ものづくり

2023年12月08日

サムコ装置別売上高は、CVD〔化学気相成長〕装置が半導体レーザー向け、電子部品分野の高周波デバイス向けを中心に18・9%増、エッチング装置が34・8%増、洗浄装置が65・1%増と拡大。

週刊 東洋経済 2023年 10/21号 [雑誌]
週刊 東洋経済 2023年 10/21号 [雑誌]「古庄英一(本誌)著:成長企業 サムコ 化合物半導体向け軸に製造装置で利益成長中 トップ自ら世界中を飛び回り、受注積み上げを期す。週刊東洋経済 2023.12.2」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「中計の今期目標は下方修正したが、来期目標は変えずに達成を目指す」。化合物半導体向けが軸の電子部品製造装置メーカー、サムコの2024年7月期は利益成長に急ブレーキがかかるも、川邊史社長は、一過性にとどまるとの強気な姿勢を示す。同社が9月に発表した24年7月期計画は、売上高85億円〔前期比8・5%増)、営業利益19・9億円(同7・0%増)。売上高と営業利益の仲び率は1桁台にとどまる。中期経営計画の今期数値目標と比較すると売上高7億円、営業利益0.6億円をそれぞれ減額させた水準である。
2.コロナ禍による営業制約の影響を払拭し、前々期と前期の2期連続で30%台後半の営業増益率を達成した勢いに比べれば物足りない。川邊社長は「足元の世界経済、とりわけ中国市場の不透明な状況が、牽引役のオプトエレクトロニクスと主力市場の電子部品分野の売り上げに影響している」と説明する。ただ「この影響は今期中には解消するとみている」という。
3.サムコは1979年、京都市伏見区にサムコインターナショナル研究所として設立された。最先端デバイス向け薄膜形成・加工が強みで、創業者の辻理会長の人脈による産学連構が得意である。国内だけでなく米・欧でも大学などと共同研究開発体制を構築する。従来は研究開発向けが中心だったが、生産向けに比重を移し、安定した業績拡大が続く。
4.前23年7月期の装置別売上高は、CVD〔化学気相成長〕装置が半導体レーザー向け、電子部品分野の高周波デバイス向けを中心に12・9億円〔前期比18・9%増〕、エッチング装置が各種センサー向けなど幅広い用途に販売し39.5億円〔同34・8%増〕、洗浄装置が8・3億円(同65・1%増)と、順調に拡大。既存装置の部品販売など部品・メンテナンスのみが17・4億円(同6・9%減)とやや抑えられた。
5.中計最終年度の25年7月期の目標は、売上高110億円、営業利益26億円。今期が期初計画どおりの数値で着地すれば、来期は売上高で今期比29・4%増、営業利益で同30・6%増の急成長を遂げる必要がある。川邊社長は、この計画達成を目指すと宣言する。
6.実現には過去最高水準の54・1億円〔23年7月末)に達した受注残を消化し、同時に来期の売上高計上に間に合うように好採算の新規受注案件を積み上げる必要がある。半年前ぐらいの受注実績が売り上げになる、というリードタイムを念頭に置くと、向こう1年間を見据えた、受注ペース加速が求められる。
7.四半期ごとの受注推移を見ると、受注高は22年5〜7月の27憶円をピークに減り続け、23年2-4月が18・5億円、同5〜7月が18・4億円と下げ止まった状況にある。設備投資が活発な次世代パワーデバイス用SiCなどの化合物半導体向け製造装置や関連の材料部品、メンテナンスが主力なので、シリコン系の半導体製造装置メーカーと比べると受注の未達幅は小さい。それでも、スマホ関連部品を納めている得意先が発注を手控える動きがあつたので響いた、と説明する。
8.サムコは、四半期受注高20億円超を早急に実現すべく、展示会へ積極的に出展しながら、コロナ禍で出遅れた販売先の開拓で、自分を含め海外を飛び回っている、という。その主軸となる製品が、独自のトルネードICP(高密度プラズマ)を利用するエッチング装置である。通常より高密度のプラズマを安定して生成し、高速で高精度の微細加工に適している。スマホなどの電子部品の高周波フィルターだけでなく、各種の光レーザーなどオプトエレクトロニクス分野でも用途が見込まれる、という。
9.加えて、川邊社長が、核となる新製品なので、大々的に販売活動を始める、と力を込めるのがエッチング工程向けの本格量産装置「クラスターH」である。初号機を国内電子部品メーカーに納人、高周波デバイス向けや一部のパワーデバイス関連で引き合いがある。この大型新製品を多数、早期成約に持ち込めば、来期の急成長への道が開かれる。さらに、デバイスメーカー以外に、医療機器を開発するメーカー、大学、公的機関の研究室をターゲットとする独自品の拡販にも力を入れる。
10.一例が、水蒸気を用いる環境にやさしい洗浄装置「AquaPlasma」である。「医療機器を取り扱う商社や専門メーカーの力も借りて医療関連の先生へ商談を行って、前期も主要な大学などに納めた。技術承認が厳しい機器メーカー向けは数が少ないので、研究開発に収り組んで販路を広げる、としており、業績貢献が期待される。
11.サムコは、高い利益成長の維持へ、好不況の波が小さいヘルスケア分野を重点的に強化していく方針である。

yuji5327 at 06:54 

2022年12月07日

海底ケーブル業界は建設ラッシユに沸いている。米調査会社テレジオグラフィーによれば、23年の市場規模は約48億ドルと10年以隆で最大。24年も大型事業がめじろ押しである。

大阪・京都・神戸(週刊ダイヤモンド 2022年10/22号)【電子書籍】[ ダイヤモンド社 ]
大阪・京都・神戸(週刊ダイヤモンド 2022年10/22号)【電子書籍】[ ダイヤモンド社 ]「大矢博之(ダイヤモンド編集部)著:日本経済の命運決める海底ケーブルケーブル大戦 太平洋横断海底ケーブルに620億円 NTTと三井物産の「同床異夢」 日本電信電話と三井物産が約620億円をかけて、太平洋に海底ケーブルを新設する。しかし、両社の思惑は異なりそうだ 「オールジヤバン」で挑む海底ケーブルの舞台裏に迫る。 週刊ダイアモンド 2022.12.03」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「三井物産とは相思相愛だった」と語るのはNTTグループで25年近く海底ケープル事業に携わる、セレンジュノネットワーク(セレン)の佐藤吉雄社長である。日本電信電話(NTT〕と、三井物産が、日米問をつなぐ過去最大の海底ケーブル「JUNO」建設で手を組んだ。海底ケーブルを建設・運営する新会社セレンを7月に共同出資して設立。出資比率はNTTグループと三井物産がそれぞれ約37・5%、JA三井リースが約25%である。
2.日本側は千葉県と三重県、米国側はカリフォルニア州を結ぶJUNOの総延長距離は約1万kmで、通信容最は毎秒約350兆ビットと日米間で過去最大となる。総事業費は約4・5億ドル〔約620億円)で、2024年末に完成予定である。また、海底ケープルシステムの供給はNECが受注した。
3.海底ケーブル業界は建設ラッシユに沸いている。米調査会社テレジオグラフィーによれば、23年の市場規模〔建設総額)は約48億ドルと10年以隆で最大となる見込みで、24年も大型事業がめじろ押しである。
4.近年の建設ラッシュをけん引するのはグーグルやメタ(旧フェイスブック)などの米IT大手である。しかし、JUNOは「オールジャパン」にこだわった。NTTが海底ケープル事業で大手商社と手を組むのは初めてである。NTTは20年に完成した日米間海底ケーブル「JUPITER」にも参加している。
5.「JUPITERの通信容量の売れ行きが好調で、サービス開始後すぐに8割が埋まった。これはいかんぞ、と次の計画を考え始めた」と佐藤氏は振り返る。同時にNTTグループが保有する、1999年に完成した太平洋横断海底ケープル「PCI-1」に、"設計寿命〃である25年が近づいていた。
6.太平洋を横断する海底ケーブルは14本。このうち6本は2000年前後のITバブル期に建設され、寿命が間近に迫る。また過去のケーブルは通信容量も少ない。テレジオグラフィーによれば、21年の太平洋間の国際通信量は毎秒約200兆ビットで、17年と比べて約4倍に増加した。年聞30〜40%の成長が続き、今後もデジタル化の普及などにより堅調な伸びが見込まれている。
7.新たな海底ケーブルの建設を目指したNTTグループは、「商社に限らず銀行やリースス会社などに声を掛けた」。さまざまな企業との協議を進める中で、「デジタルインフラに力を入れたい」と乗ってきたのが三井物産だった。「三井物産は出資や投資の対象ではなく、事業として考えたいというスタンスだったので、意気投合した。投資したいというスタンスならば、響かなかった」。
8.NTTと三井物産は21年春から本格的な検討を開始。他に株主として参加する企業がいないか打診したところ、JA三井リースが、「融資ではなく事業として参画したい。目いっぱいやらせてくれ」と22年の年明けに応じた。
9.なお、声を掛ける企業として、国内外の通信会社やIT大手は避けた.「NTT単独の色を堅持したかった」からだと佐藤氏は強調する。現在主流の複数企業が参加するコンソーシアム〔共同事業体)は、建設コストを抑えられるものの、「妥協の産物になり、参加者の誰にとってもlOO点満点の海底ケープルにならない」。
10.容量の決定でも、建設コストと容量のどちらを優先するかなど、参加者それぞれの思惑が異なってくる。通信需要の変化に柔軟に対応でき、海底ケーブルの運営もNTTが主導権を握れるよう、今回の組み合わせが決まった。
11.海底ケープルに大手商社が参画することは珍しい。インフラである海底ケーブルは費用が先行し、一度敷設すると長期間の運用とセットである。完成後に不採算だからといって、簡単に抜けてしまう企業と既存プレーヤーは手を組めない。海底ケーブルを手掛けるある大手企業の幹部は、「商社との意見交換を求められ.なぜ興味を持ったのかと聞くと、「GAFAが投資しており、"熱い"ようだからわれわれも投資を検討している」という返事が多い」と言う。
12.別の大手企業の幹部は、「進行中の海底ケーブルの計画に、三井物産も参加しないかと打診したことがあるが、建設途中のケーブルは要らない。新しいケーブルをやりたい、と断られた」という。今回、三井物産が本腰を人れて太平洋横断海底ケーブルに参画した理由について、複数の業界関係著は、「失敗を挽回したいのではないか」という。
13.三井物産は18年、シンガポールとミャンマーをつなぐ全長約2200km海底ケーブル「SIGMAR」の建設に参画し、シンガポールの通信会杜に出資した。ところが、ミャンマーの政情不安で難航中である。当初は20年完成予定としていたが、現在は23年1-3月サービス開始予定とされている。この失敗を挽回するために、三井物産が参加したと業界ではみられている。三井物席の広報は、「デジタルインフラに関する取材には応じていない」とした。
14.一方、三井物産の参加について、業界では別の見方もある。三井物産が同じ三井グループであるトヨタ自動車のために、海底ケープルの確保に動いたのではないか、という見立てである。三井物産は北米でトヨタグループの車の販売や、モビリティサービスの新潮流への対応などを担っている。今後、自動運転時代が到来すれば、交わされるデータ量は膨大なものになる。そのとき、融通が利く大容量の海底ケープルがあればトヨタにとって都合がいい。
15.佐藤氏は、「三井物産はトヨタグループの海外ビジネスのノウハウを蓄積しているので十分に参考にしたい。三井物産はエネルギー分野にも強いため、通信と電力の組み合わせなど、自動運転に限らずデジタルの生活様式の変化へ対応するビジネスでお互いに相乗効果を生んでいきたい」と語る。
16.今回のJUNOの建設はコンソーシアムではなく、セレンという会社を設立する形を取った。NTTに対しても、セレンが保有する海底ケーブルの通信容量をNTTに販売して収益を得る仕組みである。セレンというNTTグループの色を消した名前の法人を設立したことで、KDDIやソフトバンクといった「通信会社も顧客にすることができる」と佐藤氏は言う。
17.一方、セレン設立について、今後、NTTグループの国際海底ケーブル事業を集約する"器"を作る布石ではないかと業界ではみられている。ただし、この計画を進める場合、三井物産の持ち分が高過ぎるので、下げていかないといけない」とNTTグループ幹部は言う。
18.三井物産にしても、NTTグループ全体の国際海底ケーブルに関与できるならば、そう簡単には手放せないビジネスチャンスだろう。トヨタという将来の大口顧客を取り込めるか。過去の海底ケーブルの失態を挽回できるか。相思相愛の太平洋横断ケープルは複数の思惑を乗せて動きだした。


yuji5327 at 07:04 

2021年05月22日

iPhneの製造を担ってきた世界最大の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)がEV製造に向けて動き出した。

週刊東洋経済 2021/5/22号
週刊東洋経済編集部
東洋経済新報社
2021-05-17

「劉彦前劉彦甫(本誌):iPhoneの次は電気自動車 台湾ホンハイが狙う躍進 週刊東洋経済 2021.5.22」は興味深い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. スマートフォンの次は電気自動車(EV〕で飛躍を遂げるのかと思われた。iPhneをはじめ数多くの電子機器の製造を担ってきた世界最大の設計・製造受託サービス企業、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)がEV製造に向けて猛然と動きを加速している。
2.EVはグループの成長ドライバーの1つとなる、と3月30日、ホンハイの劉揚偉董事長は2020年12月期の決算発表を行う電話会見で語った。この電話会見の5日前の3月25日、台湾の中心都市である台北のカルチャースポット、松山文創園区に200社を超えるサプライヤー関係者が集まった。20年10月にホンハイが主導して立ち上げたEV開発プラットフォーム「MIH」に参画する企業を集めた初のサプライヤー集会である。
3.オンラインでも1000社余りのサプライヤー関係者が参加。MIHを率いる鄭顕聡CEOは、高水準、高効率、かつスピーディーな運営体制を整え、プラットフォームのメンバーや自動車業界のパートナーとともに次世代のEVエコシステムを構築する、と宣言した。
4.鄭氏はフォード・モーターの中国子会社副総裁や、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(現ステランティス)の中国現地トップを雁.任し、中国の新興EVメーカー、NIOの共同創業者でもあった。40年以上自動車業界に身を置いた人物がホンハイのEV参入のキーパーソンである。
5.EVへの取り組みが本格的に明らかになったのは20年10月のこと。ホンハイはかねてデジタルヘルスケア、EV、ロボットの3分野を成長柱にすると述べてきたが、同社として初めて開いたテックイベントではEVに焦点を当てて説明を行った。これはコロナ禍でテックイベントの開催期間などに制約があったためだが、同社にとってEVがメインであることを印象づけた。
6.その時点で50台湾ドル台前半だったホンハイの株価は、EV計画の本格的な推進もあり、直近の時価で約40%上昇している。
7.パートナー企業も急増している。MIH参画申請の受け付けを始めたのは20年11月5日で、21年3月29日時点で1300社超。MIHの技術トップを務める魏国章氏は、4月27日に台湾の中華民国対外貿易発展協会が主催するイベントの会見で、4月中旬までに参加企業は1500社を超えた、と語り、ドイツの自動車部品大手であるボッシュやコンチネンタルなども参加したと明かした。日本からも日本電産や村田製作所など約30社が名を連ねている。
8.3月30日の電話会見で劉董事長は、6月末までに米国もしくはメキシコでのEV生産工場の建設を決定する、と語った。このとき劉董事長は、月間の生産能力が1万台規模であれば必要資金はおよそ10億米ドルになる、との見通しも示した。
9.MIHとそれを主導するホンハイへの期待は高い。日本のある電子部品企業の首脳は、ホンハイはスマホなど電子機器の製造で世界のサプライチェーンの中心に存在する企業で、長年の付き合いがある。そこがEVを造ることは可能だろうし、早い段階からホンハイに協力することでEV市場の成長の恩恵を自社も間違いなく受けられる、と明かしている。
10.ホンハイが本気度を示せば、ハード、ソフトに関わるあらゆる企業が集まってくる。ホンハイは各企業が持つ車載向け事業のノウハウを亨受できる。まさにウィンウィンの関係である。


yuji5327 at 11:19 

2018年10月21日

名刺大のガラケー

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NTTドコモ
名刺サイズの新型携帯電話
カードケータイKY―01L
11月下旬に発売
スマートフォンではなく
ガラケーと呼ばれる従来型の携帯
厚さ約5・3ミリ、
重さ47グラム
世界最薄・最軽量
高機能のスマホと併せ2台目
本体価格は3万2千円
実質の支払額は1万円
縦9・1センチ、横5・5センチ
名刺やクレジットカードに近く
名刺ケースなどに収納
タッチパネルで操作
機能は電話やメッセージ
ウェブサイトの閲覧

yuji5327 at 06:49 

モビリティ事この分野においてトヨタがあまりにも出遅れている状況で、1位と2位が手を組んだと騒ぐほどのインパクトがない。

2018/10/19付の 大前研一 さんの「ニュースの視点」(発行部数 166,140部)「モビリティ事業/独排ガス規制〜トヨタとソフトバンクの提携に見る両社の立場と重要性とは?」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.トヨタ自動車とソフトバンクは4日、新たなモビリティサービスの構築に向けて新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」を共同で設立すると発表した。両者のプラットフォームを連携させ、配車サービスや自動運転技術を使った新事業で協業をするとのことである。
2.日本企業の時価総額1位と2位が提携したとマスコミが騒いでいるが、それほど大きな意味を持つ提携ではない。モビリティ事この分野においてトヨタがあまりにも出遅れている状況で、1位と2位が手を組んだと騒ぐほどのインパクトがないからである。
3.トヨタが出遅れている一方で、ソフトバンクはトヨタと提携しなくても十分にやっていけるだけの様々な仕掛けを作ってきている。ARMの買収などソフトバンクがこれまでに投資してきた実績を考えると、トヨタに限らずどの自動車メーカーと手を組んでも上手くいくはずである。ソフトバンクとしては、トヨタと排他的な提携を結ぶよりもオープンな状況にしておいたほうがいい。
4.トヨタとしては排他的な提携を望むと思うが、今後モビリティ事業がメインになってくるときには、車を持たずにファンドなどを通じて仕掛けの展開に注力してきたソフトバンクのほうがフレキシビリティは高くなる。ソフトバンクの立場から考えれば、トヨタ1社との提携にこだわらずに、今まで構築してきたネットワークを活用するほうが便利である。
5.モビリティサービスの時代を見据えて、ダイムラーやBMWなどはとにかく車を数多くばら撒いて、新車が売れなくても使ってもらえるような状況を構築する動きを見せている。「Car2Go」(ダイムラー)と「DriveNow」(BMW)というカーシェアリングサービスの統合などもこの動きの一貫である。
6.このような時代の流れにおいて、トヨタはようやく4つの販売チャネルの統合を発表したばかりで遅れに遅れている。豊田章男社長は自社の遅れを認識し、トヨタがモビリティカンパニーに変革する必要性を訴えているが、未だに会社としては「FUN TO DRIVE」と言っている段階なのが懸念される。
7.そもそも今回の提携は、トヨタとソフトバンクのいずれからも「本気」が感じられない。新会社を設立するということは、両社とも「本体」同士は関係ないということである。どちらも、会社の総力をあげて取り組むということにはならない。
8.新会社の出資比率を見ると、過半数を超えているソフトバンクが優位に見えるが、本気で取り組むなら「縛り」を入れるべきである。お互いこの事業分野のことに取り組む場合には、新会社以外では禁止するなど、「浮気」を抑制する仕掛けが必要である。さもなければ、いずれ破綻する可能性が高い。
9.この提携が上手くいくかどうかに関係なく、トヨタには大改革が必要である。豊田章男社長のスピーチを聞いて社員がどれだけ危機感を持てるか。社員の意識が大きく変わることがあれば、力がある企業だから大丈夫だと思うが、さもなければ、このまま取り残されてしまう可能性もある。
10.ドイツ政府は2日、大気汚染の原因となっている旧型のディーゼル車の買い替えと改修を促す新対策を決めた。14都市の最大140万台が対象で、奨励金最大130万円を受け取って車を買い替えるか、環境性能を高める改修を受けるように保有者に求めるもので、費用はいずれも自動車メーカーが負担する。
11.ベルリン市などでは道路ごとにディーゼル車の規制を定めているが、そこまで細かく見るのは現実的には難しい。中途半端な形に終わるのではないかとも感じる。買い替えの際にメーカーが100万円程度を負担しなければいけないので、メーカーはかなり悲惨な状況に追い込まれた。ディーゼル車への逆風は、排ガス不正という「嘘」をついた代償が
大きいことを物語っている。



yuji5327 at 06:36 

2018年10月20日

AIを駆使して攻勢に出ている代表格がソフトバンクである。米ウーバー・テクノロジーズやシンガポールのグラブなどライドシェア大手4社の大株主になるなど世界連合を形成しつつある。

「冨岡耕治著者:トヨタとソフトバンク入り乱れる異業種連携、
週刊東洋経済、2018.10.20」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.トヨタ自動中とソフトバンクグループ.は10月4日、自動運転技術など新しいモビリティサービスで提携し、合弁会社「モネ・テクノロジーズ」を設立すると発表した。年度内に事業を開始し、将来はライドシェアなどを展開する方針である。
2.企業文化や歴史も異なり、まさに水と油の関係だった巨人同士を近づけたのは、トヨタ側の危機感である。変革の真っただ中にある自動車業界では新領域「CASE〔コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」での覇権争いが激しい。
3.車に対する消費者意識が所有から共有へ移る中、移動手段として新たなサービスや価値が求められている。新車販売に頼るビジネスモデルがジリ貧になることは必至で、サービスブラットフォーマーとして課金モデルを構築できなければ、世界販売で首位を争うトヨダでさえ生き残れない。
4.AI〔人工知能〕を駆使して攻勢に出ているIT業界の代表格がソフトバンクである。米ウーバー・テクノロジーズやシンガポールのグラブなどライドシェア大手4社の大株主になるなど世界連合を形成しつつある。孫正義会長兼社長は「10兆円の投資ファンドによる投資の中でも、モビリティ関連のAI企業向けは中核を成す」と断言する。
5.トヨタの豊田章男社長も「車を造る会社からモビリティサービス会社に変わる」と年初に宣言している。ウーバーやグラブへ出資するなど動き出していたが、「ドアを開けたら、必ず孫さんが前に座っていた」と語るとおり周囲遅れだった。トヨタはソフトバンクに頭を下げ、合弁もソフトバンクがわずかの差だが過半を握ったのは、IT業界の勢いを象徴している。
6.合従連衡は加速している。欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズは、米グーグル系のウェイモと白動運転で提携し、同社が年内に始めるロボットタクシーに6万台以上の自動運転車を供給する。ウェイモは英ジャガー・ランドローバーなどとも提携している。
7.自動運転での総走行距離は1400万kmを超える。また日本では日産白動車がDeNAと提携し無人ダクシーの実証実験を始めている。さらに中国では百度が「アポロ計画」と呼ぶ自動運転開発を進めており、100祉を超える異業種連合を形成している。日本からはホンダが参加する.
8.ホンダは自動運転で米ゼネラル・モーターズ(GM)とも今月3日に提携した。自動運転を手掛ける子会社、GMクルーズに事業資金の提供も含め計3000億円を投じて次世代技術を共同開発する。ただ、ソフトバンクはクルーズにもファンドを通じてすでに2割出資する大株主である。トヨタとGMをてんびんにかけるかのごとく、全方位に触手を伸ばし、覇権を虎視耽々と狙っている。
9.次世代車はあらゆる技術や知見が必要で、業界の垣根を越えた連携は一段と入り乱れるだろう。だが、自動車業界は安全性を優先しつつ運転する楽しみも残したい一方、IT業界は車をスマートフォンのように、一つのツールと見ており、相いれない。敵か味方か。将来の見えない戦いが始まっている.。


yuji5327 at 17:15 

2018年06月28日

「ネズミをラジコンにしてしまった」という論文がネイチャーにある。生きているネズミを人間が自在に操縦できるという。頭蓋骨に穴を開けて、脳に電極を刺してる。

池谷裕二著:
進化しすぎた脳、講談社、2017年。10月34冊」は面白い。「第1章:人間は脳の力を使いこなせていない」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.脳と言っても、いろんなことを研究してる人がいるが、著者は「大脳生理学」という学問を専門にしてい。人間の体のなかで、もっとも解明が遅れているのが脳である。
2.人工知能(AI)と、脳が生み出す生身の知能との違いは何かと今まで漠然と考えていた。脳の能力の全部じゃなくて、数%しか人間は使えないと一般に言われている。入力に応じて出力を選択する。脳の中の情報が、自分の行動に伝わる。専門的には「内部表象」と言う。記憶したものだけではなくて、いま見えているものが脳の中でどうやって表されてるかとい
3.普通の人と天才と呼ばれてきた人の脳に違いは、例えば、アインシュタイン、モーツァルト、ヒトラー、夏目漱石や織田信長の脳、できるヤツとできないヤツ、サルと人間の違い。サルも人間も基本的にはたいして変わらない。個体差だけではなくて種差(ヒトとサル)も、類似の問題である。
4.「ネズミをラジコンにしてしまった」という論文がネイチャーにある。生きているネズミを人間が自在に操縦できる、という論文である。動物愛護団体から反発があった。ネズミは命ある生き物としてこの世の中に生まれているので、それを人間が操縦する。頭蓋骨に穴を開けて、脳に電極を刺してる。
5、「脳を刺激するということで行動をコントロールできる」ということは、純粋に科学的な意味がある。動物をロボットのように扱ってるのは、何なのかを、コンピュータと人間の脳はいったい何が違うのかで考えてみる。
6.コンピュータは自分で考えて物事を起こさない。人間の命令なしにコンピュータの脳は動かない。自発性をプログラムされたコンピュータができたらどうか。新しいものをつくりだす能力、例えば作曲ができるコンピュータは部分的にはすでに実現されている。


yuji5327 at 06:53 

2018年04月21日

トラックの世界販売シェアは、ダイムラーを筆頭に、中国の第一汽車、東風汽車など、さらにはインドのタタと続き、フォルクスワーゲンと日野自動車は10位前後である。

2018/4/20付けの大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 166,733部)は「RIZAPグループ/日野自動車/ファーストリテイリング/武田薬品工業 〜RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点」と題する記事で、参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.フィットネスジム運営のRIZAPグループは6日、Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表した。現在の筆頭株主である三栄建築設計と合弁会社を設立し、ベルマーレが実施する約1億円の第三者割当増資を引き受ける。
2.今回の買収は金額がそれほど高くないので目くじらを立てるほどでないが、お金が有り余っているという理由で買収をするのは経営者として緩い。お金があると色々な人が近づいてくる。大切なのは買収をした後の経営力があるかどうかである。
3.RIZAPの過去を振り返ると、これまでに成功した事業はほぼ1つだけで、その他の事業はほとんど失敗している。経営で重要なのはKFSであり、そこに集中するべきである。RIZAPはまだ無駄遣いをできるような時期ではない。
4.成功したRIZAPのダイエット・減量事業にしても、その成功ノウハウはインストラクターの教え方に依存する部分が大きい。優秀なインストラクターであれば将来独立する危険性も高いし、その他の面も含めまだまだ企業として土台を安定させなければいけない。むやみにあれこれと買収をしている暇はない。
5.ビジネス・インサイダーは13日、『「5兆円買収」でお粗末な市場対応』と題する記事を掲載した。アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を検討していると報じられ、武田薬品工業の株価が急落した。買収額が約5兆3000億円にのぼることを嫌気したものである。
6.これを受けたウェバー社長の説明も、資金調達の方法に触れないなど不十分なもので
市場の疑念はさらに深まった。長谷川会長も退任し、ウェバー社長のタガが外れても抑えることができる人がいない。
ウェバー社長は目付け役がいなくなり、シャイアーを買収したら、すべてが上手くいくという夢物語を見ている。
7.5兆円の会社を買収して、その後の勝算はどのように描いているのか。武田薬品は2008年にミレニアム、2011年にはナイコメッドを買収し、相当な資金を使った。今ようやく落ち着きを取り戻してきたタイミングで、5兆円の買収をする意義があるのか、不安視されても致し方ない状況である。
8.純損益は回復したとはいえ、一昔前に比べると大したレベルではない。何より問題なのは財務状況で、かつては2兆円ほどあった現金も、ナイコメッドとミレニアムの買収などもあり、今は2000億円ほどしかない。そんな状況にも関わらず、武田薬品は時価総額に対して3〜5%という高配当をしており、最近になって社債と借入が大きく増えている。
9.武田薬品の時価総額は株価が下落し、約3.9兆円に落ち込んでいる。このような財務状況にあって、自社よりも高い時価総額のシャイアーを買収することになる。資金調達はどうするか疑問である。ここが一番大きな問題である。
10.日野自動車は12日、独フォルクスワーゲンの子会社とトラックやバスなど商用車の分野で提携交渉に入ると発表した。電動化や自動運転技術の開発、物流など幅広い分野で協業する方針である。これについて日野自動車の下社長は、「商用車の先進技術は乗用車の延長線だけでは対応できない」と述べ、親会社トヨタとの連携だけでは生き残れないと強調した。
11.フォルクスワーゲンもディーゼルの排ガス問題を乗り越えて上向いていたので、この提携は少々意外だった。世界的に見るとトラックやバスといった商用分野には、
スウェーデンのスカニア、ドイツのマンといった強豪がいる。この欧州勢に食い込んでいくためには、フォルクスワーゲンが日野自動車と手を組むのは相性がいい。
12.欧州では人手が不足しているので、トラックやバスを連結するという需要が高くなっている。日野自動車は技術力が高く、こうした需要に対応しやすくなる。最終的には、自動運転で2台のトラックやバスを連携するレベルまで目指していると思うが、大掛かりな実験は日本ではなかなか難しいので、欧州に進出することは日野自動車にとってもメリットは大きい。
13.トラックの世界販売シェアを見ると、ダイムラーを筆頭に、中国の第一汽車、東風汽車など、さらにはインドのタタと続いていて、フォルクスワーゲンと日野自動車は10位前後に位置している。三菱ふそうも取り込み、圧倒的なシェアを誇っているダイムラーに対抗するためには、フォルクスワーゲンと日野自動車が抜本的な技術提携をして力を合わせる時期である。ダイムラーへの対抗馬という意味では、意外な組み合わせで面白い。
14、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが12日発表した2018年2月中間連結決算は、売上高が前年同期比16.6%増の1兆1867億円、
営業利益が30.5%増の1704億円で、中間決算として過去最高。アジアなど海外事業の伸びが大きく、中間決算では初めて海外売上高が国内売上高を上回った。
15、柳井社長は、売上が1兆円突破したときに5兆円まで目指すと発言していた。今順調に売上は2兆円をクリアし、利益も出している。海外事業が国内事業を上回るというのも、柳井社長の発言通りの結果になっている。
16.ユニクロの店舗数推移を見ると、海外が激増している。海外にも非常に大きな店舗も作っているし、営業利益も十分である。柳井社長が目指す目標に向かって、努力してきた賜物といえる。



yuji5327 at 06:51 

2018年04月19日

鉄鋼商社の柱の自動車ビジネスも、自動車業界の大変革である電気自動車〔EV)が普及すれば、鋼材を使ってきた自動車メーカーのサプライチェーンが大きく変わる。


「井戸清一(ジャーナリスト)著:EVシフトに動く鉄鋼商社・鋼材需要消失に備え、エコノミスト、2018.3.27.」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.商社の鉄鋼部門にとり、大口取引先の一つが自動車業界である。購買量が比較的安定しており、いったん取引の流れを押さえれば継続的な販売を続けることができる。大抵の鉄鋼商社は自動車用鋼材で一つの本部を構えるほどで、その取引量の多さを物語っている。
2.自動車用鋼材を扱う商社の役割は幅広い。ジャスト・イン・タイムの納品を行う厳しい物流管理、海外を含めた供給ネットワーク、そして鋼板や鋼線の加工といった機能を発揮している。以前、鉄鋼商社の事業投資で代表格だったコイルセンタービジネスが厳しかったが、今なお成り立っているのは自動車向け取引量の多さがコイルセンターを支えているからである。
3.鉄鋼商社の柱と呼べる自動車ビジネスも、100年に1度の自動車業界の大変革である.電気自動車〔EV)が普及すれば、鋼材を使ってきた自動車メーカーのサプライチェーンが大きく変わる。
4.自動車メーカーは車体を軽量化するため、鋼材からアルミニウムやCFRPなどの他素材の利用を模索している。新日鉄住金やJFEホールディングスなどの鉄鋼大手はハイテンと呼ばれる高張力鋼板の改良を進めていくことで代替を阻止したい考えだが、今と比べ鉄が使われる比率は低下していく。
5.EVでは走行距離を伸ばすため、こうした軽量化二―ズが一段と強まる。またEVは車両の設計がシンプルで、使われる部品の点数が減るのは、鋼線や特殊鋼が使われてきたので、これを取り扱ってきた鉄鋼商社は仕事が消失する。
6.将来の変化に備え、鉄鋼商社はEV向けビジネスに本腰を入れ始め、1月には伊藤忠丸紅鉄鋼がEV戦略室を新設。4月には、三菱商事系列のメタルワンもEV維進室を設ける。鋼材使用量が減ると見込まれるEVだが、鉄鋼商社にも新たなチャンスはある。代表的な例が、EVの駆動用モーターで使われる電磁鋼板である。電磁鋼板は磁気を通しやすい特殊な鋼材で、EVのモーターには不可欠な部材とされる。
7.今後、EVの生産台数が増えれば、電磁鋼板の使用量も劇的に増加する。電磁鋼板でも商社には加工機能が求められ、鍵を握るのが金型の技術である。伊藤忠丸紅鉄鋼の場合、モーターコアの大手メーカー、黒田精工の大株主、欧州企業とも組み、グローバルなサプライチェーンを構築している。
8.EVに使われる金属で商機となるのがバッテリー材科である。リチウムやコバルト、そしてこれまではステンレス原料が主な用途だったニッケルである。これに触手を仲ばす鉄鋼メーカーも出始め、韓国鉄鋼最大手のボスコは2月末、子会社を通じ豪州のビルバラ・ミネラルズへ7960万豪ドルを出資し4・75%の株と年間8万トンのリチウム権益を取得した。
9.こうした非鉄金属は伊藤忠商事や丸紅で取り扱っているが、これからは鋼材との線引きが曖昧になってくる。いずれ鉄鋼商社が金属商社となる日が来るかもしれない。

yuji5327 at 06:57 

2018年04月17日

中国スマホ企巣は各種部品の調達から設計、組み立て、販売などのサプライチエーンを分断しており、水平分裂と言い、日本企業は垂直統合である。

「高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)著:スマホ進む徹底的な垂直分裂自動車コモディティ化も、
エコノミスト、2018.3.20」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.世界4位のスマートフォン「OPPO」が日本上陸を果たした。発売された「R11s」は、高精細かつ、多様な被写体深度を表現できるカメラ性能と急速充電機能によって商く評価されている。実機を触ると、かなり薄く、縁のカーブも丁寧に加工され、OSの設定など細部までしっかり作り込まれている。.
2.世界スマホ市場を見ると、韓国サムスン電子、米アップルの2強を、ファーウェイ、OPPO、シャオミ(小米)、VIVOといった中国企業が激しく追い上げている。絶好調の中国スマホ業界だが、企業単位で見ると栄枯盛衰が激しい。、
3.2013年に中国スマホ市場の売り上げ上位を占めた4社、ZTE〔中興)、ファーウェイ(華為〕、クールバッド(酷派)、レノボである。現在トップレベルに残っているのはファーウェイのみである。トップ企業ですら一歩間違えれば転落する激烈な競争が繰り広げられるなか、中国スマホ企業全体は大きく成長する。この構図が成立する背景には、設計を請け負うIDH(設計専門企業)、製造を請け負うEMS(竃子機器製造受託サービス)、検品・検査の代行企業、海外での販売・売上げ回収・ユーザーサポートの代行企業などの存在がある。設計・製造を請け負うのが、ODMで、言わばIDH+EMSという存在である。.
4.中国スマホ企巣は各種部品の調達から設計、組み立て、販売などのサプライチエーンを分断しており、このモデルは水平分裂と言う。一方、日本企業は、半導体や電子回路などの部品製造、製品の設計・組み立て、販売と、川上から川下まで自社、または系列企業で統一する傾向が強く、技術・部品をすり合わせた垂直統合である。
5.サプライチェーンの中で設計を担うのがIDHで、年間8000万台超と世界最大のスマホIDHであるウイングテックの創業者・ジャンシュエ自らがスマホ業界の新陳代謝を支えていると言う。設計という製造業の核心部分まで外注できる環境を作っているのはlDHであり、もの作りのノウハウがないメーカーの新規参入を可能にしている。
6.ウイングテックの有力顧客の1社が、シャオミである。シャオミは2010年創業の新興メーカーにもかかわらず、現在は出荷台数で世界5位につけるまでに成長した。同社の強みは、強力な自社の電子商取引(EC)基盤だった。同社の飛躍を支えたのはウイングテックが開発した廉価機種「レッドミー」だ。13年発売の初代レッドミーは、カジュアルなデザインと、799元〔当時のレートで約1万3900円)という低価格で爆発的な人気を獲得、シリーズ累計1億台を突破した。
7.このヒットは、技術力のない新興メーカーであっても、販売チャンネルやビジネスモデルで売りがあれば、サプライチェーンを活用して大手メーカーと勝負ができることを示した。ウイングテックの張董事長は「シャオミのビジネスモデルはECによる端末販売である。販売チャンネルの変化はスマホ業界を変える可能性があると考えた」と、新興企業の設計案件を受注した当時を振り返っている。
8.興味深いのは、IDHの顧答は有力メーカーに発展した後も委託取引を継続する点である。ウイングテックは現在、シャオミ、ファーウエイ、レノボといった有力企業の設計を受託している。メーカー側もシェアを拡大して資金力に余裕ができれば、技術者を雇用して、研究開発にも資金をつぎ込む。しかし、その人材・資金はそのメーカーを代表するフラッグシップ機に集中させる。そして、さして差別化を必要としないローエンド機の設計は外注するという割り切りを見せている。
9.IDH側も年に数十、数百の新機種の設計を担当することでノウハウの蓄積ベースが速く、技術レベルがすぐに上がる。また複数メーカー間で一部設計を共通化、使い回すというコストダウンが可能となり、中国スマホ業界全体の競争力を上げている。
10.この垂直分裂型の産業構造は、最近の携帯電話業界に限らない。古くは、テレビや冷蔵庫などの白物家竃の製造にも使われていた。広東省深圳市は近年、世界の新興企業が集うハードウエアの聖地として知られるが、その背景もやはり垂直分裂である。
11.サプライチェーンのあらゆる階層の企業があるため、アイデアさえあれば、設計も製造も外注できる。また、共有部品を使う場合、小ロットからの製造委託が可能な点も有利である。深馴市でEMS企業「ジエネシス」を経営する藤岡淳一社長は、日本で電子機器を製造するならば最低発注数は1万程度が相場だが、深圳ならば1000単位だと明かす。資金力に乏しく、また機器の改善、更新をこまめに行う必要がある新興企業にとってメリットが大きい、という。
12.中国型製造業モデルは今後どのように発展していくのか。今、注目を集めるのが自動車産業だ。吉利汽車や、「チェリー自動車」の愛称で呼ばれる奇瑞汽車など中国メーカーは、以前から部品共用化や外部からのエンジンの調達に積極的だった。今後、分業はさらに進展する可能性が高い。EV(電気白動車)化によって部品点数が削減されれば、すり合わせの難度が下がる。コネクテッド・カー(つながる車)にはスマホと同様の技術を使ったシステムLSIが搭載される見通しだ。このように、コネクテッド・カーにはスマホの技術が転用可能だ。スマホIDHの「アイデア」を率いる楊涛(ヤンタオ)董事長は「自動運転車開発には我々のノウハウが活用できる」と自信を見せた。かつては部品の寄せ集めとやゆされた中国の垂直分裂型製造業が、自動車さえコモデティー〔汎用)化させる日が来るかもしれない。


yuji5327 at 06:37 
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
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