新技術

2018年05月12日

現代は純粋な好奇心や基礎科学が軽視され、「**の役に立ちます」と言わないといけない時代である。

「大隅良典著:酵母から学んだこと、学士會会報No.930(2018-)」はためになる。印象に残った部分の概要をいくつかに分けて自分なりに補足して纏めると以下のようになる。「大隅良典著:酵母から学んだこと、学士會会報No.930(2018-)」はためになる。印象に残った部分の概要をいくつかに分けて自分なりに補足して纏めると以下のようになる。「若い人へのメッセージ」はi以下の通りである。
1.40年の研究生活で、現代社会の抱える問題を強く意識する。「今の子供は自然に接する機会が少ない」「科学の進歩で知識が膨大に蓄積され、情報が溢れる時代となったため、若い人は考えることを放棄している」「効率ばかりが優先され、短期的視点ばかりが氾濫している」等々、危惧している。
2.若い人へのメッセージとして、/佑醗磴Δ海箸魘欧譴此⊆分らしく生きよう、⊆然に親しみ、小さな発見を大事にしよう、生物に学んで、多様性を大切にしよう、ぞ霾鵑卜されず、自分の目で確かめよう、ゼ分の抱いた小さな疑問や興味を大事に育てよう、Φ泙い之覯未魑瓩瓩此基礎力を身につけよう、Ъ分の可能性を大事にしよう、と、話す。
3.大隅氏がオートファジーの研究を始めた1988年、全世界で1年に約20本の論文が発表されていたが、オートファジーが癌研究や新薬開発に繋がる可能性があると判明するや、年間5千〜5千本の論文が発表されるようになった。大変喜ばしいことだが、大隅氏自身は自分の研究が何かの役に立つと考えたことは一度もなく、純粋に知的好奇心から研究に取り組んできた。
4.科学の一番の醍醐味は、人がまだ注目していない領域に着眼し、それを広げていくことだと、今も思っている。現代は純粋な好奇心や基礎科学が軽視され、「**の役に立ちます」と言わないといけない時代である。非常に困ったことである。「科学を文化の一つとして育てる社会」「科学を育てる社会」「科学を身近に楽しむ社会」「一般の人々の支援の下、基礎科学の研究が進む社会」であって欲しい。
5.そうした願いから、2017年8月、大隅基礎科学創成財団を設立した。日の当たりにくい基礎研究を長期的に支援し、基礎科学者と大学と企業の連携システムを構築していきたい。

yuji5327 at 06:40 

2018年05月03日

ベイジアンネットワークは、回帰分析より優れている。回帰式では被説明変数は一つだが、ベイジアンネットワークではもっと複雑な因果関係を扱える。


「野口悠紀雄著:複雑な因果関係につきAIで原因を推定する、週刊ダイヤモンド、2018.04.28」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.原因から結果への因果関係が分かっているとき、観測された結果から原因を推測することができる。実際の現象は複雑で、複数の原因と結果があり、因果関係は単純な一対一ではない。こうした問題を扱うのに、ベイジアンネットワーク(英: Bayesian network)という手法が使われる。ベイジアンネットワークは、因果関係を確率により記述するグラフィカルモデルの1つで、人工知能の分野では、ベイジアンネットワークを確率推論アルゴリズムとして1980年頃から研究が進められである。、既に長い研究と実用化の歴史がある。
2.自動的に計算できるアブリが作られている。原因や結果として何を選ぶかを決める。、このアプリは、モデルの自動構築機能も持っている。データを与えると、学習して、ネットワークを自動的に組み立てる。専門家の知識などがある場合は、それを畢前に取り入れる。原因や結果が数百、数千あっても扱える。
3.ベイジアンネットワークは、回帰分析より優れている。まず、回帰式では被説明変数は一つだが、ベイジアンネットワークではもっと複雑な因果関係を扱える。最近の人工知能の学会では、ベイジアンネットワークを用いた論文が増えている。
4.ディープラーニングという手法では、数学的な基準に従って、学習のためのデータをうまく読めるように学習が行われる。AIがどのような構造で理解しているのかが、人間には分からないという問題がある。
AIの能力が向上すると、人間に反抗するかもしれないという懸念は、AIの思考法を人間が理解できないことから生じている。機械学習の全てがディープラーニングではない。ベイジアンネットワークでは、因果関係が図で示されるので、コンピューターの思考を人間が把握することができる。
5.ベイジアンネットワークは、データから原因を判断する問題一般に適用できる。応用例は、多岐にわたる。まず、病気の自動診療への応用が試みられている。医師が経験と診療データに基づいて診断するのと同じことを、ベイジアンネットワークで自動的に行う。症状、検査データ、患者の申告などのデータを与えて、病気を判定する。
6.機械の修理のための自動診断プログラムも作られている。熟練修理者の経験等の聞き取りから作ったデータを読ませると、自動的に学習してネットワークを作ってくれる。症状を入力すると、原因を推定する。これによって、初心者でも迅速かつ正確に対処できるようになる。メールに含まれる言葉で迷惑メールを自動的に判定するフィルターにも、しばらく前から応用されている。
7.ベイジアンネットワークの応用は、今後も広がる。エキスパートの知見、判断、経験を生かしつつ、しかも人間では把握し切れないほど複雑な対象を扱えるのは、大きな利点である。データを常時更新していれば、異常を予知することができる。こうして、データ駆動的な運営が可能になる。そうなれば、事故が起こってから対応するのではなく、事前に対処することができる。日本では、社会資本の維持補修がこれから重要な課題になるが、事前対応型の採用は重要である。企業に応用すれば、状況変化に敏速に対応する経営が実現できる。ベイジアンネットワークの応用対象は、他にもある。データから人格を推疋するプロファイリングのための手法としても有効である。
8.以上のような分析を行うのはデータサイエンスだが、日本では人材が不足している。これにどう対処するかが、重要な課題である。



yuji5327 at 06:41 

2018年04月25日

シンガポールは今、IT〔情報技術)で製造業の生巌性を飛躍的に向上させる「インダストリー4・0」に国を挙げて取組んでおり、技術革新の実験場になっている。


「大堀達也(編集部)著:インタストリー4・0の実験場、世界的「モノづくりセンター」へ、シンガポールのスマート革命、エコノミスト、2018.4.17」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.シンガポールは今、IT〔情報技術)で製造業の生巌性を飛躍的に向上させる「インダストリー4・0」に国を挙げて取組んでおり、技術革新の実験場になっている。製造業の現場で高まる第4次産業革命への熱気がある。
2.世界有数の金融街シェントンウェイから西に1時間ほどタクシーを走らせると、工場と倉庫が密集するエリアに入る。シンガポールの西端でマレーシアとの国境に接する製造業の中心地トゥアスである。パイオニアや村田製作所など日本の企業も拠点を構える、その一角に、ロボットが商品の出し入れを行うハイテク倉庫がある。日本の国際物流大手、郵船ロジスティクス(YLK)の現地法人が既存施設に「オートストア」と呼ばれる自動倉庫システムを導入し2017年9月に完成させた大型物流センターである。
3.シンガポール政府は、裂造業強化に欠かせない迅速な部品調達のため物流網の拡張を急いでいる。貿易港の建設が進むトゥアスには、現在.市中心部にある物流ターミナルの移転計画が挙がっている。YLKは需要.拡大を見越し、シンガポール経済企画庁の支援を受け倉庫の能力増強に踏み切った。
4.オートストアはスイスの物流大手スイスログ製で、電子部品やアバレルなど小型サイズ製品の在庫品の保管を効率化する。まず、商品を「ビン」と呼ばれる数十cm四方のプラスチック製の専用ボックスに詰め、タワー状に最大16個まで積み上げて格納する。YLKの倉庫にはボックスが約4万個ある。タワーごとに同じ商品が人る。
5.タワーは隙聞なく並べられ、上から見ると(格子状になっている。その上では、複数の無線ロボットが縦横に動いてボックスの入出庫作業を行う。ボックスは仕分けを行う作業員の元に待ち時間なく届けられる。ロボットの移動経路を人工知能が機械学習し最短ルートを計算する。商品の受け入れ、仕分けの一連の処理量は従来比で18倍に増え、手作業の効率は60%向上した。
6.従来の倉庫は、商品を取り出す人間が台車を押して歩くスペースを確保しなければならなかったが、オートストアではそれが不.嬰になる。これにより保管スペースは2000m^3から3500m^3に拡大した。YLKシンガポールのウン・キムハン社長は、国土が東京23区と同程度のシンガポールでは貯蔵空間の最適化は不呵欠だ、という。
7.デジタル技術で国民生活の利便性を上げる「スマート・ネーション」構想の下、ビジネスの生産性、輸送、住環境などの領域への情報通信技術〕の導入を後押ししてきた。生産性の面では国内総生産〔GDP}の約2割を占める製造業に注力する。世界的金融センターとなった今、次に目指すのが先進的な製造技術の中心地である。金融センターになる前の1960〜70年代のシンガポールは日本メーカーが生魔拠点を置く「アジアの工場」だった。製造業で再び存在感を高めようと、EDBは海外のモノづくり企業を呼び込んでいる。
8.企業誘致に、長年携わってきたリン・スィニアンEDB副次官は、「すでにIT分野ではアマゾン、マイクロソフト、フェイスブックなどがデータ関連業務の5割をシンガポールで行っている」と話す。スィニアン氏によれば、アマゾンなどITの巨人たちがシンガポールを目指したのは、優遇税制や資金援助だけが理由ではない。人口6億人のASEAN(東南アジア諸国連合)市場開拓の拠点になるほか交通や行政サービスなどインフラのデジタル化が高度に進み、自動運転など先進技術に対する規制緩和にも積極的なため、さまざまなスマート化の実験に適しているからである。
9.製造企業も例外ではない。米コンピューター大手HPも17年、シンガポールの金融街に近いデポットクローズ地区に製造業のIoT化に関する研究開発を行つ施設「SMARC」を闇設した。同社の社員がキャンパスと呼ぶSMARCには約3000人のエンジニアが集まり、世界50力国に展開する同社工場の製造ラインもキャンパスから監督する。
10.製造現場の課題を改善し生産性を上げる目的で設置されたSMARCは、デジタルデータによる作業工程の可視化のほか、人間とさまざまな共同作業をする機械「コボット」や3Dプリンターなどの開発を行う。実証実験中というコボットの性能を見.せてもらつた。コボットはコーヒーメーカーを操作し、カップに注がれたダイミングで取り出しテーブル上に移したかと思うと、今度は自動搬送ロボが運んできたUSBメモリーをつかみ上げ、パソコンに差し込んだ。このように複数の作乗をこなせる「汎用ロボット」は、製造梁で必要になる技術である。
11.従来型の帝業ロボは特定の作業を高速で処理するが、これは「少品種大量牛産」に適していた。だが、今後は消費者の趣向の多様化に対応してカスタマイズ品を作る「多品種少量生産」の時代に入る。そのためには1台で何百種類もの部品を見分け、組み立てるロボットが.要る。
12.汎用ロボットや、3Dプリンターで使う高耐久性の新素材の開発に欠.かせないのが、データ解析とAIのスキルである。SMARCはシンガポールの学術機関と協力し、技術者のスキルの向上を図っている。
13.SMARCを軌案したジェイミー・ネオ部長は、「HPの応川分野は製造業だが、目指す方向性はスマート国家と一致する。研究成果が学術機関を通じて医療など幅広い産業に広がる可能性がある」。
14.EDBは17年12月、企業のインダストリー4・0への対応を支援する目的で「シンガポール・スマートインダストリー準備指標」の策定を発表した.「工程」「技術」「組織」について複数の評価項目を設け、その達成度から企業の対応を評価する。同指標によって企業は製造ラインの改善点などを知ることができる。EDBは18年末までに評価に当たる有資格者の育成プログラムを整備するとしており、その先は第三者機関による認証発行も視野に入れている。
15.ボストン・コンサルティング・グループによれば、インダストリー4・0を推進するシンガポールは、24年までに労働生産性が30%上昇し、GDPは約3兆円増加、2万2000人の新規雇用を生むと試算する。シンガポールがモノづくりの中心地になる可能性がある。


yuji5327 at 06:48 

2018年04月23日

テスラは売上高ではフォードやGMの10分の1だが、時価総額では両社に匹敵する。一時期より時価総額はやや下がったが、市場の期待は非常に大きい。

2018/4/13付けの大前さんの「 ニュースの視点 」(発行部数 166,972部)は「自動運転規制/米テスラ/ライドシェア/ドイツ自動車大手 〜ライドシェアの未来像と日本メーカーにとっての危機とは?」と題する記事で、参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.東南アジア配車サービス最大手のグラブは先月26日、米最大手ウーバーテクノロジーズの東南アジア事業を買収すると発表した。ライバルを買収し、東南アジア市場で圧倒的なシェアを確保する考えだが、これについてフィリピン競争委員会は競争法に関する審査を終えるまでフィリピン国内の事業統合を延期するよう命令を出した。
2.グラブは非常に大きな会社へと成長しつつある。実はこの買収の背景にはソフトバンクの差し金もあったと言われている。ソフトバンクは、グラブにもウーバーにも投資をしている。ウーバーは、中国市場を滴滴出行に売却する形で撤退したが、フィリピンでも同じような形をとるらしい。
3.結果として、東南アジアはグラブ1社、中国は滴滴出行1社が独占する形になる。フィリピンでは選択肢が少なくなるということで、今回の件が独禁法に抵触するのではないかと指摘を受けている。
4.ライドシェアの会社は、今後車が自動運転になることでさらに重要度が増していく。自動車メーカーは直接顧客とつながっていないが、ライドシェアの会社は顧客と直接つながる。その点で、自動車メーカーよりも強さを発揮してくる。
5.独ダイムラーと独BMWは先月28日、ライドシェアなどの移動サービス事業を統合すると発表した。ダイムラー子会社のカー2ゴーとBMW傘下のドライブナウを軸に幅広いサービスで統合するもので、BMWのハラルト・クリューガー社長は「統合は新しい競合への強いメッセージだ」と語った。
6.バンクーバーなどで見かけた光景から言えば、カー2ゴーの影響は相当大きい。約3000台のメルセデスがあり、消費者はスマホで予約して好きなときに乗ることができ、自分で車を所有する必要はない。それでも都合がつかない場合には、ウーバーを利用すれば事足りてしまう。
7.ダイムラーとBMWが競合するのではなく、統合するという選択肢をとったのは、日本の自動車メーカーにとっては大きな脅威である。こうした移動サービスが普及すると、あえてトヨタや日産の車を選ぶ人は少なくなる。ちょっとした距離を乗るだけであっても、もし選べるのであれば、「ベンツSクラス」に乗りたいという人は多い。逆に、安さを追求するなら、小さい車を選択すればいい。日本車は、高すぎず安すぎず、という中間層に位置しているので、選ばれなくなる可能性がある。日本のメーカーはこの脅威を感じて、準備をしておくべきである。
8.外国勢に目を向けると、ディーゼルの燃費不正問題で大炎上したフォルクスワーゲンが、生き残るのではと、ビジネスウィーク誌で特集している。一時期は倒産するかもしれないと言われたがが、一気にEVへ舵を切って将来像を示した戦略が功を奏した。
9.不正問題発覚で株価は下落したが、中国市場で販売が好調だったので、世界的に見ると売上はそれほど減少しなかった。中国では良くも悪くも、この程度の不正は大きく問題視されない。米国では不正について大騒ぎになったが、もともと販売が不調だったので売上に対する影響は少なかった。
10.政府は先月30日、自動運転中の車の事故について、原則として車の所有者に賠償責任を負わせる方針を決めた。これは運転手が乗った状態で限られた条件で運転を自動化する「レベル3」までが主な対象で、メーカーの責任は車のシステムに明確な欠陥がある場合のみとする方針である。
11.もしかしたら大変な事態を招いてしまうかも知れない。この場合、もし自動運転が可能な車種について事故率のデータやレポートが発表されたら、特定の車種に注文が殺到する。車の所有者として賠償責任を負わされるとしたら、事故が少ない車種を購入したいと思うのは自然な流れである。そうなれば、統計的なデータや消費者レポートのようなものが車のシェアに多大な影響を及ぼすことになる。レベル3の自動運転くらいまでは、規制については発表せず、もう少し見守る姿勢を取った方が良かった。
12.米電気自動車(EV)専業のテスラは先月29日、主力車種「モデルS」のリコール(回収・無償修理)を始めた。寒冷地で使われる路面凍結防止剤の影響でパワーステアリングのモーターを固定しているボルトが腐食する恐れが判明したので、2016年4月以前に製造した12万3000台が対象となる。ブランドイメージのさらなる毀損につながる。
13.苦戦続きだった「モデルS」について、ようやく量産のメドがついてきた矢先に、このリコール問題が発覚した。米国の自動車メーカーの業績と時価総額を見ると、テスラは売上高ではフォードやGMの10分の1にすぎないのに、時価総額では両社に匹敵するほど評価されている。一時期に比べると時価総額はやや下がったが、それでも市場の期待は非常に大きい。



yuji5327 at 06:40 

2018年04月20日

ヒトゲノムの解読も、いまや30時間でできる。費用は100ドルしか掛からない。これまでとは全く異なり、仮説駆動型からデータ駆動型へと、転換しつつある。


「野口悠紀雄著:データ駆動型への転換で科学は自動化できるか、週刊ダイヤモンド、2018.0407」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2000年6月、ビル・クリントン:アメリカ大統領(当時)は、ヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読作業がほぼ終了したと宣言した。ヒトゲノム解読計画は1990年に始まり、公的資金でサポートされた国際チームの共同作業によって進められていた。クリントン大統領の横には、国際チームを率いたフランシス・コリンズがいたが、もう一人、ジョン・クレイグ・ヴエンターがいた。
2.彼は分子生物学者で、型破りの天才。公的資金による解読計画がスタートした後で、自力でのゲノム解読作業を始めた。彼が現れたために、競争が激化し、解読が早まった。それだけでなく、科学的方法論に大転換がもたらされた。
3.ヴエンターは、高校時代にはろくに勉強せず、サーフィンばかりやっていたようだ。高校卒菜後にベトナム戦争に従軍。知能指数テストの成績が非常に良かったので、医療班に回された。帰国後、カリフォルニア大学サンディエゴ校で生化学を学び、75年に生理学・薬学で学位を取得。ニューヨーク州立大学バッファロ1校の教授となり、84年に国立衛生研究所に移った。
4.解読した遺伝子で特許を取ろうとして上司のジェームズ・ワトソンと衝突し、飛び出した。ワトソンは、デオキシリボ核酸(DNA)の二重螺旋構造の発見者で、62年にノーベル生理学・医学賞受賞。なお、DNAとは、遺伝情報の継承と発現を坦つ高分子生体物質である。
5.ヴェンターは98年に創設されたセレラ・ジェノミクス社でヒトゲノム解読競争に参入した。コンピユーターを駆使するゲノムは、DNA分子をシークエンサー(配列解読機)という装置にかけて読み取る(DNAの塩基配列のことを、DNAシークエンスと呼ぶ。DNAの塩基配列はA、T、G、Cの4文字から成る文字列で表現できる。この配列を明らかにする作業を、DNAシークエンシングと呼ぶ)。1サンプルで解読できるのはせいぜい500文字だが、ヒトゲノムは30億文字もあるので、膨大な作業が必要になる。
6.公的賃金チームの方法は、シークエンサーで読み取る前に全体の俯瞰図を作る。これができれば、全体の中でのサンプルの位置がはっきりするため、安心して解読できる。しかし、俯瞰図の作製は大変な作業である。このため、公的チームは、解読に取り掛かるまでに膨大な時間存費やした。解読完了は05年ごろとされていた。
7.これに対してヴェンターは、彼独自の「全ゲノムショットガン配列解析法」を用いた。これは、ずっと簡単で速い方法で、まず、ゲノム全体を物理的手段で短いDNA鎖にランダムに切断する。得られた大量の断片を、片端からシークエンサーで読む。そして、各断片の末端にある配列を照合して、同じ配列を持つものを探し出し、重ね合わせてゆき、それによって、元の配列を再構築する。
8.数十冊の書物をバラバラにしてからシュレッダーにかけ、細切れにしてから読むようなものである。理論的には、全ゲノムの約10倍に相当する配列を読めば、全ての断片が整列し、連続するとされる。この作業は、スーパーコンピューターで自動的に行うもので、バラバラになった大量のデータを、コンピューターが判断しながら組み立て直す方法である。
9.彼は、この方法によって、95年に、インフルエンザ・ウイルスのゲノム配列の決定に成功した。しかし、ヒトゲノムにこの方法を用いるのは無理であると、多くの研究者は考えていた。
10.シヨットガン法は、コンピューターによる力ずくの方法である。ヴェンターは、1000億円もの資金を調達し、300台のシークエンサーをフル稼働させ、1台数千万円する世界最大の民間スーパーコンピューターを何十台もそろえた。99年9月に実際の解読作業を始めてから1年もたたないうちに、ヒトゲノムの解読を終わらせた。
11.その後、彼は生命科学の世界で革命的な成果を次々と挙げていった。03年には海洋や大気中の微生物のゲノムを調べることによって、数千のバクテリアなどの未知の生命体を発見した。10年には人工的に合成したゲノムを持つ細菌を作製することに成功した。新しい生命体は試験管内で増殖する。これまで数百年間にわたって、科学者は、「仮説駆動型」の方法論に基づいて研究を進めてきた。
12.仮説駆動型研究においては、研究者が仮説、またはモデルを再構築する。モデルは、多くの場合、微分方程式によって表現される。その方程式を解いて得られる結果を、実験によって得られたデータで検証する。そこで棄却されなければ、仮説は受け入れられる。
13.19年5月の皆既日食で、アフリカ西海岸沖のプリンシペ島に遠征した観測隊は、
太陽に隠れて見えないはずの星が、黒い太陽の端に輝いていることを確認した。アインシュタインの一般相対性理論が予測した通り、太陽で空間がゆがみ、星からの光が曲がった。これは、仮説駆動型科学の数多い勝利の瞬間の中でも、最も印象的なものの一つだった。
14.仮説駆動型研究が成功するかどうかは、対象から枝葉末節を取り除き、本質を取り出してモデル化できるかどうかに懸かっている。それができるかどうかで、研究者の能力が評価される。また、研究者は科学的方法論の基本として、「柑関関係は因果関係ではない」とたたき込まれる。重要なのは、変数をつなぐメカニズムである。それが分かって初めて、データを評価できる。
15.ヒトゲノムの解読を契機として、生命科学は大きく変わった。大量のデータと超高速のコンピューターがあれば、そして、適切なアルゴリズムを開発できれば、モデルがなくても正しい結果を得られることが分かった。回様の変化が、科学の他の分野にも広がりつつある。情報通信技術の進歩によつて、あらゆる分野でデータが爆発的に生成され、「ペタエイジ」と呼ばれる時代が到来した。
16.ヒトゲノムの解読も、いまや30時間でできる。費用は100ドルしか掛からない。こうして、これまでとは全く異なるアブローチが必要となり、仮説駆動型から「データ駆動型」へと、アプローチが転換しつつある。データ駆動型では、モデルを固定することなど、データを用いて、現象を説明できるモデルをコンピューターが自動推定する。このため、モデルを作るのが難しい現象も扱える。そして、研究者が想像もしなかった新発見が可能となる。



yuji5327 at 06:33 

2018年04月19日

鉄鋼商社の柱の自動車ビジネスも、自動車業界の大変革である電気自動車〔EV)が普及すれば、鋼材を使ってきた自動車メーカーのサプライチェーンが大きく変わる。


「井戸清一(ジャーナリスト)著:EVシフトに動く鉄鋼商社・鋼材需要消失に備え、エコノミスト、2018.3.27.」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.商社の鉄鋼部門にとり、大口取引先の一つが自動車業界である。購買量が比較的安定しており、いったん取引の流れを押さえれば継続的な販売を続けることができる。大抵の鉄鋼商社は自動車用鋼材で一つの本部を構えるほどで、その取引量の多さを物語っている。
2.自動車用鋼材を扱う商社の役割は幅広い。ジャスト・イン・タイムの納品を行う厳しい物流管理、海外を含めた供給ネットワーク、そして鋼板や鋼線の加工といった機能を発揮している。以前、鉄鋼商社の事業投資で代表格だったコイルセンタービジネスが厳しかったが、今なお成り立っているのは自動車向け取引量の多さがコイルセンターを支えているからである。
3.鉄鋼商社の柱と呼べる自動車ビジネスも、100年に1度の自動車業界の大変革である.電気自動車〔EV)が普及すれば、鋼材を使ってきた自動車メーカーのサプライチェーンが大きく変わる。
4.自動車メーカーは車体を軽量化するため、鋼材からアルミニウムやCFRPなどの他素材の利用を模索している。新日鉄住金やJFEホールディングスなどの鉄鋼大手はハイテンと呼ばれる高張力鋼板の改良を進めていくことで代替を阻止したい考えだが、今と比べ鉄が使われる比率は低下していく。
5.EVでは走行距離を伸ばすため、こうした軽量化二―ズが一段と強まる。またEVは車両の設計がシンプルで、使われる部品の点数が減るのは、鋼線や特殊鋼が使われてきたので、これを取り扱ってきた鉄鋼商社は仕事が消失する。
6.将来の変化に備え、鉄鋼商社はEV向けビジネスに本腰を入れ始め、1月には伊藤忠丸紅鉄鋼がEV戦略室を新設。4月には、三菱商事系列のメタルワンもEV維進室を設ける。鋼材使用量が減ると見込まれるEVだが、鉄鋼商社にも新たなチャンスはある。代表的な例が、EVの駆動用モーターで使われる電磁鋼板である。電磁鋼板は磁気を通しやすい特殊な鋼材で、EVのモーターには不可欠な部材とされる。
7.今後、EVの生産台数が増えれば、電磁鋼板の使用量も劇的に増加する。電磁鋼板でも商社には加工機能が求められ、鍵を握るのが金型の技術である。伊藤忠丸紅鉄鋼の場合、モーターコアの大手メーカー、黒田精工の大株主、欧州企業とも組み、グローバルなサプライチェーンを構築している。
8.EVに使われる金属で商機となるのがバッテリー材科である。リチウムやコバルト、そしてこれまではステンレス原料が主な用途だったニッケルである。これに触手を仲ばす鉄鋼メーカーも出始め、韓国鉄鋼最大手のボスコは2月末、子会社を通じ豪州のビルバラ・ミネラルズへ7960万豪ドルを出資し4・75%の株と年間8万トンのリチウム権益を取得した。
9.こうした非鉄金属は伊藤忠商事や丸紅で取り扱っているが、これからは鋼材との線引きが曖昧になってくる。いずれ鉄鋼商社が金属商社となる日が来るかもしれない。

yuji5327 at 06:57 

2018年04月16日

アリババは、「スーパー+倉庫」と説明するのは、店頭で購人する店舗としての役割と、ネットスーパーの配送の拠点である倉庫の役割である。


「神谷渉(玉川大学准教授)著:アリババ対テンセント・京東ネット企業が実店舗争奪合戦、エコノミスト、2018・3・20」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.中国の電子商取引(EC)で圧倒的な存在感を示す最大手の阿里巴巴〔アリババ)集団が2月、家具販売大手の居然之家に約900億円を出資して15%の株式を取得すると発表した。アリババは、2014年の百貨店「銀泰商業」への出資を皮切りに、さまざまなリアル小売業への出資を拡大させている。特に咋年、大潤発、オーシャンなどの総合スーパーを展開するサンアートリテールグループへ出資し、第2位株主となったことは大きな衝撃を与えた。
2.同様に、EC2位の京東集団〔JDドットコム)、ネット企業のテンセントも資本参加を通じた小売業との連携を加速させている。アリババに対抗するため、京東と、筆頭株主のテンセントは連携を深めている。テンセントは17年から京東の資本提携小売業にも直接出資を開始している。
3、現在ではアリババとテンセント・京東連合が対決する様相となっている。ネット企業と実店舗の協業は、日本では18年に入ってようやく楽天と西友(ウオルマート)の提携やソフトバンク・ヤフー陣営とイオンの提携などが始まったが、中国では1年以上前から本格的に動き出している。中国では12年ごろからECの急速な拡大により、実店舗を展開する小売業が淘汰されてしまうという議論が盛んだった。危機感を持った小売業は、ネットとリアルの連携によって対抗しようと試みた。中国では、このネットとリアルの連携を示す用語として、O2O(Online to Offline)が普及した。
4.中国でも、O2Oが叫ばれた初期には、小売業が主導してのネット販売の展開やスマートフォンアプリ提供などの取り組みが行われていたが、多くはうまくいかなかった。しかし、ここ数年でO2Oは新たな展開を迎えており、再び脚光を浴びている。最近の中国におけるO2O の特徴は、ネット企業が主導していること、そして資本提携によるネットとリアルの連携が加速している点である。背景には、15年ごろからネット販売の伸び率が鈍化したことがある。ネット企業の成長には、モノを購人する場として依然として大きな割合を占める実店舗の顧客を取り込んでいくことが不可欠となっていった。
5.転換点になったのが、アリババのジャック・マー会長による「新小売」のコンセプトの提唱である。「新小売」は、情報を基盤としてオンラインとオフラインと物流を融合させるという考え方であり、従来のO2O の考え方を発展させたものである。O2Oの注目事例としては、アリババが運営しているヘマスーパーという生鮮スーパーがある。
6.アリババの提唱する「新小売」を体現する店舗として、店舗数を30以上に拡大している。注目点は、3km以内の商圏には、スマホアプリ経由でネット注文すれば、30分以内に自宅までバイクで宅配する。30分での配送を実現するために、IT技術を駆使してルート最適化やピッキングの人員配置などの運営効率化を図っている。出店の初期段階では、実店舗とネット注文による宅配での売り上げは半々くらいだった。しかし、半年もするとネット注文による宅配が7割を占めるまでになった。利便性を武器にリアルからネットへの顧客誘導に成功している。
7.アリババは、「スーパー+倉庫」と説明するのは、店頭で購人する店舗としての役割と、ネットスーパーの配送の拠点である倉庫の役割である。他にもさまざまな技術が使われている。店舗の品ぞろえはアリババのデータ分析により、5000〜6000程度の最適な商品数に絞り込まれている。顧客はスマホアプリで店頭の二次元コードをスキャンすることで、すべての商品情報、競合店との価格比較をすることができる。
8.このスーパーの課題は、生鮮食品のやや乱雑な取り扱いなどオペレーションが追い付いていないこと、自動レジが壊れていたという口コミも散見されること。しかし、収益性の高いネット関連事業で稼いだ資金を投入して、このような未来型の取組みを推進することができるのは従来型の小売業では不可能なことである。


yuji5327 at 06:43 

2018年04月15日

次世代自動車産業の戦いで、アリババやテンセントも独自の動きをしている。中国最大のライドシェア会社も完全自動運転車を最終目標としている。

「野口悠紀雄著:新しい情報技術と情報の非対称性の克服、
週刊ダイヤモンド、2018/03/03」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1. 市場取引は、社会的に望ましい。その前提は、取引される財やサービスに関する情報が完全に提供されている必要がある。現実には、この条件は満たされていない。商品の品質が購入者に分からないことが多い。中古品、骨董品、美術品、工芸品には、偽物が横行し、偽ブランド品もある。建物についても、マンシヨンの耐震偽装の問題があった。あるいは、神戸製鋼所の品質データ偽装や日産自動車の検査不正問題も発生した。サービスについても、タクシー事業を自由に認めると、悪質な運転手が増えるかもしれない。そうした運転手がいても、乗客は事前に分からない。
2.同じことは、旅館やホテルについてもいえる。自由にすれば、衛生や防災に十分な対策を講じない宿泊施設が増えるかもしれない。その結果、提供される財やサービスの質が低下する。品質の悪い商品やサービスを提供する業者の方が利益を上げるので、そうした業者が増え、財やサービスの質はさらに低下する。
3.以上は、経済学で「情報の非対称性」といわれる問題である。財やサービスの供給者は品質をよく知っていても、利用者には十.分な情報が提供されていない。前近代的な地域コミュニティでは、こうした問題は少なかった。コミュニティの構成員が互いをよく知っているので、悪徳商法をしにくい。情報の非対称性は、個人の顔が見えない市民社会・大衆社会の特性でもある。
4.以上の事態に対処するための対策は、第1は、品質等について、一定の基準を自主規制や公的な規制で設けることだが、それが守られるかどうかは分からない。マンションの杭打ち状況などを一般の住宅購入者がチェックするのは難しい。チェックが技術的に可能でも、消費者が利用の際にそれを行うのは煩わしい。
5.第2の方法は、政府による参入規制がなされる。悪質な業者を排除するために、一定の資格を満たしている業者だけに免許や許可を与えて、営業を認める。金融業やタクシー業、旅館業などさまざまな業種において、参入規制が行われている。
6.第3の方法は、品質を推測できる指標に頼る。例えば、名の知れた大企業なら、提供する財やサービスの質を信頼できると多くの人が考えている。この場合には、企業名がシグナルになっている。社会がフラット化しない大きな理由は、大企業が信頼を獲得しやすいことである。零細企業や個人企業は、質の高い商品やサービスを提供しても、なかなか消費者に評価してもらえない。個人の評価についても、学歴が能力のシグナルとなる。この評価は、レッテル貼りである。
7.第4の方法は、契約を長期化すること。取引柑手を頻繁に変えると相手を評価できないが、長年の付き合いなら、相手のことはよく分かる。長期雇用、長期契約が求められるのは、取引相手を簡単には信用できないからである。シェアリングが難しいのも、短期間の使用では、品質が悪いものが提供される危険があるからである。だから人々は、十分に点検した上で購入し、所有する。
8.第5の方法は、市場取引に頼るのではなく、組織内で取引を行うことである。これは、長期契約を極限まで進めた形態である。情報の非対称性が組織の有利性をもたらしている。
9.情報技術の進歩によって、以上で述べた問題に対処できるようになった。第1は、ブロックチェーンによる商品履歴の管理である。ダイヤモンドについては、エバーレッジヤーというサービスが提供されている。中国では、食料品の履歴をブロックチェーンで管理する試みがなされている。
10.日本でも、自動車の中古部品をブロックチェーンによって管理することが始まっている。ブロックチェーンに記録されている情報は正しいと考えてよいため、これによって原産地や流通経路、収穫日時や製造日時が分かることになり、個々の商品についての履歴が明らかになる。こうしたサービスが利用できれば、中古品の流通が進む可能性がある。
11.美術品、工芸品などについても、ブロックチェーンによって真正性の証明ができる。新興国等では土地の登記制度が十分に整備されていないために詐欺が横行しやすいが、プロックチェーンで土地情報を管理することによって、そうした事態を防げる。個人情報をブロックチェーンで管理する試みも始められている。プライバシーは確保しつつ、医療情報や就職の際に必要な個人情報の記録・参照が可能になる。
12.サービスについては、シェアリングエコノミーのサービスが登場した。例えば、タクシー運転手がどんな人かを乗車前に知ることはこれまでは難しかったが、Uberのサービスで個々の運転手を評価できるようになれば、後の乗客はそれを参照できる。Airbubno
サービスでは、宿泊施設について、同様のことができる。政府が規制を行う必要がなくなる。
13.ブロックチェーンを用いてシェアリングエコノミーが運営されるようになると、仲介事業者が必要なくなり、個人と個人が直接に結び付くことが可能になる。より広範にシェアリングエコノミーが可能になり、所有と使用の分離が進む。資本の利用効率が高まる。
情報が提供されれば、規制の必要がなくなる。また、市場の有利性が高まることになる。
14.労働市場においても、大きな変化が生じる。個人がシグナルだけで評価されることが守なるだろう。1回だけの入学試験や入社試験で評価されるのではなく、多様な履歴が参照されることになる。それによって、労働市場の流動化が進むだろう。
古いコミュニティには縛られず、しかも相互に信頼できる社会。それによって効率性と公平性が確保される社会。そうした社会の実現が期待される。

2018年4月14日(土)晴、22.6℃
「田中道昭(立教大学ビジネススクール教授)著:自動運転のアポロ計画、バイドゥ主導で世界覇権へ、エコノミスト、2018.3.20」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.人工知能(AI)が運転手となる自動運転の世界において、「中国AIの.王者」とも呼ばれている同国検索最大手企業の百度が、世界最大最強の自動運転基盤(プラットフォーム)を構築しょうとしている。その名は「アポロ計画」で、米航空宇宙局(NASA)が取り組んだ有人月面着陸計画と同名である。中国政府から「AI×自動運転」の国策事業としての委託も受け、勢力を急速に拡大中である。
2.バイドゥは「中国のグーグルとも呼ばれ,「パイドゥ検索」、パイドゥ地図」「バイドゥ翻訳」などを相次いで事業化し、アリババグループ、テンセントとともに、中国3大IT企業「BAT」の一角を占めてきた。ただ、同社は近年スマートフォンへの対応に出遅れ、2社からは売リ上げ・時価総額ともに後塵を拝してきた。そのバイドゥが起死回生を期して勝負をかけているのが自動運転領域も含めたAI事業である。
3.バイドゥは、BATの他2社に先行して14年に米シリコンバレーにAI研究所を設軋した。短期間で10万人のAI開発者を育成することを宣言し、実際に同社AI事業のプラットフトフォームである「百度大脳」などを推進してきている。
4.17年1月には米マイクロソフト取締役だった陸奇氏を招へい、バイドゥ全体の最高執行責任者及びバイドゥ自動運転ユニット責任若に任命している。陸奇氏は今年1月に米・ラスベガスで闊催された世界最大級の家電見本市で、「中国やバイドゥのAI技術はすでに米国勢のレベルを凌駕している」と強気の発言を行い、話題を呼んだ。
5.アポロ計画が世界最大・最強の自動運転プラットフォームになる可能性があると評価されているのは、参加している企業数とその顔ぶれからである。当初から中国の主要完成車メーカーはもとより、独ダイムラー、米フォードなどの完成車メーカー、独ボッシユやコンチネンタルなどのメガサプライヤー、さらには自動運転の心臓部を握るとされるAI用半導体メーカーとしての米エヌビディアやインテルなど50社が名を連ねた。
6.発足から半年で参加社は中国内外の約1700社に膨れ上がった。一方で、日本勢はパイオニア等に参加が限られ、「中米独連合」という政治色の強いプラットフォームになるとも目されている。内容について目を見張るのが、自動運転事業における横軸の事業領域〔認知・判断・制御〕の各段階で、縦軸の事業領域〔車両レファレンス・ハード・ソフト・クラウド〕の各層の技術を集結して開発を進めていることである。
7.車両レファレンスとは、バイドゥ独特の言い回しで、車両の動力系統を.電子制御する階層を指す。重要部分の一例は、次世代自動車産業の車載OS〔基.本ソフト〕になる車載コンビューティングユニットでは、バイドゥ×米エヌビディア×独ZFの3社提携による開発推進がCESで発表された。まさに自動運帳技術の心臓部における最強の「AI企業×A1用半導体×メガサブライヤー」の組み合わせの「中米独連合」の布陣である。
8.パイドゥとグーグルは、検索や翻訳という点で事業構造が類似しているが、自動運転での類似点は、グーグルのサンダー・ピチャイ最高経営責任者〔CEO〕は「モバイルファーストからAIファーストへのシフト」を宣言するのとともに、2016年12月には、研究開発子会社「グーグルX」の開発段階を終了させ、別の子会社「ウェイモ」で自動運転車の事業化に向けて再起動すると発表した。バイドゥが自動運転の技術開発に本腰を入れた時機とほぼ同じだ。
9.三次元地図に強い。三次元地図は、完全自動運転のデジタルインフラと称される。この分野で世界的に優れているのが、米国ではグーグル、欧州ではHERE、中国ではバイドゥである。線が消えていることも少なくない一般道路で完全自動運転を実現するためには、カメラからの画像データだけでは不十分とされる。三次元地図では、周囲の障害物の形状を把握するセンシング部品「ライダー」からのリアルタイム情報と、車の現在位慣を照合し、クラウド上で車線や道路標識を忠実に再現する。
10.バイドゥは、「バイドゥ地図」での知見、データビジネスで蓄積したビッグデータ、自動運転での知見をかけあわせて、三次元地図においても覇権を握ろうと企んでいる。バイドゥのアポロ計画が短期聞のうちに急速にその勢力を拡大しているのは、中国政府の強力な支援も大きい。国家産業政策における「自動車産業×AI産業」育成政策を体現したものの一つが、バイドゥが国家から委託されている「AI×自動運転」事業である。
11.次世代自動卓産業の覇権をめぐる戦いにおいては、アリババやテンセントも独自の動きを鮮明にしている。中国最大のライドシェア会社であるディディチューシンも完全自動運転車を最終目標の一つに考えている。こうした厳しい競争環境が、バイドゥに競争力を付けている。
12.「中米独」を中心とする強力なメンバー、中国政府の強力な支援、自社での「ビッグデータ×Al」分野での強み、そして中国内での熾烈な競争環境から生み出される競争力の強みがある。自動運転では、レベル2〔減加速、ハンドル操作の両方を支援)から始めて徐々にレベル4(一定の条件下ですべての操作を自動で行い、ドライバーは関与しない}に上げようとしている臼本に対して、最初からレベル4に挑んできた海外勢の間で明暗が分かれつつある。グローバルな次世代自動車産業における最大最強の自動動運転プラットフォーム候補として、今後もアポロ計画から目が離せない。



yuji5327 at 06:47 

2018年04月14日

バイドゥは中国のグーグルとも呼ばれ、パイドゥ検索などを事業化し、アリババ、テンセントとともに、中国3大IT企業の一角を占めてきた。

「田中道昭(立教大学ビジネススクール教授)著:自動運転のアポロ計画、バイドゥ主導で世界覇権へ、エコノミスト、2018.3.20」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。

1.人工知能(AI)が運転手となる自動運転の世界において、「中国AIの王者」とも呼ばれている同国検索最大手企業の百度が、世界最大最強の自動運転基盤(プラットフォーム)を構築しょうとしている。その名は「アポロ計画」で、米航空宇宙局(NASA)が取り組んだ有人月面着陸計画と同名である。中国政府から「AI×自動運転」の国策事業としての委託も受け、勢力を急速に拡大中である。
2.バイドゥは「中国のグーグルとも呼ばれ,「パイドゥ検索」、パイドゥ地図」「バイドゥ翻訳」などを相次いで事業化し、アリババグループ、テンセントとともに、中国3大IT企業「BAT」の一角を占めてきた。ただ、同社は近年スマートフォンへの対応に出遅れ、2社からは売リ上げ・時価総額ともに後塵を拝してきた。そのバイドゥが起死回生を期して勝負をかけているのが自動運転領域も含めたAI事業である。
3.バイドゥは、BATの他2社に先行して14年に米シリコンバレーにAI研究所を設軋した。短期間で10万人のAI開発者を育成することを宣言し、実際に同社AI事業のプラットフトフォームである「百度大脳」などを推進してきている。
4.17年1月には米マイクロソフト取締役だった陸奇氏を招へい、バイドゥ全体の最高執行責任者及びバイドゥ自動運転ユニット責任若に任命している。陸奇氏は今年1月に米・ラスベガスで闊催された世界最大級の家電見本市で、「中国やバイドゥのAI技術はすでに米国勢のレベルを凌駕している」と強気の発言を行い、話題を呼んだ。
5.アポロ計画が世界最大・最強の自動運転プラットフォームになる可能性があると評価されているのは、参加している企業数とその顔ぶれからである。当初から中国の主要完成車メーカーはもとより、独ダイムラー、米フォードなどの完成車メーカー、独ボッシユやコンチネンタルなどのメガサプライヤー、さらには自動運転の心臓部を握るとされるAI用半導体メーカーとしての米エヌビディアやインテルなど50社が名を連ねた。
6.発足から半年で参加社は中国内外の約1700社に膨れ上がった。一方で、日本勢はパイオニア等に参加が限られ、「中米独連合」という政治色の強いプラットフォームになるとも目されている。内容について目を見張るのが、自動運転事業における横軸の事業領域〔認知・判断・制御〕の各段階で、縦軸の事業領域〔車両レファレンス・ハード・ソフト・クラウド〕の各層の技術を集結して開発を進めていることである。
7.車両レファレンスとは、バイドゥ独特の言い回しで、車両の動力系統を.電子制御する階層を指す。重要部分の一例は、次世代自動車産業の車載OS〔基.本ソフト〕になる車載コンビューティングユニットでは、バイドゥ×米エヌビディア×独ZFの3社提携による開発推進がCESで発表された。まさに自動運帳技術の心臓部における最強の「AI企業×A1用半導体×メガサブライヤー」の組み合わせの「中米独連合」の布陣である。
8.パイドゥとグーグルは、検索や翻訳という点で事業構造が類似しているが、自動運転での類似点は、グーグルのサンダー・ピチャイ最高経営責任者〔CEO〕は「モバイルファーストからAIファーストへのシフト」を宣言するのとともに、2016年12月には、研究開発子会社「グーグルX」の開発段階を終了させ、別の子会社「ウェイモ」で自動運転車の事業化に向けて再起動すると発表した。バイドゥが自動運転の技術開発に本腰を入れた時機とほぼ同じだ。
9.三次元地図に強い。三次元地図は、完全自動運転のデジタルインフラと称される。この分野で世界的に優れているのが、米国ではグーグル、欧州ではHERE、中国ではバイドゥである。線が消えていることも少なくない一般道路で完全自動運転を実現するためには、カメラからの画像データだけでは不十分とされる。三次元地図では、周囲の障害物の形状を把握するセンシング部品「ライダー」からのリアルタイム情報と、車の現在位慣を照合し、クラウド上で車線や道路標識を忠実に再現する。
10.バイドゥは、「バイドゥ地図」での知見、データビジネスで蓄積したビッグデータ、自動運転での知見をかけあわせて、三次元地図においても覇権を握ろうと企んでいる。バイドゥのアポロ計画が短期聞のうちに急速にその勢力を拡大しているのは、中国政府の強力な支援も大きい。国家産業政策における「自動車産業×AI産業」育成政策を体現したものの一つが、バイドゥが国家から委託されている「AI×自動運転」事業である。
11.次世代自動卓産業の覇権をめぐる戦いにおいては、アリババやテンセントも独自の動きを鮮明にしている。中国最大のライドシェア会社であるディディチューシンも完全自動運転車を最終目標の一つに考えている。こうした厳しい競争環境が、バイドゥに競争力を付けている。
12.「中米独」を中心とする強力なメンバー、中国政府の強力な支援、自社での「ビッグデータ×Al」分野での強み、そして中国内での熾烈な競争環境から生み出される競争力の強みがある。自動運転では、レベル2〔減加速、ハンドル操作の両方を支援)から始めて徐々にレベル4(一定の条件下ですべての操作を自動で行い、ドライバーは関与しない}に上げようとしている臼本に対して、最初からレベル4に挑んできた海外勢の間で明暗が分かれつつある。グローバルな次世代自動車産業における最大最強の自動動運転プラットフォーム候補として、今後もアポロ計画から目が離せない。

yuji5327 at 06:54 

2018年04月13日

ディーブラーニングの問題点は、モデルあるいは論理が、人間に追跡できないことである。そこでは、処理過程がブラックボックス化している。

「野口悠紀雄著:ビッグデータの利用で統計学は不要になる?、
週刊ダイヤモンド、2018/03/10/」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.スマートフォン利用の広がりなどによって、これまでは利用できなかったデータが
利用できるようになってきた。これらはビッグデータと呼ばれる。これに伴って、データを扱う方法論や考え方が変わってきた。これは、単なる手法の変化ではなく、本質的な変化だと考えられる。
2.データを扱うのに、これまでは主として統計学の手法が用いられてきた。対象となる母集団は、普通は非常に大きい。例えば、日本人全て、あるいは日本の企業全て。これらを全て調べあげることは、コストの面で不可能に近い。そこでサンプルを取る。
3.人間の認知能力には限界があって、大量の数をそのまま理解することはできない。そこで、サンプルの性質を幾つかの数(平均値、分散等〕に要約する。そして仮説の検定や回帰分析を行う。こうした方法で、母果団のパラメータをかなり正確に推測することができる。例えば、「大数の法則」によって、サンプルの平均値は、一定の条件の下で母集団の期待値に近づくことが保証されている。
4.以上のような方法で世界の状況を把握できると考えられてきた。われわれが把握していると思っている世界は、実は、世界そのものでなく、そのサンプルなのである。例えば、テレビの視聴率は、サンプル調査で得られた数字だ。多くの経済指標は、政府が行うサンプル調査で得られたものだ。世論はアンケート調査の結果である。しかも、通常は、サンプルで集められたデータを全て見るのではなく、その総和値や平均値しか見ていない。
ところで、こうした方法が良いかどうかは、場合による。
5.視聴率を調べるのが目的なら良い。しかも、コストを掛けてサンプルサイズを大きくしても、効果はあまりない。しかし、保険では問題になり得る。従来の保険では、対象集団について平均値、分散などの統計量を算出して、それに応じて均一の保険料を設定していたが、個人の詳細データを得られるようになれば、個々人について個別の保険料を設定できるようになる。
6.コンピューターは、ディープラーニングという手法で、ビッグデータを扱うことができる。この方法では、コンピューターに大量のデータを与え、結果が現実とうまく合うようにモデルのパラメータを決める。こうなると、統計学的手法に頼る必要はなくなる。
「データの利用が増えるにつれて統計学の重要性が高まる」と一般にいわれるが、実は逆で、ディープラーニングとビッグデータの時代においては、統計学は必要なくなるか、少なくとも、その必要性は低下する。
7、ビッグデータは、量が膨大なだけでなく、性質も従来のデータとは違う。これまでデータ分析で使われてきたのは、「構造化データ」と呼ばれるもので、CSVファイルやExcelファイルのように、「列」と「行」の概念があるデータである。
8.構造化データは簡単に分析できる。なぜなら、「どこに何があるか」が列で決められており、しかもデータは数字で表されているため、演算、比較などが容易にできる。ところが、ビッグデータの中には、これとは性質の違うものが含まれ、「非構造化データ」と呼ばれる。
9.非構造化データは数字で表されているが、統一的な列と行で整理できていない。さらに、データが数字で表されていないものもある。数値で表されない非構造化データには、さまざまなものがある。まず、新聞・雑圷認等の活字データや図、写真データ、ラジオやテレビ放送等の音声データや映像データがある。これらは以前から存在していたが、データ分析にはあまり用いられていなかった。
10.これらに加えて、最近では、電子メールやSNSなどの文字データ、検索履歴、GPSから送信されるデータなどが利用可能になってきた。
こうなると、構造化データだけでなく、非構造化データの分析と利用が非常に重要な課題になってくる。
11.統計的な処理においては、データを数値で表す必要がある。従って、新しいタイプのデータは、そのままでは統計学で扱うことができない。ディープラーニングの強みは、数値化を必要としないことである。
12.こうしたデータの利用は、すでに始まっている。投資信託では、これまでは株価や財務データのような構造化データしか利用ていなかったが、最近では、非構造化データを人工知能(AI)を利用して分析するようになってきた。例えば、あるファンドは、小売店の駐車場の駐車状況などの非構造化データを、AIを用いて分析している。
13.学問の手法で、従来の方法の基本は、「現実を抽象化し単純化した世界を想定し、そこでの法則を理論化する」というものであった。例えば、物体の運動を調べるのに、摩擦がない真空の世界を想定し、そこで成立する運動方程式を導く。その理論を基本として、摩擦などが存在する現実世界に近づける。経済学も、基本的にはこのアプローチを踏襲した。情報が完全に提供されている市場を仮定して理論モデルを作る。それから得られる結論が基本的なものだとした。
14.こうしたアプローチが正.しいかどうか、アプリオリには分からない。物理学の場合は、ガリレオとニュートンによって確立されたこの方法論が、大成功を収めた。しかし、その方法論を社会科学に適用することに対しては、従来から批判がある。行動経済学の考えはその代表である。ところが、上で見たように大量のデータが利用可能になれば、「理論がなくとも、結論だけ分かればよい」という方法を取ることも可能である。それがディープラーニングの手法である。
15.空気中の物体落下の実験データをディープラーニングさせたら、「密度が高い物体ほど速く落ちる」という結論を導くだろう。その結論は、空気中の物体の運動法則としては、間違ったものではない。ただし、ガリレオ、ニュートン以来の自然理解の方法とは、著しく異なるものである。
16.ディーブラーニングの問題点は、モデルあるいは論理が、人間に追跡できないことである。そこでは、処理過程がブラックボックス化している。これまでのコンピュータープログラムなら、論理構造が分かるが、ディーブラーニングの場合には、コンピューターがビッグデータからどのように学習しているのかを、人間が知ることはできない。
16.この手法は問題がある。例えば、「プロファイリング」という技術がある。これは、AIがビッグデータを分析して個人の人物像を描き出す技術があるが、AIがどのような過程でプロファイリングをしたのか、その判断のプロセスが外から分からない。このような手法が広く使われる世界に、危惧の念を覚える人は多い。


yuji5327 at 06:33 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
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・技術翻訳、特許調査
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有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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