新技術

2019年08月11日

宇宙で、ヒトの脳ほど複雑な構造物はない、地球上では、ヒトの脳がそのサイズの物体として最も複雑である。


「藤田一郎著(大阪大学教授):脳のネットワークの全貌解明挑戦はどこまで進んでいるか、週刊ダイヤモンド、2019.6.29」は参考になる。-.
1.宇宙で一番複雑な物体は難しいが、ヒトの脳ほど複雑な構造物はない、地球上では、ヒトの脳がそのサイズの物体として最も複雑であることに異論はない。860億の神経細胞から成り、そのそれぞれが数10個から数万個の他の神経細胞とつながり、接続部であるシナプスを介して情報のやりとりを行うやりとりを介して生じた神経細胞群の活動が、私たちの心と振る舞いをつくり出す。一つの神経細胞につながる神経細胞の数.の平均が100個であるとすると8・6兆個、もしも1000個であならば8.6兆個のシナプスを脳は持つ。いずれにせよ、とてつもなく膨大な要素から成るネットワークである。これらの神経細胞はランダムにつながるのではなく特定の相手と接続し、その粘果、特有の構造を持ったネットワーク(神経回路)を形成する。
2.電子回路の設計がコンピューターの機能を大きく左右するように、神経回路の構造が脳における情報処理を強く規定する。膨大な神経回路のどの部分が特定の心の出来事や行動に関係しているのか。それぞれの神経細胞において情報処理はどのようになされ、どんな神経回路がそれを可能にしているのか。私たちが成長し、年を取る過程でそれらの神経回路はどう変化していくのか。心の病はこれらの神経回路に何が起きた結果なのか。こうした問題はどれも重要な研究テーマである。
3.脳神経科学の研究は、多くの場合、これらの問題の一側面と脳の中のある一部との関係を調べている。しかしそのようなアプローチとは別に、神経回路全てを対象として、どの細胞が他のどの細胞とつながっているのかの全貌を明らかにしようという試みがなされている。神経回路の総体はコネクトームと呼ばれ、コネクトーム解明に取り組む研究分野はコネクトミクスと呼ばれる。オバマ前大統領時代に始まった米国のプレイン・イニシアチブ・プロジェクトの中核課題であり、類似プロジェクトは日欧でも推進されている。
4.ヒトのゲノム(DNA全体の塩基対配列)は2003年にその解読が完成した。塩基対の数は30億個あり、その中には、およそ2万2000の遺伝子(特定のタンパク質のアミノ酸配列を指定する塩基対配列)が含まれることが判明した。ヒトの脳のコネクトームは、それに比べて明らかにせねばならない対象の数が数桁多い。加えて、一つ一つの神経細胞と他の神経細胞との接続を明らかにするにはたくさんの技術的困難がある。
5.神経細胞同士の機能的接続を担うシナプスはその大きさが1μmにも満たないため、その有無を確定するには電子顕微鏡を使う必要がある。観察試料を電子顕微鏡で観察するには、50nm程度のスライス〔切片〕にする。たった1mm^3の脳組織であっても、その全てを観察するには、2万枚の切片を作製しなくてはならない。1枚の欠落もなく2万枚の切片を作製することは厳しい技術的要求である。
6.その1枚1枚の中に、神経細胞の細胞体、樹状突起、軸索、グリア細胞、血管内皮細胞などの断面がぎつしりと詰まっている。ショウジョウバエの神経系のある1断面3・5μm四方の電子顕微鏡写真を見ても、その複雑さが分かる。もし、1mm四方を観察しようと思えば、このような写真が8万枚以上必要である。そして、これらの写真に基づいて3D再構成を行うには、この切片のどの部分が上下2万枚の切片のどの部分につながるのかを決定する必要がある。
7.このような技術的困難から、1種類の動物を除いてコネクトームの解明は実現しておらず、マウスの網膜や大脳皮質視覚野、ショウジョウバエの視覚系で部分的な結果が報告されているにすぎない。コネクトームが解明されている唯一の動物はカエノラプディティス・エレガンスという種類の線虫である。体長1mmにも満たないこの動物も神経系を持っており、走性(化学物質や温度に誘引されたり、忌避したりする行動)や学習などの能力を持っている。先端から後端までの全てを切片にすることで、この動物が持つ302個の神経細胞がシナプスでつながっている全様相が1986年に明らかになっている。
8.「なんだ、線虫か」という声が聞こえるが、今のように大容量画像データを取り扱うデジタル技術が発達していなかった時代に、電子顕微鏡写真の巨人なブリントアウトに基づいて行った驚くべき研究である。ゲノムの令.解明もまた多細胞生物としては線虫が最初であり、その成功がヒトゲノムプロジェクトへの推進力となった経緯がある。
9.ヒトのコネクトーム解明に特有の技術的な制約は、脳を傷つけずに観察する方法しか適用できない。従って、現段階では、ずっとマクロなレベルの解析に力点が置かれている。用いられる代表的な方法は磁気共鳴映像(MRI)法であり、脳の活動を血液中のヘモグロビンの変化を見ることで計測する機能的MRI法や、水分子の拡散を見ることで神経線維の走行を可視化する拡散強調イメージング〔DTI)法などがある。DTI法で推定したヒトの脳の主.費な神経線維の走行は生きている人間に適用でき、比較的容易に計測ができる利点があるが、細胞レベル、シナプスレベルの解像度はない。
10.技術的なハードルを強調する話が続いたが、コネクトミクス研究の重要な拠点である米国ジャネリアファーム研究所の研究者からの私信によれば、25万個の神経細胞を持つショウジョウバエのコネクトームの完成が2年後に見込まれているという。いつになるかの予想はできないが、ヒトの脳のコネクトーム解明の日もきっと来るに違いない。


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2019年07月21日

有機EL技術の進化を、出光の発光材料が支えている。通称「出光ブルー」。フルカラーディスプレーに欠かせない、この青色有機EL材料を開発した。石油專業以外で収益の柱を育てた。


「本誌・堀内亮著:ものつくるひと、有機EL材料、舟橋正和、週刊ダイヤモンド、2019.7.15」は参考になる。、概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.バブル崩壊で日本経済が停滞していた1997年。出光興産では、千葉県袖ケ浦市にある中央研究所(現次世代技術研究所)の近くの合宿所に有機EL材料の研究開発チームが集められた。出光も例に漏れず業績が低迷し、有機EL材料の研究開発事業は「金にならない」として廃止対象の狙上に載せられていた。実用化の気配がないことにいら立つ経営幹部を前に、チームメンパーの舟橋正和は叱責をただただ黙って聞いていた。後に彼が大成功の立役者になることを、幹部も本人も知る由はなかった。
2.20余年後の現在、有機ELディスプレーはテレビやスマートフォンで次の主流と目されるようになった。有機ELとは、特定の有機化合物に電気を流すと発光する現象。有機EL技術で映し出される映像は、まるで本物を目の前で見ていると錯覚するほどに鮮やか。テレビやスマホはバックライトが不要になり、薄型化や軽量化、そして省エネが可能になった。
3.有機EL技術の進化を、出光の発光材料が支えている。通称「出光ブルー」。フルカラーディスプレーに欠かせない、この青色有機EL材料を開発したのが、電子材料開発センター所長付の舟橋氏である。バブル崩壊前の85年に、出光は石油專業以外で収益の柱を育てようと、培ってきた石油化学分野の技術を応用して有機EL材料の研究に着手した。目指したのは、開発が最も難しいとされた青色発光。有機ELテレビの実現を目標に据えていた。
4.東京工業大学で触媒反応を研究した舟橋氏は大学院を卒業後、93年に出光に入社。97年から有機EL材料の研究開発チームに加わった。研究開始から10余年がたち、同社の経営層から廃止対象事業の候補としてチームに厳しい目が向けられるようになった。青い光を放つ発光材料「ジスチリルアリーレン」を89年に発見しており、後の成功につながる技術はすでに生み出されていた。この寿命と耐久性、光の量が実用化への課題だった。
5.舟橋氏が研究開発チームに加わった97年には、課題を克服する発光材料「スチリルアミン」を開発。着実に実用化への歩みを進めていた。舟橋氏の上司で開発当初から研究に携わっていた細川地潮氏(故人)はチームメンパーを叱咤激励すると同時に、金にならない研究なんか、やめてしまえ、と言う経営幹部らに「やらせてください」と直談判した。舟橋氏は、結果を出さなければとプレッシャーを感じた。いくら優れた技術を生み出しても、ビジネスとして成功しなければ宝の持ち腐れなので、技術が"金のなる木〃だと証明する必要があった。
6.解散の危機に青ざめた研究開発チームは、ようやくともり始めた出光ブルーの火を消さないために、具体的に結果をかたちにしようと決めた。それが、開発した青色発光材料を使った、世界初の有機ELテレビの試作品である。普段は"化学屋〃として研究に没頭していた舟橋氏が機械をいじり、試作に励んだ。97年に米国のボストンで開催された国際ディスプレー展示会で、出光が発表した世界初の有機ELテレビは、世界中の電機メーカーから注目を集め、試作品は大成功を収めた。形勢は逆転し、開発をさらに加速させることになった。
6.それでも実用化のゴールはまだまだ遠かった。有機EL材料の商品化への課題は大きく2つあった。1つ目は色の純度。97年に開発した発光材料は「ライトブルー」、つまり水色である。色の再現性を高めるためには純粋な青色が必要で、ライトブルーではその純度が足りなかった。2つ目は耐久性。商品の基準として1万時間の寿命が求められる。純粋な青色はその基準を満たしていなかった。
7.青色の純度と耐久性を向上させる手掛かりはあった。フルカラーディスプレーに必要とされる光の三原色「赤、緑、青」のうち、赤と緑はすでに他社が実用化に成功していた。いずれもエネルギーを受け取るのに適した材料と、発光に適した材料を組み合わせることで色の純度と耐久性をクリアしていた。舟橋氏はこれをヒントに仮説を立てて材料の構造式を考え、数カ月かけて材料を合成。さらに材料を組み合わせて評価にかける。代わり映えのしないスペクトルが出て、振り出しに戻る。トライアル・アンド・エラーを100回以上繰り返した。
8.2000年ごろ、ついに花は開いた。舟橋氏の目の前の画面に、仮説通りの美しいスペクトルが現れた。「これならいける」と確信した。この流れで高効率で長寿命の純青色発光を実現する材料を開発し、02年に特許を取得。さらに改良を加え、05年には量産化のめどが立った。電機メーカーの担当者に開発した材料とその評価データを見せると好感触で、出光ブルーが実用化へ動きだした。
9.10年代の前半から有機ELテレビが登場し、米アップルは18年に発売したスマホ「iPhoneX」に有機ELディスプレーを採用。有機ELの存在感はどんどん高まっている。舟橋氏は今、後進の育成に取り組む。有機ELディスプレーが採用されるようになり、有機EL材料は産業として成り立つようになった、と目を細めつつ、素材メーカーとの競争が激しくなった、と気を引き締める。より良い材料を求め、飽くなき研究は続いている。


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2019年07月17日

デジタル化は、農村は不便という固定観念を打破できる。農業をデジタル化し、もうかるビジネスがあり、住みやすい農村を実現できる。


「三輪泰史(日本総合研究所創発戦略センターエクスバート)著:スマート農業、無人トラクターや収穫ロボ「普及元年」で変わる農家像、週刊エコノミスト、2019.6.11」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.IoTやAIを駆使して農業の省力化や高収益化を進める「スマート農業」が実用段階に入っている。自動運転トラクター、農業用ロボット、ドローンといったスマート農機が昨年度末までに相次いで発売され、現場で使われ始めた。政府も今春から普及を加速させる取り組みを始めており、2019年はスマート農業の「普及元年」と位置づけられる。
2.日本の農業生産額は直近3年連続で上向いているものの、農業就業人口は減少の一途をたどつている。日本総合研究所の試算では、15年の約220万人から、20年後の35年には約100万人となり、半数以下に落ち込むと見込まれている。さらに、平均年齢も既に約67歳と高齢化しており、生産基盤の弱体化が危ぶまれる中、スマート農業は、高齢化や人手不足といった日本の農業が抱える課題を解決する手段として期待されている。
3、自動運転トラクターは人が乗らなくても、事前に専用ソフトによって算出された最適な走行ルートを、GPSで位置を確認しながら進む。圃場の傍らでタブレット端末を使い、複数台のトラクターを同時に運転することもできる。農業者1人当たりの作業面積は飛躍的に増え、結果としてコメ1粒、キヤベツ1玉当たりのコストは大幅に削減される。
4.露地野菜、果樹、温室栽培といった分野では、収穫ロボットや除草ロボットも実用化が進む。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、つくば市)などが開発したイチゴ収穫ロボットは、搭載したカメラでイチゴの着色度を判定し、収穫に適したものを選別。既に民間企業が商品化している。トマトやアスパラガスといった野菜でも、自動収穫ロボットの実用化が見えてきている。
5.1台で除草や圃場の見回り、運搬などさまざまな作業に対応できる多機能型の農業ロボットの開発・実証も進んでいる。筆者も開発に参画し、日本総研が大学、民間企業と共同で開発を進めてきたマイ・ドンキーは、農業者の後を追従走行して農作業を支援するロボットである。野菜や果実を運ぷほか、取り付け器具を取り替えることで、肥料や農薬をまいたり除草したりと多種多様な作業に対応できる。このため、特定品目の収穫時期しか稼働しない単機能ロボットに比べ、年間の稼働率は極めて高ぐなり、結果的に1作物当たりのコストを大幅に抑えられる。
6.GPSで位置を確認しながら動くマイ・ドンキーには、1mメッシュで作業の履歴や、作物の生育状況といった情報を自動取得する機能もある。これらのデータをクラウド上のデータプラットフォームで解析し、農業者に提供することで、経営改善や生産性向上を支援している。
7.ほかにも、スマートフォンやタブレット端末で水田の取水・排水バルブを自動制御・遠隔操作する自動給排水システムや、農薬散布の農作業用ドローンといった技術が徐々に普及し始めている。
8.スマート農業の普及を加速させるため、政府は今年4月から、新たな取り組みを2つスタートさせた。1つは、農林水産省が約50億円の予算を投じ、全国約70ヵ所で行う実証事業である。各地の農業法人や農業協同組合(JA)などにモデルとして、最新のスマート農機を導入してもらい、費用対効果を実証することで、他の農業者への波及も狙う。農水省は、25年までに農業の担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践している状態を目指している。
9.もう1つは、農業データのプラットフォーム(連携基盤)「WAGRI(ワグリ〉」が稼働し始めたことである。内閣府が主導する大型研究プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で研究開発が進められていたもので、340を超える企業・機関が加盟。気象や農地の形状、土壌、肥料・農薬などの膨大な農業関連データを企業や農業者団体間で共有できるようになった。
10.これまでは、IoTを使った農業サービス間の相互連携やデータの互換性がなく、スマート農業が広がるうえでの課題となっていた。WAGRIのスタートで、どう変わるかは、例えば、最新の研究成果を基にした農研機構の米収穫予測を、各農機メーカーなどが提供する栽培管理システムに実装でき、経験の浅い農業者のノウハウ不足が補完される。誰でも農業ができるような環境が徐々に整いつつある。
11.普及が加速するには、導入コストの低減と、使い方のモデル確立の2.つが欠かせない。まずコスト面では、自動運転トラクターを例に取ると、現時点では通常のトラクターよりも数百万円高い。まだ黎明期であり、製造コストの削減が進んでいないこと、生産ロットが少なくスケールメリットが発揮されていないことなどが要因である。この点に関しては、農水省の全国的な大規模実証事業の2年間で、ある程度の削減が実現すると期待している。
12.2つ目のポイントは、スマート農機は1家に1台は必要ない、という問題である。モニタリング用ドローンや自動運転トラクターなどは効率が良すぎるがゆえに、農業者がそれぞれ所有しても稼働率は低くなる。これでは、従来より価格が高い新型農機を導入する形となり、結果として農業者の収益にはつながらない。高効率なスマート農機を効果的に使いこなすには、農業者ごとに農機を所有しない利用形態、つまリシェアリングや作業外注が重要となる。例えば、近隣農業者10戸で1台のドローンを共同で導人し、一括してモニタリングをする。自動運転トラクターについても、地域で共同購入し、1人が複数の農業者の農地をまとめて耕す、といったシェアリングモデルが効率的である。
13.スマート農機やドローンを導入して、農業者の代わりに作業やモニタリングを請け負う作業外注も出てきている。スマート農機は高いから普及しない、という否定的な意見も聞かれるが、従来と異なる使い方が必要なだけである。ドローンの飛行や農薬散布、自動運転トラクターの公道運転などの規制緩和も同時並行で進めることが求められる。
14、スマート農業により、デジタル化の波が農業者にも及ぷと、作業の現場だけでなく農村自体が変わっていく可能性もある。農業への関心の高まりを受け、若者やUターン人材など、いろいろな人が新規就農や農村移住を志しているが、残念なことに、農業の難しさや不便さゆえに短期間で断念していることが多い。この点を解消しなければ、日本の農業・地域の明るい未来は見えてこない。
15.農業と農村の双方にテコ入れするうえで重要な堤となるのが、AI、IoT、ロボティクスといった最先端のデジタル技術である。農業と農村全体をデジタル化することで、もうかる農業と住みやすい農村を両立できる。スマート農業の副次的だが重要な効果として、ベテラン農家がスマートフォンを購入し始めている。これにより、高齢のベテラン農家も離れた都市部に居住する親族や友人とSNSで密なコミュニケーションをとることができるようになったり、インターネット通販を使えることで「買い物難民」から脱却することもできる。
16.デジタル化の波は、「農村=不便」という固定観念を打破できる可能性もある。農業・農村全体をデジタル化し、もうかるビジネスがあり、かつ住みやすい農村を実現することで、日本の農業・農村はより魅力的な存在となる。スマート農業の普及が始まった令和元年だからこそ、スマート農業の先にある新たな農村の姿を描くことが重要である。


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2019年07月15日

米中間の貿易戦争が混迷を深めている。そこで使われる武器は、関税など従来のものからテクノロジーへと変化しており、大きな違いである。


「R W Forsythcho著 :貿易戦争、テクノロジー巡る攻防へ、週刊ダイヤモンド、2019.6.8」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米中間の貿易戦争が混迷を深めている。そこで使われる武器は、関税など従来のものからテクノロジーへと変化しており、大きな違いである。企業や消費者は、関税や為替の変更によって高くなった値段を支払うか、どうしても必要でなければ購入をやめるかを選択することができる。あるいは、代替となる課税対象外の商品やサービスを探すことも可能である。
2.しかし、中国の通信大手ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)が米国でブラックリストに載せられているように、主要な売り手が主要な市場からブロックされている場合、それは単にドルか人民元かといった問題ではない。ファーウェイがハードウエアとソフトウエアの供給元として依存している米国のハイテク企業が同社への販売を禁じられていることも、全く次元の違う問題となっている。
3.ロンドンに本拠を置くTSロンバードのエレノア・オルコット氏は、トランプ大統領は米国で展開する5Gデータネットワークへのファーウェイのアクセスを拒否することによって、そしてそれ以上にファーウェイ向けの輸出を全て阻止することによって、ファーウェイに二重の打撃を与えた、と書いている。グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)は、基本ソフト(OS)であるアンドロイドの非公開部分の提供を、90日間の猶予を設けた上で停止すると述べた。
4.ファーウェイは独自のOSを開発したと言っているが、それはアンドロイド用に作成された無数のアプリがそこで動作することを意味しない。そして、半導体などのハードウエアの供給が絶たれると予想される中、ファーウェイは製品の在庫を積み上げているが、これは一時的な措置にすぎず、さらにずっと大きな影響が考慮されなければならない。これはファーウェイが常に米国の供給に頼っている半導体にとどまる話ではない、とオルコット氏は述べている。それ以上に、半導体を設計する非常に複雑な装置が絡んでくる。その製造業者は全て米国企業であり、すぐにそれを複製することはファーウェイにはできないと、同氏は判断している。
5.経済問題は重大化すると、政治の領域に入ってくる。トランプ大統領と中国の習近平国家主席は来月、日本で行われる20力国・地域(G20)首脳会議で会う予定となっている。貿易協議では、相互に有益な合意を生み出すことが広く期待されていた。結局のところ、双方とも自国の経済や株式市場を傷つけない形での合意を望んでいる。しかし、習主席とトランプ大統領はどちらも負けが込んでいる。問題はどちらがより多く失うべきものがあるかということである。
6.歴史が示すように、米国の技術を防衛するために輸出規制に頼ることは、最終的には競争力の低下につながる、とオルコット氏は言う。過去のそのような措置は米国の情報技術への中国のアクセスを阻止した一方、米国市場から他の国の顧客もはじき出した。また、米国企業は規制される可能性のある技術への研究開発(R&D)投資を削減した。
7.中国は貿易戦争の激化を回避するかもしれないが、米国企業にとつてより厳しい状況になる可能性もある。特に、中国が米国に対して貿易赤字を抱えるサービス部門でそれが言える。その中で、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は2011年以来初めて5週連続で下落した。長期米国債利回りは、24日に回復したものの、23日には17年10月以来の最低水準となった。
8.銅や原油価格も週次で下落した。極めつきは、IHSマークイット購買担当者景況指数(PMI)の速報値が、景気の拡大と後退の境界線とされる50近くまで下落したことである。どのような要因が働いているかはともかく米国経済は減速している。アトランタ連銀のGDPナウが示す今四半期の経済成長率予想は年率1・3%と、第1四半期速報値の3・2%から下がっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き下げのアクセルを踏めるような時代であれば、そこまで心配することはなかったが、貿易戦争中は状況が異なる。
9.電気自動車メーカーのテスラ(TSLA)をめぐる状況は、これ以上ないほど悪化している。同社の株価は年初来3分の1以上下落し、過去52週高値からほぼ半減している。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が今四半期には記録的な生産と納品ができると主張する内容の、漏えいした電子メールのスクリーンショットだけが、23日に株価の下落を止める役割を果たした。
10.あるアナリストが、テスラの株価が最悪シナリオで10ドルまで急落するとの見解を示した一方、別のアナリストはより慎重に下落余地を35ドルとした。よく知られているように、マスク氏は昨年夏に1株420ドルでテスラの非公開化を検討しているとツイートした。テスラは5月に入って、マスク氏にそれよりはるかに低い243ドルで株式を発行して資金調達することになった。それでも、23日の終値195・49ドルに比べれば結構な高値に見える。
11.アマゾン・ドット・コム(AMZN)が証明したように、市場は天才起業家に損失の計上を許すことがある。テスラの真の課題は、バランスシートと急速な現金の費消である。報道によると、マスクCEOは最近調達した27億ドルの資本がテスラを10カ月間しかもたせられないと従業員に告げ、さらなるコスト削減を求めている。その影響はテスラの社債にはっきり表れている。その下落ぶりは株価ほど急激ではないが、十分に劇的である。12.23日には、25年8月15日に償還予足の表面利率5・3%の社債は、100ドルの発行価格に対して81・35ドルに下落した。実質利回りは9・33%と、比較可能な無リスクの米国債を7・2%ポイントも上回っている。同社はこの社債を17年8月に18億ドル発行したが、当時のリスクプレミアムは3・2%ポイントほどと、現在の半分に満たなかった。この社債の格付けは、ムーディーズ・インベスターズ・サービスによるとCaa1、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)ではBマイナスと、ジャンク債の最深部に近づいている。13.テスラが最近発行した、24年5月15日償還予定の表面利率2%転換社債は、3週間前の発行価格100ドルから、23日には88・50ドルまで下落した。比較すると、同時に310万株が発行された普通株式は19・6%下落している。転換社債の直近の価格に基づくと、満期までの利回りは4・62%と、国債を2・5%ポイント上回る。これを普通株式の長期コールオプションとしてみた場合、転換社債の転換価額に対ずるプレミアムは40%と、発行時の27・4%から上昇している。
14.多くの理由から、マスクCEOはアップル(AAPL)の創業者である故スティーブ・ジョブズ氏と比較されてきた。ジョブズ氏と同様、マスク氏はわれわれの生活を変える製品を作る会社を生み出した、天才的かつ傲慢な革新者だが、一つ大きな違いがある。ジヨブズ氏は、アップルの大流行の製品が生み出した現金をため込むことにこだわった。
15.この原始的な財務戦略は、ジョブズ氏がビジョンを推し進めるために十分な資金をもたらした。対照的に、マスク氏は野心的な計画を達成するために常に外部の資金を必要としてきた。そして、そのことは同氏の人格と相まって、企業を常に崖っぷちに置き続けている。今こそ同氏が苦境を乗り越えられるかが問われている。



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2019年07月13日

新幹線に乗る利点は、誰にも邪魔されないまとまった時間があること。目的地まで時間がかかることを逆手に取り、多様化する二ーズに応えることが航空機に対抗する利点になる。


「柳澤里佳著(本誌)、浅野浩二(JR東日本研究開発センター所長)インタビュー、次世代新幹線試験車両ALFA-X、週刊ダイヤモンド、2019.06.08」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.22mのロングノーズで風を切り、最高時速(営業運転時)360kmを目指して突っ走る。JR東日本は5月に次世代新幹線開発の試験車両「ALFA・X」を完成し、東北新幹線の仙台〜新青森間で走行試験をスタートした。ALFA・Xのプロジェクトリーダーを務める浅野浩二は、同社の先端鉄道システム開発センター所長でもあり、車両の研究開発に長く携わってきた。
2.1988年、民営化でJR東が発足して入社した第1期生。「特段、鉄道好きではなかった」という浅野氏が、新しい会社でいろいろ面白いことにチャレンジできる、と大学に来た採用担当者から聞き、引き寄せられた。
3.入社後は、鉄道会社らしからぬ、駅ビルや店舗開発の部門に配属された。当時はまだ駅ビルのルミネもアトレもなく、駅ビルは持ち主も名称もバラバラだった。そこで統一に向けた買収手続きや新店開発に奔走。展示会に会社の紹介ブースを出すなどイベント企画も担当した。ここで柔軟性と発想力が磨かれ、1年半後、大学で流体力学を専攻していたことから、車体技術の部門に異動し、脱線のメカニズム解明の担当になった。鉄道研究の権威がいる大学の博士課程で学位を取得し、工場で実践を積んだ後、新幹線の研究開発に携わる。
4.82年に東北新幹線が開業して以降は航空機がライバルとなり、JR東は新幹線の速度アップを追求してきた。92年に完成した試験車両「STAR21」では最高時速425kmを達成し、2005年に完成した試験車両「FASTECH(ファステック)360」も営業速度の向上が主目的だった。浅野氏はFASTECHで台車の開発を担当。いかに車両を軽くして速度を上げるかに試行錯誤した。
5.実際の営業車両となると、STAR21の後に導入されたE4系(愛称Max)、FASTECHの後に導入されたE5、E6系(列車名はやぶさ、はやて、やまびこなど)とも安全性や騒音、費用対効果などを勘案した結果、試験で出した最高速度で営業することはなかった。現行の東北新幹線の最高時速は320kmである。
6.15年に次世代新幹線開発リーダーに任命されると、「新幹線の価値を再定義すること」から始めた。速度至上主義でいいのか自問した。北海道新幹線が16年に新青森〜新函館北斗で開業し、東北新幹線との直通運転を開始(北海道新幹線の車両はE5系を導入)した。最終目的は30年に予定する札幌延伸、全線開業である。従来通り速度を追求し、最高時速を引き上げて時速360kmで営業運転できれば、東京〜札幌を4時間半で結べる。とはいえ東京〜札幌の輸送シェアの大半は航空機で、たとえ新幹線が4時間半で結んだとしても、とてもかなわない。
6.「新幹線に乗る利点は、誰にも邪魔されないまとまった時間があること。寝てもいいし仕事をしてもいい。おいしいものを食べたり、おしゃべりに興じたりしてもいい」と考えた。目的地まで時間がかかることを逆手に取って、多様化する客の二ーズに応え、価値ある移動空間をつくることこそが航空機に対抗する利点になると狙いを定めた。
7.そこからコンセプトづくりと、プロジェクトチームのメンバー集めにまい進した。設計、車両、サービス、試験などさまざまな分野でそれぞれ詳しい人物に声を掛けた。散り散りだったFASTECH時代のメンバーも呼び寄せた。議論を繰り返して最終的な営業車両のイメージを固めた。そこから逆算した開発要素と4つのテーマ「安全性・安定性」「快適性」「環境性能」「メンテナンス革新」を基に、専用の試験車両であるALFA・Xを造る決断を下した。
8.最大の難関は、社内でALFA・Xへの理解を得ることだった。10両編成で総工費約100億円。大きな投資判断を仰ぐことになる。通り一遍の高速化だけではない次世代コンセプトには、メンバーの熱い思いが詰まっている。「それを経営に代弁するのが自分の使命」だった。反対意見も多数あった。例えば、ロングノーズにすると高速でトンネルに入ったときの圧力波により生じる騒音を緩和できるが、車両内の客席が減るため収益的にはデメリットだと指摘された。
9.そこでALFA・Xの先頭車両は片方をロングノーズ型、もう片方をE5系に近い16m型にした。「両極端なものを試験することで、さまざまな可能性を探れる」と説き、第一関門となる走行試験へのゴーサインを取り付けた。
10.走行試験は22年3月まで夜間、週2回ほど実施する。地震時に素早く止まるための「空力抵抗板ユニット」、着雪しにくい車体構造、上下制振装置など、技術の粋を集めた各機能を検証する第二関門の始まりである。
11.安全走行を検証した後は、サービス面での試験を予定する。利用ニーズによって内装をガラリと変えること、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、AR(風景にバーチャルな視覚情報を重ねること)も駆使し、情報提供を行うことなどを構想する。「東京から札幌に向かう家族に、途中駅から車椅子のおばあちゃんが合流すると、座席がバリアフリーの個室になる。あるいはビジネスマンが車内で会議できる空間があって、夕方になるとバーカウンターが登場したり、夢のストーリーを幾つも描いている」。これらの実現に向けて、将来の技術進展を予測しながら、外部連携も積極化して開発を進める。速度だけではない「世界一」の新幹線への夢は尽きない。


yuji5327 at 07:00 

2019年07月12日

日本の半導体産業の本当の問題は、CPUのような高度な技術を必要とされる製品に移行できなかったことである。付加価値が高いのは、DRAMではなくCPUだからである。


「野口悠紀雄著:日本の半導体産業の衰退、その根本的原因は何か?、週刊ダイヤモンド、2019..06.08」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.1980年代に、日本の半導休産業は世界のトップにあり、生産額で世界の約半分のシェアを占めた。特に重要なのが70年代から生産が始まった大型コンピューター用のDRAMの生産だった。ところが、その後、日本の立ち後れが目立つようになった。まず、DRAMはパソコン(PC)用が主になってきた。性能が低くとも価格が安いものが求められるようになり、韓国のサムスン電子は大規摸な設備投資でコストを引き下げ、シエアを拡大した。
2.他方で、アメリカのインテルは中央演算処理装置(CPU)に進出した。こうした変化に日本のメーカーは対応できず、シェアが下がった。そして、90年代後半からは、半導体メーカーの再編成が始まった。2002年11月にはNECからNECエレクトロニクスが設立され、03年4月に日立製作所と三菱電機からルネサステクノロジが設立された。10年4月にNECエレクトロニクスとルネサステクノロジとの経営統合によって、ルネサスエレクトロニクスが設立された。同社は赤字に苦しんだが、13年9月に官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)や自動車メーカーが出資した。
3.その後も成績は芳しくなく、10年に4万6000人いた従業員は、現在は約2万人にまで減っている。19年5月には、国内外の13工場で異例の長期生産停止に踏み切ると報道された。グループ従業員の5%に当たる1000人近くの希望退職を募っているといわれる。
4.他方、DRAMとは別の記憶用半導体である「フラッシュメモリー」を手掛ける東芝子会社だった東芝メモリは、米投資ファンドを中心とする日米韓連合の傘下となった。80年代後半には50%を超え、90年に49%であった日本企業の集積回路(IC)市場シェアは、17年には7%まで低下した
5.このようになった理由で、しばしば指摘されるのは、次の2点である。第1は、技術の流出である。サムスンは、高給で日本企業の技術者を引き抜き、あるいは週末に秘密裏に韓国へ呼び寄せるなどして、技術を盗んだといわれる。第2は、日本の経営者がサムスンのような大規模投資を決断できなかったことである。こうした問題は確かにあったが、それが日本の半導体産業哀退の根本的な原因だったいうのは疑問である。
6.仮に技術流出が起こらず、また日本の経営者の果敢な決断によつて、日本が低価格DRAMに舵を切れたとしても、その後の日本の半導体産業の発展に寄与したかは、2DRAMはそれほど高い技術を必要とする製品ではないので、新興国の低価格製品はいずれ生産されただろう。そうなれば、日本の半導体産業は、それらとの価格競争によって、疲弊してしまっただろう。
7.こうしたことは、その後、液晶についても起こった。液晶だけでなく、製造業の多くの分野で、製品がコモディティー化し、価格競争が激化した。日本の半導体産業の本当の問題は、CPUのような高度な技術を必要とされる製品に移行できなかったことである。なぜなら、付加価値が高いのは、DRAMではなくCPUだからである。インテルは技術力によつてCPUの生産を独占した。そして、マイクロソフトのOSとの組み合わせによって、後にウィンテル体制と呼ばれるものを築いて、PC産業を制覇した。
8.日本の半導体メーカーは、なぜCPUの生産に移行できなかったのかは、基礎開発力が十分でなかったからである。半導体は「科学産業」と呼ばれた。80年代ごろまでの日本には、半導体分野での基礎開発力があったが、技術の中心がモノや材料から情報にシフトしてくるにつれて、対応できなくなった。
9.CPUで重要なのは、半導体チップそのものではなく、そこに書き込まれた計算回路というソフトウエァなのである。同じことは、他の分野でも起きた。例えば、カメラはフィルムカメラからデジタルカメラに移行した段階では.日本のカメラメーカーは対応できたが、その後、スマートフォンが用いられるようになり、いまや重要なのは、AIの画像認識機能をスマートフォンで提供することになりつつある。
10.レンズという「眼」というよりは、その後ろにあって画像情報を処理する「脳」が必要になってきている。この分野で日本の基礎開発力は、著しく後れている。結局、日本の半導体産業が90年代以降の世界の潮流に立ち後れた根本的な原因は、新しいものを生み出す力が欠けていたことで、情報に関連した分野でそれが決定的に欠けていたことである。
11.新しい技術は企業からも生み出されるが、それだけでは十分でない。大学における基礎研究が重要な意味を持っている。アメリカの大学は、80年代にアメリカの産業が弱くなった時代においても強かった。時代の変化に応じて、大学の研究・教育体制が再構成され、中身が変わっていったことが重要である。それがインテルを生んだ源泉であり、その後のIT革命やAIを切り拓いていく源泉になった。
12.日本では、80年代に半導体産業が世界を制覇したときには.それに関連した学問の世界でも、日本は強かった。半導体に関する国際学会では、日本の学者が世界をリードしたが、そうした状態を継続することができなかった。その後、日本の研究能力は落ちた。例えば、論文数の世界ランキングを見ると、全米科学財団が世界の科学技術の動向をまとめた報告書によると、16年の科学技術論文数の世界ランキングで、第1位は中国である。
13.分野別の世界の大学ランキングを作成しているが、19年版のコンピューターサイエンスの分野を見ると、世界1位は中国の清華大学である。日本の第1位は東京大学だが、世界のランキングでは135位である。最先端分野で日本の大学が世界の進歩に立ち後れてしまった。社会の変化に応じて研究・教育体制を再構成していくことができなかった。成長が止まると、大学の再構成ができなくなる。そのために社会が要請する分野の研究ができず、経済が成長しない。
14.経済規模が拡大しない社会において、大学の構成を変化させていくには、どうしたらよい、そのために、どのような仕組みをつくればよいのが大変難しい課題である。しかし、われわれは、その答えを見いだしていかなければならない。


yuji5327 at 06:45 

2019年07月04日

5Gでは4Gまでより高周波の帯域を使うので、高速大容量通信を実現する。電波の届く範囲が限られるため、従来よりも基地局を多く、密に設置する。


「佐野正弘(携帯電話ライター)著:ゼロから分かる5Gの基礎知識、週刊エコノミスト、2019.5.28」はためになる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「5G」は携帯電話の通信規格の「第5世代」という意味で、現在・主流の「4G」の次の世代に当たる。米国や韓国など一部の国では2019年から商用サービスを開始した。日本では19年4月、総務省が携帯電話会社大手4社に5G用の.電波周波数帯を割り当てた。各社は19年9月20日開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に合わせて、試合会場周辺など特定の場所で試験的にプレ商用サービスを提供し、20年の東京五輪・パラリンピックに合わせて全国規模で本格的に商用サービスを提供する予定である。
2.1Gは無線で通話できる初期の技術で、まだ、音声の信号をそのまま伝えるアナログの通信技術を用いていた。2G時代には、デジタル化が進み、音声を0と1で表すデータで送受信するデータ通信ができるようになった。この結果、NTTドコモの「iモード」のようにモバイルでインターネットが利用できるサービスが生み出された。さらに3Gではデータ通信.需要の高まりを背景に通信が高速化したことから、米アップル社製の「iPhone」(アイフォーン)をはじめとしたスマートフォンの登場と発展につながった。4Gは、スマホ全盛期のデータ通信需要の高まりとともにスタートした。通信速度の高速化に加え、データ通信網で音声通話データを送受信する技術「VoLTE」も導入された。
3.つまり、3Gまでは、音声通話を起点にデータ通信も付随させる技術思想だったのが、ついに4Gで音声通話とデータ通信の主従関係が逆転した。5Gでは、携帯電詔やスマホだけでなく、あらゆるモノがインターネットに接続する「IoT」向けの通信網として使われることが想定されている。単に通信速度が速くなっただけでなく、進化を遂げている。
4.1〜5Gの各段階で先端技術を開発した象徴的な企業が存在した。lG時代には無線通信技術を強みにインフラ・端末で覇権を握ったモトローラ〔米)、2G時代にデザイン重視の携帯電話端末で消費者の心をつかんだノキア(フィンランド)、3G時代にはスマホがヒットしたアップルや緯国サムスン電子が世界的に存在感を高めたが、携帯電話会社や端末メーカー以外にも、その例はある。3G時代には米半導体大手クアルコムがスマホのモデムチップのばぐだい基本特許を抑えて莫大な収益を上げた。4G時代は、GAFA(グーグル、アップル、フェイスプック、アマゾン)や、中国IT大手のテンセントやアリババなども、高速大容量通信を追い風にEC〔電子商取引)やSNS(交流サイト)などで勢力圏を拡大した。
5.5Gには大きく分けて3つの特徴がある。1つは通信速度が一層速くなる「高速大容量」であり、理論値では現在4Gで実現している毎秒約1Gビットの20倍となる、最大同2Gビットを実現できる。
6.2つ目は、データ受信の遅延が1m/sと非常に小さい「低遅延」であることである。具体的には、画像データや機械の制御信号を送る際に、受信する側にタイムラグがほとんど生じない。これは遠隔で、確実に正確な操作が要求される自動運転や遠隔医療などを、無線通信で実現する上で重要な要素である。
7.3つ目は、1つの基地局に多数の機器を同時接続できる「多接続」である。5GはIoTへの活用が期待されていることから、街中に設置された多数のIoT機器を同時に接続できるよう、敲初から多くの機器を同時に接続できる仕組みが用意されている。
8.高速大容量、低遅延、多接続と、3目つの特徴を持つ5Gは、従来の携帯竃話やスマホよりむしろ、それ以外の分野で活用が期待されている。例えば高速大容景は4Kや8Kなどの高精細映像配信を可能にするだけでなく、大容量通信が必要な仮想現実(VR)や拡張現実〔AR)での利用拡大につながる。低遅延は自動運転や遠隔医療のほか、高速大容量と合わせて遠方の人と同じ場所にいるかのような体験が得られる「テレイグジスタンス」の実現に貢献する。そして多接続は、「スマート工場」や「スマートシティー」などIoTを活用した効率化を図る「スマート化」の実現に大きく貢献する。
9.電波の周波数が低いほど波長が長く、地表面に沿ったり、あるいは低い山や建物を回り込むこともできる。そのため、周波数が低い電波は遠くに飛びやすく、使い勝手がいい。ただ、低い周波数帯はすでに使われているものが多く、高速化に必要な広い帯域幅を確保するのが難しい。
10.一方、高周波になるほど利用が進んでおらず、広い帯域幅が空いていることから高速化しやすい。だが、電波の周波数が高いと直進する性質が高く、建物などを回り込めないため届く範囲も短い。そこで、5Gでは4Gまでより高周波の帯域を使うことで、高速大容量通信を実現しようとしている。電波の届く範囲が限られるため、従来よりも基地局を多く、密に設置することでそれをカバーする。
11.電波の使い方を示す仕組みで、FDD(周波数分割複信〉は送信と受信とで異なる周波数帯域を用いるのに対して、TDD(時分割複信)は回じ周波数帯域を使い、短い時問で送信と受信を切り替える。送信は「上り」とも呼ばれ、動画や写真データをアッブロードすること、受信は「下り」とも呼ばれ、音楽やPDFなどのデータをダウンロードすることを指す。FDDは仕組みがシンプルで、TDDのような切り替えが必巽ないことから通信効率が高く、高速化しやすい。しかし、帯域、要するに道幅が固定されてしまうのに加え、電波の混信を避けるため上りと下りの帯域の問に「ガードバンド」と呼ばれる空き帯域を設ける必要があり、電波の無駄が生じやすい。
12.一方、TDDは、例えば送信データが膨大ならば送信の時間を多く取るなど、柔軟に送受信切り替えが可能である。しかし、基.局と端末とで同時に送信・受信とを切り替える必要がある上、その切り替え時にデータが混信しないよう 一定の時間を空ける必要があり、FDDと比べ通信効率が悪く高速化しにくい。だがFDDのようにガードバンドを設ける必要がないので、割当てられた電波を無駄なく使えるという大きなメリットがある。
13.4Gまでは主にFDDが用いられ、TDDは一部に用いられる程度だったのだが、5Gでは電波を無駄なく使えることを重.視し、FDDではなくTDDを使う仕組みとなっている。
14.5Gは携帯電話大手が全国で展開する通信網だけでなく、「ローカル5G」と呼ばれる、特定の場所だけで利用する5G通信網を構築できる仕組みも用意されている。ローカル5Gを使うことで、例えば携帯電話会社のネットワークが入らない山奥にある工場であっても、5Gが持つ低遅延や多接続といった特性を使えるようになる。
15.総務省ではすでに携帯電話会社向けに5Gの周波数帯を割り当てたが、それとは別にローカル5G専用の周波数帯域が設けられている。将来的にはローカル5Gを展開したい事業者、例えば周囲に人が少ない場所で運営している製造業や鉱工業、エネルギー関連事業者などが、地域や場所ごとにその竃波の許諾を受けて活用することになる。


yuji5327 at 06:31 

2019年06月29日

工場の中の機械をすべて無線でつなぐ。ロボットの動作制御や加工プログラムの転送などが可能になる。多品種少量生産の顧客が増えている。


森田宗一郎著、インタビュー森雅彦(森精機社長):5Gは製造業に追い風、工作機械が先陣を切る、週刊東洋経済、2019.5.25」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本の工場における5G活用は欧州と比べると出遅れ気味だが、「工場のプロ」ともいえるFA(ファクトリーオートメーション)を手がける企業は5Gの可能性をどう見ているかは、2015年に独企業と経営統合し、欧州の事情にも精通する工作機械の国内最大手・DMG森精機の森雅彦社長に聞いた。
2.製造現場における通信は、プログラムに対して0・1秒遅れるだけでも加工の失敗につながる。さらに1秒遅れてしまうと、ロボットと周囲の機械がぶつかる事故も起こりうる。通信状態の不安定なブルートゥースなどから5Gに通信技術が置き換われば、ロボットとカメラ、センサー間の通信無線化に追い風が吹く。また工場内は公道と違って自動運転も実現しやすい。機械の場所が決まっているので、従業員に発信器付きのウェアラブル端末を持たせれば無人搬送車は何にもぶつからない。
3.5Gを使えば2030年ごろには工場内の部品や材料の搬送業務が完全に自動化できる。従来は遅延性や機密上の観点からタブーとされてきた、工場の遠隔管理も部分的に可能となる。非常に面白い時代になってきた。
4.歴史的に最新技術の取り入れに積極的な、われわれ工作機械メーカーから始まるだろう。米インテルの高性能なCPU(中央演算処理装置)を初期に採用したのは、ファナック(工作機械の数値制御装置最大手)だった。
5.国内の顧客は5Gに関心がないわけではないが、今は目先の仕事をこなすだけで手いっぱいになっている。5Gを使ったスマート工場を普及させるためには、FA企業が便利さを顧客に伝えていくことも必要である。
6.5Gに対する懸念はセキュリティーである。工場の情報が外部に漏れるとまずい。遠隔操作などで機械を工場外のサーバーにつなげるようになると、ハッキングされたり、ウイルスを仕込まれて機械が暴走したりする可能性も出てくるので、対策が必要である。欧州の製造業は5G活用も含めた理念が日本より半歩先を行っており、こういったリスクも厳しく意識している。
7.通信キャリアの1社に「早く5Gの通信タワーを建ててくれ。私が金を出す」と猛烈にラブコールを送っている。製造拠点の三重県・伊賀事業所を5G工場の実験に使ってほしいと思っている。今年10月ごろには5Gでどれくらい速く、多くの情報を送ることができるのか検証したい。競合のヤマザキマザックやオークマあたりも同様に動き出すはずなので、それに負けないようにしたい。
8.実験では工場の中の機械をすべて無線でつなぐ予定である。それによってロボットの動作制御や加工プログラムの転送などが可能になる。実験に成功すれば、世界中の工場に導入していく。航空機や医療器具の関連メーカーをはじめ、製造業では多品種少量生産の顧客が増えている。技術要件を満たせれば、工場内にある機械の柔軟な配置換えができるようになり、大きなビジネスチャンスである。


yuji5327 at 06:40 

2019年06月28日

5Gを活用した安全で快適な自動運転の実現に向けた動きは加速する。メーカーや通信会社やIT企業ど、開発競争が熾烈になる。


「森川郁子著:隊列走行、無人走行、AR自動運転がもたらす新世界、週刊東洋経済、2019.5.25」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.渋滞や交通事故を劇的に減少させると期待されている自動運転車は、今や自動車メーカーだけでなく、さまざまなベンチャーや大学の研究室などが開発に取り組んでいる。自動運転の実現に向けて、5Gは重要な技術である。高速大容量通信が可能になることから、自車の位置を正確に認識し、交通状況に応じた運転を行うために必要な高精度の3次元の地図をリアルタイムで受け取り、車に搭載されたセンサーやカメラなどの情報をサーバーへ瞬時に送り返すことができるようになる。
2.4Gでは0・5〜0・6秒ほどの遅延があるため、無人車の遠隔制御の実用には対応できなかった。危険を察知してブレーキをかける指示を送信しても、車が実際に指示を受信するまでのタイムラグが生まれ、すぐに停止できず、危険を同避できない。タイムラグが4Gの10分の1程度と超低遅延の5Gならば、無人車の実用化も視野に入る。
3.5Gを使った自動運転車として、積極的な開発が進められているのがトラックである。運送業界はドライバー不足が深刻化していることから、国土交通省・経済産業省が主導し、「隊列走行」実験を行っている。隊列走行は、先頭を走るトラックをGPS〔全地球測位システム)でトラッキングして得た位置情報と、ソフトウェアから読み取る制御情報をデータ化し、後続のトラックに5Gを使った通信で即時に伝送する。後続のトラックはデータを基に、一定の車問距離を保ちながら隊列を組み、前方の車両の加減速・ハンドルの動きに合わせて走行することができる。
4.将来的に、高速道路の専用レーンを後継車が無人で走行することを想定した実験である。ポイントとなるのが車両間の通信技術である。現在は760MHz帯の電波を使った無線通信、携帯電話回線による通信、WiFi通信の3種類を併川している、.メインに使われている無線通信は車両同士の通信に適した仕様だが、周波数帯域幅が狭いという特性上、高速化は難しい。携帯電話回線は4Gの場合、遅延が大きいのが難点である。WiFiを使っても0.4〜0.5秒ほどの遅延が起こるため、時速80kmで走っている先頭者がブレーキを踏んだ場合、後続車は先頭車から10mほど余分に進んでしまい、追突するリスクが上がる。セキュリティーの信頼性が高いとはいえず、メインの通信方式には適さない。
5.隊列走行システムを開発する先進モビリティの青木啓二社長によると、5Gになれば、低遅延の特性を生かして遅延時間を縮小できる。さらに〔車車間の5Gを使った直接通信が可能になれば、基地局圏外でも通信を途切れさせず、セキュリティーも担保できる」と期待を寄せる。制御ソフトの精度やパソコンの処理速度の向上、専用レーンなどインフラの整備などが進むことで、早ければ2020年代前半ごろに実現できるという。
6.5Gを使った自動運転車を待ち望.むのは、タクシーやバス業界も同じである。無人の自動運転車を遠隔地にいるオペレーターが運用・監視し、緊急時には遠隔制御するような技術が5Gによって現実になりつつある。公道を走る複数の自動運転車を5Gの技術を使って遠隔監規する日本で初めての実験が、2月に愛知県一宮市で行われた。KDDIが主催し、高精度3次沌マップの作成を手がけるアイサンテクノロジーや自動運転のソフトゥェァを開発するベンチャーのティアフォーなど7機関が参加した。
7.自動で走行する車から500mほど離れた施設には、複数台の大きなモニターがあり、5G通信で車から基地局に伝送された映像が映される。モニター室にいるスタッフの前には、ハンドルとアクセル、ブレーキが設置されている。これは遠隔操作を行うためのものである。ただし、ティアフォーの加藤真平会長は「われわれは自動運転車の自律走行を基本にしており、遠隔制御を使うのは緊急時だけ。時速40kmまでならば、4Gでも遠隔操作できる。
8.5Gの恩恵が大きいのは遠隔制御ではなく、遠隔監視のほうである。4Gでは複数の車両から得られる大容量の動画データを瞬時に送信するのが難しく、遅延も発生するため、正確な情報が得られない。5Gを使えば、その問題が解消できる。政府も遠隔型の自動運転の実用化を後押しする。現行の道路交通法では、車1台につき必ず1人が状況を監硯できる状態になければならない。ただ3月8日に道路交通法の改正案が閣議決定された。レベル3(緊急時にはドライバーが対応する)以上の自動運転装置を使用している場合、運転中の携帯電話やカーナビゲーションなどの操作や注視を認めるようにする。この改正によって、1人で複数台の車両の遠隔監視を行えるようになる。
9.遠隔監硯や緊急時の遠隔制御サービスの提供については、既存のタクシー会社のほか、ディー・エヌ・エーなどの異業種企業も名乗りを上げている。今後は技術開発だけでなく、スタッフ1人で何台まで監視できるようにするのか、監視と制御は同じ業者が担うべきなのか、といった実際に運用していくためのルールも同時に詰めていくことが必要になる。10.自動車メーカーも、5G対応を進めている。日産自動卓で自動運転や通信領域を統括する村松寿郎コネクティドカー&サービス開発部主管は、「自動運転の性能そのものの精度を高める3D地図のデータ取得が5Gによって容易になることが大きい。そのほかにも、提供できるコンテンツが変化し乗客の体験が大きく変わる」と話す。
11.日産がNTTドコモと協力して開発している近未来のコンセブトイメージ「I2V」の実験では、AR(拡張現実)の技術を使い、3Dのパーチャルアバター(分身)を車内に出現させ、乗客とリアルダイムで会話させることに成功した。これも5Gの高速大容量、低遅延の特性を生.かした技術である。「5G通信の開通.おめでとうございます」。身に着けたARゴーグルを通じて、目の前に出現したガイド風のバーチャルアバターからそう話しかけられると、車内の乗客は驚きの声を上げ、思わず手を振った。
12.アバターの正体は、車から離れた場所にいる女性である。彼女.がアバターの動作を操っている。その動作や音声はデータ化され、クラウドトに有線でアップロードされる。そのデータを5G回線でクラウドから基地局へ、基地局から移動中の車のサーバーへと絶えず伝送し続けることで、乗客とアバターが会話できるようになる。ARの場合、周囲の風景になじませる形でアバターを登場させることができる。
13、今年3月に行われたこの実験の目的は、次世代の車のあり方を探ることである。自動運転の時代がやってくると、ドライバーが運転に費やしていた時間を別のことに使えるようになる。あるときはビデオ会議を行いながら移動する、あるときは目的地に着くまで映画やゲームの娯楽をじっくり楽しむ、といった車内での時間の過ごし方の多様化が進んでいく。現在販売されている新車のインテリアに、モニターの大画面化の傾向が見.られるのは、車内の情報娯楽の拡充を迫られているからである。
14.5Gが普及すれば、こうした機能をさらに充実させることが可能である。一般車両だけでなく無人タクシーなどのサービスカーの場合でも、安全運転のための遠隔監視だけではなく、無人の車内の様子をモニターしたり、乗客の要望に遠隔で応えたりする機能が求められるようになる。I2Vに登場する3Dアバターは、観光ガイドやさまざまな要望に対応してくれるエージエント(代理人)としての活用が期待されている。
15、一方で、5Gを使った自動運転の実用化には課題もある。1つ目は基地局の整備である。5Gは電波の飛距離が短く、4Gに比べて基地局を多く設置する必要がある。.いくら5Gのメリットが大きいといっても、電波が使えなければ絵に描いた餅である。総務省は4月10日、携帯キャリア4社に5Gの電波を割り当てたが、同省幹部によると「各キャリアの基地局の開設計画では、自動運転を実現するには数が全.然足りない」という。整備を加速させるため、同省は信号機や道路標識に基地局を設置できるように、水面下で動いている。2つ目はハードの開発である。5G通信に対応できる車載チップを各サブライヤーが開発している。KDDI主催の実証実験では、100kgほどの大型無線機を車両に搭載し、データを超高速処理していた。これが車載チップに概き換わるには、巨額の投資と2〜3年近くの時間がかかるとみられる。
16.3つ目は、乗用車同士の直接通信(車車問通信)の規格と周波数帯の国際的な標準化である。通信規格については、5GAAという自動車閲連企業の同際業界団体で協議が進められている。無線通信を使った「DSRC」と呼ばれる方式と、5Gの直接通信を使った「セルラーV2X」という方式の2つがある。日本では01年ごろからDSRCに向けて整備をしてきたが、近年は欧米や中国でセルラーV2Xのほうが高性能という意見が優勢になっている、そのため、日本はセルラーV2Xへの対応に向けた準備が必要になる。またセルラーV2Xで使う電波は、5・9GHz帯とするというのが国際的な流れになっている。だが日本の場合、5・9GHz帯はすでに放送無線システムが利用しており、どの周波数帯を使うのかは議論の最中である。
17.課題はあるものの、5Gを活用した安全で快適な自動運転の実現に向けた動きは加速する。自動車メーカーやサプライヤー、通信会社やIT企某など、多くの企業が人り乱れた開発競争が、今後ますます熾烈になる。

yuji5327 at 07:01 

2019年06月27日

5Gを使えば無線でロボットの動作制御ができる。ケーブルは必要なくなり、製造ラインのレイアウトを柔軟に変更できる。


「森田宗一郎著:無線化で生産性アップ、次世代スマート工場の衝撃、週刊東洋経済、2019.5.25」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.ロボットの普及やセンサーの活用により、製造業の省人化やIoT導入が進んでいる。5Gはその流れをさらに加速させると期待されている。5Gの活用に前のめりなのが、ドイツ企業である。自動車メーカーのアウディは2018年8月から、スウェーデンの通信機器大手・エリクソンと、自社の製造プロセスでの5G活用について提携を結び、実証実験を行っている。
2.その内容は、車体組み立てにおける接着剤の塗布業務などを行う、産業用ロボットの無線制御である。現在の産業用ロボットにおける制御通信は、無線ではなく有線で行われている。4GやWiFiといった従来の無線技術は有線に比べて通信が不安定なため、生産ラインのトラブルにつながりかねず、敬遠されていた。
3.5Gを使えば無線でロボットの動作制御ができるようになる。これまで工場に敷かれてきたケーブルは必要なくなり、製造ラインのレイアウトを柔軟に変更できるようになる可能性がある。
4.製造ラインの柔軟な変更によりもたらされるのは、生産性の向上である。アウディは、「一般的な自家用車より車体が大きなSUV〔スポーッ用多目的車)やハイブリッド自動車、電気自動車など、20年前と比べて車種が格段に増えている。従来の生産方式で、今以上に効率よく製造するのは簡単ではない」としている。工場で製品の種類や構成を変える際、生産ラインのレイアウトを変更するには、膨大なケーブルの再接続に人手や時間を要する。無線化できれば、消費者の需要に合わせて、生産する車種を自由に変えることができるようになる。アウディと協業するエリクソンは、スイスのロボット大手・ABBとも行う、5Gを活用した無線通信による柔軟な生産システムの研究を強化している。
5.自動車部品大手の独ボッシュは、17年10月からフィンランドの通信機器大手・ノキアと提携している。今年4月にドイツで開催された国際産業技術見本市「ハノーバーメッセ」で、両社は5Gを用いた3Dプリンターの無線制御デモを行った。通常は機械側に搭載されている制御要素をクラウド上に移すことで、機械自体をスリムに安く製造できるようになり、保守作業も簡単になるという。
6.ボッシュの研究者で、大手メーカーと通信企業の業界団体「5G・ACIA」の議長も務めるアンドレアス・ミュラー氏は、「5Gは未来の工場の中枢神経系になる」とコメントしている。こうした製造業の高度化はドイツ政府が主導しているものである。11年には製造業の革新を目指す政策「インダストリー4・0(第4次産業革命)を打ち出し、産官学の連携体制を整えている。
7.5Gへの期待は生産面だけではない。多数同時接続が可能になることで、高いレベルのIoTが実現できる。工場におけるIoTとは、センサーやモーター、ロボット、産業機械などが、インターネットに接続されることを指す。「5Gで同時にネットに接続できる機器の数が増えれば、工場の状況をより具体的なデータで管理できるようになる」というメリットは自動車業界に限った話ではない。独シーメンスなども開発中である。
8.これまでデータ化されてこなかった情報を収集し分析することによって、工場の稼働状況を把握する精度が上がり、正確な故障予知も可能になるほか、AIを組み合わせた生産合理化も進むとみられる。ドイツに負けまいと、日本政府も17年から「コネクテッドインダストリーズ」と銘打ち、企業の支援や規格の標準化を進めている。前述の5G・ACIAには、三菱電機やソニーといった日本メーカーも名を連ね、製造業のIoT・自動化に向けた5Gの活用方法を議論している。
9.工場への5G導入に向けた動きを活発化させている日本メーカーは少ない。5G活用事例を調査しているESP総研のボリンジャー実穂子氏は、「H本メーカーはまだ5Gが製造業にもたらすインパクトを十分理解できていないのではないか」と指摘する。その背景には、「工場の自動化を手がけるFA(ファクトリーオートメーション)関連の企業が、5Gの有用性を伝えきれていない面がある」と、工作機械の国内最大手・DMG森精機の森雅彦社長は指摘する。
10.「お客さんに当たる国内メーカーは、どこも足元の業務で手いっぱい。われわれのようなFA企業が、便利さを伝えられなければ普及しない」と森社長は言う。工場の設備をネットにつなげることを懸念する声もある。生産性向上へ無線化を進めたい意向はあるが、安全上や機密上の観点において工場外からアクセスされるリスクを恐れる企業は多い。この問題については、すでに総務省が動き出している。それが公衆ネットワークから隔離された「ローカル5G」である。4Gまでは通信大手が占有してきた電波を、5Gからはエリアを限定して工場などの事業者にも開放する方向で議論を重ねている。
11.製造業の動向に詳しいローランド・ベルガーの長島聡社長は、「5Gに対応した設備は工場の新設時や更新期に導入されることから、日本でも5年以内には『5G工場』が誕生するだろう」と予見する。5Gを生かした製造業の大変革に対応できるように、どの企業も研究を進めておくべきである。



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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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