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2019年08月18日

昨年はアリババのティーモールが約3.5兆円、京東集団のJD.comが約2.5兆円を1日で売り上げた。日本のトップの三越伊勢丹の年間売り上げ約1兆2000億円を、一日で軽々超えた。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第3章 G-1=Me First 世界をかき回すトランプ問題」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.昨年はアリババのティーモールが約3.5兆円、京東集団のJD.comが約2.5兆円を1日で売り上げている。
日本のトップ百貨店である三越伊勢丹HDの年間売り上げ約1兆2000億円を、たった一日で軽々超えた。決済も、アリババグループではアント・フィナンシャルのアリペイ、テンセント系の京東集団ではWeChatペイといったスマホアプリが主流になっている。クレジットカードと異なるのは、スマートフォンでQRコードを読み込むと、その瞬間に口座から引き落としが完了するデビット決済方式である。手軽なうえに、クレジットカードのような審査も要らない。手数料がクレジットカードの10分の1で、中国ではいまや完全にクレジットカードを凌駕した。
2.いまだにクレジットカードの手数料が銀行の貴重な収入源となっている日本やアメリカにとって、この中国のスピードについていくことができない。このようにグローバル経済はすでに第5フェーズに入っているというのに、トランプ大統領の頭の中はいまだに第2フェーズで止まっている。だから、その第2フェーズで完勝した日米貿易戦争のように、今回の米中貿易戦争も米国が横車を押せば楽に勝てると思い込んでいると思われる。
3.日米貿易摩擦の歴史には多くの教訓が含まれている。まず、政府間の2国交渉ではアメリカは必ず勝つ。1960年代後半の繊維交渉から始まる日米貿易戦争で、日本政府はアメリカと激しくやりあっが、日本が勝ったことは一回もない。最終的にはすべてアメリカの要求が通った。その後アメリカの産業競争力が強くなったわけではない。テレビは消え、鉄鋼はみな外資に買われた。デトロイトがやや回復したのは、日本の良質な部品メーカーが100社も進出しアメリカのビッグスリーに納人するようになったからである。
4.貿易戦争でアメリカにいじめられた国の産業は、グローバル化が早まり結果的に強くなっている。たとえば、日本のトヨタはそれまでジャストインタイムの生産ができなくなるので、愛知から20km以上離れることができなかったが、日米貿易摩擦を境に、世界52ヵ所(27カ国)で生産できるように変貌した。こういうことをアメリカも中国も歴史から学ぶべきである。
5.トランプ大統領のアメリカ・ファーストには、同盟国のヨーロッパ各国も振り回されている。その事例は、トランプ大統領は2017年に、アメリカにとって非常に不公平だと一方的に決めつけ、パリ協定からの離脱を表明。フランスのマクロン大統領は、この離脱に対しいつかは戻ってくるだろうといっているが、石炭ロビーから多額の献金を受けているトランプ政権に、復帰の可能性はまずない。アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの国連常任理事国にドイツを加えた主要六力国とイランとの間で2015年に結ばれた核合意からも、2018年5月、トランプ大統領は離脱を表明した。査察役のIAEA(国際原子力機関)は、イランが核合意を順守していることを認めていて、他の5カ国も合意継続を訴えていたが、耳を貸そうともしなかった。
6.イラン核合意はオバマ前大統領の外交成果で、それがトランプ大統領は気に入らない。また、イスラム教シーア派のイランと核合意を結んだことで、オバマ政権時のアメリカはイスラム教スンニ派のサウジアラビアとの関係に距離ができていたが、トランプ大統領が核合意から離脱したため、その距離は一気に縮まった。ジャマル・カショギ氏が殺害された事件で、指示を出したとみられているムハンマド皇太子に対し厳しい態度をとらないのも、トランプ政権とサウジが蜜月状態にあるからである。
7.輸入制限の問題もある。トランプ大統領は2018年3月、「鉄鋼とアルミニウム産業をわが国の手に取り戻す」といって、鉄鋼輸入品に25%、アルミニウム製品に10%の関税を課す方針を明らかにした。これに対し欧州委員会委員長のジャン・クロード・ユンケル氏は、明らかなWTOルール違反だとして、アメリカから輸入するハーレーダビッドソン、リーバイスなどアメリカを代表する製品や、アメリカ産バーボンウイスキーに報復関税をかけて対抗したが、額はそれほど大きくはない。トランプ大統領は、アメリカに入ってくるすべての自動車や自動車部品に20%の関税を課すと警告している。


yuji5327 at 06:50 

2019年08月17日

正常化のプロセスが働かなくなった理由は3つ、1つ目、アメリカという覇権国家の喪失、2つ目、ディアの衰退、ネットやSNSの発達。3つ目は、アカデミアと現実の乖離、経済学者は無能。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第3章 G-1=Me First 世界をかき回すトランプ問題」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.NATOの加盟国がGDPの4%という防衛費を達成できないなら、アメリカはNATOを脱退するというトランプ大統領の脅しに、各国ともとりあえず2024年までにGDPの2%を払うことに同意した。その裏でアメリカ抜きの「欧州連合軍」をつくろうという動きも出始めている。NATOはもともと米ソ冷戦時代に、ヨーロッパを守るという目的のために、アメリカ主導でできたものだから、アメリカが中心であり、いちばん貢献しているのも間違いない。しかし、そのアメリカのリーダーが、いまは自国の利益がいちばんであると堂々と公言している。いざというときにアメリカがヨーロッパを守ってくれるかどうかあやしい。
2.フランスのマクロン大統領は、ドイツ連邦議会で演説をした際に、欧州連合軍をつくろうと呼びかけると、ドイツのメルケル首相もこれを支持した。アメリカは現在GDPの3.5%もの防衛費を使っているが、それは単にアメリカ国内の軍事ロビーが強いからである。もともとヨーロッパが頭を下げてアメリカに用心棒をやってもらっているわけではないし、アメリカがいなくなればロシアとは関係がよくなるから、加盟国の軍事費はいまより少なくてすむ。だから、アメリカが出ていくというのであれば、さっさと出ていってほしいというのがヨーロッパの本音だろう。
3.世界中で異常としかいえない指導者が日常的にはびこるようになった。これは世界全体で起こっている構造的な理由により正常化のプロセスが機能しなくなったからである。異常な指導者の代表がアメリカのトランプ大統領であり、そのアメリカの隣国であるメキシコでは、2018年7月の大統領選で、メキシコのトランプと称される、究極のナショナリストにしてポピュリストのロペス・オブラドール元メキシコシティ市長が勝利した。ブラジルでも2018年10月の大統領選で、ブラジルのトランプと呼ばれる極右、ポピュリストのジャイール・ボルソナーロ下院議員が当選した。
4.ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領も、前任のウーゴ・チャベス氏同様、独裁者である。2018年5月に再選を果たしたが、アメリカやその周辺国は、選挙は不正に行われたものとして、正当性を認めていない。ベネズエラは深刻なハイパーインフレに見舞われていて、2018年のインフレ率はなんと169万%超。物資も枯渇し生活が成り立たないと国民の不満も高まっているが、マドゥロ政権は逆に政権批判者を拘束するなど、締め付けを強化している。これに対して国民議会議長のファン・グアイド氏が暫定大統領に就任すると、西欧諸国や中南米の多くの国がグアイド氏を支持し、外国からの信任投票で大統領が決まるというあまり前例のない過程に入っている。
5.トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン氏も、首相時代はまともな人物だったが、2014年に大統領に選ばれてからは、徐々に独裁色が強くなってきた。サウジアラビアの下位後継者と目されるムハンマド・ビン・サルマン皇太子も独裁者で、反体制派のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害の黒幕とみられている。
6.フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ氏は大統領に就任すると「麻薬犯罪者は殺してもいい」と公言し、すでに5000人以上が麻薬犯罪捜査の過程で命を落とした。ただ、それでも国民の7割以上は彼を支持している。カンボジアのフン・セン首相も、最大野党を解党したり、政権に批判的な主要新聞やラジオ局を閉鎖したり、日に日に独裁色を強めている。同国は、現政権前にポル・ポト政権時代の非常な圧政により国民を苦境に陥れた過去をもつが、その反省の念はみられない。このほかロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩委員長、韓国の文在寅大統領なども、異常な指導者である。このような人間が、指導者として国を率いている状態が、いつの間にか不思議ではなくなってきた。これは、正常化のプロセスが働いていないからである。
7.正常化のプロセスが働かなくなった理由は3つある。1つ目は、アメリカという覇権国家の喪失。これまではアメリカが、自分たちが普遍的価値と信じる自由と民主主義を世界中に移植してきたため、アメリカの価値観に沿った道徳で世界の秩序が保たれてきたが、トランプ氏が大統領に就任するや、世界に向けて「アメリカ・ファースト」を宣言。これによって、世界の秩序よりも自国の利益を優先する風潮が変わった。トランプ大統領は、民主的なEU諸国と協議を重ねるよりも、独裁者のいる国の指導者と一対一で交渉すれば全面解決すると考えていて、金正恩朝鮮労働党委員長などとも対話を重ねている。2つ目は、マスメディアの衰退。ネットやSNSの発達によって情報の民主化が起き、情報を独占できなくなったマスメディアの影響力が急速に低下した。また、アメリカでは、トランプ大統領が自分にとって不都合な記事を、フェイクニュースと切り捨てるため、メディアの記者たちの意欲が減退し、筆致に勢いがなくなってきている。3つ目は、アカデミアと現実の乖離。グローバルな経済モデルが変遷してきたが、いまの経済学者は無能で、いまだにジョン・メイナード・ケインズの経済原論の微修正ばかりである。学者であれば、サイバー経済、ボーダレス経済、マルチプル経済といった現代の経済事象にかなう新しい経済理論を構築してしかるべきだがそれができていない。



yuji5327 at 06:36 

2019年08月16日

中国からアメリカへの輸入品は、アメリカ企業が中国に生産を委託したもの、アメリカ企業が中国に進出して生産したものだから、アメリカ人の雇用を奪っているというのは間違い。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第3章 G-1=Me First 世界をかき回すトランプ問題」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.アメリカは、現在中国と貿易戦争の真っ最中である。2018年7月、トランプ大統領は中国に対し約5000億ドルの輸入品に関税を課すと宣言、これまでその50%にあたる約2500億ドル分に25%の関税を課した。一方、中国も報復措置として、アメリカからの輸入品約1500億ドルに対して同じく25%の関税を課すと宣言した。中国はアメリカに対しすでに約1100億ドル分の関税を課している。この不毛な争いの原因は、トランプ大統領の無知にある。彼はグローバル化の意味をわかっていない。いま起こっているグローバル化を定義するとすれば、消費者中心の世界最適化である。企業がそれらを追求して調達、製造、販売網の構築を世界規模で展開するのが、現代企業のグローバリゼーションである。
2.トランプ大統領は、中国がアメリカ人の雇用を奪っているというが、現実にはそんな事実はない。おそらく彼の頭の中にあるのは、1960年代後半の繊維から1980年代の電化製品や自動車にいたる日米貿易戦争である。たとえばAV機器では、ソニーやパナソニックだけでなく旧アカイ、ティアック、パイオニアといった日本メーカーが全米を席巻し、アメリカの同業者を駆逐してしまった。自動車でも、デトロイトの雇用が日本車によって奪われるといったようなことが、当時は実際に起こっていた。しかし、いま自分のブランドでアメリカに販売網をもち、製品を売りまくっている中国企業など、どこを探してもみつからない。唯一その力があるファーウェイは、すでにアメリカ市場から締め出された。
3.現在の中国からアメリカへの輸人品は、アメリカ企業がグローバル化の一環として中国に生産を委託したもの、もしくはアメリカ企業が自ら中国に進出して生産したものである。だから、中国がアメリカ人の雇用を奪っているというのは、間違いである。同じ輸入超過でも、かつての日本と現在の中国とではまるで異なっているが、トランプ大統領にはそれが理解できていない。グローバル化とは消費者中心の世界最適化なのだから、グローバル化ができなければ、被害を受けるのは消費者である。また、これまで中国でつくっていたものをアメリカで生産しようとしても、部品も雇用もないのでできない。最後はまた元の形に戻る。
4.アパレルのような産業であれば、中国のほかにもバングラディシュのような低賃金労働を供給できる国や地域が存在するので、そういうところに生産拠点を移すことは可能である。しかし、電気や電子部品となると、中国以外は考えられない。ベトナムはといわれても、広東省くらいの人ロしかない国の規模では、中国の巨大生産工場の代わりなど到底無理である。完全雇用に近いいまのアメリカでも、新たに100万人の雇用は絶対に生み出せない。
5.中国製品に追加関税をかけると、関税収人が最大10兆円程度増える。国内物価も上昇するのでアメリカ国民にとっていいことは何もないが、濡れ手に粟で10兆円の歳人増を手にするアメリカ政府は笑いが止まらない。トランプ大統領がそこまで考えて、中国からの輸入品に追加関税を課したのであれば、彼を見直すが、その心配はない。このトランプ大統領の仕掛けた貿易戦争を受けて立つ形で、アメリカからの輸入品に対する追加関税で応酬する中国は、あまり賢明ではない。中国が対抗措置をとれば、ディールに勝つというのがトランプ大統領の目的だから、さらなる強硬手段に出てくる。ファーウェイやZTEなどの中国のハイテク企業が叩かれるのも無理はない。中国は報復を行うよりも、輸入超過が生じるアメリカの構造的な問題を冷静に指摘すればよい。
6.トランプ大統領にも習近平国家主席にも理解できるよう、現在のグローバル経済の仕組みを説明すると、第1フェーズは18世紀後半から19世紀にかけてで、国民国家の誕生と同時に始まったこの時代の国家間の貿易は、イギリスの経済学者デヴィッド・リカードが提唱した「比較優位の原則」に基づいて行われていた。これは、ポルトガルであればワイン、英国のヨークシャーであれば毛織物というように、それぞれの国が生産性の高い分野に特化し、それ以外のものは輸入で賄うようにすることで、全体の利益が高まるという考え方である。
7.このとき問題になるのは通貨の交換レート(為替レート)であり、これは長らくリカードや、スウェーデンの経済学者グスタフ・カッセルの購買力平価説に支配されてきた。同じ品物が、A国で買うと通貨Aが100単位、B国だと通貨Bが150単位だとすると、通貨Aと通貨Bの為替レートは1対1.5の逆数となる。
8.第2フェーズは20世紀の、先進国が自国の工業製晶を世界中に売る輸出モデルである。ただし、ここでは常に人件費の高騰が問題となる。アメリカの繊維業を例に挙げると、最初はニューイングランドが中心だったが、業績の向上につれて賃金が上昇すると、より安価な労働力を求めて東部のアパラチアの山の中に移っていった。ところが、さらに人件費の安い日本製の低価格綿製品が輸入されるようになると、ついにアメリカの繊維業は競争力を失ってしまう。時の米ニクソン政権は、安価な日本製品の輸入増加により、国内の繊維産業が衰退し雇用が失われていると、日本に対し繊維製品輸出の自主規制を要請した。ここから20年に及ぶ日米貿易戦争が始まった。最後は、日本がアメリカ側の要求を全面的にのむ形で、日米繊維交渉は決着するが、このときにはすでに日本の繊維業も競争力が弱まって、世界貿易の主役は台湾や韓国に移ってしまっていた。しかし、この両国の賃金もすぐに上昇し、その後はインドネシア、中国、さらに現在はバングラディシュなどへ主役が移ってきている。
9.第3フェーズは、20世紀終盤の、国境を越え世界の最適地でつくったものをお客さんのいるところにもっていくグローバル企業の登場である。旧ヒューレット・パッカードはアメリカ企業だが、PCやプリンタをつくっているのは中国である。かつて大前氏が社外取締役を務めていたナイキも、アメリカでつくるのは試作品だけで、製品の製造拠点は、ベトナム、インドネシァ、中国などだった。アップルのiPhoneやiPadも、鴻海の深圳や成都の工場から出荷されている。この第3フェーズは、アメリカの圧勝だったといっていい。
10.第4フェーズは、21世紀のサイバー経済である。代表的なのがFAANGと呼ばれているフェイスブック(Fcsbook)、アップル(Apple)、アマゾン(Amazon)、ネットフリックス(Netflix)、グーグル/アルファベット(Google/Alphabet〉といったIT企業である。ただし、これらのサイバー企業の業績は通関統には出てこない。ネットブリックスであれば、ユーザーはどこにいてもインターネット回線を通してドラマや映画を観ることができ、決済はクレジットカードである。役人が港の税関に座って計量しようと待っていても、そんなところは通らないから無理である。この第4フェーズも、アメリカのひとり勝ちである。時価総額世界トップ10社のうちアメリカ企業が8社を占める、このいまの経済のどこに文句があるのかと、世界はトランプの認識不足をもっと突くべきである。
11.第5フェーズは、21世紀のeコマースである。強いのは中国で、とくにC2C2CまたはC2B2Cの領域では、中国が明らかに先行している。スマートフォンの普及に伴い、中国では買い物をする場所が実店舗から、完全にeコマースに変わった。毎年11月11日の独身の日には、ECサイトが一斉にセールを行う。


yuji5327 at 06:41 

2019年08月14日

日本の自動車産業が強いのは、製品がコモディティー化していないからである。機能や品質などでの差別化ができず、価格だけが選択の基準となってしまった製品である。


「野口悠紀雄著:自動車産業は将来も日本経済を支えるか? 週刊ダイヤモン 2019.6.29.」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本の半導体産業や液晶産業の不調が目立つ半面で、自動車産業は好調である。現在の日本の製造業の中心が自動車産業であることは、間違いない。法人企業統計調査で自動車・同付属品製造業の状況を見ると、次の通りである。(2019年1〜3月期の全規摸の計数。かっこ内は製造業全体に占める比率)。売上高18・9兆円(18・2%)、営業利益4902億円(11・3%)、人員計105万人(11・7%)。13年1〜3月期から19年1〜3月期までの売上高増加率は、製造業全体では6・3%だが、自動車・同付唇開製造業では、24・4%もの高さになっている。
2.資本金1000万円以上2000万円未満の企業を見ると、製造業全体では売上高増加率が▲9・3%だが、自動車・同付属品製造業では、63・6%もの高さになっている。日本自動車工業会の資料では、18年4月〜19年3月で、四輪車の国内生産は975万台、輸出が484万台である。つまり、国内で生産される約半分が輸出される。
3.国内需要は停滞しているが、海外需要が伸びるので輸出が伸び、そのために国内生産を維持できる。自動車輸出が輸出総額に占める比率は15・1%であり、鉄鋼(4・2%)、原動機(3・6%)、半導体等製造装置(3・3%)、半導体等電予部品(5・1%)などに比べてかなり高い。自動車は日本の最も重要な輸出品である。これは、日本の自動車メーカーの国際競争力が強いことの反映である。
4.1980年代には、世界の時価総額リストの上位に日本の金.融機関も登場したが、いまや金融機関は脱落し、上位50社に残る日本企業は、トヨタ自動車だけになった。このリストでも、日本を代表しているのは自動車会社である。
5.日本の自動車産業は、生産の海外展開を進めている。日本自動車工業会の資料では、四輪車の18年4月〜19年3月の海外生産は1976万台である。国内生産は975万台なので、海外生産比率(海外生産が世界生産に占める比率)は、67・0%になる。日本の製造業全体で見た海外生産比率は、16年度で23・8%だ。自動車の海外生産比率は、これに比べて著しく高い。
6.日本の自動車産業はこのようにグローバルな産業なので、単独決算と連結決算で数字が大きく違う。トヨタ自動車の場合、19年3月期で、営業利益は、単独では1.3兆円だが、連結では2・5兆円になる。ホンダの場合、単独では10億円だが、連結では7264億円になる。
7.法人企業統計調査の計数は、単独決算のものである。自動車産業が日本経済に占める比率は、連結で見ればもっと大きいことになる。日本企業は80年代の貿易摩擦をきっかけに、ヨーロッパやアメリカを中心に海外生産を拡大してきた。その後、新興国が工業化し、また需要先としても台頭してきたため、新興国での生産も増大した。
8.自動車の場合には、貿易摩擦との関係があるので、先進国での生産比率が高い。この点は、コスト削減を主たる目的として新興国で生産が進んだ他の業種との違いである。海外生産の比重が高いので、自動車産業の成長は、必ずしも日本国内の雇用を増やすわけではない。また、設備投資の多くも海外で行われる。研究開発は本国でというのがこれまでのパターンだったが、研究開発の重点が人工知能(AI)にシフトしていくと、これも海外に出ていってしまうかもしれない。
9.自動重産業の活動は、世界情勢の変化によって大きな影響を受ける。特に最近では、トランプ米大統領の関税政策によつて、少なからぬ影響を受けている。同大統領の支持基盤といわれる「ラストベルト」は、かつてのアメリカの自動車産業の中心地である。だから、その地域での生産を取り戻すために、輸入に高関税を課すというのは、十分に考えられることである。
10.今年の2月には、同大統領は、自動車の輸入を制限するため追加関税を発動すべきかどうかの検討を指示した。日本との通商交渉で、関税の代わりに数量制限などを迫られる可能性もある。今年の5月31日には、トランプ大統領はメキシコに制裁関税を課す計画を発表した。日本の自動車メーカーの多くがアメリカへの輸出の生産拠点をメキシコに置いているため、影響は不可避との懸念が台頭し、日
本の自動車業界に波紋が広がった。6月になって、追加関税の発動を見送ると表明されたものの、今後どうなるかは分からない。
11.日本の自動車産業はなぜ強いのか?  半導体や液晶などとの違いは何なのか? 自動車生産は、日本が今後も依存できる分野なのか? 日本の自動車産業が強いのは、製品がコモディティー化していないからである。ここでコモディティー化とは、機能や品質などでの差別化ができず、価格だけが選択の基準となってしまった製品である。電気製品では、デジタル化などによって複雑な製造工程を必要としなくなったため、コモディティー化が顕著に進んだ。そして、安価な労働力で生産ができる新興国の台頭を許し、日本のメーカーのシェアが著しく低下した。
12.それに対して、自動車の場合には、価格はあまり低下していない。08年に発表されたインドの「タタ・ナノ」などの格安自動車の例はあるが、あまり普及しなかった。自動車がコモディティー化しない理由は、幾つか挙げられる。第1は、安全性について一定の基準を要求されることである。仮に公的な基準がなかったとしても、人々は安全性を求める。価格がいくら安くても、安全性で問題があれば、買わない。第2の理由としていわれるのは、メカニカルに複雑な構造を持つ機械であるために、製造装置だけ備えればすぐに生産できるというわけではない。
13.こうした複雑な製品の組み立てには、規律正しく、チームワークが取れた日本の労働体制が向いているといわれる。しかし、将来を見ると、次の諸点に留意する必要がある。第1に、電気自動車(EV)になれば、自動車という製品の特徴はかなり変わってくる。部品の生産には高度な技術が要求されるとしても、その組み立ては容易になる。第2に、研究開発の内容が、メカニカルな都分に関するものから、AIによる自動運転に関するものにシフトする。
14.この分野では、ウェイモが、実験車の走行距離などで見て、日本メーカーを含めた他社を圧倒的にリードしている。このため、自動運転の時代には、ウェイモが自動車産業をリードすることになり、日本メーカーが優位性を失う危険がある。第3に、自動運転の時代になれば、自動車を巡る環境は一変する。ライドシェアリングの利用が進み、自動車は保有するものから利用するものに変わる。そうなれば、生産量が激減し、自動車メーカーの地位は低下する。このように変化する条件の中で、日本の自動車産業が引き続き優位性を維持できるのかどうかは、確かではない。


yuji5327 at 15:20 

2019年08月13日

中国貴州省は、インフラ整備からビッグデータの収集・集積を経て、その応用に入るべく、内陸の最貧地域の大変貌が注目される。


「鈴木貴元(丸紅中国総監)著:かつての最貧省・貴州が一変、インフラ整備と新産業育成で新しい成長モデルを体現、週刊ダイヤモンド、2019.6.29」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.かって中国で最も貧しい省といわれた貴州省は、2010年代に中国経済全体がスローダウンを続ける中、年平均+11・5%(11〜18年。全国年平均+7・4%)の高成長を達成し、重慶市、雲南省と並んで、中国の成長の新時代におけるモデル的な地域となっている。
2.貴州省は地形の90%以上が山地で、しかも石灰岩でできたカルスト地形であり、長きにわたって浸食され平らな部分は小さな岩盤に分断されている。そのため、もともとの主要産業である農業は山菜やキノコ、茶など副食品が多く、高付加価値化が遅れていた。、工業も全国的に有名マオタイ酒を除けば、疎開してきた航空機を中心とする軍需産業くらいであった。
3.貴州省の駐在時(08〜10年)にも何度か訪問しているが、当時は省内が山や谷で分断されており、自給自足的な経済をつくらざるを得なかった。そのため当時は、省都の貴陽でも外資企業の進出はごくまれで、大企業といえば酒造、軍需や銀行、電力等の産業に限られていた。
4.それから10年、状況は一転した。理由の一つは陳敏爾・共産党貴州省委貝会書記(当時)の下、12年から加速した高規格道路と高速鉄道の建設であり、もう一つはビッグデータ産業の誘致である。前者については、陳書記の下、分断された岩盤をトンネル・橋梁で連結した結果、省内経済が急速に一体化した。また、高速道路が浴海部の生産地域、特に上海周辺や広東省とのアクセスを改善した結果、これら地域からの高品質な物資が流れ込んでおり、市内にある卸売市場は、洗練された商品で埋め尽くされている。
5.また、高層化されたビルやアパートが立ち並び、その風景は今や沿海部の大都市とさほど変わらなくなっている。2年前はまだ4G(第4世代移動通信システム)が普及期の段階で、情報格差は埋まりつつあったが、一方で外資の飲食店や衣料店はまだ多くなく、物理的な格差は大きかった。現在は、ファストフードや日本食の店、欧米や日本のブランド店が当たり前のように軒を連ねており、物理的な格差はほとんどなくなっている。
6.ビッグデータ産業については、今や上海、青島、武漢など他のデータセンター地域を大きく引き離し、データ収集・蓄積では全国随一を誇る。15年に初めて貴陽でビッグデータ博覧会が行われたころは、上海や北京、武漢などが先行していた。しかし、4Gが普及し、17年ごろからデータ量が爆発的に増えると、気温が通年で安定し、かつ電力が豊富、さらに政府が積極的に企業と人材を誘致する貴陽が注目された。
7.マイクロソフトやNTTデータは貴陽の代表的な企業になっている。5月26〜29日に開催された第5回ビッグデータ産業博覧会は、初回開催から4年もたっているせいか随分落ち着いた様子であった。当地の政府はビッグデータをコアに、サービスロボットや工業用インターネット(IoT)などを強化したいようである。
8.貴州省は、インフラ整備による2・0からビッグデータの収集・集積による3・0を経て、その応用の4・0時代に入るべく模索している。その取り組みは、貧しかった内陸の最貧地域における10年の大変貌のその後として注目されている。


yuji5327 at 06:30 

2019年08月10日

日本を北海道、東北、関東、首都圏、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の11の道州に分割し、憲法を改正してそれぞれに自治権を与える。各道州は知恵を絞る。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第6章 新時代、日本はどうすればいいのか」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.2019年、平成の世が終わり、文字どおり日本は新しい時代に突人する。いま世界は「Gー1(マイナス・ワン)とミー・ファーストを公言しているトランプ大統領のアメリカ」「理想主義的な西欧型民主主義国家という20世紀の国家モデルの崩壊」「米中企業が加速するデジタル・ディスラプション」という3つの要因によって激変している。日本は、これらの各要因にどのように対応すればいいか、大前氏の考えをまとめる。まず、アメリカのトランプ大統領。これは彼の発言にいちいち過敏に反応しないことに尽きる。中国のようにいちいち対抗処置をとるようなことを行えば、トランプ大統領は次なるディールを仕掛けてきて、地獄の底まで引きずり込もうとする。トランプ大統領の本性は不動産屋である。日本の安倍晋三首相も、性急に二国聞協議を進めないこと。そんなことをしても得なことはなにもない。いまのやり方を続けているかぎり、トランプ政権はいずれどこかで崩壊する。それよりもポスト・トランプに向けての準備を日本は進めたほうがいい。
2.国家モデルの変容に関しては、地方に軸足を移せばいい。たとえば、スペイン・バスク州のサン・セバスチャンは「ヨーロッパの美食の都」と呼ばれていて、もともと食事がおいしいといわれ、スペインの中でも、とくにレベルが高く、それを目当てに世界中から訪れる人たちで、年中にぎわっている。スペインという国が崩壊しても、美食の街という求心力をもっているサン・セバスチャンは変わらず世界の食通を魅了し、繁栄し続けることができる。
3.デジタル・ディスラプションは、AIやロボットに負けない人材を育成すれば脅威ではなくなる。ただし、負けないというのは、AIやロボットと競争して勝つことではなく、勘を働かせる、全体像をつくる、リーダーシップを発揮する、ゼロから一を生み出す……、こういった人間にしかできない能力を磨き、進化したAIやロボットを使いこなす側に立てばいい。
4.昭和から平成に代わった1989年の6月に私は、来る新時代への提言を「平成維新」という著書にまとめた。1989年のGDPは、日本の九州と中国がほぼ同じである。昭和がもうすぐ終わろうとしているとき、中国のGDPはまだ33.4兆円で、同じく34.5兆円の九州とほぼ同じだった。それから30年経った現在、中国は日本全体の、2.5倍になっている。この30年間で中国は、安価な人件費で世界の工場となり、さらにハイテクを武器に経済を発展させ、世界市場における存在感を着々と高めてきた。これに対し日本は、完全に世界の成長スピードから遅れ、少しも前に進むことができなかった。
5.大前氏は『平成維新』に、日本には明治維新や太平洋戦争の敗戦に匹敵するパラダイム転換が必要であり、そのためにこれを実行しなければならないという提案をいくつも書いた。憂慮していたのが、急激に進む日本の少子高齢化により、2005年には国民の平均年齢が50歳を超えるという現実であった。人口動態を分析することで今後の展開がかなり正確に予測できる。そして、平均年齢が50歳を超えると、大きな変化はきわめて難しくなる。そうなる前に、変革に着手してほしかったが、本は100万部以上売れたのに、そこに書いたことは何ひとつ実行されなかった。時の為政者がいくつかにでも真剣に取り組んでくれたら、この国は30年にもわたって低迷せずにすんだ。
6.日本が世界の進歩から取り残された最大の責任は、間違いなく政府にある。大前氏がまだ若手のコンサルタントだったころは、国が「鉄は国家なり」というような明確なビジョンを描き、それを実現するために予算を傾斜配分するなど、きちんとリーダーシップを発揮していた。通商産業省が白書を発表すると、誰もが目を皿のようにして読んだが、いまの政府には、新たな産業を立ち上げるといったビジョンもリーダーシップも期待できない。
7.2018年12月、経済産業省が多額の税金を投入してつくった官民ファンドの産業革新投資機構は、わずか3カ月で民間の取締役全員が辞任し、機能停止した。いまの経産省は新しい企業をつくる力などない。大前氏が代表を務める起業家養成に特化したビジネススクール「アタッカーズ・ビジネススクール」では、修了生がすでに810の会社を立ち上げ、その中から弁護士ドットコム、クラウドワークス、ミクシイなど10社を超える上場企業が誕生している。
8.休眠口座に毎年1200億円もの金が貯まる。この10%にあたる120億円があれば2000人もの起業家を生み出す。国が起業を奨励していけば、この国は確実に変わる。国は30年間、そうしたことをまったく行っていない。日本板硝子、オリンパス、ソニー、日産自動車、武田薬品など、日本にもグローバル企業が存在しないわけではないが、これらの企業の経営者の顔ぶれは借りてきた外国人が多い。日産自動車のゴーン前会長をみてもわかるように、やはり借り物には限界がある。グローバル人材を自前で育てることができなければ、真のグローバル企業、グローバル国家になることはできない。人材の育成は世界で活躍するための語学力、説得力と新しいものをゼロから生み出す構創力だ。だが、中央教育審議会の答申を端から端まで読んでも、世界で活躍できる経営人材の育成につながるような教育プログラムはどこにもみつからない。
9.2045年頃にはAIが人類の知能を超えるシンギュラリティに到達するといわれている。ならば、そのころまでにコンピュータに負けない能力を身につけておかなければならないはずだ。ところが、そういった教育プログラムも皆無。中教審の答申が実施されるのはいまから4年後だから、現在の小学校5年生前後が高校生になるときに対象となる。そして、彼らがちょうど35歳くらいになったとき、シンギュラリティが来る。そのときにまったく対応できない人間ばかりでは心配である。日本経済の停滞がこれだけ続いてもなお、文部科学省には危機感も、グローバル化やデジタル化に適応できる人材を育てなくてはならないという発想も行動力もない。
10.日本が低迷したまま浮上できないもうひとつの理由が、中選挙区制に代わって1996年に導入された、ひとつの選挙区から1人を選出する小選挙区制である。これにより人口30万〜35万人に国会議員がひとり選ばれることになった。ある政令指定都市の市長が、「私の地元には8人も国会議員がいる」と語ったあと「私が反対したら選挙には絶対受からない」と、国会議員より市長の自分のほうが上だといわんばかりである。中選挙区制の時代には、天下国家を論じられる外交や内政に強い国会議員が数多くいたが、いまはほとんどが交付金の運び屋にすぎない。そうやって市長にバカにされる。現行の小選挙区制では、市長よりもレベルの低い国会議員しか出てこない。日本という国を21世紀仕様に変えるには、選挙制度を変革して、大選挙区制にすることが絶対に必要である。しかし、選挙制度の改革を行うのは、現在の小選挙区制で選ばれた国会議員である。それを考えると絶望的である。
11.平成元年1989年3月の、世界の企業時価総額ランキングでは、上位10社のうち、IBMとエクソン・モービル以外の8社はすべて日本企業である。それに対し、平成終焉の前年となる2018年9月は、7、8位にアリババとテンセントという中国企業が2社入っているだけで、他はすべてアメリカ企業となっている。日本企業は下をずっとみていくと、ようやく42位にトヨタ自動車が顔を出す。この2つのランキングを並べれば、平成がどういった時代だったのか一目瞭然である。さらに、株価指数の推移をみると、アメリカのダウ平均株価が9倍強、イギリスのFTSE総合株価指数も約3倍となっているのに、日本の日経平均株価はマイナス43ポイント。名目賃金の推移も、アメリカ、ヨーロッパとも約2倍だが、日本はマイナス7ポイント。平成という30年間はこのように他国に対して圧倒的な差をつけられた惨憺たる状況だった。
12.GDPの推移をみるとアメリカ、EU、中国が高い伸びを示し、2018年にいざなぎ景気を超えたはずの日本はほぼ横ばいである。これを「好景気が史ヒ最長期間続いている」という政府と、それを黙って聞いている国民には世界を見る眼も歴史を振り返る力もない。人口は、カナダ、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツがみな増加している中、日本だけがピークを越え減り始めている。こんな状態なのに、政府にも国民にも危機感が感じられないのは、将来から借金をすることで体裁を取り繕っているからである。債務残高の国際比較をみると、日本がいかに多額の債務を抱えているかがわかる。EUには、加盟国は累積債務がGDPの60%を超えてはいけないというルールがあるため、債務残高130%のイタリアはEU本部から叩かれていて、債務削減に苦労しているが、日本の債務はそのイタリアをはるかに上回る238%である。少子高齢化で人口が減り続けているのに、これだけの借金を日本の将来を背負う人たちが返せるわけがない。これは明らかに国家による犯罪、現役世代による将来世代からの窃盗である。
13.ポルトガルは400年かけてゆっくりと衰退していったが、日本はここまでくるのにわずか30年しかかからなかった。ただ、それでもホームレスが街にあふれていないのがまだ救いである。この静かなる衰退のメカニズムをぜひ社会学者に説明してもらいたい。
14.日本を再生するためにまず行うべきことは、主権国家から地域国家へのシフトである。ただし、いまの憲法のまま政府主導で地方を創生しようとしても、それは絶対に無理である。第2次安倍改造内閣で石破茂氏が地方創生担当大臣を務めるも、何も実現できなかった。それは、日本国憲法第8章が足かせとなっているからである。憲法第8章には、地方公共団体は法律で定められた範囲で組織、財産を管理し、法律の範囲内で条例を制定し執行せよと書かれている。つまり、日本の地方には司法、行政、立法という三権がまったく与えられていないので、自治を行うにもやりようがない。議会はあっても法律はつくれない。国で定められた範囲内で条例を定めるのが関の山で、日本の場合地方自治体といっても、実体は中央から業務委託をされた出先機関(憲法では地方公共団体、と記載されている)でしかない。世界をみると、北欧のノルウェーやスウェーデン、西欧のベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)やスイス、アジア地域国家のシンガポール、香港といったクオリティ国家。ドイツのハンブルクやミュンヘン、イタリアの「第3のイタリア」などの都市国家。中国の北京、上海、杭州、深圳、インドのムンバイ、バンガロール、イギリスのロンドン、フランスのパリのようなメガシティに世界から人が集まっている。これからの繁栄の単位は主権国家ではなく地域国家である。
15.「毎日人がくる、企業がくる、情報がくる、お金がくる」。これが、かつて大前氏が「地域国家論』に記した地域国家繁栄の条件である。日本の地方もこの地域国家の競争にぜひとも参加してもらいたい。そのためにも地方に三権をできる限り移譲すべきである。。地方が小さいながら繁栄するには、3つの切り口がある。1つ目が、宗教。メッカ、エルサレム、バチカン市国などがそうである。2つ目が、リゾート。モルディブ、プーケット島、バリ島、サムイ島などのアジアのスーパーリゾート、スペイン・バスク州のサン・セバスチャンなどがこれにあたる。3つ目が、企業。代表的なのはスペイン北西部のア・コルーニャにあるザラで有名なインディテックス、ストックホルムのH&M、シアトルのマイクロソフト、アマゾンなどである。日本の場合はユニクロ(ファーストリテイリング)、日立製作所、旭化成のように、地方で成功するとすぐ東京や大阪に進出する傾向にあり、これも日本の地方創生がうまくいかない理由の1つとなっている。
16.1人当たりGDPと人口規模を繁栄の単位とすると、首都圏はカナダと同じである。関西は台湾とほぼ同じで、オランダよりも人口が多い。九州はベルギーに匹敵する。四国はニュージーランドと同等。このように、表にしてみると、日本を道州に分けた場合、ほとんどの道州は国家と肩を並べられるくらいの経済力がある。
17.平成は日本にとって失われた30年だった。次の元号、令和の時代に日本がやるべきことは、その失われた30年を取り戻すしかない。しかし、すでに半ば機能不全に陥っている国にその力はない。だから、道州制なのである。日本を北海道、東北、関東、首都圏、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の11の道州に分割し、憲法を改正してそれぞれに自治権を与える。各道州は知恵を絞って世界からヒト、モノ、カネ、情報を呼び込み、各道州の首都は発展を競い合う。日本の地方にはそれができるポテンシャルがある。道州が自治権を得てお互いに競い合うようになれば、いままでのように中央からの金と指示を待っているだけの自治体とは抜本的に違ってくる。この道州制が機能すれば、日本はポルトガルのようにはならず、再び輝きを取り戻すことができる。いまの世界はメガリジョンの競争によって、繁栄を呼び込む時代である。自分の税金で栄えているところはない。世界へあるいは大きな国では他の地方からヒト、カネ、モノ、情報を呼び込んで栄える。自国民に税金をかけて繁栄するとか、他国を搾取して栄える植民地支配の時代ではない。



yuji5327 at 06:49 

2019年08月08日

企業の税負担額は30%を超えていたが、今では20%程度に下がった。多くの企業が本社機能を置いているアイルランドが12.5%と低い、スイスの20%を下回る。

2019/6/21付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 161,397部)は「高齢ドライバー/デジタル課税〜高齢ドライバーの交通事故割合が高いわけではない」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.政府が今月下旬に閣議決定する成長戦略に、高齢ドライバー専用の新たな運転免許を創設する見通しが
明らかになった。75歳以上を対象に自動ブレーキなどの安全機能がついた車種のみ運転することができることなどを検討するもので、高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、対応を急ぐ考えである。高齢ドライバー用の制度に強制力はない予定なので、全体として「緩い」ものになると思われる。
2.高齢ドライバー向けの対策は早く実施すべきでだが、過度に高齢ドライバーの事故だけを問題視するのではなく、全体像を理解することが大事である。年齢別の運転免許保有比率は、75歳以上は6.8%に過ぎない。年齢別の交通事故件数・割合を見ると、75歳以上の数字は25〜29歳とほぼ変わらない。
3.日本の人口で高齢者の人数が増えているので、高齢ドライバーの事故が目立つだけで、事故割合そのものは大きく増えていない。また、20〜24歳、16〜19歳という若い年代の方が事故件数・割合は多のっで」いですし、飲酒運転・無免許運転など無謀なものも多くなっているので、高齢ドライバーだけに焦点を当てて問題視するのは違う。
4.高齢ドライバーの交通事故は、いずれ自動運転が普及すれば解決する。現状の対策で言えば、一律に高齢ドライバーを対象にするよりも、「注意すべき人」を確認するべきである。自分も高齢ドライバーとして免許更新の際に試験を受けた経験があるが、一緒に試験を受けている人の中に明らかに「この人の運転は危ないな」と感じる方がいる。普段から周囲の人が見ていても、こうした人の運転の危うさには気づけるはずなので、そのときに忠告することができれば良い。
5.日経新聞は9日、「法人税、どこに消えた」と題する記事を掲載した。これは2000年代までは、企業の利益に比例して法人税の負担額が増えていたのに対し、2010年以降はその比率が低下していると紹介。多くの企業が知的財産権を税率の低い国に移しているのに加え、経済のデジタル化でサービスの利用やお金の流れが見えにくくなっていることが要因としている。
6.最近、日経新聞はデータをもとに問題提起する記事を掲載しているが、この記事は非常に良い分析をしている。政治家が企業人を喜ばせるために、法人税率を引き下げ、本社機能を移してもらう動きが続いている。日本でも、2007年から2018年で税引前利益は若干増加したのに、企業の税負担額は減少するという事態が起きている。
7.かつて企業の税負担額は30%を超えていたが、今では20%程度に下がっている。世界的にも法人税の減税競争は激しさを増している。製薬会社など多くの企業が本社機能を置いているアイルランドが12.5%と低い水準になっていて、スイスは20%、英国、チェコも20%を下回る水準で企業を呼び込もうとしている。かつて40%を超えていた米国と日本も30%を下回る水準まで落とし、イタリアも同様に30%以下になっている。また以前は50%を超えていたドイツでさえ、30%程度に落とさざるを得ない状況になっている。
8.欧州の企業では、法人税率が高いドイツから本社機能をスイスやオランダに移しているところが多く、米国の企業はアイルランドへ向かうところが比較的多くなっている。その中でもGAFAは、オランダとアイルランドで税法上の仕掛けを利用して、実質的に税金がかからないような体制をとっている。また、ウーバーは本国で利益を出さないようにして、オペレーションをオランダに移し、さらにタックスヘイブンの国を利用している。創業したときから、税金をなるべく支払わない仕掛けを作っている。このように「ちょっとしたテクニック」を使うだけで、ある国には税金が納められないとなると、不公平であり大きな問題である。
9.これを解消するためには、本社機能がある場所・国に関係なく、全世界の利益に対してオペレーションの大きさで比例配分して課税する方法しかない。たとえば、Amazonなら全世界における日本のオペレーションの割合を算出し、全世界の利益からその割合に応じて、日本で納税してもらう。これを「外形標準課税」と言う。
先日開催された、G20の財務相・中央銀行総裁会議でもこの問題はテーマになった。結論は出ていないが、世界的に解決すべき大きな課題である。



yuji5327 at 06:42 

2019年08月07日

これからは大学を卒業したら勉強はそこで終わりではなく、社会に出てからも常に新しい知識や情報を学び直すべきで、そのための仕組みをつくるべきだ。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第5章 ディジタル・ディスラプション」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.新たな時代に向けて、日本と企業が取り組まなければならない課題ははっきりしている。人材の育成である。グローバル人材、さらに、デジタル・ディスラプション時代に活躍できる人材を育てられなければ、そんな国や企業に未来はない。グローバル人材に必要なのは、語学力である。たとえば、ドイツの大企業では、いまから15年ほど前からほとんどの企業で、英語で十分なコミュニヶーションがとれないと部長職以上に就けないという規則を定めている。これは、それ以前に国内有数の電機、自動車、薬品企業が相次いでアメリカ系企業を買収したにもかかわらず、英語でオペレーションが満足にできなかったため、そろって業績不振で苦しんだことが発端である。
2.これに呼応するように学校でも英語教育に力を入れ始めた経緯もあり、現在ではドイツ人の英語力は北欧の人々と遜色ない。フィンランドも、かつてはアメリカと旧ソ連の間で漁夫の利を手にしていたのに、冷戦が終わると途端に景気が冷え込んで、ブルーカラーの失業率が4割にまで上がってしまった。そこで、フィンランド政府は、グローバルに活躍できる人材を育てないと国がもたないと判断し、それまでフィンランド語で行っていた大学の授業を、すべて英語に変更した。すると、フィンランドの大学に、英語を苦にしない優秀な人材がヨーロッパ中から集まってき。そういった人たちと一緒に講義を受け、ディスカッションすることで、フィンランドの若者の英語力はメキメキ上達した。フィンランドに本社を置く通信設備会社ノキアがグローバル企業として発展した。フィンランドは現在では、小学校から英語教育や起業家養成に力を入れている。
3.本気でグローバル人材の輩出に取り組むのであれば、単に英語のカリキュラムを増やすのではなく、フィンランドのように他の教科も英語で学ぶような仕組みをつくる必要がある。あるいは、幼少期から母国語と英語の併用が当たり前の環境をつくってしまうのもいい。
4.スイスは国内にドイツ語、フランス語、イタリア語の3つの地区があるため、国民はドイツ語、フランス語、イタリア語、英語の四力国語を話すことができる人が多い。アジアでは、マレーシアの事例が参考になる。20年前に、大前氏がマレーシアで18年にわたりマハティール・ビン・モハマド首相(当時)の経済アドバイザーをしていたときに、マレーシアなので母国語はマレー語だが、マレー語に統一すると国民の3割にあたる中国系の人たちから文句が出る。そこで、マハティール首相に、どの科目を何語で教えるかを学校で決められるようにしたらどうかとアドバイスしたら、理数系は英語、国語や宗教はマレー語といったすみわけが自然とできてきた。18.英語で教えていいとなったので、オーストラリアなどの英語圏から優秀な理科や数学の先生を雇う学校が増えた。彼らは、完壁な英語で授業を行うため、学生たちは理科や数学を勉強しながら、知らず知らずのうちに英語力も身につくようになった。こうして、マレーシアの大学を卒業したバイリンガルな人たちが、後にあの国に発展をもたらす原動力となった。英語を教えるのではなく、英語で教えることの効果をフィンランドやマレーシアの例は物語っている。
5.小、中、高校では文科省の指導要領が存在するが、これは欧米に「追いつき追い越せ」時代の「答えを覚えさせる」教育を微修正したものに過ぎない。21世紀は「答えのない時代」に答えを導き出す方法は教えていない。大前氏はアオバジャパン・インターナショナルスクールを経営しているが、ここはIB(国際バカロレア)の認証を受けている。アオバではバイリンガルかつリーダーシップを振るうことができる人材の育成はもちろんのこと、Theory of Thinking(思考理論)を重視している。これは答えを見つけ出すための思考方法で、この訓練を受けていないと未知の領域で人々を引っ張っていく能力が発揮できない。
6.デジタル・ディスラプション時代に活躍できる人材については、企業に入ってから鍛え直すしかない。一方、大学で象牙の塔にこもりっぱなしの先生から教わったカビの生えたような知識では、とても太刀打ちできない。とはいえ、企業で古い社員が出てきても、教えられるのはデジタル・ディスラプション時代以前のやり方なので、やはりこれも役に立たない。デジタル・ディスラプションに対応するために必要なのは、恒常的な学び直しである。
7.これからは大学を卒業したら勉強はそこで終わりではなく、社会に出てからも常に新しい知識や情報を学び直すべきであり、そのための仕組みをつくるべきだと考えている。日本政府もようやくこの学び直しをリカレント教育といい始めたが、彼らの提唱するリカレント教育は、定年退職後の再就職や、失業対策を念頭に置いた施策である。年金給付開始年齢の引き上げには役に立つかもしれないが、学び直しとはそういったものではない。8.21世紀は、あらゆる業界で破壊的変革が起こり、経済もビジネスもかつてないスピードで変化する。だから、10年ごとに世界最先端の事例やテクノロジーを学び直し、スキルを身につけて次の10年に備えなければならない。シンギュラリティ(技術的特異点)の時代にもコンピュータに負けない人間の「構創力」や指導力を身につけていかなければならない。国が学び直し教育を行ってくれれば、それに越したことはないが、そうでないなら企業内に設けるしかない。その際、大事なのは人事部だけに任せるのではなく社長と人事部が一緒になって取り組む。さらに研修所に社員を集めるのではなく、ネットを使ってリアルタイムかつオンラインで行えるようサイバー環境を整えるということの2つである。
9.こういうシステムが社内で機能していると、組織の上に行けば行くほど難しい課題を解決するために、最新のスキルを獲得しなければならなくなる。こういう会社では、サラリーマンを続ければそれだけ実務能力が上がり、稼ぐ力が養われる。これまでの日本の会社はこれと逆で、役職が上がるにつれて、部下の行ったことをただまとめて報告するだけといったように、仕事が楽になる傾向があった。これからもそのままであれば、その会社はグローバル化とデジタル化についていけず、早晩市場から退出を余儀なくされる。



yuji5327 at 06:27 

2019年08月05日

中国では、産業や教育に関して政府が地方都市の首長に権限をもたせて、自由にさせている。地方都市どうしが競い合いながら成長する循環が起こっている。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第4章 国家モデルの変容―色あせる民主主義」の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ヨーロッパではワーキングプアが大きな社会問題となっている。OECDは、所得の中央値の半分を下回っている人を相対的貧困者と定義している。この相対的貧困者=ワーキングプアの18〜64歳人口に占める比率を示した。とくに深刻なのがルーマニアとスペインで、黄色いベストの抗議活動がいまだに続くフランスやイギリスも、首都圏を除くと決してよくない。イギリスでは、8人に1人が平均所得の60%以下の収入である。2016年に実施されたイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票の際にはこういった人たちが、自分たちは移民・難民に仕事を奪われたと思い込んで、賛成票を投じた。フランスのマクロン大統領を窮地に追い込んだ、黄色いベスト運動の抗議活動の中心にいるのも、同じ層の人たちである。ここ数年、世界各地で存在感を高めているポピュリスト政党は、このようなワーキングプアの人たちを取り込みながら、勢力を拡大している。
2.トランプ大統領は、ワーキングプア対策など何も行っていないにもかかわらず、ポスト・トゥルース発言でその層(主としてアメリカ中部のプアホワイト)に訴求することに成功している。幸い、日本ではまだワーキングプアが欧米ほど大きな問題とはなっていないが、決して無縁というわけではない。
3.イギリスがEUから離脱すべきかを問う世論調査の推移をみると、いまは明らかに残留派が離脱派を上回っている。「わからない」という人が減り、その分、よく考えたらやはり残ったほうがいいと判断する人が増えた。TVのニュース番組でイギリスの厚生省が「3月29日のEU離脱前に常備薬を買いだめしておいてください。とくに糖尿病の人は、薬や透析液などを国内で製造していないのでご注意を」というアナウンスをしていた。このように、ブレグジットになると具体的に自分の身にどういうことが起こるかということが、イギリス国民も段々わかってきたのだ。スペインやポルトガルから毎日直送されてくるトマトなどが、人管待ちの状態で何日もたつと"生鮮"でなくなる。こうした具体的な例が毎日のようにテレビなどで報道されることで、いまさらではあるが、人々は「やはり残留がいい」と意見を変えてきている。
4.こうした予想されるべき実態を明確にせず、2016年6月に国民投票を強行したキャメロン前首相に対する国民の怒りも増している。イギリスの失業率は、EUよりもはるかに低く、ほぼ完全雇用状態となっていて、レストランなども働き手を確保するのに苦労している。移民・難民がイギリス人の仕事を奪っているというのが間違いである。イギリスにおける外国人労働者の推移をみると、非EU加盟国出身者よりもEU加盟国から来ている人のほうが、圧倒的に多い。この理由は、イギリスに来ている労働者の多くは、EU大陸から来ている病院や研究所で働くインテリジェントワーカーである。
5.イギリス社会は、こういう人たちがいるおかげで成り立っているが、もしイギリスがEUから離脱すると、現在イギリスで働いているインテリジェントワーカーは、新たにワーキングビザを取得しなければ働けなくなる。だから、みないったん母国に帰る。そうなると社会が大混乱に陥る。こういった状況がある程度予測できたので、ブレグジットを問う国民投票があった直後、イギリスのBBCに出演し「EUから離脱するというのはどういうことなのかわかっていない人が多いので、もう一度国民投票をやり直すべきだ」と提言したが、イギリスのある大臣から「日本人のお前に何がわかる」と一蹴された。
6.東欧では反民主化の動きが活発化していて、EUはたいへん警戒を強めている。チェコでは、2017年12月に、EUの難民政策を公然と批判する発言を行った、「チェコのトランプ」と呼ばれているアンドレイ・バビシュ氏が首相に就任した。また、大統領のミロシュ・ゼマン氏は親ロシア派で、プーチン大統領にきわめて近い。スロバキアでは2018年2月、政府とマフィアによるEUの補助金を巡る癒着を取材していた著名なジャーナリストのヤン・クツィアク氏が殺害されると、大規模な反政府デモが発生。高まる政権批判の混乱収拾のためにロベルト・フィツオ首相は辞任した。現在の首相はペテル・ペレグリニ氏である。
7.ポーランドでは、政権与党の「法と正義」が、裁判官人事への権限を拡大するなど司法介入を強める改革を強行している。これに対しEUはEUの基本理念に反すると、同国の議決権の停止も可能となる制裁手続きを始めた。2018年4月に3期目の政権に就いた与党中道右派連合「フィデス・ハンガリー市民同盟」のオルバン・ビクトル首相は、メディア統制や移民・難民受け入れの拒否など、EUの基本理念に対しあからさまに反旗を翻している。EUはポーランド同様にハンガリーに対しても、制裁手続きを進めている。
8.ルーマニアでは、政治家の汚職が社会問題化していて、抗議デモが連日発生している。オーストリアのセバスティアン・クルツ氏は2017年12月に弱冠31歳で首相に就任した。かれもまた外務大臣時代からEUの移民政策に反対していて、就任後も反移民・難民の姿勢を継続している。このように真空状態となっている東欧に対し熱心に秋波を送っている中国は、EU加盟11力国とバルカン5力国に中国を加えた「16+1」と呼ばれる枠組みを構築した。2012年から毎年首脳会議を開催して経済支援を行っている。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環だが、中国の狙いが見透かされて現在のところ必ずしもうまくいっているとはいえない。
9.世界全体の名目GDPの推移を見ると、近年新興国の比重が高まっている。中国の伸びが際立ち、EUからイギリスが抜けると、中国が2位に躍り出る。EUにとってイギリスの影響力というのはそれだけ大きい。少し前まで、これからBRICsの時代になるといわれていたが、GDPの推移をみると、結局は中国だけが飛び抜けて成長している。1人当たりGDPの伸びでも、中国はすでにブラジルやロシアより上になっている。その中国に大きく水を開けられた感のあるインドだが、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)政権は、久々の安定政権であり、モディ首相が旗を振る経済政策のモディノミクスも、いまのところ好調である。海外からの直接投資は拡大傾向にあり、インフレ率も下がっている。経済成長率では中国を上回り、6〜8%台を維持している。
10.インドでもうひとつ特筆すべきは、2010年にスタートしたアーダール(アドハー)である。これはインド固有識別番号庁(UIDAI)が全国民を対象に発行する生体認証可能の12桁マイナンバーで、ITサービス大手インフォシスの共同創業者でCEOのナンダン・ニレカニ氏がプロジェクトの責任者を務めている。インドでは2016年11月、モディ首相がブラックマネーのあぶり出しを狙って、1000ルピー新紙幣と500ルピー新紙幣の発行を宣言した。当初は国中が大混乱に陥ったが、わずか数ヵ月で収束することができたのは、アーダールがあったおかげで、スマートフォンベースの取引や送金にすんなり移行できたからである。
11.インドの経済は安定しているものの成長が遅い。理由は、先ほども指摘したように世界最大の民主主義国家だからである。この国では昔から、社会の改革が進むと必ず「政府はやりすぎだ、もっとゆっくりやれ」と引き戻そうとする勢力が現れ、次の選挙では、そういった人たちの意見を汲む政党が支持を集めるという現象が、これまでずっと繰り返されてきている。2018年12月に行われた、2019年に実施される下院選の前哨戦となる国内五州の議会選挙でも、BJPは全敗してしまった。これからも同じことが繰り返されるに違いない。インド最大野党はネルー・ガンジー主義を掲げるインド国民会議派である。インド南部アンドラプラデシュ州のN・チャンドラバブ・ナイドゥ州首相は、ワイクロソフトを誘致するなど海外から投資を集め、州都ハイデラバードをIT企業集積都市にした実績がある。ところが、それでもかつて選挙で負けたことがある。
12.国民会議派の候補が「みなさん、本当に必要なのはコンピュータですか、それともパンと水ですか」と演説すると、「それはパンと水だ」という人がみな国民会議派に票を入れてしまう。いくら「先にハイテクを進めれば、あとからパンと水はついてくる」と説明しても、貧しい人たちはいまパンと水をもってきてくれる人のほうを選ぶのがインドである。国民議会派は富を創出することをあまり行ってこなかったし、むしろ貧困を分配する結果しか残していない。
13.土地を民有化しているという点も、経済成長の妨げとなっている。中国であれば共産党が地図に赤鉛筆で線を引けば、すぐに鉄道が敷けるが、インドの場合はタタのような大財閥でも、農民の反対で工場をつくることできないということが起きている。
14.中国では、2018年3月に開催された全国人民代表大会で、国築席の任期を「2期10年まで」とするこれまでの規定を撤廃する憲法改正案が採択された。これにより習近平国家主席は、2期目が終わる2033年3月以降も続投が可能となり、実質的に、今後10年にわたる独裁体制を確立した。しかしながら、足元をみると、いろいろなところで問題が山積みの状態である。2013年に習近平国家主席が提唱し、2014年11月に北京で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議(APEC)で各国に向けて披露された「一帯一路」は滑り出しこそ順調にみえたが、ここにきて中国が支援する国家で親中政権が相次いで敗北したり、債務返済に関する問題が発生するなど行き詰まりをみせ始めている。
15.米中貿易戦争はいまだに出口がみえない。この米中貿易戦争の契機となったのが、2015年5月に中国政府が発表した、10年後に世界の製造強国になるためのロードマップである「中国製造2025」である。アメリカやEUにおける、中国企業の域内企業に対するM&Aを規制する動きも、中国にとっては痛手である。中国は以前からミー・ファーストの国だが、これまでは発展途上国だったため、他の国はあまり問題としなかったが、これから先進国の仲間入りをするとなると、それなりの立ち居振る舞いが求められ、ある程度国際協調路線に転じなければ、今後も軋礫が増すばかりである。
16.中国がこの先も、永遠に一党独裁の単一国家であり続けるのは難しいと思う。大前氏は、2002年に出版した『中華連邦』に、中国は将来6つか7つに分裂されて、イギリス型の連邦国家、コモンウェルス・オブ・チャイナになると書いた。習近平体制が10年続いたあとは、この流れに向かう動きが出てくる。すでに富裕層は締めつけの厳しい習近平体制に見切りをつけ、国外脱出や資産の海外移転を行い始めている。ただ、中国が分裂すると、一つひとつの地域の人口は2億人、GDPは日本の規模を超えるので、ヨーロッパよりも巨大な連邦国家となる。そうなると地域同士の競争も活発化して、いまの中国よりも経済的に強くなる。
17.中国では、産業や教育に関しては、政府が地方都市の首長に権限をもたせて、比較的自由にさせている。その結果、地方都市どうしが競い合いながら成長するといういい循環が起こっている。とくに、最近は四川、貴州、雲南といった内陸部の都市が、デジタル・ディスラプションの恩恵を受けて、ECや物流などが発達したおかげで、成長率が高くなっている。ただし、これまで資源に依存して重工業で発展してきた東北三省の遼寧省、吉林省、黒竜江省といったところは、完全にその波から取り残されてしまった。



yuji5327 at 06:49 

2019年08月04日

最低賃金東京1000円

IMG_20190802_0024
中央最低賃金審議会
2019年度の全国の最低賃金
27円引き上げて時給901円
三大都市圏は28円上がり
東京都と神奈川県は1000円を超える
大阪府は964円


yuji5327 at 06:51 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
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・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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