新技術

2019年12月12日

吉野さんノーベル賞授賞式へ

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リチウムイオン電池の開発
ノーベル化学賞
旭化成の吉野彰さん(71)
当初は成果が出ず、部下を減らされる
研究は瀬戸際
研究リーダーの吉野さん
6人のメンバーを4人に減らされた
チームが存続の危機
「あと半年」と決して口にしなかった
82年末の大掃除の後
たまたま目にした論文
コバルト酸リチウムの存在


yuji5327 at 07:06 

2019年12月06日

「脳機能をコンピューターで増強すれば、人間はまだまだ賢ぐなれる」という強い信念があった。


「イーロン・マスク談:超サイエンス起業家イーロン・マスクの頭の中 週刊ダイヤモンド2019/10/26」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.サイエンスが飛躍的に発達し、SF作品のように産業と社会を変える時代のアイコンというべき人物が、米連続起業家のイーロン・マスク氏である。マスク氏は今年7月、2年前に自身が設立して以来、謎に包まれていた企業で、ニューラリンクの状況を明らかにした。
2.人間の脳とコンピューターをつなぐシステムの臨床試験について、米当局に実施許可を申請した。このシステムでは、頭蓋骨に穴を開けて大脳新皮質に電極を埋め込み、頭の中で念じるだけでコンピュータを操作することを目指す。ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)の一つである。サルを使った実験では、実際にコンピューターを動かすことができた。
3.ニューラリンクはまず重度の障害がある人の支援に着手するが、最終目標は「人間の知能の限界突破」である。マスク氏は人工知能(AI)について、「絶対に逃れられない不死身の独裁者が現れるようなもの」などと警告してきた。この警告口の裏側には、「脳機能をコンピューターで増強すれば、人間はまだまだ賢ぐなれる」という強い信念があった。
4.環境に優しく持続可能な移動手段を目指す電気自動車メーカー、テスラ。都市空間に3次元の道路網を実現する地下トンネル掘削・運営企業、ボーリング・カンパニー。火星の植民地化を目指すロケット企業、スペースX。マスク氏はSFさながらの事業を次々と立ち上げてきた。実際、マスク氏の思考回路はSFの名作によって育まれている。
5.1971年生まれ、南アフリカ共和国出身のマスク氏は、SFやファンタジーといったフィクション小説に没頭して育った。特に愛したのは、英国のラジオ劇脚本を小説化した「銀河ヒッチハイク・ガイド」や、米ロバート・A・ハインラインの代表作「無慈悲な夜の女王」、ロシア生まれのアイザック・アシモフの一連の作品などがある。
6.今でも「アシモフのファウンデーションシリーズ(銀河帝国の崩壊と再生を描いた連作)を再読して、最高だ」とツイッターでつぶやくなど、傾倒ぶりを隠さない。こういったSFに育まれた世界観が、マスク氏の大胆なビジネス戦略を支えている。ビジネスではゲームチェンジャーが一番もうかる。荒唐無稽なほどに大胆な製品とビジネスモデルを描いた方が、既存のゲームのルールを根本から変え、企業や産業を破壊できる。
7.マスク氏がSFの古典をひもとくのは、大きく稼げる事業を求める野心と、子供時代に擦り込まれた世界観が、絶妙な化学反応を起こすからである。日本のビジネスパーソンも学ぶところがありそうだ。欧米では近年、デザイン思考の一つとして「デザイン・フィクション」が静かに浸透している。はるか遠い未来の社会をSF作品さながらに仮想し、それを基に現在の戦略を構築する手法である。
8.デザイン・フィクションを活用した例として、ライドシェア大手の米ウーパー・テクノロジーズがある。「ウーバーエア」と称する飛行型タクシーと、それが飛び交う都而のイメージを公表。壮大なビジョンを示すことで、世界各国の都市や関連製造業を自社のビジネス生態系に巻き込む狙いだ。ビジョンを実現できれば、新しい産業で覇権を握るチャンスがある。サイエンスが産業勢力図を激変させる時代。ビジネススクール的な知識だけでは私たちは生き残れない。



yuji5327 at 06:48 

2019年12月01日

最新の技術で糖度の高いトマトの生産に取り組み、普通のトマトの糖度は4〜5度に比べ、平均糖度8・87である。フルーツの甘さである。


「松崎隆司(経済ジャーナリスト)著:スマート農業の現場甘いトマトやミカン選別に最新披術、
週刊エコノミスト 2019.10.22」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.スマート農業が今、日本スの農業を大きく変えようとしている。静岡県の西部を流れる太田川沿いにあるビニールハウス。中に入ると、大人の背丈ほどのトマトのつるが、何列にもずらっと並んでいる。それぞれにやや小ぶりの真っ赤なトマトが実り、作業員が一つずつ手作業でていねいに収穫している。
2.試食すると、甘い。普段食べているトマトとは明らかに違う。農業ベンチャー企業、ハッピー・クオリティー(同県袋井市〉は、最新の技術を使って糖度の高いトマトの生産に取り組んでいる。普通のトマトの糖度は4〜5度。同社のトマトは、平均糖度8・87(最大16・9)である。8度を超えるとフルーツの甘さの領域に入る。
3.トマトは栽培の過程で、水を減らしてストレスをかけると糖度が高まる。しかし過度に減らすと枯れてしまう。そのため綿密な潅水制御が必要で、これまでは熟練したトマト生産者にしかできないたくみの技術と言われた。同社の宮地誠社長は、静岡大学と共同でAI(人工知能)を活用したスマート農業の研究に着手した。
4.特殊なカメラで撮影した画像や、温度、湿度、照明などのデータを収集し、これを基に「しおれ具合」を感知し、その結果によって潅水制御する仕組みを開発した。熟練農家の経験値をAIで補うことで、「高糖度トマトを大きな負担なく大量生産できるようになった」と説明する。5.同社の関連会社サンファーム中山が生産を担い、2016年の栽培開始から、3年で1億円近い売上高を上げるようになった。高糖度トマトは通常のトマトの3〜4倍ぐらいの単価で売れる。宮地社長は「日本の農業には、消費者や市場のニーズをくみ取って商品をつくるマーケットインの発想が乏しい。だから安い価格で販売しなければならず、収益が上がらない。高い付加価値の商品を作って差別化し、それを必要とする人たちに必要なだけ販売すれば、希望した値段で売ることができる」と言う。
6.宮地社長の取り組みはこれだけではない。実は糖度の測定方法も抜本的に変えようとしている。「これまでの糖度計は糖と酸を明確に区別できなかった。だから酸っぱいレモンでも糖度9・7なんて数字が出てしまう」。そこで国の機関とともに新しい糖度計を開発した。糖と酸を区別し、さらにリコピンやGABA(ギャバ〉など最近注目されている栄養素の成分も測定できるようにする。
7.「将来は農家をフランチャイズ方式で組織化し、だれでも簡単に高単価トマトを作れる環境を整えたい」と語る。人の感覚を持つ機械の手農作物の選別システムを開発するシブヤ精機(浜松市)は、慶応義塾大学ハプティクス研究センターと共同で、人の触覚をもったロボットハンドを使った選果作業の自動化実験を長崎県で進めている。実験がスタートしたのは2年前。それまでミカン農家は、傷んでいたり、形が悪いなど商品にならないミカンを各農家で事前に選別する仕組みをとっていたが、国のプロジェクトとして各農家の負担を軽減しようと選果場でまとめて選果する仕組みの実証実験を長崎県(JAながさき西海)で行うことになった。
8.ここで活用されたのが人間の触覚を持っているロボットハンドである。形状・硬さなどが不均一な青果物であっても、適切な力加減で正確につかみ、移動させることができる。慶応義塾大学理工学部システムデザイン工学科の野崎貴裕専任講師が開発し、シブヤ精機が果実用選果システムにこの技術を応用した。ロボットハンドを使った選果システムは、取り扱いが困難だといわれてきた腐敗したミカンを除去することを目的に開発された。紫外照明と白色照明を合わせたシブヤ精機の技術で、果実の大きさ、位置、腐敗度合い、傷の度合いなどを測定し、腐敗果実をロボットハンドがつかみ、ライン外に出す仕組みになっている。
9.これまでは、果実を空気を使って吸い付ける吸着方式や吸引方式が一般的だった。実験は吸着万式とロボットハンドを併用して行ったが、吸着方式だと腐ったミカンを落としたり、ホースに詰まらせたりした。ところがロボットハンドではそうした問題が起こらなかった。ほぼ実用化段階にきている。
10.シブヤ精機は、腐敗果実の選別だけでなく、イチゴや桃、トマトなどの選果や箱詰めまでの一連の作業を白動化、省人化するロボットシステムの研究開発を進めている。さらに農産物の自動収穫など、より複雑な取り扱いが必要な作業への展開も検討している。少子高齢化に悩む農業にも一筋の光明が見えてきた。


yuji5327 at 06:46 

2019年11月25日

顔の知覚・認識のメカニズムで、顔画像を上下反転すると、顔の知覚が難しくなる顔倒立効果が知られている。


「藤田一郎(大阪大学教授)著:赤ちゃんとフェイスブック相通じる顔認識のメカニズム、週刊ダイヤモンド 2019.10.12」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.ヒトは、未成熟で生まれてくる。さまざまな感覚機能は何年もかけて少しずつ.発達する。とはいえ、何もないところからこれらの機能が生じるのではない。生まれたときにある程度の機能を持ち、それを使って体験を積み重ねることで、脳と感覚.が発達する。
2.どれだけの機能を生.まれつき備えているかを解明することは、発達障害の理解にもつながるため、活発に研究されている。生まれたばかりの赤ちゃんはどのくらい耳が聞こえ、目が見えているのだろうか。言葉で尋ねることができないので、彼らの感覚世界を知るには工夫を凝らした実験が必要である。
3.赤ちゃんが生後3日以内にすでに母親の声と他の女性の声を区別できることを示した実験がある。赤ちゃんが人工乳首(おしゃぶり)を求められたスピードで吸うと母親の声がスピーカーから流れ、他のスピードで吸うと別の女性の声が流れるような仕組みを作ると、赤ちゃんは母親の声を求めて、適切なスピードでおしゃぶりを吸うことが示されている。
4.赤ちゃんがおっぱいを吸い母親が声を掛けるというやりとりが、生.まれてすぐに可能である。赤ちゃんの聴覚系は母親の体内にいるときからすでに働いており、その頃から母親の声を聞いていることが、生.後すぐに母親の声を求めることを可能にしている。
5.一方、生まれたばかりの赤ちゃんの目は焦点があまり合っておらず、ものを見る機能は発達していないように思える。実際、立体視や色の区別は生後数カ月くらいから少.しずつできるようになる。ところが、粗いながらも顔の認識はずっと早く機能している。生後数時間で、赤ちゃんは顔に似た図形パターン(顔パターン)に好んで目を向ける。一方、目、鼻、ほの配置を崩したパターンにはあまり関心を持たない。
6.顔パターンに対する好みは目と口を模した3つのドットのような単純なパターンに対しても起きる。赤ち.やんがこの刺激を顔として知'覚しているという解釈は、この図形を逆さまにして横に並ぷ二つのドットが下に来るようにすると関心を示さないことが根拠になっている。というのは、顔画像を上下反転すると、顔の知覚が難しくなるという現象〔顔倒立効果)がかねて知られているからである。
7.その一つの例が、有名なサッチャー錯視である。サッチャー元英国首相は口や目が引きつって不機嫌そうに見えるのを、上下にひっくり返して正立させてみると、とてつもなく奇妙な写真であることが初めて分かる。倒立した顔画像からはこの奇妙さを感じることができない。
8.生まれて数時閻で確認できる顔倒立効果が生まれつきのものか、それとも数時聞の生後経験で獲得したものであるかは明らかではない。鳥類ではインプリンティングと呼ばれる学習がふ化直後に起きることが知られており、ヒトにおいても生後数時間で学習が成立する可能性が十分にあるからである。
9.この2つの可能性を.区別する方法がなかった。しかしごく最近、この問題に関する驚くべき研究報告が相次いでなされた。英ランカスター大学のヴィンセント・リード博士らは、妊娠8カ月の女性の腹部に光を当て、ドット3つから成る正立顔パターンとその倒立パターンを子宮に向けて投影した。そして、それらのパターンを左右に動かしたときに、胎児が顔の向きをどのように変えるかを超音波映像法で調べた。その結果、胎児は正立顔パターンに対して頻繁に顔を向けることが判明した。顔倒立効果は、生後の視覚体験を経なくても生.じるのである。
10.しかし、この結果は、生後の視覚体験が顔倒立効果に何も影響を及ぼさないということを意味してはいない。そこで、英ロンドン大学のルチア・ガリード博士らは全く異なるアプローチでこの問題に取り組んだ。彼女らは、世界を上下逆さまに見て育った人物が顔倒立効呆を示すかどうかを調べたのである。
11.ブラジル人青年のクラウディオ・ビエイラ・デ・オリベイラ氏は、先天性多発性関節症のために顔が完全に後ろに反っくり返った状態で育った。出生時に、その症状の重篤さを見た医師から「生き延びる可能性はないので哺乳をやめるように」と助言を受けた母親はそれを拒絶し、息子を育て上げた。現在オリベイラ氏は講演や執筆などで活躍しており、インターネット上で彼の講演ビデオを見ることもできる。
12.オリベイラ氏の存在を知ったガリード博士らはブラジルに飛び、彼が顔倒立効果を示すか、示すとしたらそれは生まれつきか生後に獲得したものかを区別する綿密な実験を行った。その結果、顔倒立効果には生得的な要素と生後経験による要素の両方があることが判明した。この研究成果は、今年8月にベルギーで開催された「ヨーロッパ視知覚会議」で発表がなされた。
13.顔の知覚・認識のメカニズムの理解は、顔認証システムなどへの工学応用にも貢献する。コンピューターによって顔の詳細な特徴を解析すれば、当然のことながら顔を区別することができる。例えば.瞳の模様は一人一人異なるので、それに基づいて個人を特定することが可能なのは周知の通りである。しかし、遠い所にいる人物や質の悪いビデオ映像の中の人物を特定するには、このような方法ではうまくいかない。
14.目と口の相対位置の情報は大まか過ぎて、ブルーベリーマフィンとチワワを混同するような原因にもなる一方、人物特定の重要な情報にもなり得る。フェイスブックにおける顔認識アルゴリズムにも目と口の相対位置の情報が利用されている。そのため、フェイスブックに掲載した「皿にのせた3つのオリーブ」の写真に、ある特定人物がタグ付けされたりすることが時に起きる.、母親を見つめる赤ん坊とフェイスブックに意外なところに共通点があった。



yuji5327 at 07:03 

2019年11月24日

PHVこそ最良のEVと政治家や役人にもっと働きかけるべきである。EV化は日本の自動車メーカーの命取りにはならない。


大前研一著:日本の論点2019~20,、プレジデント社、2019.2.4」は参考になる。「7.世界で進むEVシフト、それでもトヨタが勝つ方法」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2017年7月、フランス政府は地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定を順守するための具体策として40年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止するプランを表明した。ほぼ同時期にイギリス政府も大気汚染対策として、40年からガソリン車とディーゼル車の新規販売を禁止する方針を正式発表した。
2.すでにオランダやノルウェーでは25年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する法案の準備が進められていて、ドイツでも30年までに発火燃焼エンジン、要するにガソリン車とディーゼル車を禁止する決議案が連邦議会で採択された。
3.自動車の市場規模世界4位、大気汚染が深刻なインドでも17年6月に30年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁じて国内販売を電気自動車(EV)に限定する政策を打ら出した。世界第2位の自動車大国アメリカは州によって厳しい環境規制が敷かれている.たとえげカリフォルニア州では州内で一定以上の台数を販売する自動車メーカーに対して、排出ガスを一切出さない車を一定比率以上販売することを義務付けている。
4.カリフォルニア州のZEV規制は1990年代から始まって改正を重ねてきたが、18年からZEVの販売比率が現行の14%から16%に引き上げられ、さらにZEVの対象からハイブリツド車、天然ガス車、低排出車が外されるなど、規制が大幅に強化される。このようなZEV規制は全米に広がりを見せ、現在は11の州で採用されている。
5.17年9月、世界最大の自動車マーケットである中国でも、19年から自動車メーカーに10%の新エネルギー車(NEV)の製造・販売を義務付ける規制の導入が発表された。今後はガソリン車やディーゼル車の製造販売を禁止することも検討されている。脱エンジン、脱内燃機関は世界的な潮流だが、フランス、イギリス、インドなどが相次いでガソザン車とディーゼル車の販売禁止の方針を打ち出し、中国がNEV規制を発表したこの数カ月で世界の自動車業界がどちらの方向に進んでいくのか、勝負は決した。今後の競争の軸になるのは電気自動車(EV)、ということである。
6.ヨーロッパ最大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題やパリ協定の発効などで、ガソリン車、内燃機関の行く末を悟った自動車メーカーは少なくない。すでにボルボ(スウェーデン)はエンジン車から撤退して19年以降に発売する全車種をEVなどに切り替えることを表明している。VWも25年までに80種類以上のモデルでEVないしプラグインハイブリッド車(PHV)を揃え、30年までにはグループ全体で300種類以上あるモデルすべてにEVかPHVを設定する計画を発表した。ディーゼル不信を招いたVWにとってEV化は過去と決別して生まれ変わる絶好の機会であり、同じドイツ大手のダイムラーやBMW、他の欧州メーカーもEV強化策を続々と打ち出している。
7.中国では200以上のEVメーカーが勃興して、開発にしのぎを削っている。そうした中でBYDのような新興メーカーがEV専業のテスラはおろか、旧来の大手メーカーを食う時代がやってくるかもしれない。
8.EVシフトが進んで世界の自動車業界の勢力図が塗り替わりそうな中、問題は日本勢である。この20年、日本の自動車メーカーはガソリンエンジンと電気モーター、2つの動力で走行できるハイブリッド車でエコカーの世界をリードしてきた。その分、EV化に腰が入らずに出遅れた。しかも環境規制強化の流れの中で、CO2を排出するハイブリッド車は環境対策車として不十分とみなす動きが出てきた。
9.カリフォルニア州のZEV規制でも、18年からハイブリッド車はZEVの対象から外される。19年からスタートする中国のNEV法でもハイブリッド車は含まれていない。もはやハイブリツドに胡坐はかけないということで、トヨタはマツダと組んでピユアEVへの本格参入を決めた。マツダは世界で唯一、ディーゼルでヨーロッパの厳しい環境基準をクリアしている会社である。しかし内燃機関の塊のようなトヨタとマツダが組んでEVを作るのは疑問である。
10.皆勘違いしているのは、トヨタもつく、つくっているPHVというのは実はEVそのものにもなる。ガソリンエンジンを回さなければ充電できないハイブリッドに対して、PHVはプラグを差し込んで外部から直接充電できる。EVと理屈は同じである。フル充電なら30〜50km程度はガソリンを使わずにバッテリーだけで走れるし、PHVによってはエンジンを起動しないでバッテリーで走るモードが選択可能である。
11.買い物や通勤などで環境規制が厳しい都市部を走る場合は電気モーター、都市部を離れて長距離を走る場合はガソリンエンジン併用という使い分けができる。EVドライバーの心理として一番の心配は長い距離を走ることである。カタログ値でテスラのモデル3は500キロ、日産リーフは400キロ走行可能というが、そこから先が怖い。サービスエリァやカーディーラーなどには直流の高速充電器が設置されているが、ガソリンスタンドを探すほど簡単ではない。仮に運よく見つかっても、充電に1時間近くかかる。
12.PHVの場合、夕方に帰ってきて、自宅の交流100Vのコンセントにプラグを差しておけば、一晩でフルチャージでぎるから、日常、市内をEVモードで走る分にはそれで十分。長距離を走ってバッテリーか心細くなってもガソリンエンジンがある。ガソリンとバッテリー、700kmくらいは走れる。しかも、郊外に出ればエンジンを回して電池をチャージすることもできる。つまりPHVはバックアップにガソリンエンジンを持ったEVと考えればいい。「プラグインハイブリツド」などと言わず、「EVアシステッド・バイ・エンジン」とでも言えばいい。そうすればEVシフトが進んでも、PHVが排除される側に回ることはない。
13.ハイブリッド車やPHVに使われている高度な基幹技術、たとえばパワフルな交流モーター、バッテリーの直流電流を交流電流に変換するインバータ、減速したときに電気をつくり出してチャージしてその抵抗力でブレーキをかける回生ブレーキをなどはEVにも共通する技術である。その生産量はハイブリッド車やPHVで圧倒的なシ」アを誇るトヨタが世界一であり、いまだ25万台程度しか販売していないテスラなどは足元にも及ばない。
14.EV最大の技術的ネックはバッテリーだが、これは内製しているメーカーはほとんどないから差別化は難しい。トヨタは電池容量や充電時間が飛躍的に向上する「全固体電池」の量産化を目指しているが、まだしばらく時問がかかりそうである。それでも現状、PHVはEVの要件をすべて満たしている。エンジンを回さずにバッテリーをチャージできるし、いざというときにはエンジンのアシストもついている。そうした点をユーザーや規制当局に対してきちんと説明していくべきである。欧米でエコカーの本命がEVに傾いたのはPHVのロビー活動が足りなかったからである。
15.メーカーの人は「PHVはHVの延長と考えていた」という。「PHVこそユーザーが安心できる最良のEV」と政治家や役人にもっと働きかけるべきである。EV化は日本の自動車メーカーの命取りにはならない。自動運転といった大問題が待ち構えていることを理解しておくべきである。


yuji5327 at 06:52 

2019年11月13日

太陽も猛スピードで銀河系(天の川銀河)を駆け抜けている。その速度は秒速200kmを超え、およそ2億年で、銀河系をぐるっと1周している。


「渡部潤一(国立天文台教授)著:太陽系の外からやって来た星間を旅する天体との出会い、週刊ダイヤモンド、2019.10.05」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.れわれ人類が住む地球は、太陽の周りをぐるぐると回っている。その公転速度は秒速30kmとかなりのスピードである。それだけではなく、その太陽も猛スピードで銀河系(天の川銀河)を駆け抜けている。その速度は秒速200kmを超え、およそ2億年で、銀河系をぐるっと1周している。
2.銀河系を旅していれば、いろいろな天体に巡り合うはずである。暗黒星雲の中に突っ込んでしまうこともあれば、他の恒星へ接近遭遇することもあっただろう。ただ、われわれは現在、星雲や恒星の数が比較的少ない場所を通過中で、他の天体と出会っている実感はない。早間空間を同じように旅している天体と巡り合ったことは、これまでなかったからである。
3.しかし、最近どうもそうではなさそうだと思えるようになった。星間空間の旅人らしき天体が最初に見つかったのは2017年10月のことである。発見したのは、ハワイ・マウイ島のハレアカラ山頂にあるパンスターズと呼ばれる天体望遠鏡である。20等級ほどの何の変哲もない天体として発見され、彗星のような細長い軌道だったために、国際天文学連合では彗星として、11月初めに発表した。
4.ところが軌道が正確に分かるにつれ、世界中の研究者に衝撃が走つた。どうやら太陽系の外からやって来た可能性が大きくなったからである。この軌道は双曲線軌道、つまり太陽系の外からやって米て、たまたま太陽に近づき、通り過ぎて去っていく、開いた軌道をたどっている可能性が高くなった。これまで小惑星は100万個、彗星は1万個を超える発見があるが、このような明らかに双曲線軌道を持つ天体が発見されたのは初めてであった。
5.ケプラーが17世紀に発見したように、宇宙の天体はそれぞれ独自の軌道を描いている。地球がそうであるように、太陽系の天体は全て、太陽の強い重力によって、その周囲を公転する軌道を持つ。
6.完全な円軌道の場合、その軌道の中心と太陽の位置は一致する。ひしゃげた楕円軌道になると、太陽はその楕円の焦点の一つに位置する。彗星のように細長い楕円であっても、必ず線は太陽を内側に含む閉じた軌道となる。軌道のひしゃげ具合、円からのずれを表すため、天文学では離心率という数値を導入している。完全に円軌道だと離心率の値は0で、値が大きくなればなるほど、軌道は円から次第につぶれ、ひしゃげた楕円になっていく。楕円軌道の場合の離心率の値は1を超えることはない。
7.ハレー彗星は、地球の公転軌道の内側までやって来て太陽に近づくが、はるか遠く海王星を越えた所まで遠ざかる、極めて細長い軌道を周回しており、その離心率は0・97である。さらに一部の彗星.は太陽から遠く離れた、オールトの雲という場所からやって来ることがあり、その場合は極めて放物線に近い軌道になる。それでも、もともとは極めて細長い楕円軌道なので、離心率は0・9999などと極めて1に近いが、1を超えることはない。離心率が1というのは放物線軌道で、数学的には太陽を周回するか否かのぎりぎりの軌道である。
8.これが1を超えると双曲線軌道となる。オールトの雲からやって来たような彗星では、離心率が1をわずかに超える場合もしばしばあるが、たいていは太陽系内部に入.り込んだときに木星.や土星の影響によって軌道が変化したか、太陽熱による氷の蒸発によって加速した結果であり、もともとは放物線に近い楕円軌道で、いずれも太陽系の中に閉じた軌道であった。
9.ところが、C/2017 U1の離心率は1.2と算出された。この値は、考えられる惑星の重力の影響や軌道決定の誤差を超え、明らかに双曲線軌道といえる値である。双曲線軌道は、いわば開いた軌道であり、太陽に近づくのは一度だけである。つまり、もともと太陽系の外からやって来て、たまたま太陽に近づいた星間空問の旅人と遭遇したわけである。発見者グループからの提案で、通称はオウムアムア〔ハワイ語に由来する言葉で、オウは手を伸ばす、手を差し出す」、ムアは「最初の」という意味で、繰り返しは強調)となった。太陽系の外からやって来た最初のメッセンジャーという意味が込められている。
10.さらに、世界中の多くの望遠鏡がこの天体へと向けられ、驚くべきことが判明した。明るさの変化から推足した形状が長さ400m、幅40m程度と極端に細長かった。太陽系のこれまでの小天体では、細長くても縦横の比率は3:1止まりで、これだけ極端な例はなく、自然の天体としてはかなり奇妙である。実際に、不自然な加速があることから、人工建造物、例えば巨大な宇宙船ではないか、という論文が発.表されたほどである。
11.宇宙船説は信用されてはいないが、こうした星間空間の旅人と出会えたのは幸運であった。次はなかなかないだろう、と思っていたところ、今年に人って2例目が見つかった。8月にロシアで発見されたC/2019 Q4、通称ボリソフ彗星である。そして、その軌道に世界中の天文学者が目を丸くした。なにしろ、9月11日に発表された離心率は、3を超えるとんでもない値だったからである。この離心率はオウムアムアをはるかに凌駕している。
12.今囲はオウムアムアより明確な彗星活動、つまり太陽熱による蒸発を示している。今あちこちの天文台で緊急に観測が始まっている。しかも12月上旬に向かって太陽に近づく絶好の観測条件である。その頃には、15等級ほどになると予想され.見掛けの明るさは、20等級止まりだったオウムアムアの100倍に相当する.蒸発したガスの成分を調べられれば、太陽系の彗規との差が分かるかもしれない。期待は高まるばかりである。
13.それにしてもオウムアムアの発見後、すぐに同じような星間空間の旅人が発見されるとは思ってもみなかった。もしかすると、これまでは気付かなかっただけで、実は案外多くの星間空間の旅人が太陽系を訪れているのかもしれない。


yuji5327 at 07:08 

2019年10月29日

量子力学が数学にもたらしたような、大変革をもたらす可能性を秘める。数学は変わり、数学を変革できる学問が、世界を変える。


「加藤文元(東工大教授):世界の"ルール"を探究する数学と物理、二人三脚の発展、週刊ダイヤモンド、2019.09.14」は面白い、概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.数学は「自然科学の基礎」と呼ばれることがある。だから、数学の発展があって初めて、諸学が発展すると思っている人は多い。しかし、実際の歴史をひもとくと、経緯はかなり異なる。大昔の人類は、月や惑星などの天体がどんな規則で動くのか、あるいは、なぜリンゴは木から落ちるのかという謎を解きたかった。その解明には、17世紀に花開いた微分積分学が不可欠だった。しかし、微分積分学という学問がもともと存在し、天体の運行や物の運動について調べていくうちにそれが応用できると分かり、「使ってみたら解けちゃった!」という感じで解決したわけではない。
2.実際の順番は逆である。ガリレオ以来の天文学や動力学など、当時の物理学の発展という背景があったおかげで、ニユートンやライプニッツによる微分積分学が形成されていったのである。微分積分学のおかげで、物体の運動の法則が、微分方程式で書けるようになった。天体の運行もリンゴの落下も、たった一つの式で記述できる。
3.技術的には、物体の速度や加速度を、物体の位置を表す関数の時間に関する微分で表現できたことが大きい。ただ、「微分」という考え方がもともとあって、それがたまたま「速度」の概念にフィットしたというよりは、物体の速度を表す数学概念が欲しいというモチベーションから、微分というアイデアが生まれたという方が、実際に近い。
4.自然界の物体の成り立ちというのも、人類が長年取り組んできた謎だった。物体が原子という基.本的な要素から構成されていることが分かってくると、原子スケールの世界を説明できる方法を探すようになった。その解明のために、量子力学という物理学の理論が考えられた。ここでもそれまでになかった数多くの新しい数学が必要となったが、そのほとんどは量子力学の発展と同時に成立したか、あるいは量子力学よりも後に数学として完成したものばかりである。
5.20世紀初頭、ディラックという物理学者は量子力学の数学的モデルを提案した。そこには、当時の数学にはなかった新しいアイデアが多く盛り込まれていた。ここから、現在では関数解析と呼ばれている新しい数学の理論体系が誕生.し、線形代数学の無限次元版ともいえる、画期的な視点やテクニックの研究.が始まった。これだけで世界中の多くの数学者たちが飯を食ってきた。
6.ディラックの考案した数学モデルの中には、「ディラックのデルタ関数」という有名な関数が現れる。これは実数上のある特定の場所だけ無限大の値を取り、それ以外の場所では0になるという、ちょっと変わった関数だった。普通の関数は有限の値しか取れないので、この関数はとても型破りなものだった。これを「ちゃんとした」理論にするために、後年、シュワルツという人が「超関数」という新しい理論を立てたが、それは量子力学よりもずっと後の話であ.る。
7.量子力学が数学にもたらした影響は、これだけではない。空間の概念を変えたのである。空間とは、縦・横・高さという3つの次元があ.って、それぞれに連続した延長を持っているというのが直観的な姿である。しかし、原子レベルの小さいスケールでは、空間の見え方は全く異なるかもしれない。少なくともわれわれはそれを見ることができない以上、直観的なモデルに頼ることはできない。となれば、空間が最初にあって、その中で物理や数学が展開されるという、これまでの考え方の順序を逆転しなければいけない。
8.つまり、物理や数学などの構造が最初にあり、そこから空間が決まるという主客転倒が、新しい空間の捉え方ということになる。だから、空間というのは、ただの入れ物ではなくなった。この考え方は、さまざまな現代的数学につながっている。その意味で、量子力学のような20世紀初頭の物理学の刷新は、21世紀の現代数学にも深く根を下ろす、根本的なアイデアの変革だつた。
9.このように、数学と物理学は互いに手を取り合って発展してきた。しかし、現在のように、多くの学問が多種多様に関連し合い、豊かな学際的連携関係を築きつつある状況では、物理学だけが数学に影響を及ぼす中核的存在だというわけにはいかなくなってきた。実際、さまざまな学問が数学とのインダラクションを模索しながら、新しい関係性の構築を始めている。
10.AI(人工知能)を巡る昨今の急速な技術の進歩は、ネットワークの総合的理解やさまざまなセキュリティー理論の構築を通して、数学自体に新しいアイデアをもたらす可能性が高い。さらに、認知科学の世界でも圏論を用いた数学モデルが研究されており、それが数学に新たな影響をもたらすかもしれない。数学と諸科学との関係は、従来はピラミッド式だと思われてきた。しかし、より現代的なモデルでは、さまざまな諸理論が互いに複雑に結び付いたネットワーク状である。そこでは、基礎と応用という一方向的なつながりだけではなく、双方向的な関連性が複雑に絡み合っている。のみならず、その全体像は脱中心的になっていることも、大.きな特徴である。
11.数学のさまざまな側面や理論は、「数学」としての緩やかな一体性を保ちながらも、このネットワークの中の各所に散らばり、学問の連係の中に埋め込まれている。だから、数学はいろいろな学問から影響を受けて変わっていくし、これからはますますその傾向が強まる。昨今のAIブームとそれに関連する数理科学技術の急速な展開は、かつて量子力学が数学にもたらしたような、抜本的で長年にわたる大変革をもたらす可能性を秘める。数学は変わるのである。そして、数学を変革できる学問こそが、世界を変えることができる。


yuji5327 at 06:49 

2019年10月25日

中国の精華大学の施路平博士らが、新しい仕組みの人工知能〔AI)を発表した。従来型AIと脳の演算様式を融合し、既存のAIに比べ、エネルギー効率は1万倍に達する。


「池谷裕二著:闘論席、週刊エコノミスト、2019.9.10」は面白い、概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.8月の英科学誌『ネイチャー』で中国の精華大学の施路平博士らが、新しい仕組みをもった人工知能〔AI)を発表した。従来型AIと脳の演算様式を融合したデザインをとり、既存のAIに比べ、計算効率にして最高100倍、エネルギー効率は1万倍にも達する。博士らは一例として、自転車に自動運転機能を実装してみせた。二輪走行のバランス制御は難しいが、低速でもふらつくことなくスムーズに自走する動画の様子は不思議な光景である。音声認識や追尾機能も備え、AIの汎用性と自律性が高まったことを実感させる。
2.中国の科学は躍進している。現在AIの最先端を走るのは、アメリカでもイギリスでもなく、中国である。この事実を察知したアメリカはファーウェイ排除などの手を繰り出した時は、すでに遅しである。
3.日本の科学技術振興機構が2015年から17年に発表された高インパクトな科学論文を研究分野別に分析した結果、151の理工系領域のうち71領域で中国が首位だった。IT(情報技術)やAIなどの工学・計算科学系は、ほぼ中国の独占状態である。アメリカの研究所での主戦力は、もともと中国人だった。朝一番に実験室に来て、最も勤勉に働く研究者の多くは中国出身である。
4.中国と聞いて反射的に低品質や低モラルというステレオタイプなイメージを思い浮かべたのはもはや過去のことである。中国は古来、孔子、老子、荘子といった傑人を輩出してきた道徳と知性の国である。著者の専門分野である神経科学でも中国が強い。最新情報を得るためにアメリカや欧州の学会に参加するのが常識だったのは数年前までである。今は中国へも情報収集に飛ぶ必要がある。


yuji5327 at 06:46 

2019年10月23日

車両の樹脂化を47%(従来比4倍)に高め、車重を約850kgとし、従来の4割減を達成し、10万km走行時の温室効果ガス排出量を約11%低減できる。

「伊藤耕三(東京大学教授):超薄膜化・強靭化「しなやかなタフポリマー」の実現、自動車用革新的ポリマーの開発を目指して、學士會会報No938(2019-后法廚六温佑砲覆襦3詰廚鮗分なりに纏めると以下のようになる。
1.革新的研究開発推進プログラム(ImPCT〉は、実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進することを目的として、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議により創設された、全く新しい研究開発推進プログラム(平成26〜30年度)である。
2.我が国は、1980年代のバブル経済の後、「失われた20年」とも言われる長期的な経済の停滞に苦しめられてきた。この間、産業構造や生活スタイルの変化の中で、日本企業は従来のモノ作り戦略を転換することができず、産業の国際競争力が失われ、同時に、企業経営者や国民が自信を失い、成長のためのリスクを負うことができなくなった。これらの問題を払拭するため、大学や企業が失敗を恐れずに困難な研究開発課題に果敢に挑み、新たな成長分野を切り開いていく、新たな科学技術の研究開発システムが必要とされていた。
3.そこで、政府の科学技術・イノベーション政策の司令塔である総合科学技術・イノベーション会議が、ハイリスク・ハイインパクトな研究開発を促進し、持続的な発展性のあるイノベーションシステムの実現を日指したプログラムとして、平成25年度補正予算に5百50億円を計上し、基金を創成して、2014年度、12名のPMを決定し、ImPACTを創設するに至った。この中で、プラスチックやゴムなどのポリマーをテーマとする伊藤プログラムの取組みを紹介する。
4.伊藤プログラムでは、自動車用の高分子部材の性能向上、具体的には燃料電池の電解質膜やLi電池のセパレータの超薄膜化、車体構造用樹脂の強靭化、タイヤの薄ゲージ化などを実現するために、「しなやかなタフポリマー」を新たに開発する。主要な材料開発については、燃料電池電解質膜はAGC、リチウムイオン(,lL)電池セパレータは三菱ケミカル、車体構造用樹脂は東レ、タイヤ材料はブリヂストン、透明樹脂は住友化学という1材料、1企業のプロジェクト体制にした。また世界トップレベルの実験・理論の英知を集結し、Spring8やコンピュータ「京」を用いてマクロの破壊挙動理論と分子的機構解明とをつなぎ、タフネスの本質に迫る。
5.これを優れた独自技術と高い技術的受容性を有する我が国の企業へ実行可能な知見として引き度し、タフポリマーを実現する分子設計・材料設計の指針を確立する。この指針を新規な分子結合に結びつけることで、戦略的かつ効率的に革新的概念のタフポリマーを実現した。さらに、用発されたタフポリマーの産業適用性を自動車メーカーの観点から検証し、部材開発プロジェクト間の競合と協調を積極的に図るとともに、破壊機構の解明など共通課題についてはアカデミアが中心となって横断的に取り組む。
6.燃料電池電解質膜薄膜化プロジェクトでは、燃料電池を構成するフッ素系の電解質膜を対象に、従来トレードオフの関係にあった薄膜化と高水準の機械的耐久性とを両立させるという難しい課題に挑戦し、Spring8の大型設備で検証しながら、ミクロ構造を制御したフッ素系電解質ポリマーを開発することにより、膜厚が5分の1で、機械的耐久性が5倍の無補強高性能電解質薄膜の開発に成功した。今後、小型・低コストの次世代型燃料電池システムの実現が期待される。
7.Li電池セパレータ薄膜化プロジェクトでは、乾式2軸延伸法において、ポリプロピレン(PP)系多孔質フィルムの空孔形成を制御することにより、従来技術では成し得なかった薄膜化と高強度化の両立に成功し、従来の4〜5分の1に相当する5マイクロメートルの厚みで、突刺し強度を単位厚み換算で2〜3倍にまで高めた高強度セパレータを開発した。今後、この開発成果を分離膜等の各種多孔質フィルムに適用すれば、機器を小型化でき、省エネルギー・省資源化が見込まれる。
8.車体構造用樹脂強靭化プロジェクトでは、アカデミアによるポリマー材料への環動ポリマー構造導入と東レが培ったナノアロイ技術を組み合わせることにより、従来材料と比較して約8倍の破断伸びと約20倍の屈曲耐久性を達成し、硬さや強さを保ちながら、衝撃を受けても壊れにくい材料のを開発に成功した。今後、自動車、家電、スポーツ用品等、幅広い分野への応用展開とポリマー材料市場の拡大が期待される。
9.タイヤ薄ゲージ化プロジェクトでは、北海道大学のグンチェンピン教授がタフポリマー化の手法として提唱してきたダブルネットワーク構造をゴム材料に導人することに世界で初めて成功した、ゴム材料の強度が、低燃費性を意識したゴム(基準ゴム)対比約5倍に向上するとともに、従来技術では強度と二律背反の関係にあったタイヤの燃費特性に寄与する材料物性も15%向上する、革新的なゴム複合体を開発した。この成果は、将来的にタイヤの省資源化および低燃費性能の向上に貢献できる。
10.透明樹脂強靭化プロジェクトでは、代表的な透明樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)を対象に、高透明性を維持したまま、従来トレードオフの関係にあった剛性と耐衝撃性を高水準で両立させるという非常に難しい課題に取り組み、分子レベルでの高次構造制御に成功し、高透明性と高剛性を保ったまま、従来の10倍以上の耐衝撃性を実現した。この結果、自動車の前面窓やルーフを樹脂製に置き換える可能性が示された。ルーフ部材に適用した場合、併せガラスの重量に対して6割超、鋼板重量に対して約4割の軽量化が見込まれる。各材料開発プロジェクトにおける画期的な研究成果に加えて、基盤的な共通課題に関する研究においても数多くの重要な成果があった。
11.伊藤プログラムでは、各材料開発プロジェクトの成果の集大成として、「タフポリマー」の可能性をクルマで示し、実用性・安全性を備えた未来車のプロトタイプを提示するために東レ・カーボンマジックが中心となってコンセプトカーを製作した。このコンセプトカーは、鉄からポリマーヘ『Iron to Polymer』という意味を込めItoPと名付けられた。ItoPは電気自動車(EV)で3人乗り、将来の自動運転化を見据えたモニタリングシステムやステアリングシステムを備えている。スタイリングデザインは、しなやかさとタフさの両方をイメージさせ、樹脂を多用したクルマだからこそ成し得る未来的なデザインを目指し、一体感のある卵型キャビンと独立したフロントホイールカバー、大きな窓エリア、大開口ドアなどが外観上の大きな特徴となっている。
12.このデザインを成立させ、かつ軽量性・機能性に富んだ車体の構築には、「しなやかなタフポリマー」を含む樹脂材料を炭素繊維で強化した複合材を多用した。ボディを兼ねるモノコックフレームは、外皮部分とプラットフォームに加え隔壁を一体成形し、高強度・剛性と軽量性を両立しながら100坩淵匹僚杜未任△襦このように様々な開発成果を盛り込んで省エネルギーを追求したItoPでは、車両の樹脂化を47%(従来比4倍)に高めた結果、車重は約850kgとなり、従来と同じ素材で製作した場合の4割減という軽量化を達成した。従来エンジン車に対し、製造時及び10万km走行時の温室効果ガス排出量が約11%低減できるという試算結果が得られている。これは軽量化による燃費向上、必要蓄電容量の低減、低燃費タイヤ実装の相乗効果によるものである。


yuji5327 at 06:41 

2019年09月25日

技術の進化で、がん発症の長年の定説は塗り替えられつつある。ジョブズの言葉で、科学者は固定観念にとらわれず貧欲であれという態度が求められる。


「大隅典子(東北大学教授)著:遺伝子解析の進歩で判明したがんの進化と多剤療法の根拠、週刊ダイヤモンド 2019.08.03」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2005年6月12日、米スタンフォード大学の卒業式でのスティーブ・ジョブズのスピーチは、「Stay hungry Stay foolish」で締めくくられた。この15分間のスピーチで、ジョブズは自身が膵臓がんにかかっていることに触れた。人類とがんとの戦いは平たんな道のりではない。11年のピュリツァー賞受賞作「病の皇帝:がん」に挑む人類4000年の苦闘によれば、がんについての最初の記載は、紀元前2500年の古代エジプト時代までさかのぼる。
2.著者で腫瘍内科医のシッダールタ・ムカジーは、人類がいまだにこの病を克服できていないことを嘆いた。科学も医学もなかった時代、がんは「体液」の異常と見なされたこともあった。その本質が細胞の異常な増殖によるものだと分かったのは19世紀になってからである。そして20世紀、発がんに関わる化学物質やウイルスが相次いで見つかり、がん細胞の性質の理解が進んだ。
3.私たちの体を構成する約38兆個の細胞の振る舞いには、幾つかの決まり事がある。細胞同士が仲良くくっついて組織を構築する。遺伝情報が青き込まれているDNAに変異が生じた場合は修復する。細胞が自ら分裂して増えるかどうかは周囲を付度する、などである。これらのルールを無視して暴走し、勝手に増殖したり、組織から逸脱して移動したりする悪ガキのような細胞が、がん細胞である。ほかの体の細胞たちはこれに抵抗し、暴走し始めた細胞を自ら死に至らしめる仕組みもある。
4.がんの治療法としての最初のアプローチは、外科手術による病巣の除去である。その後、がん細胞の増殖を化学物質や放射線により抑え込むことが試みられてきた。最近では、がん細胞を見つけて攻撃する体内の仕組みを利用したいわゆる「免疫療法」も登場した。18年に京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル生理学・医学賞を受賞することになったPD-1抗原の発見もそのような研究成果の一つである。
5.だが、ここ数年の聞に、これまで想定されてきたがんの発症モデルを根本的に見直す動きが新たに始まっている。20世紀後半、がんは遺伝子の変異が蓄積することによって生じるという考え方が浮上した。例えば、遺伝的にがんを発症しやすい遺伝子型を持っている人の細胞に、何らかの変異が加わると発症に至る。このことは、網膜芽細胞腫という目の中に生じるがんでモデル化されてきた。
6.がんを発症しやすい「がん抑制遺伝子」の変異を両親から受け継いだ場合に、2つ目の変異として「がん原遺伝子(がん細胞の増殖を促進する遺伝子〉」が活性化するような変異が生じると、網膜芽細胞腫の発症に至る。これは発見者の名を取って「クヌードソン仮説」あるいは「ツーヒットセオリー」と呼ばれてきた。こうしたコ「前がん状態」から徐々に変異が蓄積され、より悪性度が高くなるという考え方は、いわば、遺伝子変異の蓄積を「線形」なものとして捉えている。
7.ところが、次世代シーケンサーの登場と、情報科学的解析法の進歩によって、がんの進行はもっと複雑であることが明らかになりつつある。従来よりもDNAの解読が迅速かつ安価になったことにより、丸ごと解析していたがん病巣の細胞を、もっと細かく分けて解析してみる機運が生まれ。例えば昨年、九州大学の三森功士教授らのグループが英科学誌ネイチャーのオンライン関連誌で報告した論文には、大腸がん患者から採取したがん組織の遺伝子を解析し、その結果、同じ患者のがん病巣の中であっても、細胞集団ごとに異なる遺伝子変異が生じていたことが判明した。さらに生物統計学的な分析を加えると、重要な遺伝子の変異が比較的早期に生じていることが分かってきた。
8.がん化を生物進化の系統樹に見立てると、枝分かれする前の幹の部分で生じた変異が、その後のがんの進化を促進する。P23という細胞の増殖を抑制する「がん抑制遺伝子」や、KRASという「がん原遺伝子」が、このようながん進化を促進させる「ドライバー遺伝子」に相当する。そして重要なことに、前がん状態からがんが進行する様態は、「線形」な推移ではなく、複雑に分枝していることが分かった。
9.つまり、同時多発的な遺伝子の変異が生じ、一つのがん病巣の中に異なる性質を持ったがん細胞集団が併存していることになる。これは、生物の進化で言えば、突然変異と遺伝的浮動を軸とする「中立進化」に相当するといえる。がんの「転移」も病気の進行を左右する。従来の考え方では、遺伝子変異が蓄積していく最後のフェーズにおいて、細胞を転移させる遺伝子の変異が生じると見なされてきた。
10.原発巣や転移病巣をつぶさに遺伝子解析してみると、転移巣に特異的な遺伝子変異は見つからなかった。このことから、遺伝子変異以外の要因(例えば、細胞のエピジェネティックな様態など)が転移に関係していると推測される。さて、がんの進行に伴う変異が複雑で細胞集団が枝分かれしていることは、一つのがん病巣が見つかったとしても、そのがん細胞を駆逐するのに適する薬物が複数必要になる可能性を示している。
11.多剤併用療法が重要になってきた根拠はここにある。つまり、ある遺伝子変異を有するがん細胞集団を殺すのに有効な薬剤Aは、別の変異を持つがん細胞集団には効果がなく、別の薬剤Bを使う必要がある。伝説のスピーチから6年後、ジョブズは亡くなった。今後、ゲノム科学が発展し、新たな解析方法が導人されることにより、がんの診断や治療は大きく変化していくことが期待される。技術の進化で、がん発症の長年の定説は塗り替えられつつある。ジョブズの言葉を借りるならば、科学者は常に「固定観念にとらわれることなく貧欲であれ」という態度が求められる。



yuji5327 at 06:58 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
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・技術翻訳、特許調査
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有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
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