新技術

2017年08月05日

研究費の絶対額が少な過ぎる中で、競争は激しいと、結局、誰が見てもふさわしいという、評価が確立した研究者に研究費がいく。そうした環境は改めるべきである。

「大隅良典著:次世代の科学者育つ社会に、
週刊ダイヤモンド、2016.10.16」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.オートファジーは、細胞に備えられた分解機構の一つで、さまざまな生命現象に絡んでいるが、実際に何が起きているのか理解することは難しかった。私は酵母を用いた研究手法を持ち込むことで、分子レベルでオートファジーを説明することに突破口を開いた。
2.研究を始めた当初、国際会議を主催して約50人の研究者を集めただけで、オートファジーの研究に取り組んでいた研究著はごく少.数だった。ある時期からオートファジーに関連する遺伝子を利用した研究が活発になり、ものすごい勢いで増えた。
3.東京大学の水島昇先生.や.大阪大学の吉森保先生.などの優れた研究が続いたことで、多.数の研究者がこの分野に興味を持つようになった。オートファジーに関わるAtgという遺伝子群を特定したことが.評価された。正直に言って受賞はまだ早いとも感じている。
4.誰もやらない研究テーマが数ある中で、オートファジーの発見につながる、液胞の研究に取り組んだ理由は、東京大学理学部の植物学教室にいたことの影響が大きい。我々はリンゴの蜜やレモン液胞にため込む恩恵で生きている。植物のバラの花の色は、液胞に蓄積した色素の色であり、リンゴの蜜になる糖分も、レモンが酸っぱい原因も.薬剤に活用されるアルカロイド〔化学物質〕も、植物はみんな液胞にため込んでいる。、
5.液胞は多彩なオルガネラ(細胞小器官)だが、かつてはゴミためだと思われていた。何か重要な役割を担っていると私は感じた。植物細胞の体積の約9割を液胞が占めているが、植物はこんなにでっかい液胞を持っている理由を考えてこなかった。
6.ノーベル賞受賞者は研究の第一線から次第に消えていく。過去の遺産を食いつぶしている。日本の若手研究著が次々とノーベル賞をもらうような仕事をできる環境にあるかは疑わしい。5年、10年の長期スパンで考える研究が非常にやりにくくなっている。外部の評価に晒されていると、答えが出る仕事以外はやりようがない、結果が出る研究じゃないと、研究費が取れない、となる。自由な発想で自由に研究して、面白い発見があったらその研究者を1段階引き上げる研究システムづくりの責任が行政にある。
7.文科省も一生.懸命頑張って科研費を出しているが、全体のお金が足りない。あと5倍くらいあれば、状況は変わる。研究費の絶対額が少な過ぎる中で、競争は激しいと、結局、誰が見てもふさわしいという、評価が確立した研究者に研究費がいく。そうした環境は改めるべきである。


yuji5327 at 07:57 

2017年07月25日

有機光エレクトロニクスはOLEDに代表されるように、省エネルギー、低コスト、大面積、フレキシブル、低環境負荷を実現する次世代エレクトロニクスの切り札である。

安達千波矢著:革新的な第三世代有機EL発光材料-基礎研究から九大発ベンチャーの設立へ、學士會会報No920(2016-)」は参考になる。
1.物質を分類した場合、絶縁体・半導体・金属に分類できる。一般に有機化合物は、プ絶縁体として振る舞う。プラスチックの表面にテスターを当てても電気は決して流れないが、有機化合物からなる薄膜を0.1ミクロンの極めて薄い膜に5Vの電圧を印加すると注入された電流は電界勾配に従って対極へと移動し、その途中で電子と正孔の再結合によってエネルギーの高い状態(励起子)が生成され、その励起状態が元の基底状態に戻る際に光が放出される。これが有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)の原理である。
2.超薄膜化によって、電界強度が1囘たり約100万Vに達し、常識では考えられない機能が発現する有機ELは、OLED〔Organic light emiting diode〕と呼ばれる。有機化合物の最初の電界発光現象は、1960年代にW.Helfrich とw.G.Shneiderらによって観測されている。当時は、液晶の黎明期でもあり、OLEDと液晶のどちらが将来の表示素子として優れているのかの検討が真剣に行われていた。
3.当時のOLEDは、数ミリの厚みのある単結晶を用いていたために、駆動に数百Vの電圧が必要であり、実用化への展開は困難であると考えた。2012年、著者のグループは、OLED実用化の加速の鍵となる発光材料開発に成功した。
4.有機化合物で発光する材料と言えば多くの材料が蛍光材料であり、OLEDの発光材料として幅広く用いられてきたが、内部効率が25%に留まるために、1990年後半頃から室温リン光材料の開発が進められ、最適化したデバイス構成においては、ほぼ100%に達する内部効率が得られている。
5.九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)では、2006年頃から有機化合物の特異な熱活性化遅延蛍光現象(TADF)に着目した。網羅的にTADF材料の開発に取り組み、約2年間の短い開発期間で、内部効率100%を示すTADF材料の開発に成功した。TADFの大きなメリットは、その分子構造の自由度にあり、無限の分子設計が可能である。光の3原色であるRGB発光にも成功しており、今後、OLEDの中核的な発光材料としての発展が期待される。
6.有機光エレクトロニクスはOLEDに代表されるように、省エネルギー、低コスト、大面積、フレキシブル、低環境負荷を実現する次世代エレクトロニクスの切り札である。今後、有機分子の無限の分子設計の可能性を活かして、さらに新しい有機半導体材料の創製を進めて行き、同時に、デバイス化、アプリケーションの開発までを集積化する。



yuji5327 at 06:28 

2017年07月11日

担当者たちは過去の延長線上でしか考えられない。トップはタコツボ人間の個々の瞬間芸を見て判断するので方針が毎年コロコロと変わるのが問題である。

「大前研一著:
「0から1」の発想術
大前 研一
小学館
2016-04-06

0から1の発想術、小学館、2016年」は面白い。「5章:デジタル大陸時代の発想」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ビル・ゲイツは、個人で世界を変革した人物で、ゲイツ後(AG)の世界は、個人の発想力・イノベーション力が必要とされる時代である。大前研一氏が使用したプラットフォームとは、鉄道の駅のホームを意味するが、コンピュータ用語に持ち込んだもの。非常にシンプルで、多くの人々に受け入れられている。いわばプラットフォームは「共通の場」を形成するスタンダード(標準)のことである。
2.言語ならばプラットフォームは「英語」。パソコンのOS(基本ソフト)はマイクロソフトのウインドウズ、検索エンジンはグーグルが世界のプラットフォームである。それに加えて今は、クラウドコンピューティングやSNSを含めたネットワークがある。
3.かつてソニーのべータマックスと、JVCケンウッドとパナソニックが中心となって推進したVHSは、プラットフォームとしては、勝者はVHSだった。LDとVHDが覇権を争いも、DVDに一気に駆逐された。DVD自体も、今やブルーレイディスクに凌駕された。
4.プラットフォームの支配力は永久に保証されない。現在のビジネスでは、単体としてのハードウエアがプラットフォームたり得ない。ビジネスのトレンドは根本的に変わり、もはや単体としてのハードウエアが富を生む時代は終わった。日本企業が磨いてきたデジタルカメラやポータブルオーディオレコーダーといった単体のハードウエア技術は、すべてスマートフオンやタフレット端末の画面上のアイコンになってしまった。
5.デジタル大陸の変化スピードについていくためには、デジタル大陸の近未来の姿を頭に思い浮かべ、自分なりに予測し、準備する。デジタル関連産業がネットワーク化(大陸化)することで、プロダクトからの発想ではなく、全体像から考える。すべてのデジタル機器がインターネットによって融合する。デジタルコンテンツは大容量HDD、またはクラウド上のスペースに集約され、無線LANですべてのハード機器がつながる。プロダクト発想の問題点は「発想がその商品の域を出ない」という点である。アップルは、電気自動車にタブレット端末を取りつけて操作することを可能にする特許も取得した。
6.アメリカでは、スマートフォンによって高校生のテストのやり方が変わってしまった。現在、スマホでグーグルやヤフーの検索は実にたやすくなった。わからないことがあったら、すぐにスマホで検索するのがスタンダードとなると、知識を持っているかどうか、ということは、問題ではなくなってくる。そこでアメリカの高校の一部では、「カンニングOK」にしてしまった。試験中にスマホで検索してもよいことにした。知識を問うのではなく、レポートや論文を書かせる。ネット上の知識を駆使して、どれだけオリジナルの論を展開できるかに評価軸を変えた。
7.試験にはスマホ持ち込み禁止、と杓子定規にやるのが今の日本である。その日本では、大学の卒論や博士論文で、平然とコピペが横行している。「カンニングOK」と「スマホ持ち込み禁止」、のどちらがデジタル大陸を生き残るか考えるべきである。
8.デジタル大陸で生き残るには、若い人間の発想を利用するという手段もある。スマホを使いこなせていない人間にスマホの5年後を予測させても無理である。バラバラの島だったデジタル機器が、ネットワークやコンセプトやアプリケーションによって1つにつながり、デジタル大陸化してしまったのが現代である。
9.デジタル大陸を開拓するには、優秀なナビゲーターが必要で、自分がそれになれなければ、別の人間を使えばよい。何でも自分たちでやろうとするから、歴史ある大企業が新興のIT企業にひっくり返されてしまう。必要なのは企業、世代、性別、国籍、宗教などを越えたコラボレーションである。社内からは、新しい人材を受け入れることに拒否反応が出てくるが、それを恐れていては、いずれデジタル大陸で迷子になってしまう。
10.デジタル、ネット、スマホが当たり前だと考えているが、ビジネスの発想となると、なぜか抵抗感が強い。今の時代は、会社の中でデジタルの本質が何なのか、徹底的に議論する必要がある。
11.ゲーム業界の先頭を走ってきた任天堂は、長らくスマホを遠ざけていた。スーパーマリオやドンキーコングなど同社のわかりやすいコンテンツはスマホ向きのはずなのに、コンソールマシンにしがみついてきた。その結果、ゲーム機「Wii」が最盛期を迎えていた2009年3月期に5000億円以上の営業利益をあげていたが、その後、業績は急激に悪化し、3年連続で営業赤字を計上した。
11.スマホ向けなどのモバイルゲーム(ソーシャルゲーム)は、2015年に世界全体の売上高がコンソールマシン向けゲームの売上高を上回るだろう。日本ではすでにスマホゲームがコンソールマシン向けゲームを凌駕し、2014年のモバイルゲームの売上高は5622億円に達しているが、コンソールマシン向けゲームの売上高は3733億円にすぎない。
12.任天堂は、2016年に発表を控えている次世代ゲーム機「NX」に賭けているが、それは、かつての成功体験に引きずられている。モバイルゲームの売上高がコンソールマシン向けゲームの売上高をはるかに上回っている現状で、「NX」が今後のゲーム業界の「プラットフォーム」となることは、もはやあり得ない。5年後、10年後の「生活」を発想しないばかりに、混迷を深めている。
13.ソニーもまた、デジタル大陸時代を想像できていない会社である。デジタル化において世界を先導してきたのはソニーだが、皮肉なことに、本格的なデジタル時代になってひっくり返ったのもソニーである。デジタル化の際立った特徴のーつは、商品の「コモディティ化」である。同じチップを使っているのだから、先発でも後発でも商品の基本性能に変わらない。先発優位のアナログ時代と比べれば、デジタル時代は、決して後発劣位ではない。
14.ソニーもまた「デジタル大陸時代を生きる」という発想がない。これからの時代、コンソールマシンがプラットフォーム化することはあり得ない。リストラや事業売却などの固定費削減の効果で判断してはいけない。実際に儲かっているのはソニー生命やソニー銀行などを傘下に持つソニーフィナンシャルであり、アップルなどのスマホ向けに提供しているCMOSイメージセンサーというデジカメ用モジュールである。つまり金融と部品で復活したのである。
15.ソニーのような大きな会社がつまずくのは、過去の成功体験に引きずられるからである。もともとソニーの特色は、「世の中にないもの」を作り出すことだった。「世の中にないもの」だったからこそ人々を魅了し、優秀な人材が集まってプラットフォームを生.み出せた。過去の延長線上で、足し算・引き算の意見しか出なかったと想像される。
16.担当者たちは過去の延長線上でしか考えられない。トップはタコツボ人間の個々の瞬間芸を見て判断するので「方針」が毎年コロコロと変わるのが大きな問題である。新たなサバイバル・ルールに順応して生き残るポイントは、仝帖垢離妊献織覽ヾ錣インターネットなどによってつながり、「デジタルアイランド」が、「デジタル大陸」になりつつあるという現実を認識する。△修両紊如5年後の生活・ライフスタイル」を想像し、そこからサービスや商品に落とし込む。


yuji5327 at 06:39 

2017年07月08日

質感情報の脳による処理に関する研究は現在、神経科学、心理学.、画像工学の分野で活発になされている。産業界からの関心も高い。

「藤田一郎著:脳科学、もふもふはなぜ柔らかい?研究進む質感の認知システム。
週刊ダイヤモンド 2016/09/03」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.「もふもふ」を、しばしば耳にする。ふんわりした毛や羽を持つ動物の形容に使われる。もぐもぐ、もじゃもじゃ、ふさふさ、ふにゃふにゃ、ふわふわなど、柔らかい物を表す日本語には、「も」や「ふ」が付くものが多い。「もふもふ」はその2つを合わせたもの。
2.「ブーバ・キキ効果」と呼ばれる現象がある。丸みを帯びた図形がブーバ、とがった図形がキキだと答える人が多い。性別、年齢、使用言語、文化的背景によらずに生じる。「ぶ」「ば」や「ぎ」に言葉として特別な意味があるのではなく、音そのものが丸みやとんがりなどの形に直結している。
3.物の名前やその状態を示す擬態語というのは、言語の形成プロセスで恣意的に決まったのではなく、脳の感覚特性の影響を受けて、材質感や手触り感を反映する。脳が質感情報を抽出するのは困難である。物体から目に入る光は、物体への照射光、物体の立体的形、物体表面の反射特性によって決まる。脳が物体の材質を知るためには、目への入射光に関する情報から照射光、形、反射特性を推定する。脳は巧みな手段と複雑な計算によってこの推定を実現するというのが、従来の主流の考えである。
4.複雑な情報処理を介さない単純な情報が、質感の認知過程に直接貢献するという考えを支持する証拠は多くある。霊長類の大脳皮質の視覚経路は、一次視覚野を出発.点とする2つの経路に大別でき、一つは頭のてっぺんにある頭頂葉皮質に向かう「背側経路」で、刺激の動き、位置の処理などの空聞視に関わる。もう一つは、耳の奥辺りにある側頭葉皮質に向かう「腹側経路」で、色や形、模様の処理など物体の認識に関わる。
5.質感情報の脳による処理に関する研究は現在、神経科学、心理学.、画像工学の分野で活発になされている。産業界からの関心も高い。神経科学の重要な基本的問題であり、商業デザイン、CG技術、工芸などさまざまな産業応用へ結び付いている。


yuji5327 at 08:17 

2017年07月06日

通信大手のソフトバンクグループが約3・3兆円で買収に合意した英ARMは、半導体の心臓部のCPUや周辺技術の知的財産をライセンス販売する世界最人の半導体設計会社である。

「永井知美著:ARM Holdings スマホ向け半導体設計の覇者、
エコノミスト、2016.8.23」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2016年7月18日、通信大手のソフトバンクグループが約3・3兆円で買収に合意した買収相手の英ARMは、半導体の心臓部であるCPU〔中央演算処理.装置)やその周辺技術のIP〔知的財産)を半導体、セットメーカーにライセンス販売する世界最人の半導体設計会社である。半導体の製造は行わず、基本設計の提供に特化。その技術は米アップルのiPhone,、韓国・サムスン電子のギャラクシー、任天堂のゲーム機、ルネサスエレクトロニクスの車載用半導体など幅広い分野で使用されている。iPhoneを例にとると、アップルはARMのIPをベースに、通信、画像処理などの独白技術を加えて半導体を設計する。
2.CPUといえば世界最大の半導体メーカー・米インテルのパソコン向けマイクロプロセッサーが有名だが、ARMの技術の特徴は小型・省電力にある。高性能・高価格のインテル製品がパソコン市場を席巻したのに対して、ARMの技術は小型・省電刀が必須の携帯電話等モバイルでまず普及したスマホは約95%がARM仕様である。パソコンでは圧倒的地位を占めるインテルだが、モバイルではARMに歯が立たない。
3.ARMの技術は,モバイルだけでなく家電、IoT、車載など組み込み機器向けマイコン(CPU、メモリー、入出力回路など電子機器の制御などに必要な機能を1チップに搭載したもの)でも採用の動きが広がっている。ARM仕様の半導体にモバイルが占める比率は.既に半分以ドである。
4.ARM仕様の半導体は5億個にも満たなかった00年ごろから爆発的とも言うべき伸びを見せている。15年度は、、425社に累計1348件のライセンスを供与、ARM仕様の半導体の出荷量は前年比23%増の148億個(市場全体の伸びは同7%)と絶好調である。
5.ARMの収益源はライセンス料〔16年1-3月期の売上高構成比36%)とロイヤルティー(同55%)である。ライセンスを受けた企業は、ARM仕様の半導体が売れるたびに1個当たり数円〜数十円のロイヤルティーをARMに支払う。毎年120件以上〔15年は173件)新規契約されるライセンス料も重要だが、大黒柱は長期問支払われるロイヤルティーである。25年以上ロイヤルティーを生み出すライセンスもある。
6.ARMは、1990年設立の若い企業である。母体は教育用コンビューターを手掛けていた英エイコーン。パソコンの台頭で苦境に陥っていた同社の省電力CPU設計部門に目を付けたアップルなどが出資、分離独立する形で誕生した。当初はアップルのPDA(携帯情報端末)に使用される程度だったが、97年、フィンランド・ノキアの携帯電話に採用されたことを契機に本格成長が始まった。
7.ARM躍進の背景には、半導体業界の地殻変.動がある。70年代には設計から製造まで一貰して行う垂直統合型が主流だったが、90年代にはファブレス(開発設計に特化する企業)とファウンドリー(半導体受託生産会社}が台頭、設計と製造の分業化が鮮明となった。半導体技術が高度化、設備投資費も巨額化して、負担の重さに耐えられるメーカーがインテル、サムスン電子等ごく一部になったためである。
8.設計に限っても、回路設計する際、すべてのIPを自社開発すると膨大な数のエンジニアと時間が必要となる。90年代までは自社開発が主流だったマイコンも、00年ごろ、CPUが一定の処理能力に達し、省電力や周辺機能が差別化の要因になると、ARMのIPを採用する企業が増えていった。ARMから買った方が安上がりであり、ARMが構築したエコシステム〔ARM仕様に最適化されたソフトを書けるソフト技術者、半導体設計者等を擁する企業群。参加企業なんと1300社〕を利用すれば半導体設計やソフト作製のサポートを得られるためである。
9.ARMの売上高は、07年度以降顕著な伸びを見.せている。15年度の売上高は06年度比で3.7倍、営業利益は6.0倍、売上高営業利益率に至っては51.6%という驚異的な高さである。金のかかる製造設備も在庫もないこと、モバイルに加えマイコン向けも急増したことが高収益の理由である。15年から20年にかけても、ARM仕様の半導体出荷量の年平均成長率は9%と、市場を上回る伸びを達成する見通しである。モバイルでは1台の端末に搭載されるCPU数が増えていること、モバイル以外でのシェア拡大による。
10.モバイル市場はスマホをはじめ頭打ちの感がある、そこでARMが近年注力しているのが企業向けインフラ(ネットワーク・インフラ、サーバー等}、車載、IoT等である。こうした領域におけるARMのシェアはネットワーク・インフラ15%、車載10%、サーバー1%未満などにとどまっている。中でも、インテルとの激突が予想されるのがIoTとサーバーである。IoTは安価な半導体が主流になると見られ、小型・省電力が必須である。インテルもIoT向け半導体を投入、ARMに主導権を握られたモバイルでの失敗を繰り返すまいとしているが、ARMはエコシステムを生かしてシェア拡大を目指す。
11.現在、インテルが圧倒的存在感を示しているサーバー向けでも、ARMは省電力を武器に切り込む構えである。サーバーを多用するデータセンターでは電力が最大のコストとなっている。決済サービス会社・米ペイパルが不正利用検知システムにARM仕様のサーバーを利用したところ、従来のデータセンター比で設備投資半額、ランニングコスト7分の1、スペース10分の1という結果が出た。
12.最大のライバルはインテルだが、IoT向けは参入障壁が低いので思わぬ伏兵が出てくる可能性もある。だが、ARMには小型・省電力、エコシステム作りのうまさという大きな強みがある。ソフトバンクは、ARMの経営陣は変えないと表明しているので、経営方針が大きく変わることはないだろう。株価は買収発表を受けて急騰している。数力月後と見られるソフトバンクによる完全子会社化後は上場廃止の予定である.一方、ソフトバンクの株価は急落。動きの激しい半導体業界でいつまでARMが安泰なのか等が懸念されており、今後も変動が予想される。



yuji5327 at 06:59 

2017年06月28日

2015年度の電子部品各社の業績を見ると、村田製作所、TDK、アルプス電気といった大手はそろって過去最高益を更新した。原動力はスマホ向け需要の拡大である。

「山口悟郎:京セラ社長、栗山年弘:アルプス社長、石黒成直:TDK社長対談、僕らのクルマ論、
週刊東洋経済、2016.7.30」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.15年度の電子部品各社の業績を見ると、村田製作所、TDK、アルプス電気といった大手はそろって過去最高益を更新した。原動力はスマホ向け需要の拡大である。07年に米アップルがアイフォーンを発売したことを皮切りに、スマホ市場は劇的な成長を果たしてきた。10年に2.9億台だった世界のスマホ出荷台数は15年に約5倍の14.2億台に成長。電子部品業界にとっては.、躍進の立役者といえる。
2.スマホ拡大の裏でデジタルカメラや音楽プレーヤー、パソコンなど、これまで電予部品業界を支えてきた製品がスマホに侵食され市場規模を落としてきた。スマホ向け比率が低い日本電産などを除き、多くの電子部品各社はいや応なく成長をスマホに依存せざるをえなくなった。
3.スマホ依存の成.長モデルが転換期を迎えている。背景にあるのは需要鈍化で、欧米や中国など主要国で普及が進み、買い替えサイクルが長期化している。16年の出荷台数成長率はわずか3%に落ち込みそうである。
4.現状に危機感をあらわにするのが、スマホカメラ用のアクチュエーターで急成長を遂げてきたアルプス電気、スマホ以外の既存製品であれば、ほかのコンシューマー機器が伸びて電子部品の需.要鈍化を補ってくれたが、需要減少を補えるコンシューマー機器は当面出てこない。
5.電子部品各社は次の成長源探しを迫られており、目を向けるのが電装化を期待できる自動車である。自動車の電装化は、電装品の装備で、カーナビやエアコンはすでに多くの車両に装備されているが、それ以外でも最近では安全性向上を目的にバックカメラ装着を義務化する法整備が進むなど、電装品装備は広がり続けている。
6.動力を伝達する駆動機構の電動化もある。パワーステアリング分野で、従来の油圧式からモーターによる電動式への置き換えが進む。電気自動車も普及が期待されている。自動車のあらゆる動きをコンピュータで管理する電子制御で、既存のアイドリングストップ技術などに加え、運転そのものを電子制御する先進運転文援システムの開発が活発化している。カメラやセンサーで周囲の状況を認識することによる車線逸脱防止や衝突前の自動ブレーキ作動などがすでに実現している。
7.最終ゴールは自動運転で、米グーグルや米テスラモーターズといった新興勢力と既存自動申メーカーとが、しのぎを削っている。各社にとって、特有の課題も多い。スマホで味わったような急成長が難しい点がある。自動運転の普及本格化は25年以降とされる。難題は自動車業界特有の1次下請け、2次下請けという垂直統合体制である。
8.TDKは、HDDヘッドに使われる薄膜技術を応用した磁気センサーを売り込み中である。自動車の操舵装置向けの角度センサーが主な用途だが、磁気センサーは回転、電流など検知対象が広く、さまざまな部分に応用できる。アルプス電気が狙うのは「すき間」である.人聞と機械が情報をやり取りするインターフェース部分、ハプティック〔触覚機器〕や電子シフターを中心に、ニッチ分野を狙う。
9.長く続いたスマホの宴も終わり、自動車郊品という新たな道のりを歩みだした電子部品各社は、どれだけの企業が電装化の果実を得られるのか。忍耐強く種まきを続けた会社だけが生き残ることになる。



yuji5327 at 06:37 

2017年06月24日

幸運にも今日地震に襲われなければ、明日以降に地震が起きる確率は上がる。だから、全国地震動予測地図が改訂されるたびに発生確率は上ってゆき、いつか必ず地震が起きる。

「巽好幸著:地震の発生確率とは何か、予測地図はそう読むのか」は参考になる。著者は神戸大学海洋底探査センター教授・センター長である。。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.政府の地震調査研究推進本部は、全国地震動予測地図の2016年版を発表した。太平洋側の南海トラフ巨大地震の震源域周辺で、14年版に比べ最大2ポイント程度確率が上がっている。
2.北海道函館市では、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は0.99%という低確率だったが、6月16日に震度6弱以上が現実となった。そもそも、地.震発生確率とはどのような値なのか人びとは疑問を抱いている。
3.地震予測は、大きく2つに区分できる。1つ目は、緊急地震速報という直前予報である。震源近くで観測したP波(第1波)の解析から地.震の位置と規模を瞬時に決定し、より大きな揺れを起こすS波〔第2波)の到達と揺れの予告を行うもので、心の準備や火元確認、必要最小限の避難役立つとしている。
4.2つ目が短期予知という地震予知で、地.震の前兆現象を検知し、比較的近い将来、数日〜数カ月先の地震を予知するものである。この地.震予知の実用化を目指した国家プロジエクトが、1965年にスタートした地震予知計画であった。
5.この計画は33年間にわたって実施され、総額2000億円近くの予算が投入されたが、95年の阪神淡路大震災を全く予知できなかつた。現時点でも地.震予知は不可能である。理由は、確かな前兆現象を確認できないからである。
6.地震予知計画が挫折したことへの反省から始まつたのが「中長期予測」である。これは過去の地.震の発生.時期と規模から将来地震が発生する確率を求め、地盤の特性を考慮して.震度を予測するものである。地震の発生確率は、内陸部の活断層および海溝沿いのプレート境界で、ある規模の地震が、ある一定の周期で起きることを前提にして求める。
7.その原理は、例えば平均周期が120年の地震の場合、地震の"起こりやすさ(確率密度)は横軸を時間は釣り鐘形のグラフになる。釣り鐘形の部分の総面積を100%とすると、前回の地震から100年間地.震が起きていない場合の、今後30年間の地震発生確率は、残りの面積との比から算出する。問題は、全ての活断層について地震の周期や規模が分かっているわけではないし、未知の活断層もある。従って、発生確率は「最低値」である。
8.幸運にも今日地震に襲われなければ、明日以降に地震が起きる確率は上がる。だから、全国地震動予測地図が改訂されるたびに発生確率は上ってゆき、いつか必ず地震が起きる。
9.南海トラフ巨大地.震や首都圏直下地震の今後30年発生確率は70%を超える。関東から九州までの太平洋側では、強い揺れが起きる確率も高くなる。地震調査研究推進本部では地震発生確率を、高い(3%以上)、やや高い(0・1〜3%)と表現する。0.1%、3%、6%、26%という発生確率を平均周期で表すと、3万年、1000年、500年、100年に1度地震が起こることになる。
10.最大の問題は、一般の人々は1%の確率で地震が襲ってくると聞くと、99%は大丈.夫と感じること。さらに、30年問での発.生確率が1%である地震は3000年に1度程度起こると聞けば、ますます「安心感」は増す。
11.このような感覚が適切でないことは、阪神淡路大震災でわかった。震災後に、六甲・淡路島断層系について詳細な調査が行われ、地.震発生周期の概要が明らかになり、そのデータを用いて、地震前日〔95年1月16日)における今後30年間の地震発生確率を求めると約1%という低確率だったことからわかる。
12.従って、今後30年間の地震発生確率が70%という値は、首都圏にとって異常である。日本人の平均寿命よりはるかに短い時間内に起こるということで、万全の覚悟と対策が必.要である。




yuji5327 at 06:46 

2017年06月22日

中国が世界最大の風力発電王国となった。中国の2015年の新規導入風力発電容最は前年比で31.5%増の3050万kWとなり、世界全体の48.4%を占めるシェア1位である。

「富岡浩司著:新疆金風科技、世界最大の風力発電関連企業、
エコノミスト、2016.7.26」は参考になる。著者はアジア株アナリストである。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.新疆金風科技は世界最大の風力発電関連企業である。業績は絶好調で、2015年の売上高は前年70%増の4476億円、純利益は56%増の430億円となった。16年第1四半期の業績も56%増収、49%増益と高水準を維持している。メインビジネスは.風力発電設備製造と風力発電サービス、それに風力発電所の投資・運営の3大事業部門からなる。中でも、風力発電設備製造では圧倒的な規模を誇る。会社の性格は民閲企業に近い。1999年2月の設立時は新彊ウイグル自治区の地方国有企業が株式の9割を保有していたが、その後次第に割合が低下して、07年12月に深圳市場に上場する直前には国有企業の保有比率は4割まで下がった。
2.同社が急成.長したのは、中国が世界最大の風力発電王国となったことによる。中国の15年の新規導入風力発電容最は前年比で31.5%増の3050万kWとなり、世界全体の48.4%を占めるシェア1位である。また、15年末時点で中国の累積風力発電容星は1億4510万kWとなり、EU全体の1億4158万kWを超えて、世界1位となった。同社は、5年運続で発電容量国内シェア1位(15年19%⇒16年25%)を確保、2位との差を広げた。発電設備製造部門の今年の見通しも明るい。16年の発電設備の出荷目標を700万kWとし、国内シェア25〜30%と設定しているが、.第1四半期の売上高が56%増となり、通年べースで目標を突破するのは難しくない。
3.風力発電サービス部門は、同社が誇る高い技術をメンテナンスに生かす業務で、世界各地の風力発電所500カ所以上において約1万7000台の風力発電設備にメンテナンスなどのサービスを提供している。そのうち、約1万2000台の発軍設備は同社の監視システムと直結しており、何らかの異常や変化があれば同社センダーで即座に把握できる休制が整っている。
4.部門別の売上動向は発電設備製造が全体の90%を占め、残りは発電サービスが4%、発電所運営が5%となっている。粗利益率は発電設備製造が24%、サービスが11%、発電所運営が63%である。発電所運営からの利益が全体に占める割合が大きく伸びていくことが見.込まれる。技術開発にも力を入れ、発電設備製造では海上用や低風速でも十分稼働する高性能バージョンの開発、大型化も急いでいる。風力発電設備の大型化は世界的な潮流となっており、1台4000kWクラス以上の発電設備も生産販売している。15年には2000kW.以上の発電設備が全体の41%となり、14年の15%から格段に増えた。また、15年には3000kWクラスの製品投入に成功している。1500kWの発電機の回転翼の直径は66mあるが、3000kWでは90mになる。15年には6000kW.発電機の開発にも取り組み、、幾つかの開発特許を取得している。
5.同社を世界の風力発電企業に育て上げたのが、業界のカリスマ経営者と言われる武鋼董事長だ。87年12月に新疆風能に入社、01年に新彊金風科技の董事長に就任して規在に至る。15年末時点で個入としては最大株主となっている。武鋼氏は技術畑出身で、清華大学卒で新疆工学院の修士号を取得し、83~87年には新疆水利水電学校の教師を務めた経験もある、.武鋼氏は58年生まれだから、当面は次期指導者の育成に十分時問をかける余裕がある。11年には風力発電を専門に研究する金風大学を設立している。他の中国企業も専門人員育成学校や研修センターを設立しているが、それらとは異なる本格的な大学である。
6.同社にとって追い風は中国の再生エネルギー振興策である。新たな政策では20年時点の風力発電能力を2億500万kW に引き上げることを目標とし、これを実現するには風力発電設備の新規導人量の伸びを年率平均14%で持続する必要がある。また、水力以外の再生エネルギー(風力、太陽光、バイオ等)が中国全体の9%に引き上げる。
7.中国では「棄風限電」と言う現象がある。風力発電が盛んな地方は北部や西部の辺鄙なところが多く、電力需要が高くない。風力発電の買い取リコストは石炭火力などよりはるかに高いことから、送電会社はさまざまな理由をつけて、買い収りを拒否してきた。
8.中国では工業生産や固定資産投資の伸びが減速しており、電力需要自体が低迷している。今年1―5月の中国全体の電力消費は前年比2.7%増にとどまっている。こうしたなか、.再生エネルギー企業を過度に優遇するのは、既存の石炭火力や水力発電会社にとって経営の負担となり、国家全体のエネルギー政策に大きな矛盾をもたらすとの懸念が生じる。15年後半から香港の同社株価がさえないのは、市場が政策実現性を懐疑的に見ているといえる。




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2017年06月20日

米国は、ここ数年、スパコンの中核部品となるプロセッサー(演算裏置)の中国への輸出を禁止してきた。そこで今回、中国はプロセッサーも自主開発してスパコン開発に臨んだ。

「小林雅一著:中国スパコンが速度で圧勝、米国はAIチップに舵をきる、
エコノミスト、2016.7.26」は参考になる。著者は現職はKDDI総研リサーチフェローである。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.世界のスパコン開発競争で、中国の存在感が圧倒的に高まっている。今年6月、米国の専門家グループが発表したスーパーコンピューター(スパコン)の計算速度ランキングで、中国製のマシンが1、2位を独占した(3位は米国製)。同ランキングは年に2回、最新の順位が発表され、これで中国は7回連続のトップとなった。また今回、上位500位以内に167機の中国製スパコンがランクインし、米国の165機を上回った。中国が米国を抜いて、世界最大のスパコン保有国となるのは史上初のことである。
2.今回、1位にランクされたのは、中国の国家並列計算機工学技術研究センターが開発した「神威太湖之光」と呼ばれるスパコンで、1秒間に約9.3京回(京は1兆の1万倍)の浮動小数点演算を実行でき、2位の(同じ中国の研究センターが開発した)「天河2号」の約3倍、3位の米クレイ製「タイタン」の約5倍の計算速度となる。
3.日本では、理化学研究所と富十通が共同開発した「京」が5位に入ったが、この計算速度は1秒間に約1京回。1位にランクされた中国製スパコンは、この9倍以上のスピードである。一般に科学者の問では、スパコンが一国の科学技術力を示す指標になると言われる。スパコンは、軍需や医療など重要技術はもとより、自動車やエレクトロニクス、化学製品など多彩なコンシューマ製品を開発する上でも大きな役割を果たしている。このため、米国の関係者は危機感を抱き、米シカゴ大学の物理学者、エリック・イサークス氏は「中国はスパコンの開発力を強化しており、これは米国の産業と安全保障に関わる問題だと警鐘を鳴らしている。
4.米国は、ここ数年、スパコンの中核部品となるプロセッサー(演算裏置)の中国への輸出を禁止してきた。そこで今回、中国はプロセッサーも自主開発してスパコン開発に臨んだ。これが他を圧倒する計算速度を見せつけたことで、米国の関係者が受けた衝撃は一層増した。ただし今回中国が自土開発したプロセッサーは、単体としての計算速度は際立って高速とは見られず、トップにランクされた中国製スパコンでは、このプロセッサーを4万個以上も並列接続することにより、システム全体として超高速の計算速度を実現した。
5.この並列システムのべースとなったのは米国が開発したネットワーク技術であるため、総合的に見て中国のスパコン技術が米国を追い抜いたとは必ずしも言えない。この分野における両国の技術力は、非常に接近してきたと見るべきである。
6.従来型のスパコン開発では中国が米国を完全に抜き去るのは時間の問題である。そうなった場合、問題は米国、日本が、今後、どのような道を選択するかである。米国では既に新たな道を模索する動きがある。国防総省傘下のDARPA(国防高等研究計.画局)では、ここ数年、「シナプス」という新規プロジェクトを立ち上げて、「ニューロモーフィック・チップ(脳型プロセッサー)」の研究開発を進めている。この新型プロセッサーは、最近の流行語である「ディープラーニング(深層学習)」など先端AIに最も適した演算装置である。
7.従来のスパコンのように単純な計算速度ではなく、「人工知能」という質的に高度な演算処理を新たな科学技術力の指標とする考え方である。こうした発想の転換はDARPAのみならず、そこから研究予算の拠出を受けている米IBM、インテルやグーグルなど競合他社にも波及している。彼ら米国のトップIT企業は今、様にニューロモーフィック・チップのようなAI志向の新型プロセッサーに力点をシフトさせている。
8.その応用範囲は広く、たとえばフェイスブックのようなソーシャル・メディアに投稿された写真や動画を分析して、その内容にマッチした広告を掲載する。あるいはグーグルの音声検索やパーソナル・アシスタント機能の精度を高める。さらには病院のMRIやCTスキャンなどで撮影された断層写頁を.画像解析して、各種の腫瘍をはじめ病気の診断を目動化するなど、AI志向の新型プロセッサーが得意とする分野は多岐にわたる。
9.今後、ディーブラーニングなど先端AIのカバーする範囲が、現在の(.画像や音声など)パターン認識から「(人間の言葉を理解するための)自然言語処理」のような、より高度な領域へと広がると、新型プロセッサーの応用範囲は今以上に拡大する。
10.特に米国で、新型プロセッサーの導入が期待されているのが軍需分野である。その理由は、米国防総省が今、AIを搭載したスマート兵器を中心とする軍事技術の抜本的改革を図っているからである。長年積み上げられた従来技術をチャラにし、全く新種のスマート兵器へと飛び移ることで、ライバルたちとの差を一気に広げたいとしている。AIを搭載したスマート兵器の開発となる。たとえば、.画像認識に優れた新型プロセッサーを搭載したミサイルやドローンが、自らテロリストなど標的を見つけて攻撃するといった「スマート兵器」である。
11.スマート兵器を国防の要とするならば、米国は今後、スピード重視の従来型スパコンからAI志向の新型プロセッサーへと科学技術力の指標を切り替える公算は高い。これに限らず、米国の発想は、これまでのリードが縮まってきたところで、いきなり「ルールを変えて、他者を出し抜く」ところにある。日本としてはスパコンのスピード競争のような表立った現象より、その背後で進む技術戦略を練る必


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2017年06月11日

宝酒造はビール事業から撤退し、発酵技術を生かし、遺伝予工学を中心にバイオテクノロジー事業で売り出した研究用試薬を、大学や病院、研究機関向けに販売している。

「仲尾功一著:コツコツ続けた遺伝子治療が実用化へ、
エコノミスト、2016.7.26」は参考になる。著者はタカラバイオ社長で2002年に設立、従業員数1273人、売上高297億円、宝酒造の一事業部門から発展した会社である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.宝酒造はビール事業から1967年に撤退し、残った発酵技術を生かし、新たなビジネスとして、遺伝予工学を中心としたバイオテクノロジー事業を模索している。79年に売り出した研究用試薬が、現在も主力製品で、大学や病院、研究機関向けに販売している。初年度の製品は7品目だったが、今では7000品目に上り、国内のバイオ試薬分野ではトップシェアで、2016年3月期の研究用試薬の海外の売り上げは74%を占めている。
2.93年に中国・大連市に工場を設立し、今、研究用試薬の9割を生産している。市場としても中国は拡大しており、当社がシェア1位である。02年に「タカラバイオ」として分社化した後、05年に研究用試薬の老舗、米クロンテック社を買収した。バイオ研究の中心地であるアメリカで、当社が得意ではない分野を手掛ける同社の買収は大きかった。欧米に販賂を持ち、技術・販賂両面でシナジー効果があった。
3.14年には幹細胞生物学の先端研究に収り組むスウェーデンのセラーティス社を買収した。今、バイオ研究は遺伝子から細胞へと広がっているが、当社は遺伝子に長け、細胞に強いのがセラーティス社である。バイオの世界ではM&Aが活発で、技術のシナジー効果が望める提携は日常茶飯事である。
4.現在の主力は、遺伝子・細胞を扱う技術をもとにした研究支援で、その技術を用いる治療法を開発している。90年代に開発した、体の外で細胞に遺伝子を効率よく導入する技術で、1つは、体外遺伝子治療である。ヒトの細胞を取り出し、目的の遺伝子を導入して患者に投与する。がん患者から採った血から、がん細胞を攻撃する免疫をつかさどるリンパ球を取り出して、がんを攻撃する命令を出す遺伝子を入れ、体内に戻す治療である。
5.山中伸弥先生は、体から取り出した細胞に特定の遺伝子を入れると、どんな細胞にも分化できるiPS細胞となることを発見し、iPS細胞を利用した網膜や臓器の再生が研究されている。体外遺伝子治療も、体から細胞を取り出して遺伝子を入れ、患者に投与する点は同じだが、がん細胞を攻撃する免疫力を再生する。臓器ではなく体の機能の再生である。
6.もう1つ開発しているのは、腫瘍溶解性ウイルスHF10である。がん患部に注入すると、がん細胞の中だけで増え、がん細胞を破壊します。正常細胞には影響しない。アメリカで臨床試験がフェーズ兇泙膿覆鵑任い襦メラノーマ患者の皮膚の腫瘍が消えたばかりでなく、転移した内臓のがんも、直接このウイルスを打ち込んでいないのに小さくなった症例がある。
7.腫瘍溶解性ウイルスHF10は18年度、si-TCR遺伝子治療、CAR遺伝子治療は20年度です。それそれの治療法は複数の疾患を対象に開発しているが、プロジェクトの選択と集中の方針をこの春に打ち出した。最初の実用化を目指す疾患については、日本で再生医療製品の条件・期限付き早期承認制度を利用して自社単独で行い、他の疾患では他社と提携する。
8.14年に新しい開発・製造拠点の遺伝子・細胞プロセッシングセンターが稼働した。施設の目的の半分は、開発中の遺伝子治療薬の製造や細胞加工だが、今は収益源として、細胞加工や遺伝子検査の受託サービスを行っている。14年に施行された再生医療関連法では、医療機関だけでなく、企業が細胞加工をビジネスとしてできるようになった。再生医療の関連施設で細胞と遺伝子、両方を扱う企業は日本で当社だけである。昨年受託した遺伝子検査は10万サンプルを超え、日本一である。口の中の粘膜で体質を調べる検査や、腸内フローラの検査も請け負っている。
9.キノコ事業にも進出している。発酵技術を生かせる分野を探すなかで、医薬品の酵母とよく似た微生物がキノコの菌だった。ブナシメジは当社が人工栽培法を開発した。今はより付加価値の高いハタケシメジやホンシメジを生産している。昨年、分社化後に初めてキノコ事業が黒字化した。バイオ支援事業に次ぐ第2の収益源に育て、両事業の収益をもとに遺伝子治療の開発を進めている。




yuji5327 at 06:53 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
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のテーマについて、
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お気軽に下記にメールをください。
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
(平成28年度、国立新美術館にて開催)
・読売書法展(8月開催、現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(3月開催、現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
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