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2017年06月26日

デジタルテクノロジーでは、場所の制約がなくなる。金融業務を行う企業が大陸にあっても、フィンテックの基礎技術がロンドンで開発されることはあり得る。

「野口悠紀雄著:シティは衰退するか?EU離脱はチャンス?、週刊ダイヤモンド、2016・07・30」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.イギリスのEU離脱による最大の問題の一つは、シティの地盤沈下である。イギリスは1990年代以降、金融業を中心として経済発展を実現してきた。国内総生産(GDP)の約1割が金融業である。
2.ロンドン・シティが地盤沈下すれば、イギリス経済にとって大きな打撃である。シティの地盤沈下がいわれる根拠は、「パスポート協定」である。これは、EU内の1カ国で免許を取得すればEU全域内で金融サービスを提供できる制度だが、これがなくなれば、金融機関はロンドンを離れて他のEU加盟国の都市に移動が可能になる。
3.金融機関は、その前に、営業拠点をフランクフルトなりアムステルダムなりルクセンブルクに移すという見方もある。この機会に金融機関を呼び寄せようと、フランスは、銀行に対して新しい便益供与を発表している。そのため、シティが国際金融センターとしての地位を失うといわれ、日本では、こうした観点の報道がなされている。
4.金融機関がロンドンを離れることはないという見方もある。逆に、イギリスのEU離脱によって、シティの機能がさらに向上するという考えもある。イギリスがユーロに参加しなかったときも、金融機関はロンドンを離れてフランクフルトに移るといわれたが、そうならなかった。
5.シティでは、ユーロやドルなどさまざまな通貨が取り引きされ、外国為替取引高のシェアで世界の約4割を占める地位を維持してきた。今回も同じことになるとの見方である。その理由は、シティが持つ金融業のインフラストラクチャーである。それは、さまざまな専門家のサービス、金融業に対する法制、等々である。シティのインフラストラクチャーは、ニューヨークをしのぎ、世界で最高水準である。これに代わるものを他の都市につくることは、一朝一夕には不可能とされる。
6.金融関係では、このような意見を持つ機関や人が多い。HSBCホールデイングスのダグラス・フリント会長やバークレイズのジヨン・マクファーレン会艮は、「国際的な金融都市であるロンドンには、パリやフランクフルト、ダブリンなどには見られない、大規模な金融システムが確立されている」「何世紀もかけて構築されたシステムを、簡単に他の都市に移すことは無理だ」「離脱は金.融機関に新たなチャンスをもたらす」「ロンドンは世界一魅力的な金.融都市として、今後も君臨し続ける」としている。
7.シティのジエフリー・エバンズ名誉市長は、「ロンドンは世界に類を見ない金.融機関や専門家の集積地で、他の都市に取って代わられるとは考えにくい」「イギリスがEUから離脱しても、シティの優位性は変わらない」と強調し、同氏は日本などアジアを歴訪し、企業関係者や投資家に、イギリスでの投資や事業を継続するよう呼び掛けた。
8.イギリスは、EUへのアクセスを失ったわけではない。新しいパスポート協定は、今後の交渉で決まる。これまで通りの利便性を維持させることは、全金融機関にとって必要なことである。大陸の金融機関もロンドンで営業をしたい。EUが恩恵を一方的にイギリスに与えるのではない。
9.マーティン・ウルフとアンドリュー・ヒルは、6月9日の『フィナンシャルタイムズ』で、イギリスのEU離脱後におけるシティについて、ウルフは、「考えられるいかなる状況下でも、シティは世界の金融センターとして残る」と断言している。そして、「パリやフランクフルトやダブリンがいかに勧誘しても、銀行や従業員はロンドンを離れようとは思わないだろう」と言っている。
10.彼らは、将来のシティの役割として、2つを指摘する。第1は、オフショアセンターとしての機能である。アメリカとアジアの銀行は、ロンドンをハブとして、ヨーロッパ、中東、アフリカでビジネスを展開しているが、これは、パスポート協定があるからである。中国の銀行は、ヨーロッパの拠点としてロンドンを選択した。シティが人民元のオフショアセンターとなるには、中国の銀行がシティに残留することが必要である。
11.未来のシティの第2の役割は、フィンテック(モバイル決済など)や人工知能を駆使する金融業の拠点となることである。この分野でロンドンは、ヨーロッパ最大のハブであり、フィンテックの世界の首都である。技術を持った労働者は、マーケットをけん引する企業が立地するロンドンに住みたいと思っている。
12.デジタルテクノロジーでは、場所の制約がなくなる。金融業務を行う企業が大陸にあっても、フィンテックの基礎技術がロンドンで開発されることはあり得る。1960年代にアメリカが利子平衡税を導入した結果、ユーロ債市場が誕生した。サーベンス・オクスレー法(2002年7月に制定)でアメリカ企業はアメリカを脱出した。イギリスが新しい金.融業への技術開発に励めば、シティはなくならない。



yuji5327 at 06:47 

2017年06月23日

コミュニティに参加することが高齢の人にとって大事だと言われるが、コミュニティとは水のように淡々とした関係を保って、周囲に迷惑をかけないことが社会に対する貢献である。

「五木寛之著:
玄冬の門 (ベスト新書)
五木 寛之
ベストセラーズ
2016-06-09

玄冬の門、KKベストセラーズ、2016年7月」は参考になる。「第2章:孤独詩のすすめ」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.個人差はあるが、体の自由は、70〜80歳まではなんとかなる。1日も欠かさずきちんと会社に出て、勤勉に勤めた人が、突然グータラになって、ほっつき歩くのも、他人に迷惑をかけないならあり得る選択。問題なのは、高齢者のあいだでの格差が大き過ぎるということである。年金生活で悠々自適という人がいる一方で、好きなように生きるなど余裕のない人たちがたくさんいる。
2.孤独と言うよりは「自立」と言ったほうがよい。子供への相続などを考えるからダメで、90までに全部使い尽くして90過ぎたら、野垂れ死にでよい、という気にならないといけない。子孫のために美田を残さず、に徹する必要がある。
3.家族の絆から離れるという方法もある。遊行期の人には、社会とつながっていないといけないという意識も必要ない。コミュニティに参加することが高齢の人たちにとって大事なことのように言われるが、コミュニティとは水のように淡々とした関係を保って、まわりに迷惑をかけないことが一番の社会に対する貢献である。
4.これから先、イヤでも高齢者に対する風当たりが強くなってくる。社会とのつながりを断って、生活の中で楽しみを見つけていくことが遊行期の人にとっての一つの小さな冒険である。どんなに親切な家族でも、家族かいると自分の思うようには生活できない。みんなが食事を作っているのに、自分だけ別の食事を作るわけにもいかない。現役の家族が70、80になった入と生活のリズムを一緒にしようというのが間違いである。
5.NHKのラジオ深夜便で朝四時の番組をやっているが、高齢者は午後8時ぐらいに寝て午前3時ぐらいに目を覚ます人がいる。起き上がってゴソゴソしていると、家族から「おじいちゃん、うるさい」と言われるから、6時ぐらいまで布団の中で、目は覚めているのでイヤホンをつけてラジオを聴くということで、聴取率が高い。
6.一旦家族の絆から解放されて、独立して生活をやってみる必要がある。夫婦も、同じ1軒の家の中に住んでいても、ある年齢以降は別々に、勝手に生きるほうが本当はいい。共棲自立で、一緒に住んでいるけれども、生活のリズムその他、何時に起きるかも、お互い勝手にやる。
7.親鸞は62歳のときに京都へ出て、奥さんはついて来なかった。新潟の実家へ行ってしまった。親鴛が死ぬときも奥さんは立ち会っていない。それでも、理解し合える良い関係だったらしい。一般に、20代なり30代なりで結婚して家庭生活をもち、当分の間は、2人で共同して生きるということが良い時期があるが、ある時期に達すると、一緒にいても生活のペースがどこか違ってくる。それぞれがもっていた生来の個性が出てくる。乱暴な言い方だが、同じ家に住んでも、3日ぶりに顔を合わせても全然おかしくない。お小遣いも
別々にするほうがいい。
8.著者は昔から油のような人間関係は苦手だった。この人は友達になりそうな良い人だなと思ったときは、その人と密着しないが、年に何度か会う。君子の交わりは淡きこと水の如し、と言うが、油のような付き合いは、どこかで食い違い切れる。おじいちゃんはペースが違うから、ほっときますよ、と言われてもいい。配偶者の場合は、お互いが独立志向で、ときどきデートすればいい。自分で洗濯ぐらいすればいい。
9.いまここで問題にしているのは、自分で自分の面倒がみられる人たちの話で、独りで生きていけない、要介護でなければ生きていけない人は例外である。ある年齢に達すると、介護の問題は否応なく出てくる。
10.長いこと会社人間としての人間関係があって、友達もいるし、取引先もある。地縁、職縁が退職してなくなったときに、誰でも孤立感を覚えるらしいが、それを引きずっていけない。一回生まれ直したという決断が必要である。これからは本当に肩書きも何もない一人の自由人として生きるというのである。それからでも働きたい人に開かれている職場は、だいたいガードマンとか、職歴を活かすような仕事はない。


yuji5327 at 06:40 

2017年06月21日

「絆」というのも1つ甘えだと覚悟する。生まれたとき「天上天下唯我独尊」である。原点に戻ると、いろいろな世界が豁然と開けてくる。

「五木寛之著:
玄冬の門 (ベスト新書)
五木 寛之
ベストセラーズ
2016-06-09

玄冬の門、KKベストセラーズ、2016年7月」は参考になる。「第2章:孤独詩のすすめ」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.起業して、自分で新しい事業を始めてがんばる人もいるが、そううまくはいかない。編集者が定年退職して、一度は考えるのが、編集プロダクションである。「編プロを始めたからよろしく」と挨拶状が来るが半年か一年ぐらいしか続かない。
2.自分史を自費出版する人もいるが難しい。いまは、インターネヅトでプログを書くこともあるが、それも1つのやり方ではあるが、やはり活字の本にしたい。趣味のサークル、カルチャーセンターもあるが、高齢になって新しいことを学ぶというのが大事なことである。そういうことをするにしても、しないにしても、第一歩は家族離れである。最後は単独死するという覚悟。最期は独りでこの世を去るという覚悟を決めると、いろいろな道が開けると思う。
3.長年親しんだ職業とは縁もない分野、例えば、考古学とか、学校に聴講生として通ってみる。いまは社会人のための講座もたくさんある。50歳前後に、京都の龍谷大学に聴講生として行ったときの実感は、学生たちは、世代の違うオッチャンが一人、前のほうに座って、質問したりすると、鬱陶しい感じがしていたみたいで、質問すると、みんな舌打ちしていた。集団というのは、同世代の人たちで固まるものである。
4.社会人のための特別講座とか、があるのでチャンスはある。学生の頃は、休講になると喜んでいたが、休講になると腹が立つようになる。勉強がこんなに面白いものかと驚く。ある種の痴呆になって俳徊するというのではなくて、自主的に俳徊するのが遊行期の大事なことである。無理に仲間入りしようと思わないこと、溶け込めると思っているのは甘えである。
5.「絆」というのも1つ甘えだと覚悟する。生まれたとき「天上天下唯我独尊」である。原点に戻ると、いろいろな世界が豁然と開けてくる。年を取って勉強するというのは、すごく面自い。
6.孤独の中で生きるということは、辛いことであり、耐えないといけない。そこから得られる自由のほうが大事だという覚悟が必要である。これまで家畜のように暮らしていたのが、放たれるというような感じである。
7.昔の中国では、ある年齢に達すると、老人はアヘン窟に行く人が多かった。高齢の老人がゴロゴロしながらキセルでアヘンを吸っている。アヘンを吸うと食欲がなくなって、枯れるようにしてそこで死ぬ。それは、ある意味で良い楢山である。羽化登仙と、陶酔しながら、気持ち良く死んでいけるわけて、マイナスの尊厳死の施設だった。
8.高齢者にとっての幸福感というのは、空想なり妄想の世界に遊ぶということである。アヘンを吸っている人たちは、人工的にそういう世界をつくっている。それと同じように、自分で空想の幅を広げていく。孤独の楽しみを最大限にもっていた先達は親鷺である。親鸞は63歳で京都へ帰って、90歳で死んだ。ただ本を書いたり、書写に努めたり、また、手紙を書いたり、和歌を作ったり、死ぬまで京都の一角で暮らした。一見、孤立して生きるというのはさびしい生き方のようだが、孤独を楽しむことは大事である。法然が亡くなるとき弟子に言い残したことは、「群れ集まるな」というこである。
9.亡くなって3〜4日してから発見されるようなケースで、それをとてもかわいそうなことのように言う。近所に迷惑がかかるからそういうことも言われますが、最近では、象印の魔法瓶に無線通信機が内蔵されていて、ちゃんと使われているかどうか、離れて暮らしている家族にインターネットを通じて情報が行くサービスなどもある。連絡先をきちんとしておけばいいのではないでしょうか。
10.現在、単独で暮らしているお年寄りは多い。やむを得ず、惨めに転落してそういう状態になったのではなく、一つの生き方として考えたほうがよい。配偶者と一緒に暮らしていても、気持ちはもう単独者で、そうい気持ちで生きていけたらいい。


yuji5327 at 06:44 

2017年06月19日

高齢者は、社会的に活動しなくてもよい。人との輪をつくるなど考えなくてもよい。いま、音楽を聴くのも、無限にクラウドから出して聴ける。

「五木寛之著:
玄冬の門 (ベスト新書)
五木寛之
ベストセラーズ
2016-09-09

玄冬の門、KKベストセラーズ、2016年7月」は参考になる。「第2章:孤独詩のすすめ」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.鴨長明が50歳ぐらいで山に入って隠遁生活をした、それが理想である。都会にいても隠遁は憧れの的である。リタイアして出世コースから外れることが、憧れの的だった時代もある。親鷺がアピールできるのは、70過ぎての思想家である。
2.高齢者の特別養護老人ホームなどをもっとつくれという意見があるが、高齢者はそういう老人ホームなんかに入りたくないという。しかし、最期のとき、誰かに手を握ってお別れをしたいかと聞いても、みんな首を振る。家族や肉親に囲まれて「がんばって」なんて言われて死にたいとは思っていない。孤独死や単独死が非常に悲劇的なように語られるが、実際には、独りで死ぬことのほうが、みんなが望んでいる。
3.この世に生まれてきて、最期は独りになっていくということの大事さを、強調したい。いまは、人とのコミュニケーションの輪を広げようとすることばかりが強調されている。高齢者になると、ボランティアとかみんなでやりましょうというすすめがある。そうではなくて、どんどん独りになっていくべきである。自然の移ろいの中で穏やかに去っていくべきである。
4.高齢者になったら、社会的に活動しなくてもよい。出ていって人との輪をつくることなど考えなくてもよい。いま、音楽を聴くとなると、無限にいろいろな形でクラウドから引っ張り出して聴ける。独りで音楽を聴く楽しみがある。孤独の一番の友は、活字である。本を読むに勝る楽しみはない。テレビはメディアの中でも非常に軽薄なメディアになったが、ドキュメントなどを丹念に見ると面自い。
5.みんなで楽しむと言って、フォークダンスを踊ったりするが、高齢者が集まって、タンバリン叩いて童謡を歌わせられるなんて、悲劇的である。世の中では、人の輪の中に入っていって、年寄りにもかかわらず、嬉々としてみんなと一緒に何かやっている人を持ち上げる風潮がある。若い恰好をして、若い人たちと一緒に何かやっているのを、良いことのように言うが、高齢者は孤立すべきである。



yuji5327 at 06:42 

2017年06月18日

スウェーデンやフランスのように「戸籍」という概念をなくすことが重要で、正式に結婚していなくても生まれた子供を認めることが必要である。

2017/6/16付けの大前研一さんの「 ニュースの視点 」は(発行部数 168,224部)は「人口動態統計/成長戦略/骨太の方針」の話題についてと題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.厚生労働省が2日発表した人口動態統計によると、2016年に生まれた子どもの数は97万6979人で、1899年に統計をとり始めてから初めて100万人を割り込んだ。1人の女性が生涯に産む子どもの数は1.44と前年を0.01ポイント下回り、マイナスは2年ぶりとなった。出産適齢期の女性の減少が少子化に拍車をかけているとしている。
2.1970年代以降、ずっとこの傾向は続いており、今や出生数よりも死亡数が上回る状態になっていて、日本にとっては致命的な問題である。これは構造的な問題だからは反転しない。
3.この状況を打開するためには、スウェーデンやフランスのように「戸籍」という概念をなくすことが重要で、正式に結婚していなくても生まれた子供を認めることが必要である。
4.実際、婚姻件数も減少しているから、結婚に期待するべきではない。年齢別の出生数を見ると、一番多いのは「30〜34歳」、「25〜29歳」「35〜39歳」と続く。昔は20代後半が最も多かったので高齢出産の傾向が強くなっている。高齢出産になると、2人目、3人目が難しくなる。
5.この状況を考えても、戸籍をなくし、自然婚を認めて、早い段階から出産しやすい環境を整える必要がある。フランスでは、子ども手当が充実している。子どもを育てる過程で、金銭的に言えば2000万円ほどの手当が受けられることもある。日本もフランスの制度を研究するべきである。今の状況は、小手先の政策ではどうにもならない。根本的な制度、環境を見直して、構造変化をしなければ解決しない。
6.日経新聞は先月31日、「即効策なき成長未来図」と題する記事を掲載した。政府の未来投資会議で、様々な業種で企業からの申し出に応じて規制を一時凍結する新たな仕組みを提唱した。特定の地域で展開する国家戦略特区に対し、「プロジェクトごとの特区」といえるもので、斬新なアイデアや技術をいちはやく取り込み、新しい市場の創出につなげる狙いである。
7.労働市場や医療・介護の対策については、目ぼしい具体策はなく、聞こえの良い未来像だけでは絵に描いた餅になると指摘している。トラックの後続無人での隊列走行商業化など、いくつか具体的で実現したほうが良いものも含まれているが、ほとんどはまさに「絵に描いた餅」である。せめて、トラックの後続無人での隊列走行などは実現してほしい。すでに外国では実施しているところがあるので、研究するべきである。
8.成長戦略と同様に相変わらず具体性もないのが、「骨太の方針」である。政府は2日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案を公表した。人材への投資による生産性向上を柱とし、幼児教育の早期無償化や待機児童解消を目指すことを明記している。
9.財政の健全化については、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2020年度までに黒字化する目標を堅持するとともに、GDPに対する債務残高の割合を安定的に引き下げることを目指す、としている。
10.竹中平蔵氏以来、「骨太」という言葉がよく使われているが、中身は薄っぺらである。「債務残高をGDPに対して引き下げる」と言うが、具体的にどのような方法をとるのか全く不明なままである。
11.「教育の無償化」も取り上げられているが、この財源はどこから持ってくるのか不明である。その財源があるなら、なぜ今までやらなかったのか全く理解できない。
12.安倍首相は「最低賃金を年率3%引き上げる」と言っているが、これは同時に「国外に脱出する企業が増える」という事実を理解していない。
13.後発薬(ジェネリック)を2020年9月までに使用割合を80%にするなど、ごく一部実現可能で有効なものがあるが、ほとんどは具体案がなく「希望」に過ぎない。七夕の短冊のようなレベルのものが、政府の政策案として発表されるのは情けない。



yuji5327 at 06:38 

2017年06月17日

離脱論は移民拒否だけではなく、欧州委貝会という巨大官僚機構に対する嫌悪がある。余計な規制が経済活力をそいでいる。EU法は国内法に優先するので、拒否できない。

「野口悠紀雄著:危機に直面するのはイギリスでなくEU、
週刊ダイヤモンド、2016・07・23」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.イギリスのEU離脱は、欧州諸国にも影響を及ぼしており、EU離脱のドミノ効果を引き起こす可能性が高い。オランダ、チェコ、フランスでも、EU離脱を支持する世論が高まっている。オランダで2月に行われた世論調査では、残留が離脱を1%しか上回らなかった。チェコで2015年10月に行われた世論調査では、EU離脱の支持率は62%である。フランスでは、17年のフランス大統領候補として、反EUと移民排斥を掲げる国民戦線党首マリーヌ・ルペンの支持率が最も高く、フランソワ・オランド大統領の支持は低迷が続いている。最近実施された世論調査では、48%がEU残留・離脱を問う国民投票を望んだ。
2.EU離脱を求める理由は、国により、人によって、さまざまである。まず、EUの移民政策に対する反感がある。オランダやチェコの国民は、EUのシリア移民政策に対して不満を抱いている。こうした反移民感情が、EU離脱運動の基本であると報道されている。確かにそうした側面がある。そして、このような動きは否定されなければならない。
3.離脱論は移民拒否だけではなく、欧州委貝会という巨大官僚機構に対する嫌悪がある。欧州委員会が加盟国に課す経済政策に不満が高まつている。余計な規制が経済活力をそいでいるという批判である。EU法は国内法に優先するので、いったん決められれば拒否できない。イギリスのEU離脱派の人々が「イギリス独立」と叫んでいたのは、このためである。
4.欧州統一という理念が重要という考えがあり、EUはヨーロッパを統一した古代ローマ帝国を現代に再現したものだと考えられる。しかしローマ帝国はEUとは似て非なるものである。ローマ帝国は、都市国家の連合体であり、各都市には大幅な自治権が与えられていた。中央官僚にはわずか300人程度しかいなかった。EU官僚が契約職員や加盟国からの出向職員なども加えると3万人を超すのに比べると、信じられない。また、金融取引税のように金融活動を阻害する政策をEUが導入することへの反対もある。さらに、「ドイツの独り勝ち」に対する反感も、特にフランスにおいて根強い。
5.どの国もEU離脱を求めているわけではない。EUを離脱しないのは、南欧諸国である。一見して、奇妙なことと思われる。EUの強い規制によって経済活動を制限されているからである。典型例として、「ベイルイン」制度がある。これは、金融機関の再生・破綻処理に際して、公的資金ではなく、銀行の債権保有者が救済資金を負担する制度である。15年12月末に全加盟国で導入が終了し、16年1月1日に発動された。
6.これがまず問題となったのはイタリアで、4つの地方銀行が救済資金を受けることになっていたが、その前にベイルイン制度で株主や劣後債の保有者が損失を被ることになった。イタリアでは、劣後債を購入する年金生活者が多いため、多くの年金生活者が犠牲となった。預金の全てを失った年金生活者の首つり自殺が報道され、問題となった。
7.16年からは、株主や劣後債の保有者に限らず、10万ユーロ以上の預金を持つ一般の預金者も対象となる。それが実施されれば大問題なので、イタリア政府はこの制度の適用をなんとか回避したい。それならイタリアはEUを離脱してしまえばよいように思われるが、イタリアは離脱しない。理由は、イタリア経済の現状が、ヨーロッパ中央銀行(ECB)の政策によって支えられているからである。マリオ・ドラギECB総裁は、12年9月に「ユーロを守るために何でもやる」と表明し、無制限の国債買い入れプログラム(OMT)を導入した。現在のイタリアの金利が抑えられているのは、ECBが買い支えているからである。
8.もしイタリアがユーロを離脱すれば、この支えがなくなり、たちまち国債の金利が暴騰し、リラは暴落し、イタリア経済が崩壊する。ギリシャも似た事情で、厳しい財政再建条件を課されても離脱しない。理由は、EUやユーロが支えているからである。
9.以上の支援のための負担は、主としてドイツが負っている。貿易赤字国に対するファイナンスは、「ターゲット2」と呼ばれる決済システムを通じて、自動的に行われている。EUやユーロは、イタリア、ギリシャなど支援を求める国と、ドイツなど支援を与える国に分離してしまっている。
10.ベイルインに見られるような厳しい政策をEUが打ち出すのは、これまで破綻銀行の処理のために重い負担を余儀なくされてきたドイツの意回がある。また、ドイツはOMTに対していまだに批判的である。金融取引税は、投機を嫌うドイツ人の考えから正当化され、中には賛成したいものが多い。ベイルインは正論だが、現実的には従えない国がある。投機の抑制は必要だが、それが取引の自由の障害になる場合もある。投機の境界をどこに引くかは、極めて難しい問題である。
11.ドイツの厳罰主義が他の加盟国にとって重過ぎる負担になっている場合も多い。投機の抑制は、金.融取引税を課すことでなく、金.融緩和を停止することで行うべきである。これらの政策の背後には、「モノ作りこそ健全な経済活動であり、金.融は虚業だ」という考え、そして「財政規律が最優先だ」という考えがある。
12.ドイツの不満は、OMTに対して、欧州司法裁判所が合法との判断を下していたにもかかわらず、ドイツ国内で憲法裁判が行われていたことに表れている。ECBのマイナス金利政策に対して、ドイツ国民、金.融機関、経済界の不満は高まっている。こうして、南欧諸国が支援され続け、それを支えるドイツが厳しい要求を出すという悪循環に陥っている。支える側も支えられる側も、EUやユーロのシステムをどこまで維持することができるだろうか?



yuji5327 at 06:51 

2017年06月15日

ジリ貧になっている他の家電メーカーを尻目に、いったん「負けた」と思われたシャープが最後には勝ち組になっているかもしれない。

「大前研一著:ビジネス新大陸の歩き方、家電企業ジリ貧の中で鴻海(ホンハイ)シャープに活路あり、週刊ポスト、2016年7月22-29日」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.凋落した日本の家電メーカーが生き残っていく方法は、中国の巨大な製造企業を買収して垂直統合するか、中国各地に広く販売網を持っている会社を買収して競争相手よりも速いスピードで成長させたり、中国のeコマース企業と提携して中国の消費者に日本からダイレクトに商品を販売できるようにするしかない。すでにそうなった会社は、シャープである。
2.台湾の鴻海精密工業に買収された同社は、中国に100万人の従業員がいる世界一のEMS(電子機器受託製造サービス)企業と垂直統合したようなものである。かつて家電量販店のラオックスが中国の蘇寧雲商集団(旧・蘇寧電器)に買収されて蘇ったのと同様に、鴻海傘下に入ったシャープにも新たな再生の可能性が開けている。
3.鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は、雇用は維持する、経営陣は残すと約束しておきながら、すぐに人員削減を発表し、経営陣も刷新した。13人いた取締役のうち12人が退任して新社長には鴻海ナンバー2の戴正呉副総裁が就任し、新たな取締役は鴻海6人、シャープ3人となった。これは経営トップとして当然のことをやっただけである。
4.管理職の給料も、鴻海方式の役割給を導入した結果、月給が30万円下がる人が出たが、これも仕方のない。日本企業が競争力を維持するためには、国内の給与水準を、国境を越えた「同一労働同一賃金」に近づけていくしかない。そうしなかったから、日本の家電メーカーは海外で価格競争に敗れて衰退した。
5.シャープの今後は、郭会長が「シャープのプランドをどのように活用するか」で決まる。アメリカの液晶テレビのシェアは、日本では無名のビジオ(台湾系企業)が韓国のサムスンとトップ争いをしているが、その製品を作っているのは鴻海で、資本も入れている。もし郭会長が、ブランドをピジオからシャープに変えてシャープの工場で製造するようにすれば、シャープはいきなりアメリカで1位になる。シャープ製品をビジオやサムスンと同じくらいの値段で売ってもシェアは一気に伸びる。
6.郭会長がシャープの技術陣に画期的な新製品を開発しろと撒を飛ばして資金も投入し、イギリスのダイソンのサイクロン掃除機:羽根のない扇風機や空気清浄機能付きファンのように値段が取れる付加価値の高い商品を生み出す可能性は小さくない。シャープは有機ELなどの液晶・パネル技術のみならず、空気を浄化する「プラズマクラスター」、健康志向の調理家電ブランド「ヘルシオ」、停電時も蓄電池と太陽光発電システムを組み合わせて冷蔵だけなら約10日間以上(冷凍使用の場合は約4日間以上)冷やせる冷蔵庫といった独自技術を開発する力を持っている。
7.最近のシャープには意外なヒット商品もある。世界初の蚊取り機能付き空気清浄機「蚊取空清」がある。薬剤を使わず、蚊の習性を利用してUV(紫外線)ライトでおびき寄せて吸引し、粘着シートで捕らえるという仕組みで、開発期間は6年。東南アジアで大ヒットしたのを受けて、国内でもこの春から発売を開始している。実勢価格が4万円超と高額なのに、空気清浄機売れ筋ランキングで上位をキープしている。あるいは、ワイヤレス電力・データ転送技術を活用した「ワイヤレス・シャープ」構想などに取り組むのも面白い。
8.シャープの役員人事で.技術重視を象徴するのが、郭会長が崇拝している日本人技術者、中川威雄・ファインテック会長の取締役に就任である。この中川氏が鏡面研磨の小林研業など優れた技術を持っている日本企業を見つけてきて鴻海に紹介し、初期の頃のiPhoneやiPodの筐体背面の美.しい光沢に活用してきた。
9.郭会長が進めるこうした改革がシャープ再生のカギになる。一方で、シャープの人材が他社へ流出していることが懸念材料である。とりわけ日本電産には、2014年に元社長の片山幹雄氏が副会長に就任して以来、元副社長の大西徹夫氏、元常務執行役負の広部俊彦氏、元執行役員の毛利雅之氏らが相次ぎ入社した。日本電産の永守重信会長兼社長は、シャープの部長級の採用が100人以上に達したことを明らかにし、希望があれば300人ぐらいは採用したいう。もし鴻海の郭会長が人材流出に本気で対処しようとし、日本電産を丸ごと買収することもあると。売上高約16兆円の鴻海にとって、約1兆1800億円の日本電産を呑み込むことは、さほど難しくない
10.そうすれば、鴻海は製造からブランド、素材、部品機械、研究開発.まで一気通貫で揃った正真正銘の日本企業にできる。製造拠点の中国と研究開発拠点の日本を気楽な台湾からオペレーションするのだから、これほど理.想的な企業形態はない。
11.郭会長と永守会長兼社長は「昵懇の仲」と言われるので、鴻海と日本電産がシャープを挟んで手を組み、EV(電気自動車)の開発・製造に進出する可能性も取り沙汰されている。ジリ貧になっている他の家電メーカーを尻目に、いったん「負けた」と思われたシャープが最後には勝ち組になっているかもしれない。ラオックスと同じく「最初に外資に買われてよかった」という皮肉な結末は、十分あり得る。



yuji5327 at 06:46 

2017年06月14日

「絆」というのは、血縁から始まって、地縁、職縁の関係もある。

「五木寛之著:
玄冬の門 (ベスト新書)
五木 寛之
ベストセラーズ
2016-06-09

玄冬の門、KKベストセラーズ、2016年7月」は参考になる。「第1章:未曾有の時代をどう生きるか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.3.11の東日本の大災害のあと、「絆」ということが叫ばれたが、絆という言葉にはある種の抵抗感がある。もともとの言葉の意味は、「家畜や動物を逃げないようにつなぎとめておくための綱」という意味だがが、戦後に青年期を送った人間は、家族の絆とか、血縁の絆とか、地縁の絆とか、そういうものから逃れて自由な個人として生きるということが一つの夢だった。
2.絆というのは、自分を縛るうっとうしいものという感覚が強かった。いまになって「絆」なんて言われても、という気分がある。これからの人は孤立しても元気に生きていくという道を考えるべきだと思う。単独死、孤独死というものが、非常にさびしい、弱々しいことではなくて、「単独死、結構じゃないか」という方向に切り替えたほうがいい。
3.いま大きな問題になっているのは、高齢者が若者と対立しているという構図である。定年を延長すればするほど、若い人たちの正規の就職の窓口を狭くする。人口ピラミッドの頂点近くに存在するに過ぎなかった高齢者が、いまや日本人の4人に1人は、65歳越えという状況になった。単に人数が増えただけでなく、65歳以上の人々は豊かで元気な老人階級としての存在感がある。わが国の歴史上初めて「老人階級」が現れた。
4.圧倒的な多数を占めるこの階級は、下の世代が支える年金で支えられている。その「命と健康」をつなぐための高額な医療費が、国家財政の大きな負担になっている。ツケを負わされる若者世代、勤労世代が、不条理と思う。日本の労働者の賃金体系を見ると、若い人たちは収入がかなり薄い。不景気になってイヤなことは、そういう対立感が強まることである。
5.自分は自立して生きていくと心に決めて、若い連中との連帯を求めない必要がある。ボランティア活動にしても、高齢者が1人が入ってくると、若い人たちは、うっとうしい気分になる。
6.下流老人とは生活保護基準相当で暮らす高齢者のことだが、望んで「下流老人」になった人はいない。自分の食事の面倒ぐらい自分でみるのが第一歩である。生活保護は受けたくない、そこまで落ちぶれていない、というプライドで苦しい生活に耐えている人はたくさんいる。生活保護を受けているというだけでも、肩身が狭いと言う。
7.社会の趨勢として、数的にも圧倒的に高齢者世代が増えてくるというのは客観的事実である。後期高齢者の選挙権が議論にもなっていない。選挙権を委譲するという提案をした。高齢者に対する本には、年を取ってもオシャレを忘れるなとか、運動は大事、とかの内容のものが多いが、本当は宗教というのも大きな要素である。若いときは考えなかったことを考え得る時代に入っている。
8.選挙に行くかどうかは、有権者として、社会を良くするために自分の一票を使うのだという意識だが、自分の一票を、この人に投じれば良くなる、という選択肢がいまの日本の政治にはないということが問題である。
10.いまの一番の問題点は、寝たきりの状態、「寝かせきり」とも言う。本人が好きで寝たきりになっているのではない。寝かせきりの状態にされている人たちを生かしておくことだけで、高額な治療を便えるので、何人か寝かせきりの患者をかかえておけば、経営が成り立つ。いまやそういう産業構造のマーケットになってしまう。その話はタブーになっている。今は、末期介護のところへ入れて、3年、5年、生かせば生かすほど経済効果が上がるという悲惨な状況である。本人が痴呆状態で意識がなくても、生かされる。
11.自殺ではないが、自分で死を選んだという例がある。食べることを拒否して、最後は水も飲まないようにして、枯れるように死んだ。自死覚悟と言っていい。安楽死を合法化した国もあるが、日本も、それが問題にされる日が来る。
12.「絆」というのは、血縁から始まって、血のつながっていない人間同士でも、フレンドシップをもって付き合わなければならなくなる。次に地縁というのが生まれてくる。さらに、職縁というか、同じ会社にいる人との関係もある。
13.「もう、この辺で疲れましたから、失礼します。いろいろお世話になりました」と皆さんに別れを告げて、気持ち良く去っていければ、それでいい。まわりも気持ち良く送れるのなら一番良いが、言いづらいことで、タブーになっている部分がある。


yuji5327 at 10:42 

2017年06月13日

アービトラージという言葉は、通常は金融取引に用いられる。日本語では、「裁定取引」や「サヤ取り」と訳されるが、異なる2つの市場の価格差を利用して利益を得る取引のことである。

「大前研一著:
「0から1」の発想術
大前 研一
小学館
2016-04-06

0から1の発想術、小学館、2016年4月11日」は参考になる。「第2章:アービトラージ:情報格差こそビジネスチャンスになる」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.アービトラージという言葉は、通常は金融取引に用いられる。日本語では、「裁定取引」や「サヤ取り」と訳されるが、異なる2つの市場の価格差を利用して利益を得る取引のことである。たとえば、1つの株式市場で株式を購入し、ほぼ同時に別の市場で売却して、その価格差を利益とする取引をアービトラージという。もともとはフランス語だったが、今では英語圏でも用いられている。
2.金融取引におけるアービトラージの代表的な例は、ジュリアン・ロバートソンによって引き起こされたアジア通貨危機である。ジュリアン・ロバートソンは、ジョージ・ソロスやマイケル・スタインハートと並んで、ヘッジファンド草創期の3巨頭と呼ばれている人物である。
3.彼は1997年、タイの経済を分析していて気づいた。当時のタイ経済はそれほど良い条件が整っていなかったが、通貨のバーツも株も好調だった。世界中からタイにお金が流れ込んでいるが、タイの実体経済はそこまで良くない。タイのファンダメンタルズには大きな疑問がある。ロバートソンはここに「格差」を見た。
4.彼は、手持ちの資金にレバレッジをかけてタイバーツ売りを仕掛けた。バーツの価値が下がれば下がるほど儲かる取引である。タイに群がっていた投資家たちは、タイが裸の王様であったことに気づいた。現実に目覚めて慌ててバーツや株を手放したので、為替も株価も急落した。タイ政府が外貨準備を取り崩して必死に買い支えたが、ほどなくして限界が訪れた。ロバートソンの勝ちだった。
5.タイでは急激な通貨下落が起き、それはインドネシア、韓国などにも飛び火してアジア各国の経済に大きな打撃を与えた。3国は、この通貨危機によってIMFの管理下に入った。ジュリアン・ロバートソンという「個人」が、アービトラージによってアジア経済を奈落の底に突き落とした。この時に傷を負ったアジアの国々は、10年は経済が後退した。
6.実体経済と実際の株価にそれほどギャップがない場合は、こうした売り浴びせはできないが、当時のタイのようにバブルを起こしている場合は、そこに「格差」があるので、ジュリアン・ロバートソンのように手持ち資金の何十倍の規模で売り浴びせれば、バブルに乗っかっていただけの投資家たちの狼狽売りを加速させて莫大な利益を得ることができる。
7.ジュリアン・ロバートソンは、彼は誰よりも早くタイ経済を分析し、正確な情報をつかんだ。この情報格差を基に「サヤ取り」を行った。ヘッジファンドの帝王と呼ばれたジョージ・ソロスが92年に1人でポンドを売り浴びせてイングランド銀行を窮地に追いやってから、手荒い仕事師が世界の金融市場や国家を揺るがしている。
8.アービトラージは、通常のビジネスにも活用できる。情報格差を利用して巨大企業になったのが、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングである。ビジネスにおいては「世界で最も良いものを最も安く調達して世界で最も高く売れるマーケットで売る」ということになる。または、産直のような形態で売るという例もある。ビジネスでは、アービトラージで稼ぐのが当たり前になっている。
9.アービトラージを可能にする条件は情報格差である。情報技術の発達がもたらしたものは、情報を持っている人と持っていない人の格差であり、今は非常に大きくなっている。アービトラージとは市場の価格差=格差で利益を得るわけだから、この情報格差は十分に利益を生み出す。言い換えれば、情報格差を利用すればビジネスチャンスがたくさんある。
10.原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの企業の活動を、一連の価値の連鎖としてとらえてバリューチェーンと呼んでいるが、ファーストリテイリングは従来型のバリューチェーンをスキップした。
11.ユニクロは廉価販売にもかかわらず収益があがる理由は、自分たちでデザインしたものを中国などで製造し、それを直接、自前の店で売っているからである。ユニクロと顧客との「間」がほとんどない。卸問屋や商社を通さないことで利益をあげている。ユニクロが急成長した当時、日本のアパレル企業は、中国で製造する場合でも卸問屋や商社を通じて中国に発注し、代理店を通じて売るというスタイルをとっていた。それが当たり前であり、それ以外の方法がないと考えられていた。
12.一方、ユニクロは中国の物流システムや原材料の供給システムなどを検討し、中抜きは十分可能という情報格差があった。これによってユニクロはフリースの原価を徹底的に抑え、それまでの価格を破壊する1900円で売っても儲かるシステムを構築できたのだ。これは情報格差を利用したアービトラージである。
13.「中抜き=アービトラージ」ではない。他社はユニクロを研究し始め、ユニクロ型の中抜きが一般化し、ユニクロの優位性はなくなた。情報格差がなくなった。もともとこの方式はアメリカの大手アパレル・GAPがやり始めたSPAと呼ばれる方法である。SPAとは「製造小売業」と呼ばれ、家具の場合にはスウェーデン発祥のIKEAが製造と小売りの一体化により世界各地で大成功し、ニトリもこの方法で日本の家具業界のトップに立った。
14.インターネットによって高度に情報化された現在の社会に情報格差などないという指摘もある。多くの日本人は、自分はたいていのことは知り得ると考えているが、間違いである。世界には、日本人が知らなことが、無数にあり、その情報格差を用いれば、新しいアイデアが出てくるし、ビジネスチャンスにもなる。


yuji5327 at 06:40 

2017年06月12日

世間一般には、高齢者が、仲間とか、友達が重要などのアドバイスがある。べつに悪くないが、一緒にゲートボールなどやらず、自分流の生き方を通したい人もいる。

「五木寛之著:
玄冬の門 (ベスト新書)
五木 寛之
ベストセラーズ
2016-06-09

玄冬の門、KKベストセラーズ、2016年7月」は参考になる。「第1章:未曾有の時代をどう生きるか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本では、地縁というお国意識が強く、明治以来、長州閥に代表されるような典型的な地縁社会である。アメリカではコミュニタリアニズムといって、人々が属する共同体の中の安心感とか心強さを大切にし、その中の人々の連帯で生きていこうとする流れが話題になっている。日本では、そういう形にはならない。「家族からすらも独立しなければいけない」という意識が必要になって、下重暁子さんの『家族という病』(幻冬舎新書)が
共感を得た。
2.普段からちゃんと連絡が取れるようにしておいて、自分に思いがけない事故があったり、発作で亡くなったときは、まわりに迷惑がかからないように、あと始末ができるようにしておき、独りで去っていくというのは、全然イヤな気はしないし、わびしいとも、さびしいとも考えない。子供たちが相続に関して、揉めているのを見ると、なんともやりきれない気分になる。
3.家族がいたり、友人がいたりするのは結構だが、自分が孤独で不完全なものだから、他人にそれを補完してもらおうというような考え方は、これからは無にしたほうがよい。遊行期というのは、そういうことである。インドで、年寄りが、家族を離れて一人で彷徨い出ていき、そういう老人たちが泊まっている老人ホステルみたいなところに行く。それをさびしいと捉えるのは間違っている。一人で、明るく、機嫌良く、元気に生きていくということを考えたほうがいい。
4.高齢になるほど、単独で生きていく。昔は、それを補完するものとして宗教があった。例えば、真宗の場合には、親鷺の言葉に、「1人いて喜べば、2人で喜んでいると思え。2人で喜んでいるときは、3で喜んでいると思え。その中の1人は親鸞である。」というのがある。「あなたはどんなときでも独りじゃないよ」と言っている。そこにいるのは、妻でも子供でも孫でもない。自分の信じる、あるいは、心の中でいつも一緒にいる同行二人という感覚があれば、独りでいても、孤独感などに苛まれずに生きていける。「孤独死のすすめ」などと言うと、すごく刺激的で、むごいようだが、昔の西行とか芭蕉とか、いろいろな人たちが旅の途中で死んでいった、そういう生き方を、最初から意図して学んでもよい。
5.介護されている親がある種の痴呆の要素、アルツハイマーなどが出てきて、乱暴になったり、言葉に言えないようなことを平気でする。最後まで自分の意識を保ちながら、落ち着いて最期を迎えられるように日頃からトレーニングしておくということが大事になる。
6.尊厳死の問題がある。自分は充分にこの世の人生を生きた。これ以上意識が混濁して、まわりの人たちに迷惑をかけたくないと思った高齢者が、どのように去っていけるか。昔は楢山送りとか、いろいろあった。かつての農村では、楢山送りが、変わったことではなく、当たり前だった時代があった。
7.世間一般に言われているのは、仲間づくりだとか、コミュニティに参加しなさいとか、などのアドバイスがある。それでべつに悪くないが、一緒にゲートボールなどやりたくない人もいる。自分流の生き方を通したい人もいる。やはり、孤独を嫌がらない。孤独の中に楽しみを見出すようなことが大切と思う。人生の前半は、友達をつくり、仕事仲間をつくり、職業に徹して人脈を広げ、社会に寄与する役割があるが、後半生はそれを少しずつ減らしていく。
8.年賀状が50歳ぐらいでピークに達し、1年1年少なくなり、最後は2,3通になり、ついに1通も来なくなるが理想である。「子供や孫たちに囲まれて」というような時代は、期待しないほうがよい。老人ホームであれ、末期の療養所であれ、死ぬときは独りである。それを悲惨とか、さびしいとか、悲しいとか思わない。独りで生き、独りで去っていくことの幸せを、自分でつくるしかない。趣味に生きるなとと簡単にいえない。
9.いま玄冬の門をくぐろうとする人は、体が不自由になり、行動半径も小さくなり、旅をしてお寺回りをするというのは、白秋期・林住期にできることである。心の世界に遊ぶということしかできなくなる。結局、想像の世界に生きる、精神世界に生きる、そこでの遊び方をもっていることが幸せである。
10.本を読むことは体が不自由でもできるので、楽しみは、本を読むことで、こんなに貴重に思われる時闇はない。本を読んで知識を増やすとか、何かの資料に使おうとか、そういう気はなく、活字を読む快楽は他に代え難い楽しみの一つである。
大半の人は老人ホームや介護施設に入らなければいけない。そういうことをせずに、散歩したり、俳句を作ったり、ボランティアに参加するのも、ある年齢までで、その年齢以降の時間が、これから結構長くなる。
11.いま70歳の人が、玄冬期に入っているという意識はまだない。実際に玄冬期に入るのは、80過ぎだが玄冬期に入る前に、心構をもつ必要がある。ヒンドゥーの教えでは、輪廻がある。基本的にインドはヒンドゥー教である。遊行期に入ったら、杖をついて家を出て、ガンジス川の畔で行き倒れになる。、村人たちは、「この人はもう遊行の人だな」と見て、木陰に椅子でも出して、食事を出したり、食べる元気がない人には水を飲ませたりする。


yuji5327 at 06:36 
池上技術士事務所の紹介
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
(平成28年度、国立新美術館にて開催)
・読売書法展(8月開催、現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(3月開催、現在理事)
 春興賞の受賞:2回
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