面での対策が必要になる。燃焼時に発生するNOxにはCO2の約300倍もの温室効果があるため、NOx低減対策も不可欠である。
14.水素と窒素を合成して製造するため、水素製造のコストにも強く影響を受ける。代替燃料には利点とともにさまざまな課題がある。しかし、IMOの目標である50年までに残された年数は多くない。「船の耐用年数を考慮に入れると、ゼロエミッション技術を盛り込んだ実験船を30年あたりまでに竣工させ、その性能を確かめたうえで、一斉に発注するスピード感覚を持って業界横断的に取り組む必要がある。
15.国際海運を通じて排出される温室効果ガスの総量は、世界全体の約2〜3%、ドイツ1国分に相当する。排出ゼロへの取り組みの行方は、ほかの産業にも大きな影響を及ぼす。



yuji5327 at 06:23 

2020年02月04日

111の活火山が密集するわが国でも14年、御嶽山で突如噴火が起こり、58人が死亡した。300年以上沈黙を守っている富士山も一触即発状態にある。


「巽 好幸(神戸大学教授):予測困難な噴火を引き起こすマグマの『水』の意外な役割 週刊ダイヤモンド 2020.2.01」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2019年12月9日、ニュージランド北部・ホワイト島で噴火が発生し、観光客など少なくとも18人が犠牲になった。この無人島は世界有数の活動的な火山の一つ。ガスマスクを装着すれば、噴煙や沸き立つ火山湖などドラマチックな活動をより間近で見られるため、人気の観光スポットとなっていた。
2.111の活火山が密集するわが国でも14年、秋の登山シーズンの御嶽山で突如噴火が起こり、58人が死亡した。また、300年以上沈黙を守っている富士山は、まさに一触即発状態にある。気象庁によれば、「噴火」とは、火山現象として火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出する、または溶岩を流出する現象である。
3.噴火を引き起こす根源は、地下に存在する高温で溶融した「マグマ」であるが、噴火の際に必ずしもこのマグマが地表へ噴出するわけではない。そこで、マグマが噴出するかどうかによつて、火山の噴火を3つのタイブ(マグマ噴火、マグマ水蒸気噴火、水蒸気噴火)に分類する場合が多い。地下のマグマには、水などの揮発性成分が溶け込んでいる。日本列島のように、沈み込むプレートから水が搾り出されることが原因でマグマが発.生する場合には、マグマの中にも比較的多くの水が含まれている。
4.水がマグマ中にどれくらい溶け込むことができるか、すなわち水の溶解度は、温度と圧力によって変化する。マグマが減圧、すなわち地下深くから地表に向かって上昇していくと、マグマに溶け切れなくなった水がマグマから吐き出される。例えると、勢いよくシャンパンの栓を抜くとガスが発生.して中身があふれ出すようなものだ。そして高温のために吐き出された水が水蒸気となり、マグマ中で発泡現象が起こる。するとマグマ内では急激な体積増加と密度低下が同時に発生し、その結果、周囲の岩盤を破壊して、急激にマグマが上昇して地表に達する。
5.このような噴火は、マグマ噴火と呼'ばれる。マグマ噴火は多くの揮発性ガスを含むために.しばしば爆発的である。しかし、マグマがサラサラした性質を持つ場合には、発生した泡が効率よくマグマから抜けてしまい、溶岩流を流すような比較的穏やかな噴火になることもある。
6.一方、水蒸気噴火は、マグマの熱で地下水などが沸騰することが原因である。水が水蒸気化することで体積が1700倍にもなるために急激に圧力が高まり、周囲の岩石などを巻き込んで爆発、つまり噴火が起きる。この場合、噴出物は火山体をつくっていた古い溶岩や破屑岩の破片であり、マグマそのものは含まれない。これらの2つの中間、すなわちマグマと地下水が直接触れた場合には、水蒸気噴火よりも爆発.の規模が大きくなり、水に触れて破砕されたマグマが火山灰や火山弾などとなって噴出する。これをマグマ水蒸気噴火と呼ぶ。
7.マグマ噴火の場合は、地下の地盤.を割りながらマグマが上昇するため、破壊現象に伴う地震や山体の膨張、磁気異常、火山ガスの異常などを伴うことが多い。こうした変動は精密な火山観測によって捉えることができる場合もあり、その場合には前兆現象に基.ついて噴火警戒レベルを引き上げるなどの対策が講じられる。その一方で、水蒸気噴火はマグマが上昇しなくとも地下水の浸透や蓄積によって引き起こされることがある。この場合、火山観測ではほとんど前兆現象を捉えることができない可能性が高い。ホワイト島や御嶽山、草津白根山の噴火もマグマ成.分が含まれない水蒸気噴火だったと思われるが、前兆現象検出の困難さが火山災害につながった。
8.火山活動は、地球内部(日本列島ではおおむね深さ30〜200km)の岩石が融けてできたマグマが、地表あるいは地表近くまで上がってくることで起きる。マントルでつくられた玄武岩質のマグマは、周囲の岩石よも軽いために浮力によって上昇する。しかし、より軽い岩石でできた地殻内では浮力を失い「マグマ溜まり」をつくる。
9.火山の地下には複数のマグマ溜まりが存在すると考えられているが、ここでは説明のため2つのマグマ溜まりを想定する。1つは、比較的深い所にあり、密度の高い玄武岩質の高温マグマがつくる「親マグマ溜まり」。もう1つが、山体直下の浅い場所にあり、密度が低い安山岩質の低温マグマでできた「子マグマ溜まり」である。
10.さまざまな観測や岩石の特性などから、子マグマ溜まりからマグマが上昇して噴火に至る引き金になると考えられているのが、親マグマ溜まりからのマグマの注入である。)。高温のマグマが供給され、子マグマ溜まりの温度が上がる。すると、それまでは「子マグマ溜まりのマグマに溶け込んでいた水が吐き出されて発泡現象が起きる。この泡はマグマと比べて軽いために上昇してマグマ溜まりの上部に集まり、圧力が急激に高まる。そして、割れ目ができるとその部分では圧力がさらに低下。その結果マグマの発泡はさらに進み、圧.力が高まって割れ日はさらに上へと発達する。この繰り返しでマグマは地表へ向かって上昇する。
11.他のメカニズムによってマグマ溜まりで発泡現象が起きることも考えられる。その1つが、マグマ溜まりを含む地殻全体に働く力の変化である。例えば11年の東日本大震災〔3・11)のような海溝型超巨大地震では、発生前に日本列島を強烈に押していた力が一変し、発生後には逆に引っ張る力へと変化した.。これで地殻への圧力が減少した結果、マグマ溜まり内では発泡が促される可能性がある。
12.事実、3・11以降、東北から関東地方の火山では、火山性微動などのマグマ溜まりの活性化を示す現象が観測されるようになった火山が複数あった。もちろん、この引っ張り力は現在も継続中である。水が原因となる噴火の予兆は難しいため、今後も火山噴火に対する細心の注意が必要である。


yuji5327 at 06:23 

2020年01月25日

2019年もまた気象災害が多かった。「異常気象」より「極端気象」という言葉を使う。頻度は低いが「異常な」ことではなく、必ずまた来る。


「木本昌秀(東大海洋研究所教授):極端な天候を引き起こす元凶・偏西風の『ブロッキング現象』、週刊ダイヤモンド、2019.12.28−2020.01.04」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2019年もまた気象災害が多かった。「異常気象」より「極端気象」という言葉を使うように心掛けている。頻度は低いが決して「異常な」ことではなく、必ずまた来るから備えるべき、とのメッセージが大事だと思うからである。
2.今回は、日本を含む中高緯度で極端な天候の発生.時によく見られる、偏西風の「ブロッキング現象」についてご紹介する。日本と北米西海岸とは太.平洋を隔てて、8000km離れている。飛行機の旅の所要時間は、行きと帰りで1時間半近く違うが、上空を吹く強い偏西風が、行きは追い風、帰りは向かい風になるためである。
3.偏西風は、暖かく気圧の高い熱帯の気団と、その北の冷たく気圧の低い気団の境目を吹く。気圧差と地球自転の効果が釣り合った結果である。日本の上空は、世界的にも偏西風の強い場所である。気球による上空の気象観測が始まった第2次世界大戦末期には、爆弾を積んだ風船をジェット気流(偏西風の特に強い場所)に乗せて北米を攻撃しようという計画もあった。
4.ブロッキング現象とは中高緯度上空を通常は西から東へと吹く偏西風が、時々、長いときには1カ月近くも大蛇行する現象である。ブロッキング発.生時は、通常は冷たい場所に暖気が侵入し、また通常暖かい場所まで寒気が勢力を広げることになるため、普段と異なる極端な天候を経験することになる。特に、蛇行が北へ伸びている部分が顕著で、ブロッキング高気圧と呼ばれる。低緯度起源の気塊が切り離されてほとんど同じ場所に停滞する。
5.この高気圧の南側には冷たいブロッキング低気圧が見られるが、こちらは位置や強さを変え、はっきりしない場合も多.い。10年間の平均があるが、毎日の天気図ではブロッキングより水平スケールの小さい、細かい蛇行が偏西風上を西から東へ流されており、これらは、日々の天気の変化をもたらす移動性高低気圧に対応している。
6.スケールの大きな大蛇行はこれらの移動性高低気圧の行く手をブロックし、経路を人きく南北に変える。ブロッキングの名前の由来である。平均した天候だけでな'く、日々の天気の傾向も、より広,い範囲で影響を受けることになる。
7.ブロッキングの影響を受けた近年の事例を幾つか紹介すると、地球温暖化が話題になる昨今だが、寒波の襲来も度々ある。日本海側の大雪は、冬型の気圧配置で北風が強いときに生じるが、太平洋側では、下降気流となり晴れの日が続く。太平洋側に大雪がもたらされるのは、低気圧が日本の南岸を移動するときである。
8.近年の記録的な大雪のときは、南岸低気圧.が移動する。特に14年2月の大雪は記録的で、2月5日から16日にかけて3度の寒波が襲来した。2月14〜15日には、山梨県甲府市で観測史上最大となる1層以上の積噌を記録した。雪の国道で動けなくなった車が長蛇の列を成し、甲府を孤立させたニュースも多い。18年1月の大雪も.記録的だった。東京での14年2月14〜15日の降雪量は27cmに対し、18年1月22日は23cm、それほどの差はないが、甲府では111cm大きな差があった。
9.低気圧の強さや経路の差ももちろんあるが、両イベントの差の大きな要因は、南岸低気圧の速度にある。長引く大雪の原因となった遅さは、日本の東海上の上空に居座っていたブロッキング高気圧によって低気圧の移動が妨げられたからである。両年ともブロッキングは存在したが、高気圧の位置が14年の方が日本に近かった。ブロッキング現象は、偏西風帯ならどこでも起こり得るが、特に冬の太平洋、大西洋の東半分で多い。気候学的にも大陸の東側では、偏西風が南に蛇行し強くなるが、大洋の東側へ行くと弱まり、南北への分流傾向が出てくる。このため、南北への蛇行イベントも大洋の東半分で多い傾向になる。とはいえ、夏の大陸上でもブロッキングは起きる。10年8月にロシアを襲った熱波では1万人以上の死者が出た。
10.欧州や北米でもブロッキングに関連した熱波の報告は多い。日本の夏の猛暑は偏西風の大蛇行というよりは、東西に広い範囲での亜熱帯ジェット気流の北偏でもたらされる場合が多い。日本の夏の天候でブロッキングがより大きく関わっているのは、冷夏のときである。オホーツク海高気圧の勢力が強いときは、ヤマセと呼ばれる北からの冷涼な風が北日本の太平洋側に冷害をもたらすが、このオホーツク海高気圧は、上空では高いブロッキング高気圧である。
11.03年の冷夏や最近では17年8月に顕著だった。ブロッキングが台風に影響を与えた例もある。16年8月には、3つの台風が北海道に上陸し、台風10号は観測史上初めて東北地方の太平洋側に上陸し、河川の氾濫が高齢者施設を襲い、9人の犠牲者が出た。
12.日本の東海上に位置するブロッキング高気圧と南海上の低気圧との間の北向きの風が、相次ぐ台風の北上をもたらした。10号は北上して大被害をもたらす前に、南岸を東から西に向かって大きく迷走したが、これは南岸の低気圧に影響されていた。ブロッキングは予報の難しい現象の代表格と30年前から言われていた。近年では1週間以上前から徴候が見られる場合もあるが、直前になってようやく予測でき、いつまで続くかはあまりよく分からない。蛇行が低緯度気塊をちぎるほどに大きくなるか、その手前でとどまるかが予報の分かれ目で、予報の精度が向上していることを願う。


yuji5327 at 06:54 

2019年11月30日

水惑星地球は、もっと近い未来に危機に直面する可能性があ。


「巽好幸(神戸大学教授)著:プレート運動で全球凍結…地球深部に運ばれる海水、週刊ダイヤモンド 2019.10.19」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.太陽系の惑星は46億年前に誕生した。そして太陽からの距離や大きさなどの条件が満たされた地球だけが、恒常的に液体の水が存在する「水恐星.」となった。38億年前のことである。2.その水のおかげで生命が育まれ、プレートテクトニクスが作動して凹凸、すなわち海と陸の形成など、地球は他の惑星とは全く異なる進化を遂げてきた。地球では水の大部分は「海」として存在してきた。しかし今後、海水がどんどん地球深部へと持ち込まれ、極端な寒冷期、すなわち「全球凍結」が到来するかもしれない。
3.最近こんな地球の未来を予見するような観測結果が発表された。水惑星の将来の姿を決めるメカニズムを解説し、それを検証する唯一の方法である「人類未踏のマントルへの挑戦」を提案する。
4.地球上には14億立方kmの水が存在し、その約97%は海水として表面の約70%を覆っている。淡水の多くは氷山や氷河、それに地下水である。過去には何度も「氷河期」が到来し、そのときには氷の量が増えて海水量が減少したが、それでも水の総量はほぼ一定に保たれてきた。これを担っているのが「水循環」である。
5.地表に降り注ぐ太陽のエネルギーによって地表水は水蒸気となって大気中へと移動する。水蒸気は擬結して雲を作り、年間約60万立方kmが雨となって地表または海へと戻ってゆく。この水循環は地球表層で繰り返されているのだが、実は海水の一部はプレート運動によって地球の中へと持ち込まれている。
6.海底で誕生する海洋地殻は水を含んだスポンジのようなもので、プレートが地球内部へ沈み込んで圧.力がかかるとおよそlOO〜150kmの深さで水を吐き出してしまう。この水がマントルを融かし、日本列島などの沈み込み帯に密果する火山を作るマグマを生み出す。このマグマにはプレート由来の水がたっぷりと含まれるために爆発的な噴火を起こすことが多い。つまり、海洋地殻に取り込まれた海水も、火山活動を通して大気へ放出されて、再び海水へと戻.っていく。
7.あの3・11以降、「アウターライズ」という言葉をよく聞く。これは海溝の外側〔海側〕にある高まりという意味で、プレートが沈み込む際に、いったん持ち上がって破断しないよう「準備運動」する。ここではプレートが上向きにたわむため割れ目が発達する。だから海溝型.巨大.地震の後には、この割れ目が断層となってアウターライズ型地.震を引き起こす可能性がある。8.日本の研究者たちは、この地震の危険性や海溝型巨大地震の発生メカニズムを調べるために、日本海溝からアウターライズにかけて詳細な調査を行ってきた。その過程で、アウターライズと日本海溝の間において、地震波の伝わる速度がモホ面の下のマントルでは、平均的なマントルよりも遅いことを発見した。この観測事実を最も合理的に説明するメカニズムは、アウターライズの割れ目に沿って染み込んだ海水が、モホ面を超えて上部マントルにまで達し、マントルを構成するカンラン岩と反応して蛇紋石という鉱物を作ることである。その場合、少なくともモホ面下10kmまでには2%程度の水が存在することになる。
9.このプロセスは、プレートが沈み込む場所では普遍的に起きる。つまり、沈み込むプレートは、従来考えられていた「標準モデル」に比べて、はるかに多量の海水を地球内部へ持ち込む可能性が高い。この水の運命が問題である。
10.カンラン岩中の蛇紋石は、限界を超えると分解する。重要なことは温度が約550℃以下だと、地球内部へ持ち込まれた蛇紋石は、さらに多量の水を含むことができる「A相」という鉱物に変化することである。現在の地球では、沈み込むプレートの温度が高温側にあるために、蛇紋石は深さ100〜150kmで水を吐き出し、マグマを通して水を元の海へと循環させる。
11.地球は、マントルの対流でどんどん冷えている。現在では、最も冷たいプレートでもかろうじて蛇紋石が水を吐き出しているが、今後は、プレート水は蛇絞石からA相にバトンタッチされて、地球の深部へと持ち込まれてしまう。その総量は年間40億tにも及ぶ。これだけの水が海へと還元されずに地球内部へ「逆流」するのだから、海水量はどんどん減少する。ただし、現在の水惑星.から完全に海水が消滅するのは4億年ほど先の話である。.取りあえず地球は安心、と多くの人は思う。しかし水惑星地球は、もっと近い未来に危機に直面する可能性があ。
12.人類が出現したのが20〜30万年前。現在からこれと同じ期間、水の逆流が続くと、海水面は百数十m低下し、数%大きくなった大陸の周囲に浅海が広がり、大量の炭酸塩鉱物が堆積する。その結果、大気中のCO2ば大きく減少する。さらに沈み込み帯では、プレートから水が吐き出されないため火山活動は極端に弱まり、火山ガスによって大気中に放出されてきたCO2量も減少する。
13.これらは、地球が幾度か経験したことのある「全球凍結」の始まりと同じ現象で、その後急激に地球は氷惑星へと姿を変える可能性が高い。未来の地球は、このシナリオのようになるか、それを検証するには、アウターライズで海水がどの程度モホ面を超えてプレートの内部へ染み込んでいるのかを実測するのが最も確かな方法である。そしてわが国は、地球深部探査船「ちきゅう」を有し、世界で唯一この実測ができる。
14.モホに穴〔ホール)を開けることから名付けられた「モホール計画」は、水惑星地球の未来の姿を予測するために必須であり、海洋立国・技術立国H本が将来の地球に対して果たすべき責任として、一日も早い実現が望まれる。



yuji5327 at 06:59 

2019年11月27日

世界の年平均気温が100年当たり約0.7℃のペースで上昇している。今年も世界各地で熱波や豪雨などの異常気象が観測されているが、気候変動と地球温暖化の因果関係は解明されてはいない。

PRESIDENT (プレジデント) 2019年 11/29号 [雑誌]
PRESIDENT 編集部
プレジデント社
2019-11-08

「大前研一著:気候変動で対立する“G7対ブラジル”の裏事情、PRESIDENT、2019.11.1」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.南米アマゾンの熱帯雨林で過去最悪レベルの森林火災が続いている。アマゾンの60%以上を抱えるブラジル政府は軍を動員して消火活動を続けているが、9月を過ぎても収束するめどは立っていない。
2.ブラジルの国立宇宙研究所の発表によれば、今年年初から13万1600件上の森林火災がブラジル国内で発生した。2018年が約4万件だから、3カ月を残して前年の3倍以上の火災が発生したことになる。1月から8川までの焼失面積はブラジル国内だけで約4万3000平方km以上である。九州より広い規模の森林が失われた。
3.アマゾンの7月から10月上旬は乾期で、例年森林火災が発生しやすいが、今年の頻発ぶりは異常である。山火事の原因は落雷や木々が擦れ合って発生する摩擦熱など自然発火もある。しかし、多くの場合はたき火による失火や放火などの人災である。アマゾンの森林火災の原因もほぼ人災である。
4.熱帯雨林のような高温多湿の環境では、火災が発生しても時間経過とともに自然鎮火するのが普通である。しかし、アマゾンでは木材を得るために、あるいは農地や牧草地にするために森林伐採が行われてきた。伐採されて木が減少するとジメジメとした多湿環境が崩れて乾燥し、火災が起きやすくなる。さらに伐採した森を農地や牧草地にするために森林伐採が行われてきた。灰を肥料に使う焼き畑農業は伝統的に行われてきたし、牧草地にするために意図的に放火する畜産業者も少なくない。それらが同時多発的に発生する火災の原因になっている。
5.乾期に森林を燃やして、雨期に農業を行う焼き畑農業は、アフリカやアジアの熱帯雨林でも行われていて、やはり森林火災の発生源になっている。今夏、インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島でも大規模な森林火災が起きているが、これも焼き畑が原因である。毎年のように焼き畑や森林火災による煙が隣国のシンガポールやマレーシアに流れ込んで、深刻な大気汚染を引き起こしている。
6.煙害のシーズンになるとマスクは欠かせないし、自動車は昼間からライトをつけて走っている。アマゾンでも森林火災の黒煙が3000km離れた最大都市サンパウロまで届いて、街全体が煙に覆われて真っ暗になるなどの被害が出ている。ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は極右のリーダーである。選挙戦中に襲撃されて重傷を負いながら、18年10月のブラジル大統領選で初当選した。
7.ブラジルの経済発展を訴えて国民から支持されたボルソナロ大統領は、アマゾンを「重要な経済資源」と位置づけて農地開拓やインフラ整備のための森林開発を積極的に容認してきた。伐採や焼き畑によってアマゾンの森林は以前から減少傾向にあったが、ボルソナロ大統領の開発ポリシーによってそれが加速し、人為的な森林火災を助長した。記録的な数の火災を消し止める能力はブラジル政府にはない、と消火作業に消極的だったボルソナロ大統領に国際的な批判が高まった。
8.フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「アマゾンの森林火災は国際的危機」という認識を示して、8月末にフランスで開催されたG7でもテーマに取り上げた。消火対策支援金としてG7諸国で約23億円を拠出することで合意した。しかしボルソナロ大統領はこれを拒絶し、「アマゾンを『助ける』というG7の国々の『同盟』は、我々を植民地か、誰のものでもない土地であるかのように扱う意図を隠している」と批判した。
9.「白慢のノートルダム大聖堂の火災を止められなかった国.を偉そうに言う。ブラジルの主権を尊重しろ」という。マクロン大統領の妻を巡って中傷合戦まで繰り広げたボルソナロ大統領だったが、「消火活動に真剣に取り組まなければ南米関税同盟との自由貿易協定{FTA〕を批准しない」とEUから脅されたリ、ブラジル製品の輸入規制や不買運動を求める声.が広がると、徐々に態度を軟化した。使い道をブラジル政府が決めるなどの条件付きでG7各国からの支援を受け入れることを表明した。消火活動にようやく本腰を入れて軍を投入、違法な伐採や焼き畑の取り締まりも強化した。
10.ボリビアやコロンビアなどアマゾンを抱える7力国の首脳らが協議して、大規模火災に対処するネットワークを構築したり、違法伐採の監視や森林再生などで協力していく協定を結んだ。
11.しかし、当事者たちだけでアマゾンの森林破壊を食い止めるのは難しい。いくらヨーロッパを中心とした国際社会が「アマゾンは地球全体の酸素の20%を供給する『地球の肺』、世界最大の執帯雨林を守れ」と叫んだところで、そこで暮らす人々にとってアマゾンは「酸素の供給源」よりも「生きる糧」、ボルソナロ大統領が言う「経済資源」である。
12.国際社会では批判されているボルソナロ大統領も、国内の支持率はおおむね良好である。大統領と同じように外国からの干渉に反発を覚える国民は少なくない。森林保護を国内政治だけで解決するのは難しい。森林火災の消火や森林保護にクラウドファンディングを利用する動きも出てきている。森林保護と開発のバランスが取れるように、上から目線にならない形で国際社会が力を貸していくことが必要である。
13.自然には再生能力があるから、焼け野原から若芽が芽吹いて、いつの日か森林は蘇る。高温多湿の熱帯雨林であれば、再生スピードも早い。しかし森林火災や開発によってアマゾンの熱帯雨林は「破壊」が進行している。世界の科学者たちが心配しているのは、執帯雨林の破壊が進んで再生不能の臨界点を超えてしまうことである。
14.世界最大のサハラ砂漠はかつて広大な森林地帯だった。アマゾンの破壊かこれ以上進行するとサバンナ化、さらには砂漠化するサイクルに突入する恐れがある。燃え続けるアマゾンの森林火災を地球温暖化の観点から懸念する声も多い。アマゾンの熱帯雨林は地球の酸素の供給源であるとともに二酸化炭素の吸収源であり、これを焼失することは地球温暖化につながるという見方である。
15、しかし、これは科学的とは言えない。確かに森林の草木は二酸化炭素を吸って光合成を行い、酸素を放出するが、同時に呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を叶き出している。草木が盛んに光合成している若い森林ならまだしも、アマゾンのような古い森林では光合成と呼吸がほぼ釣り合っているので、酸素と二酸化炭素の増減はゼロである。ただし、火災によって二酸化炭素や炭素の微粉「ブラックカーボン」が大量に放出される。ブラックカーボンは太陽放射を吸着するために、地球温暖化の一因になるといわれている。
16.地球温暖化といえば、9月23日に米ニューヨークの国連本部で各国首脳が地球温暖化問題を議論する「気候行動サミット」が開催された。温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定が採択されたのが15年末。しかし、以降も温室効果ガスの排出増加に歯止めがかからない状況が続いている。そこでパリ協定の運用.が始まる20年を前に、国連事務総長の呼びかけで実現したのがこのサミットである。
17.各国首脳がパリ協定の目標達成のための対策をアビールした中で、会場を驚かせたのはパリ協定からの離脱を表明しているトランプ米大統領が姿を見せたことである。米政府の姿勢をアピールするでもなく、わずか15分で退場した。トランプ大統領は大統領選中から「地球は温暖化などしていない。でっちあげだ」と主張している。ブラジルのボルソナロ大統領も地球温暖化懐疑派である。
18.世界の年平均気温が100年当たり約0.7℃のペースで上昇していることは科学的に確かめられている。しかし、今年も世界各地で熱波や豪雨などの異常気象が観測されているが、そうした異常気象、気候変動と地球温暖化の因果関係は、いまだに解明されてはいない。たとえば地球自体の周期的な変化.が気候変動の要因ならば、いくら温暖化対策をしても異常気象はなくならない。
19.それでも地球温暖化が人為的なものであり、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減する温暖化対策に早急に取リ組む必要がある、という考え方はヨーロッパを筆頭に国際社会の主流になっている。対して、「地球温暖化の責任は先進国にある。温室効果削減を我々に押しつけるのは先進国のエゴ。俺たちにも成長する権利がある」というのが途上国の言い分である。アマゾンの森林火災をめぐる温度差の根底にもこの対立がある。政治的には解決が難しい問題で、上から目線ではない世界ファンドを作るしかない。


yuji5327 at 06:39 

2019年11月17日

日本ですらコントロールできない原子力発電は、ごみ収集もちゃんとできないのに管理できるわけない、とイタリア婦人が言った。

「半藤一利、池上彰著:
令和を生きる、幻冬舎、2019.5.30」は面白い。「第3章:原子力政策の大いなる失敗」の印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.非常用電源の、管理の重要性は痛いほど学んだはずだったのに、と思う。「原発は日本人ですらコントロールできない」と他国は学んだが、原発事故から学んだことも、あったにはあった。人びとの節電意識はいまや当たり前のことになった。再生可能エネルギーの施設増強が事故後、加速した。世界的にも新規投資が増え、それにともなって発電量も増えた。平成30年10月13日と14日の土日の2日間、九州では太陽光発電の一時停止、出力制御をした。朝の9時から16時までだが、使用予想電力を大きく超えて供給することになるから、原子力発電はそのまま供給しておいて、太陽光のほうを止めろ、と。
2.電力が増えすぎると供給が不安定になって、大規模停電が起きてしまう。ドイツでは、余剰電力を使って貯蔵できるようにする技術がすでに実用化されている。再生エネルギー発電の割合が急激に増えたことで、電力供給系統が不安定化していた。太陽光や風力などは気象条件しだいという面があるから、供給量が変動する。その調整を火力発霞がやっていたが、採算性の問題や環境負荷の問題などで次つぎと閉鎖された。そのため大規模な商用蓄電池プラントが求められ、ドイツ各地で、実用化がはじまっている。
3.日本の企業も参加している。日本では送電網をもっている電力会社の力が強いので、地域に合った発電・供給を実現する新しい取組みがうまくいかず、いつもギクシャクし、いまだに原子発電にしがみついている。ドイツは、メルケル首相が福島第一原発の大事故を見てエネルギー政策をすぐさま転換した。前の年にメルケルさんは従来の脱原発政策を緩和させて、運転延長の方針を打ち出したばかりだったが、あの事故を契機に原発廃止に明確に舵を切った。
4.「あの日本ですらコントロールできないものは止めるべきだ」と言った。イタリアでも、2011,年の事故後の6月、原子力発電の再開の是非を問う国民投票があって、政府の再開計画が否決されている。反対票を投じたご婦人が、ごみ収集もちゃんとできないイタリア人が、管理できるわけない、と答えていた。
5.当事国である日本の政治家は福島の大災害からまったく学んでいない。逆に、原発輸出に熱心になっている。原発問題は、平成が残した大課題である。事故後、国内の原発再稼働がままならず、ましてや増設もできなくなった。事故で多くのひとが避難生活を送るなか、原発の増設なんかとんでもない、というのが国民の偽らざる気持ちである。
6.あれから8年経つが、再稼働はいま9基である。事故前に54基あった原発は24基が廃炉の方針である。平成30年7月に閣議決定した新しいエネルギー基本計画でも、政府は原発の新増設を容認する、という文言の明記は見送った。政府はエネルギー基本計画で、2030年度までに総電力量に占める原発の割合を20%という目標を掲げている。この数値は30基を稼働させないと達成でないので無理である。
7.昨年末の、インドネシアの火山の噴火と津波のような天災が日本列島のどこかで起きたら、また原発がやられてしまう。日本には火山が山ほどある。いわゆる核のゴミ、使川済核燃料をどうやって最終処分するかという問題もまったく解決の目途がついていない。日本中、そこらじゅうに火山があり、あるいは地下水が豊富にあるから、核のゴミを埋めて超長期に安全に保管できる場所なんかない。
8.候補地を政府が勝手に選定したが、その第一段階の「文献調査」に入った自治体はひとつもない。いまフィンランドでは西部のエウラヨキ島という場所に、世界初の放射性廃棄物の最終処分場、「オンカロ」の建設が進められている。地下400m超のところに2020年から5000t以上もの廃棄物の埋設をはじめるという計画である。岩盤で地下水がまったーないところを選んで掘って、そこに、10万年貯蔵するという。
9.核廃棄物は水分による腐食が怖いので、鉄製の容器に入れた使用済核燃料を分厚い銅の容器に入れて地下坑に運ぶ。さらに地盤の揺れや浸水を防ぐ粘上状の素材で覆って、最終的にはトンネル自体もそういうもので埋める。日本はどこを掘ったって地ド水や温泉がふきだすから、無理ということで、国内にはもう展望なしと見て安倍政権は海外に活路を求めた。海外への原発輸出をアベノミクス、成長戦略の柱に据えた。官邸主導で民間企業の後押しをやった。安倍さんとトルコのエルドアン大統領のトップ会談で三菱重工の受注が決まったのが2013年である。ベノミクスは買いです。BuymyAbenomics!と宣伝したあ、翌年から台湾、ベトナムが、原発計画を凍結ないしは撤回した。
10.2017年に東芝がアメリカ・テキサス州の原発計画から撤退して、三菱もトルコの原発を断念(2018年)。2019年)に入るとすぐ、日立がイギリスでの原発計画を断念した。けっきょく原発輸出はことごとく失敗した。日本の企業が断念せざるを得なくなったのは、安全対策にコストがどんどん膨らんでしまって採算がとれないことがわかったからである。これが成長戦略の柱だったのである。
11.中曽根康弘氏は日本の原子力政策を推進したと自負しているが、原発事故を受けて「原子力の平和利用には失敗もあった」と言っている。「失敗」という言葉を使ったのは、初めて原子力発電研究に予算をつけたからである。1954年に国会に予算案を提出して成立させた。その額は2億3500万円。その金額の理由を問われてウラン235からとったと答えた。当時、中曽根氏は、読売の正力松太郎の参謀みたいな顔をしていた。この5年後には第二次岸信介内閣に科学技術庁長官として入閣し、原子力委員会の委員長になった。



yuji5327 at 06:55 

2019年09月16日

現在の二酸化炭素濃度は400ppmでは、この先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。直面する温暖化を食い止める知恵が求められている。


「木本昌秀(東大教授)著:現在は氷河期のはざまの温暖期 地球気温500万年の歴史、週刊ダイヤモンド、2019.7.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.今年は冷夏気味のようだ。今雨も多めのようである。冷夏気味とはいっても、温暖化も都市化も進む中、晴れた日には猛暑レベルになってもおかしくない。氷河期については、およそ1億年前、恐竜の時代の気候は現在より暖かかった。温室効果を持つ大気中の二酸化炭素が多かったことが主因である。それ以降、大陸移動、造山運動を経て地球はゆっくりと寒冷化してきた。
2.ヒマラヤ山塊の隆起は、大量の雨を伴うモンスーン気候を強化する。モンスーン、すなわち季節によって海から陸、陸から海へと主な風向きが入れ替わる現象は、陸と海の温まりやすさの違いによって生じている。夏には大陸が温まりやすく、海から陸への季節風が大量の水蒸気を運ぶため、大量の降雨を生じる。
3.大陸上の大規模山塊は、上空での昇温を助けることになるため、ヒマラヤの隆起とともにアジアモンスーンは明瞭となった。モンスーン雨域の西側では、雨域の上昇流を補う下降流となって乾燥した気候となる。砂漠と雨域の間に発達した広大な草原は人類の祖先の「出アフリカ」を助けたともいわれる。モンスーンでもたらされた大量の雨は、地表を流れ、激しく土壌を風化・浸食する。このとき、岩石中のケイ酸塩が大気中の二酸化炭素を取り込んで水に流す。このため、大規模山塊の隆起が二酸化炭素の減少、気候の寒冷化をもたらすのである。
4.ヒマラヤの隆起も終わりつつある約550万年前から現在までの地球の気温の推移を推足したものである。ゆっくりとした寒玲化を示している。恐竜の時代は、現在より5℃程度暖かかったことは間違いない。当初は4万年程度の周期が主に見られたが、約100万年前から10万年周期に変わった。われわれは、今からおよそ1万2000年前に始まった問氷期に生きている。南極大陸上に数干メートルもの高さで存在する氷の塊から得られたデータがある。長い年月をかけて形成された氷の塊なので、大昔の情報が得られる。
5.われわれの直接の祖先であるホモサピエンスの出現は今からおよそ20万年前である。氷期は現在より最大8℃程度も寒かったので、北半球にも巨大な氷床が形成された。現在と最後の氷期である約1万8000年前の北半球氷床の様子を数値計算で推定した。グリーンランドには現在も氷床が存在するが、氷期には北米とスカンディナビアにも巨大な氷床が存在した。
6.大気中の二酸化炭素濃度の推定値も重ねてプロットすると両者の変動はよく一致しており、比較的短い間氷期から氷期に向かってゆっくりと気温が下がり、間氷期に戻るときは比較的素早く気温が上昇する。気候が寒冷化してくると1年中0度を超えない地域が広がり、降った雪が融けないため、氷床の成長が促された。太陽光を反射する白い氷の面積拡大は、気温の低下を一層助長し、極端な場合、全球凍結に至ることもあり得る。一方で、太陽光が同じであったとしても、地球上に氷が全くない暖かい状態にもなり得る。このような地球気候の多重性が、氷期と間氷期を行ったり来たりするサイクルの背景にある。
7.実際には、地球の公転軌道、自転軸の傾きや歳差運動によつて入射太陽光の緯度・季節分布が数万〜数十万年スケールで揺らいでおり、氷期-間氷期のサイクルはこれに対する気候システムの応答と考えられている。最初の提唱者の名前を取って、ミランコビッチサイクルと呼ばれている。入射太陽光の揺らぎは、天文学的な計算で正確に見積もることが可能だが、多様な周期性の中から4万年や10万年という特定周期が選ばれるのは、気候システムの特性による。巨大な氷床に沈められた地殻が数万年のスケールで押し戻す効果や、気候変化に伴う海洋の深層循環の役割など、詳しくはまだよく分かっていない。過去の気候を知ることは、現在そして未来の気候をよりよく知ることにもつながる。
8.大気海洋だけでなく氷床のゆっくりした成長もコンピュータで計算し、地質データと比較する研究が可能になってきた。CO2も気温とともに変動していたが、このようなシミュレーションにより、二酸化炭素はこの時間スケールではサイクルの駆動源というよりはサイクルを増幅させる二次的な役割を果たしていることが分かってきた。ところで、地球は現在、間氷期にあるが、この後また氷期に向かうのか、そうならば現在の地球温暖化は心配するに及ばないか、近年の研究によれば、氷期の開始には日射量の変動はもちろんだが、二酸化炭素濃度も大きな制約要因となっていることが分かってきた。人聞の活動によつて、現在の二酸化炭素濃度は400ppmとなっている。このことを考慮すると少なくともこの先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。氷期を生き残ったホモサピエンスだが、5万年以上先のことを考えている場合ではない。直面する温暖化を食い止め、増加する極端気象に対処する知恵が求められている。



yuji5327 at 09:38 
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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