新技術

2019年06月15日

健康を研究する流れは、米国や英国や中国で、大規模なゲノム解析である。13年もかかったDNA解読が、現在では30分以内に終わる。


「池谷裕二著:闘論席、週刊ダイヤモンド、2019.5.14」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.発症してからでは遅い。健康なうちに先手を打つべし、と予防医学がうたわれる近年だが、いまだに体調の異変に気づいてから病院に足を運ぶ人が多い。現存す.る中国最古の医学書『黄帝内経」に収録された「素間・四気調神大論」には「聖人不治巳病治未病」〔聖人は既病を治すのではなく未病を治す)と記され,「未病」という概念が提唱されている。
2.未病のブームは臨床だけではない。基礎研究界でも病気の研究から「健康」の研究にかじを切っている。これまでは疾患を解明することで治療に役立てようというアプローチが主流だった。
3.しかし改めて考えてみれぱ、患者の数より健常人のほうが圧倒的に多い。健康について理解が進んでいないということは、人聞という生命体の動作原理が解明されていないに等しい。
4.健康を研究する代表的な流れは、米国や英国や中国で進められている大規模なゲノム解析である。 2003年に完了した「ヒトゲノム計画」当時は13年もかかったDNA解読が、現在では30分以内に終わる。 
5.こうした技術革新に後押しされ、海外では100万人規模の健営人のゲノムを解読」て「健康」の原理を解明しようとしている。健康状態を監視するヘルスケアツールも普及しつつある。
6.よい例はアップルが昨年発売した腕時計型の「アップルウオッチシリーズ4」である。加速度計や心拍計のみならず心電計も内蔵する。膨大な.身体状態がデータセンターに集約される。すでに不整脈の予備軍が発見され、思恵を授かった「健康な人」も少なくない。7.問題は日本である。大規模な健常人ゲノム計画はおろか、アップルウオッテの心電計の使用さえ、国の認可の壁に阻まれ認められない。倫理規制や承認制度など難しい問題もあるだろうが、有益な試みには柔軟な対応が望まれる。



yuji5327 at 06:37 

2019年06月11日

IoTが進み、自動車がサイバー化していく時代に、オートモーティブが持つ技術は重要になる。

2019/5/3 付けの 大前研一さんの 「ニュースの視点 」(発行部数 162,406部)は、「LIXILグループ/TKP/日本電産」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.LIXILグループは先月18日、潮田洋一郎会長兼CEOが、5月末に取締役を辞任し、6月の定時株主総会を経て、会長とCEOからも退くと発表した。会見で潮田氏は、2019年3月期の連結業績が赤字に転落する要因は、前CEO瀬戸氏の業務執行にあると強調。自身が全役職から退くことで瀬戸氏を任命した責任をとるとしている。
2.今期約500億円の赤字を計上した原因は、瀬戸氏を招く前にあり、全てを瀬戸氏の責任とするのは間違いだと思う。潮田氏は、自身の38年間の取締役人生の中で、最大の失敗は瀬戸氏を招いたことだと述べている。しかし、潮田氏が手がけたイタリアのPermasteelisa S.p.A社の大型買収も結果として大失敗だった。やはり瀬戸氏だけをクローズアップするのは違和感がある。
3.機関投資家はLIXILの経営状況に鑑み、臨時株主総会を要求していましたが、潮田氏・山梨氏の取締役退任が決まったので、定時株主総会だけで収まるかもしれません。ただし、大株主の状況を見ると、アクティビストファンドが臨時株主総会を要求し、潮田氏を追求する可能性もある。
4.潮田氏の信託財産を扱う野村信託銀行の持分比率は約3%に過ぎないから、プロキシーファイトになった場合、ほとんど力を持っていないと言える。また従業員持ち株会の2%も、潮田氏を支持する可能性も低い思う。
5.このような状況を受けて、潮田氏は本社の移転やシンガポールの企業による買収など、色々と画策しているという報道もある。しかし、今の状況で潮田氏や山梨氏が状況を打開することは難しい。瀬戸氏が返り咲いたとしても、この会社を経営できるのか疑問である。LIXILは「ヤマタノオロチ」に例えられる。頭がたくさんあって、制御不能ということである。
6.国内企業の合併だけでも未だにしっくり来ていないのに、縁もゆかりもないグローエなども買収し、グループ全体としてのまとまりがない。この会社の経営は非常に難しく、
まともに経営できる人はほとんどいない。
7.ティーケーピー(TKP)は先月15日、スイスのIWG傘下の日本リージャスHDを買収すると発表した。5月末までに発行済み株式の1万3700株を467億円で取得し、完全子会社化とするものである。TKPはレンタルオフィス市場での展開を加速する考えである。TKPは売上も営業利益も驚くほど伸びている。
8.その状況からも、買収はもちろん可能だが、やや懸念がある。TKPとリージャスではビジネスモデルが異なるため、シナジー効果が本当に期待できるのかわからないからである。
9.TKPは貸会議室を展開している。料飲・ケータリングや宿泊などオプションをつけて付加価値を提供しているのが秀逸ですが、ビジネスモデルの根幹は会議室を貸すことである。
10.リージャスのビジネスモデルはWeWorkと同様にレンタルオフィスである。一括して不動産を借りておき、煩雑な不動産契約などを省き、それを貸し出す。ネットで簡単に申し込めて非常に手軽で、特にスタートアップ企業やフリーランスなどにはありがたいサービスである。
11.今、レンタルオフィス市場の代表的な存在であるWeWorkに対して、三井不動産、住友不動産、森ビルなどが大いに警戒していて対抗する動きを見せている。乱戦模様になってきていて、今後も今までと同じような収益が見込めるのか疑わしい状況になりつつある。
12.TKPの売上が約300億円だから、リージャスはほぼ同程度の規模と言える。シナジー効果は一部あるにしても、この点からもややリスクが高い買収だと感じる。貸し会議室市場は、TKPがユニークに開発してきた市場だが、レンタルオフィス市場はそうではない。伝統的な企業がひしめきあうなど競合が非常に多い市場である。今回のリージャスの買収も吉と出るか凶と出るか、わからない。それほど簡単にシナジー効果を期待できる状況ではない。
13.日本電産は先月16日、オムロンの子会社で、車載電装部品を手がけるオムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収すると発表した。買収価格は約1000億円を見込み、これにより日本電産は重点成長事業と位置づける車載事業を強化する考えである。
14.100社以上の企業買収で1つも失敗したことがない、という日本電産の永守氏だから、今回の買収も問題ないと思う。しかし、単純計算すると買収額を回収するまでに数十年かかるので、この点をどのように見ているのか、理解できない。
15.日本電産は売上高2兆円を目指して成長しているが、本業の精密小型モーターが伸び悩んでいる。そこで、M&Aで特に成長著しい車載などの事業に1000億円を投資し、さらに大きく伸ばしていこう、ということである。オムロンオートモーティブの利益は30〜40億円程度である。
16.永守氏が経営するとなると、さらに利益を出せるのかもしれないし、あるいは永守氏には外から見えない別の秘策があるのかもしれない。オムロンの立場から見ても、売却した理由がピンとこない。
17.これから先、IoTが進み、自動車そのものがサイバー化していく時代において、今回のオートモーティブが持つ技術や資産は重要になってくると思う。なぜ、その事業を今手離してしまうのか。永守氏の狙いもオムロンの売却理由も、現時点で理解できないが、今後の展開を注目した。


yuji5327 at 06:29 

2019年06月09日

ヒトゲノム研究は商業化が進んでいる。ゲノム配列の高速解読には次世代シークエンサーの最新型は約1億円と高額では大学では型落ちになる。最新型を持つ企業が多い。

「岡田随象(大阪大学教授)著:遺伝統計学で迫る日本人集団の適応進化、學士会会報No.936(2019-)」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2008年には国際プロジェクト「千人ゲノム」が始まり、複数集団に属する2500人のゲノムが解読され、約1億個のSNPが明らかになった。ヒトの塩基配列は約30億だから、30カ所に1カ所の割合で世界中の誰かが遺伝子変異を持つことになる。こうして頻度の低いSNPも含め、現世人類のヒトゲノム多型の全容が明らかになった。
2.「国際パップマップ計画」の頃は手作業でゲノム配列を解読していたが、「千人ゲノム・プロジェクト」の頃には、大規模かつ自動的に配列を解読する「次世代シークエンサー」が開発され、効率が劇的に上昇した。コストも劇的に低下した。2000年頃は1人当たり百億円かかったが、現在は十万円以下である。特に日本人集団に代表的なSNPは数十万カ所なので、そこだけを限定して調べる場合、4千円)である。
3.「次世代シークエンサー」の登場以降、ヒトゲノム研究は大規模化した。イギリスの「UKバイオバンク」では50万人の全ゲノムSNPデータが取得され、アメリカの「TopMedプロジェクト」では10万人の全ゲノム配列データが取得された。10年前なら数百人でも大規模だったが、今や50万人ですから、凄い進歩である。しかも、イギリスは50.万人のゲノム情報を安価に配布している。世界中の何千人もの研究者がこのデータを使っている。自分でデータを抽出しなくても、他からデータを安く購人することで研究できる時代になった。
4.遺伝統計学とは、「遺伝情報」と「形質情報」の関連を、統計解析を通じて評価する学問である。「遺伝情報」とはゲノム塩基配列(DNA)のことで、個人間で99.9%同じだが、少しずつ違う。「形質情報」とは表現型のことで、性別、身長、体重、外見、病気など、個人の形質として外から観測可能なものである。
5.わたしたちを含む研究チームが実施した「血液型を決める遺伝情報と貧血に関するヒトゲノム解析」では、血液型は、関連する遺伝子領域のSNPの組み合わせ(遺伝情報)によって決まる。一方、貧血になりやすさは血液成分(形質情報)がある。両者の関連を解析した結果、「B型になる遺伝子を持つ人は、そうでない人と比べ、貧血関連指標(ヘモグロビン)の量が少し多いので、貧血リスクが低い」と判明した。
6.遺伝情報の個人差と形質情報の個人差を結び付ける研究が現在、大流行している。代表例が「ゲノムワイド関連解析」(GWAS)である。数10万人を対象に、数千万カ所のSNPのタイピング(新たなSNPの同定ではなく、既知のSNPの検出)を実施し、形質との関連を評価するものである。ちなみに、GWASが数十万人分のゲノムを解析する際、1人分のゲノムデータはメール1通分(70KB)に圧縮されるので、少し切ない気持になる。
7.GWASは2002年に理化学研究所が世界に先駆けて実施し、その後、技術の発達に伴い、世界中の研究施設が実施するようになった。その結果、2016年までに、千以上の形質(背の高さ、太りやすさ、髪の毛の癖、酒の強さ、病気のかかりやすさなど)に対し、2500以上のGWASが報告されている。主要な疾患の発症に関わる遺伝子変異も、見つかっています。昔は研究者の一生で、疾患の発症に関わる遺伝子が一つでも見つかれば本望でしたが、現在では数千個規模で発見されています。
8.ヒトゲノム研究のもう1つの特徴は、商業化が進んでいることである。ゲノム配列の高速解読には次世代シークエンサーが必要だが、最新型は約1億円と高額である。大学で購入しようとすると、審査などで1〜2年はすぐ経ってしまい、その上、機械は約3年で更新されるので、やっとの思いで購入できた頃には型落ちになってしまう。そのため、最新型を持つのは企業が多くなってきている。しかし、そのお蔭で研究者は高額機器を購入しなくても、最新型を持つ企業にゲノム解読を依頼することで、安く研究できるようになった。
9.ゲノム研究の金銭面での敷居が非常に低くなった結果、ゲノム研究は大容量のゲノムデータを低コストで収集し、スーパーコンピュータを用いてビッグデータ解析をする時代になった。今やゲノム研究は医療現場も巻き込み、個別化医療が始まろうとしている。研究者の意識も、数年前までは「ゲノムは研究者の研究のためのもの」だったが、今では「ゲノムは患者の健康のために使うもの」と変化しつつある。
10.突然変異によってある集団に発生した新たな遺伝子変異は、子孫に受け継がれる過程で頻度が変化する。ある変異は頻度が減少し、消失する。別の変異は頻度が増減を繰り返す。この場合、集団内でその変異を持つ人は増えたり減ったりする。頻度が増大し、集団に拡散していく変異もある。全員に拡散すれば、もはや変異でなくなる。ある変異を持つことが生存に有利(不利)な場合、変異の頻度はその集団内で急増(急減)する。これを「選択」と呼ぶ。「環境に適応する過程で、変異への"選択圧"が働き、変異の頻度が変化して遺伝的多様性が生じた」と考えるのが、ダーウィンの「自然選択説」である。一方、「変異のほとんどは生存に有利でも不利でもない。変異の頻度の変化は、単なる.遺伝的浮動"である(どの変異が子孫に受け継がれるかは、無作為抽出で決まる)」と考えるのが、木村資生博士の「中立進化説」である。両者の間には長い論争があり、現在では「どちらの現象も存在している」と考えられている。

yuji5327 at 09:43 

2019年06月08日

国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」により、約30億のヒトゲノムの塩基配列が全て解読されたのは、2000年代初頭のことだった。これによって、ようやく本格的なゲノム研究が始まった。

「岡田随象(大阪大学教授)著:遺伝統計学で迫る日本人集団の適応進化、學士会会報No.936(2019-)」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ゲノムとは、生物の設計図である。私たちの体がどのような特徴を持っているかは、ゲノムによってある程度決まっている。生物のゲノム情報は、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の塩基からなる塩基配列として、DNAの中に保存されている。
2.DNAは2本のヌクレオチド(リン酸+糖+塩基)の鎖が2重らせん構造を形成したものである。2本の鎖は、らせんの内側で塩基が結合している。この時必ずAはTと、GはCと結合するため、片方の鎖の塩基が判れば、対の塩基も判る。そのため、DNAの塩基配列は1行の文字列で表すことができる。ヒトゲノムは約30億の塩基配列で構成されている。
3.それらは細かく折りたたまれ、細胞の核の中にある23対(46本)の染色体に分割して収められている。23対のうちの1対は性染色体(XXないしXY)で、残りの22対(44本)は常染色体と呼ばれ、長い順に1〜22番の番号が付いている。
4.染色体の本数や塩基配列の数は生物種によって異なるが、染色体が多いほど(塩基配列が長いほど)高等な種、という訳ではない。ビールの材料の大麦は染色体が14本、パンの材料の小麦は42本で、3倍も違う。ショウジョウバエは8本、猫は38本、金魚はなんと104本である。
5.DNAのゲノム塩基配列は、生物の設計図なだけに、非常に安定している。大昔のヒトや生物の化石からDNAを検出できるのはそのお蔭である。それでも細胞分裂の際や、子に受け継がれる際、変異が生じることがある。その結果、種問や個人間でゲノム配列に違いが生じた。例えば、ヒトの常染色体は44だが、類人猿(チンパンジー・ゴリラ・オラウータン)は46本である。
6.「共通祖先からヒトに進化する過程で、2つの染色体が1つに融合した」と考えられる。44本という数はヒトがヒトであるために非常に重要である。染色体数や塩基配列は、進化の過程でその生物に最適な形に決まったと考えられる。
6.国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」により、約30億のヒトゲノムの塩基配列が全て解読されたのは、2000年代初頭のことだった。これによって、ようやく本格的なゲノム研究が始まった。ヒトゲノムヒの塩基配列は、個人間や個人内で少しずつ異なる。この差を「多型」と言う。代表例が、塩基が1つだけ置き変わった「一塩基多型」(SNP)である。塩基が1つ増えたり滅きな問題でなかったのでったりすることに比べれば、塩基が1つ置き換わっても、生物にはそこまで大きな問題でなかった。
7.SNPは、最初は一人のヒトの中で起きた突然変異である。それが、あるものは子孫に引き継がれて集団内に拡散し、あるものは子孫に伝わらず消失した。様々な研究の結果、―乎墜發膿靴燭棒犬犬SNPと消失するSNPは、結果としてほぼ同数である(集団内に存在するSNPの数はほぼ一定)、頻度の低いSNPほど数多く存在する、ゲノム配列上でSNPの起きる場所と置き換わる塩基の種類の組み合わせは、各集団において少しずつ違った分布をとる、ぅ劵箸陵諭垢雰措舛魑定するのはの組み合わせである、と分かってきた。
8.ヒトゲノムの塩基配列が同一だと、外見もそっくりになる(一卵性双生児)。配列が少し似ると、外見も少し似る(親子、兄弟姉妹)。人種、髪や皮膚の色などは、SNPの組み合わせで規定されている。ヒトの外見がゲノム配列にここまで影響されるのは、つい数千年〜数百年前までヒトは苛酷な自然環境に常に晒され、寿命も短かったからである。体の外側(外見)の違いが生死に直結していたからである。ゲノム配列が似ていると、外見だけでなく、病気の罹りやすさや薬の効きやすさも似ることが分かっている。現在、ゲノム多型の情報に基づく疾病や創薬の研究が始まっている。
9.2003年、「国際パップマップ計画」の成果が報告された。病気の罹りやすさ、薬の効きやすさと、SNPの関連を調べる国際プロジェクトである。これにより、欧米人、アジア人、アフリカ人計270名のヒトゲノム多型の概要が解読された。これは非常に画期的な研究だった。一定以上の頻度を持つ2百万〜3百万のSNPが明らかになり、それまで手探りで行なっていたヒトの疾患の感受性遺伝子の同定を、網羅的に行えるようになった。データ提供などの面で、この国際プロジェクトに最も貢献をしたのは日本である。そのお蔭で、日本人集団から得たデータがその後のゲノム研究の基準データの一部となった。



yuji5327 at 06:45 

2019年06月05日

4月10日に発表されたM87のブラックホールの重さは巨大で、太陽の65億倍である。ブラックホールを直接見る時代に入った。

「渡部潤一(自然科学研究機構国立天文台教授)著:ついにその姿が見えた、銀河中心の巨大ブラックホール、週刊ダイヤモンド、2019.4.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. ブラックホール、どんなものでも強力な重力でのみ込んでしまうモンスター天体として、その知名度は抜群である。もともとアインシュタインの一般相対性理論が発表されたのを契機に、理論的に質量が極めて狭い範囲に集中した場合にどうなるか、という視点で研究進み、ドイツの天文学者シュヴァルツシルトが、アインシユタイン方程式の特殊な解として導いた。さらにインド出身の物理学者チャンドラセカールが、ぎゆうぎゆうに詰まつた星の質量には上限があることを理論的に導き、実在する可能性を予言した。1930年のことである。
2. 理論的に存在が予測されてきたが、実在することが広く認められるまでには時問がかかった。アインシュタイン白身がシュヴァルツシルトの導いた解が数学的には存在するが、実在には疑問を抱いていたし、チャンドラセカールの計算に至っては、当時の天文学界の大御所であるエデイントンに否定されてしまったからである。それ以後、研究.がしばらく停滞していたが、60年代に米国の物理学者ホイーラーがブラックホールという名称を用いて研究し始めてから盛んになっていく。
3. ブラックホールが存在する可能性は、相対性理論を理解していなくとも、単純な思考実験で類推できる。地球からロケットが脱出するには、地球の重力を振り切り、宇宙に飛び出すための脱出速度〔11km/s〕が必要である。脱出迷度は、天体の質量が大きいほど、また天体の半径が小さいほど大きい。例えば地球をぎゅつと縮めて、半径6mm程度まで小さくしたとすると、脱出速度は30万km/sとなる。これは光速だ。光速を超えることはできないので、光を含めてあらゆる物質が抜け山してくることが不可能になる、つまり一度入ったら二度とは戻れない底なしの穴、プラックホールになる。
4. 実際には光に質量がないので、この思考実験は物理学的に正確ではないが、ブラックホールを理解してもらうには良い例えである。では、地球を半径6.mmに縮められるか考えても難しそうだが、人類にはなし得ないことを宇宙では実現する。例えば.冬の一等星シリウスの伴星シリウスBは、半径が太陽の100.分の1、せいぜい地球租度なのに、そこに太陽ほどの質量が詰め込まれた恒星である。.その密度は1t/cm-3を超える。超新星.爆発の後にできる中性子星になると、大きさはシリウスBのさらに100分の1、半径10km程度であるのに、質量は、太陽ほどもある。平均密度は1cm-3当たり5億トンにもなる。ぎゅうぎゅうに押し込めら.れた物質が全て中性子となり、辛うじて中性子同士の押し合う圧力が、強力な重力に打ち勝って、バランスを保っている。
5. だが、チャンドラセカールが予言したように、中性子の圧力で支えられる質量にも限界がある。この限界を超えると、その重力を食い止める力は生じない。ほとんど無限に収縮して、半径6.mmよりも小さくなり、ブラック.ホールが出現する。
6. 理論的に予測されたブラックホールは、実在するのかについて、強い重力しかなく、光さえも抜け出せないので、あらゆる情報が直接出てくることはない。つまり、直接には見えな。天文学者はさまざまな方法でブラックホールが実在することを間接的に証明してきた、その方法の一つが、吸い込まれる前の物質が放つ「叫び声」を聞くことである。星間物質がブラックホールに吸い込まれるときには、押しくらまんじゅう状態になり強力な電波やX線が、いわば「叫び声」として発.生するので、それらを観測す.ることで、ブラックホールの存在を問接的に見つけることができる。
7. 特に、大きな星が超.新星爆発をしてブラックホールになったものと、通常の恒星が連星になっている場合は,ブラックホールヘガスが引き込まれていくためにX線を発するので見つけやすい.。このとき、星の運動を調べれば,見えない相手方がどの程度の質量かが分かるため.、プラックホールと推定できる。
8. はくちょう座X−1などのX線源は、こうして発見された太陽の15倍程度の重さのブラックホールである。ブラックホールにのみ込まれる直前の物質は、押し合いへし合いした結果、その一部が相当量、ものすごいスピードで2方向に噴き出す。
9. 銀河の中心には、質最が太陽の何百万倍から何億倍という巨大なブラックホールがあるが、その周りでは強力な重力で星聞物質や恒星が振り回される。その運動から確実に巨大ブラックホールの存在を証明したのが、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡である。りょうけん座の銀河M106の中心付近で、秒速770ー1080kmという猛烈なスピードで回転する複数の電波源を発見し、これが銀河の中心からわずか0・4〜O・8光年の領域内に存在することから、太陽.の3600万倍の巨大ブラックホールが存在することを示した。銀河レベルになるとジェットもすさまじい。
10.地球から5500万光年離れたおとめ座.にある巨大銀河M87の中心からは、目に見えるほどのジエットが噴き山している。しかし、これらはいずれも間接的な証明にすぎない。ブラックホールを直接見ることはできないだろうか。そう考えて世界中の電波望遠鏡が協力したプロジェクトがイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)である。国立天文台が欧米と共に運用しているアルマ望遠鏡などを他の国の望遠鏡などと組み合わせ、巨大なブラックホールを直接見ようというプロジェクトである。
11.その成果が4月10日に発表された。M87のブラックホールがついに見.えたのである。その重さは本当に巨大で、太陽の65億倍であるという。われわれ人類はついに、ブラックホールを直接見る時代に入ったのである。


yuji5327 at 06:31 

2019年06月02日

AIに関する論文数で、中国は米国を抜いて世界トップになった。十数年前からプログラミングの世界大会で、中国人学生のレベルは非常に高かった。

「西川徹(プリファード・ネットワークス社長)(聞き手…中山一貴):AI×製造業で中国が世界の標準を握っていく、
週刊東洋経済 2019.4..27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.AI(人工知能〕強国を目指して通進する中国が、世界のスタンダードを握る日は来る。トヨタ自動車などが出資する日本最大のユニコーン(末上場で評価額が10億ドルを超える新興企業〕で、国内AI産業を牽引するプリファード・ネットワークス(PFN〕の西川徹社長へのインタビュー内容である。
2.AIに関する論文数で、中国は米国を抜いて世界トップになった。単純に人口が多いから急に論文が増えたというわけではない。十数年前からプログラミングの世界大会で、中国人学生のレベルは非常に高かった。当時、強豪だった上海交通大学には何百ものチームがあり、その中で熾烈な争いに勝ち残った数チームだけが選抜されて出場した。東京大学の学生はせいぜい数十チームである。
3.国際大会でよい成績を収めれば一生安定した生活が保障されるため、中国の学生は1日10時間以上、必死に勉強した。日本もトップレベルの人材は優秀さで負けていないが、層が薄い。国を挙げて教育に投資してきた中国では成果が積み上がり、産業全体のIT能力が底上げされている。
4.トップレベルの学会では、質の高い論文でなければ通らない。多くの論文が通っているということは、量に質が伴ってきているということである。背景には教育だけでなく、ビッグデータを集めやすいという優位性もある。AI大手のセンスタイム(商湯科技)をはじめ中国企業の画像認識技術が急速に発達しているのは、監視カメラから大量のデータを集めて解析できるからである。
5.中国は個人情報の扱いが日本ほど厳しくない。データが集まれば金も動くため、技術開発が一気に進む。日本で同じことをやろうとしたら、大バッシングである。バイオヘルスケアの分野でも、中国は積極的にデータを集めて大規模な実験を行っている。
6.日本の強みは高品質のハードウェアを生み出す製造技術である。ファナックのロボットをはじめ世界トップレベルの分野で、中国企業に導入されている技術も多い。ものづくりの力とソフトウェアの技術を組み合わせられれば、日本企業の勝ち筋になるはずである。
例えば、今の2足歩行ロボットはとても重く、足をガチガチに固めて制御しないと、バランスを崩して倒れてしまう。一方、体重の軽い子どもが10kgぐらいの物を持ち上げられるのは、目の前の状況などを脳がリアルタイムで捉え、次に起こることを予測しながら力をコントロールしているからである。
7.こうした複雑な制御は、AIの進化によって解決されていく。本体は軽量でも重い物を運べるロボットが出てきたときに、ハードの分野で強みを持つ日本企楽が果たす役割は大きい。ただ、十数年前はソフトやサービスについて、中国よりも日本のほうが高品質だと思われていたが、今では中国が最先端の技術を次々に生み出している。ハード分野でも、中国企業はロボットを自らの手で作り始めた。うかうかしていると日本の強みが強みではなくなりかねない。
8.AIなどデジタル分野の世界的スタンダードという意味では、米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)がまだ強いだろう。われわれが「Chainer」という深層学習用のフレームワークを出したところ、グーグルは「Tensor FloW」という対抗馬を後から出して徹底的に潰しにかかってきた。技術的な側面だけでなく、他社のサービスに対抗するためのマーケティング戦略も優れている。
9.だが、中国企業はGAFAの手が届きづらい製造業で、世界の中枢を担いつつある。ここ数年、上海や深馴を訪れ、製造業の現場を見て回った。最先端のものも、そうでないものも混在するカオスな状況だったが、高品質の製品を作れるようになってきたことは確かである。今では中国メーカー抜きでスマートフォンを作るのは難しい。加えてIT能力が圧倒的に高まってきたため、クリエーティビティーも強化されている。「数年先には中国企業がスタンダード」というのは十分起こりうる。
10.PFNが中国企業と提携する可能性は当然ありうる。中国には、アニメをはじめ日本の文化が好きな若者が多い。彼らにとって魅力的な製品を提供するべく、PFNも中国で事業をしていきたいと考えている。そのためには中国企業との連携が不可欠である。データ活用の面で組むこともある。
11.高度IT人材の獲得競争が世界的に激化する中で、中国企業による引き抜きはありうる。人材は確かに取り合いになっているが、PFNから中国企業に転職した社員は1人もいない。逆に、中国のトップレベルの大学を卒業してPFNに入社した中国人は10人近くいる。非常に優秀で、4月にリリースした「CryPko」というアニメキャラクターの自動生成技術は、2人の中国人エンジニアが中心になって開発したものである。
12.エンジニアは新しい領域でチャレンジできる環境かどうかを重視する。中国企業の給与は高いと思うが、優秀な人材を引きつけるためには、その会社で何ができるかが重要である。PFNはロボットだけでなく、血液でのがんの早期診断技術や、エネルギー問題を解消する技術など、実現すれば社会的インパクトが大きい分野に次々と挑戦している。
13.これからはIoT(モノのインターネット)に代表されるデジタル分野と製造業の融合が、ハイテク企業の成長のカギとなる。米GEはGEデジタルという会社を設立して製造業のプラットフォームを築こうとしたが、うまくいかなかった。日本もファナックをはじめ、いろいろな会社がやろうとしているが、まだ道半ばだ。中国では、アリババやテンセントといった巨大IT企業が幅広い分野でAI技術を生かし、製造業のオートメーション化を進めている。今後、この領域のスタンダードはどんどん中国が握っていくだろう。


yuji5327 at 06:32 

2019年05月14日

ファーウェイは、5G関連の技術で世界をリードする存在である。5Gの通信インフラを中国メーカーが握れば、機器を通じて機密情報が漏えいする恐れが生じる。


「野口悠紀雄著:5Gの著しい立ち後れに危機感なき日本の異常、週刊ダイヤモンド、2019.04.13」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.アメリカや韓国の一部で第5世代移動通信規格(5G)の商用サービスが始まった。5Gは現行のサービスと比べて実効速度は100倍。スマートフォンなどの性能向上にとどまらず、自動車の自動運転やIoT(モノのインターネット)、さらには遠隔医療などに用いられて、これからの社会の基本インフラになると期待されている。
2.この分野で躍進が日覚ましいのが中国企業だ。「週刊ダイヤモンド」(2019年3月23日号)によれば、基地局ベンダーの売上高シェア(18年)で、中国の大手通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)は、スウェーデンのエリクソンに次いで世界第2位になった。全世界市場規模213億ドルのうち、エリクソンが29・0%、ファーウェイが26.0%、フィンランドのノキアが23・4%のシェアを占めている。
3.ファーウェイは、5G関連の技術で世界をリードする存在になっている。ところが、5Gの通信インフラを中国メーカーが握れば、機器を通じて機密情報が漏えいする恐れが生じる。このため、5Gは米中摩擦の焦点の一つになっている。アメリカ政府は、中国企業を通じてアメリカの軍、政府、企業の情報罵が中国に漏えいするリスクを懸念して、中国メーカーの排除に乗り出した。そして、同調するよう各国に働き掛けを強めている。
4.ドナルド・トランプ米大統領は、昨年8月、ファーウエイなどの製品をアメリカ政府機関が使用することを禁じる法案に署名した。その動きにオーストラリアやニュージーランドも同調。イギリスの大手通信事業者であるBTグループも、ファーウェイ製品を基幹ネットワークに採用しない方針を表明した。カナダの捜査当局は、昨年12月、アメリカ政府の要請を受け、ファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者を逮捕した。経済制裁を科しているイランに対し、違法に製品を輸出した疑いがあるためとされている。
5.日本国内でも19年後半から段階的に5Gの商用サービスが始まる見込みである。しかし本稿の執筆時点では、まだ5Gの免許の割り当ては決まっていない。日本で5Gが使えるのは、商用サービスが本格化する20年の東京オリンピックのころとされている。5G導入の遅れだけが問題ではない。本当の問題は、5Gの通信インフラ分野で日本が世界に後れを取っていることである。NECと富十通を合わせても、基地局ベンダーの売上高の世界シェアは2%に満たない。両社は、単独での5G機器の早期開発を断念した。
6.18年10月末にNECは韓国サムスン電子と、富十通はエリクソンと提携した。日本の通信機器メーカーは、単独での生き残りが難しくなっている。日本の携帯電話大手3社は、5Gを現行の4Gネットワークと連携して導入するため、仮に日本政府が中国企業排除の方針を打ち出すとすれば、大きな影響を受ける。後れは以上で述べたこと以外にもある。シヨックを受けたのは、5G時代のスマートフォンである。今年の2月25〜28日に、世界最大のモバイル展示会「MWC19バルセロナ」がスペインのバルセロナで開催された。そこでは、サムスン電子、ファーウェイ、中国OPPO、韓国LG電子などのメーカーが5G対応のスマートフォンを発表、展示した。
7.サムスン電子は折り畳みできる「Galaxy Fold」を発表し、ファーウェイも折り畳み型のスマートフォン「HUAWEI MATE X」を発表した。折り畳みスマートフォンの写真を見て、すぐにでも買いたいと思った。しかし、考えてみると5Gの通信回線がなければ使えない。5G後進国の日本では、当面の間は使えない高根の花である。人工知能(AI)やコンピューターサイエンスでの立ち後れといわれても、抽象的なので、あまりはっきりと分からない。しかし、スマートフォンのように目に見えるもので後れを示されると、ショックが大きい。
8.今、日本の自動車産業は強い。だから日本はものづくり大国なのだという。日本が弱いのはソフトウエアの分野であって、ハードウエアでは強いのだと、長らくいわれてきた。しかし、いまやスマートフォンでは、ハード面のものづくりでも、このような状況である。自動車も5Gの時代になり、さらに電気自動車(EV)の時代になれば、状況は大きく変わる。日本の自動市Tメーカーが、5G時代にも世界の中で現在のような地位を確保できるかどうかは分からない。
9.日本の半導体産業は、1980年代には世界のトップにあった。単に産業面で強かっただけでなく、関係学界も日本の学者が制覇した。コンピューターでもそうである。このころ日本の大型コンピューターは、IBMの水準に近付いた。ところが、今は上記のような状況である。日本の基礎開発力が落ちている。論文数では中国発が増加する半面で、日本発が減少している。大学のランキングでも日本の順位が落ちている。これは、給与にも表れている。「日本経済新聞」(18年12月23日)によれば、東京大学の教授の平均給与は17年度で約1200万円だが、カリフォルニア大学パークレー校の経済学部教授の平均給与は17年で約3900万円で、東大の3倍超である。中には6500万円を得た准教授もいる。アジアでも、香港の給与は日本の約2倍であり、シンガポールはさらに高いといわれる。
10.80年代から90年代にかけては、この逆の状態だった。日本の学者は、アメリカの大学から招聰されても、給与が大幅に下がるので、行きたがらなかった。このニュースであらためてショックを受けた。これでは、学者が日本に集まるはずはない。優秀な人材は海外に行く。日本の経済力が落ちるから、開発力が落ちる、開発力が落ちるから経済力が落ちるという悪循環に陥っている。
11.これは、科学技術政策とか学術政策に限定された問題ではない。日本経済全体の問題である。私がさらに驚くのは、ここまで落ち込んでしまった日本の現状に対して、日本国内での危機感が希薄なことである。本当は非常事態であるのに、大変だ。何とかしなければ」という声が聞こえてこない。これだけ遅れてしまった日本の技術力が回復する見通しが立たない。景気が悪化すれば、金融の追加緩和を求める声が上がる。金融緩和といって、何ができるのか? マイナス金利をさらに進めても、金融機関の収益が悪化するだけである。若者の無気力、内向き、引きこもりも限度を超えている。管理職になると責任が重くなるので、なりたがらない人が増えているという。目指せ窓際族という言葉さえ聞える。
12.この4〜5月には、日本は10連休になるのだという。世界中が働いているのに、日本人だけは仕事をせずに、遊ぽうというのである。その間にも、日本と世界の差は開いてしまう。日本の社会システムは、どうしようもなく緩んでしまった。


yuji5327 at 06:41 

2019年05月13日

オペレーターがパソコン上で、工事を再現しながら、現場のロボットに資材の運搬を指示したり、複数の現場を同時に担当する。エレクトロニクス分野と建設分野の橋渡し役になる。


「松野友美(本誌)紹介:ものつくるひと、西野高明(竹中工務店、技術研究所):IOT分電盤、週刊ダイヤモンド、2019.04.13.」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. 工事現場は携帯電話がつな工がりにくい。山の中やトンネルの現場を思い浮かべるかもしれないが、街中にあるビルの高層階や地下も例外ではない。地表に近い場所では電波が通じても、コンクリート製の床や壁が重なる場所では携帯の電波を受信しにくい。建物の外側は完成したように見えても、内部の工事は終わっていない。携帯会社がアンテナを設置して通信環境を整えるのは工事の最終段階である。
2.2015年に竹中工務店に中途入社した西野高明は、そこに目を付けた。西野は大学でロボットを研究し、新卒で電機メーカーに就職。電波や電磁の研究といったエレクトロニクス領域でキャリアを積んできた。海外メーカーが台頭し価格競争が激化する電機業界に見切りをつけた西野は、専門知識を生かせる新たな場を探した。そして建設業界に目を向けた。
3.建設業界は深刻な人手不足に対処するため、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT化を急いでいた。竹中工務店に転職して問もない16年のある日、西野は30階建ての高層ビルの建設現場で携帯がつながらないことに気付いた。この業界はIoTやICT(情報通信技術)化を急ぐが、そもそもエレクトロニクスの導入が進んでいない。
4.工事現場には仮設電源が整備されている。建設機械の操作や、照明用に電気が必要である。電気が通っているならば、「高速電力線搬送通信設備(PLC)が使える、とひらめいた。PLCは普通の電力線に高速のデータを乗せて送る技術である。電気を流すために使う電源線にPLCのアダプターを取り付けると、通信用にも使える。
5.現場の仮設電源は、本設電源と違って配線や分岐が少なく、構造が単純であるのでPLCと相性はいいと予想し、現場と研究所を往復して実験する日々が始まった。すぐに現場ならではの課題が見つかった。現場には電動工具がたくさんあり、電気を使うと、工具類からPLC通信を邪魔するノイズが生じる。工具をコンセントにつなげるほどに、ノイズが増える。これではPLCを導入しても、工事が集中する昼間は通信速度が落ちて効率が悪い。6.この問題を解消すべく、コンピューター上に仮設の分電盤を配置して解折し、ノイズを遮断するフィルターをどこに付ければいいのかを解析する技術(シミュレーションシステム)を開発した。物理的にノイズを軽減するフィルターも開発し、解析を基に現場で機器やコンセントが連なるプレーカーと仮設の電源線の間に取り付けた。工事現場に通っては、測定を繰り返した。データを見ると、狙い通りフィルターなしのときよりもノイズが減り、1・5〜6倍の通信速度が出せるようになった。PDFの図面データも難なく送受信できる。7.「これははやる」と手応えを得た。実は、建設業界では10年ほど前にPLCの導入を検討していた。しかし、ノイズ対策がうまくいかなかった。西野がそこに再度挑んだ。技術の課題はクリアしたように見えたが、新たな課題ができた。「何でこんな所で作業するの?・この箱は何?・邪魔だよ」と職人が不満を漏らした。現場の電源線にフィルターやWiFiのアクセスポイントの機器を取り付けるのは職人にとって、機能がよく分からず、面倒なだけの作業である。職人に負担を掛けないためにどうしたらいいか。「全部まとめてみよう」と考え、フィルターごと分電盤に収納した「IoT分電盤」を開発。機器を後付けする手間が省けた。
8.フィルター技術の横想に半年、開発に1年。昨年5月ごろにIoT分電盤のプロトタイプを開発し、こつこつと改良を重ねてこの4月に現場導入を果たした。
他社の現場では、棒状のアンテナをクレーンで屋上からぶら下げてWiFiスポットを設置したり、工事の進捗に合わせて、アクセス拠点を移し替えている。IoT分電盤を設置すると、こうした手間がかからない。
9.思わぬ副産物も得られた。現場では、若手作業員が作業後に各階の電源を消して回っていた。高層建築ともなると、結構な手間がかかる。分電盤をインターネットにつなぐことにより遠隔操作で電源のオンオフができるようになった。
10.通信環境が整えば、現場のIoT活用は進む。都内複合施設の、工事では、IoT分電盤と天井付近にネットワークカメラを取り付けて遠隔地から現場の映像をリアルタイムで見られるようになった。設計通りに施工しているかどうか記録できるので、品質保証にもつながる。大量のデータを通信できる第5世代通信規格(5G)回線の利用が始まっても、IoT分電盤は活躍できる。
11.通信容量は5Gにかなわなくとも、5Gは従来の4GやLTEよりも電波が届く範囲に隙間ができる。その隙間では従来の通信回線を使つため、今ある通信環境での改善が必要である。将来、通信技術が進歩し、人工衛星を使って気軽にインターネットにつなげるようになったとしても、IoT分電盤は地下工事で活用できる。「ゆくゆくはIoTのベースとして活用したい」と言う。
12.オペレーターがパソコン上で、工事を再現しながら、現場のロボットに資材の運搬を指示したり、現場監督が複数の現場を同時に担当したりする。そんな未来を実現すべく、「エレクトロニクス分野と建設分野の橋渡し役になる」と.西野氏は意気込む。



yuji5327 at 06:28 

2019年05月12日

空飛ぶクルマ

IMG_20180701_0001
渋滞に巻き込まれたとき
夢のような車「空飛ぶ車」
現実の世界
空飛ぶ車の「Aero Mobil(エアロモービル)」の市販化
2014年のAero Mobil3.0
Aero Mobil(エアロモービル)がフランクフルトモーターショー
Aero Mobil(エアロモービル)」の動力
224kWのパワーを発揮する2.0リットル水平対向4気筒ガソリン・ターボエンジン
航続距離:700km、
最高速度:160km/h
燃料タンク容量:90L
搭載重量:240kg
AeroMobilの市販モデルの価格
約1億4000万円から約1億7500万円
当初は500台の生産・販売予定
日本で許認可2017年4月現在なし


yuji5327 at 06:48 

世界的なコンピュータ企業である富十通は、一発明家がその素地を築いた。池田敏夫氏という伝説的なエンジニアがいなかったら、米IBMと真っ向から戦える企業にはなれなかった。


「校條浩著:シリコンバレーの流儀、発明に必要な名脇役、週刊ダイヤモンド、2019.4.13」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.放映が終了したNHK朝ドラ「まんぷく」は、新しい市場を創造するような画期的な商品を世に送り出すには、本人の資質だけではなく、周囲の"役者〃が欠かせないということを示しており、非常に興味深かった。
2.即席ラーメン、カップヌードルの発明者は実在の人物で発明家としての人となりがよく描かれている。まず純真さ。「世の中のためになるものを作り、人々を幸せにしたい」という思いで突き進む萬平の姿が印象的である。疑問を真正面から問う、社会常識にとらわれない「変わり者」であったことも、ドラマの随所で感じられた。
3.大発明やイノベーションを達成する人の特徴である、並外れた集中力の持ち主であった。萬半の描写だけでも、イノベーシヨンを成し遂げる起業家と重なり、感情移入できるドラマなのだが、萬半を支える福子の存在が際立っている。「奇人」ともいえる萬半は、時に発明に集中し過ぎて、日常生活に支障を来してしまう。そんなときに、萬平を理解し、支える存在として福子が登場する。発明は、理解者のいない環境で、失敗の連続の中に突破口を見いだす、先の見えない孤独なプロセスである。
4.同様の例はテクノロジー企業にもある。世界的なコンピュータ企業である富十通は、一発明家がその素地を築いた。最初に大型計算機の技術基盤を作った、池田敏夫氏という伝説的なエンジニアである。彼がいなかったら、後にコンピュータの世界の巨人、米IBMと真っ向から戦える企業にはなれなかった。
5.池田氏は何かアイデアを考え始めると、職場や自宅のほか、同僚の家でもひたすら考え続けた。出社することさえ忘れて会社に来ないことも多かった。たまに夕方になって突然会社にやって来たと思ったら、今度は会社から帰らずに、数日間考え続けた。会社だけではなく、トンカツ屋や喫茶店を根城にして部下を集め、開発を進めたことや、熱海の保養所に泊まり込みで、温泉に漬かりながら研究開発に没頭したというエピソードもある。5.池田氏を問題視する幹部が社内にはたくさんいたが、池田氏を支持する同僚が彼の仕事のやり方を受け入れるように経営トップに嘆願した。その同僚の一人、小林大祐氏は後に富十通の社長となっている。池田氏が在籍していた当時の富士通にはこうした奇行を受け入れる社風が存在し、池田氏の天才的能力を生かせる度量を持つ同僚がそろっていた。



yuji5327 at 06:27 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





地域別アクセス

ジオターゲティング

ジオターゲティング
livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード