ものづくり
2012年03月31日
ものづくり大国危機 
表面的なメディアの町工場の技術称賛
汗と油にまみれる
技術者らの実態は
金融関係社員
公務員らと比べて
冷遇、格差拡大
原因は社会の仕組み
テレビ・大新聞も同罪
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2012年02月28日
ものづくり大国危機
エルピーダメモリ倒産
日の丸半導体の没落
遅すぎた次の一手
官僚の無能力も一因に
日本の偏差値教育も遠因
サラリーマン経営者の本気度
国内外メーカーとの提携不調
万策尽きて会社更生法の適用
経済産業省元審議官の
インサイダー事件
霞が関の病巣氷山の一角
産業のコメに無頓着な日本国民
農業のコメしか知らない政治家
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2011年12月09日
政府の「総合科学技術会議」のメンバーに目利きはいるか？
「長妻昭著：招かざる大臣、政と官の新ルール、朝日新聞出版、2011年」の任期は367日と約1年間と短期ではあったが、役所文化を変えるべく、数々の改革に着手した。無駄の削減や補正予算の執行停止、基金の返納など厚生労働省だけで1兆2830億円のお金を捻出している。本書の「第7章：未来への提言」の「日本が蘇るメシの種はある」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
１．霞が関改革を断行し、社会保障と安全保障の新たな体制を築きあげるのと同時に、日本経済を牽引する「メシの種」を育て上げなければならない。ものづくり大国の日本では製造業を中心に国際競争力をつけてきたが、その技術力と伝統を受け継いでいるのが、ハイテク分野のものづくり技術である。
２．情報通信分野では米国のアップル社やグーグル社などが最先端を行き、家電AV分野では韓国や新興国がどんどん技術力をつけてきている。日本はかつてのようにものづくりで優位性をアピールできなくなっている。しかし、ナノテクノロジー（超精密技術）分野では世界のトップクラスである。これを育て、日本経済の成長の柱にしない選択肢はない。ナノテクなど世界最先端技術を活用した環境技術開発、万能細胞をはじめとするバイオ・医療技術で、世界に貢献してお金も稼ぐ。これからの日本は「環境・バイオ技術立国」を目指すべきである。
３．政府は成長分野に集中的に資金を投入する必要がああるが、。そのためには「目利き」が必要である。今は、政府の「総合科学技術会議」が担っている。一定の成果が出ているところだが、そのメンバーによっては目利きにならない。。
４．民主党は「日本版若手ノーベル賞」の創設を提言した。40歳までの若手研究者を総理が表彰し、研究費をつけるのである。他にも「ベンチャー企業への投資を促進する税制改革」「基礎研究支援強化」「外資進出促進の環境整備」「成長を阻害する過度な規制の撤廃」「海外における知的財産権保護の強化」といった幅広い提言を、「民主党・産業再生戦略〜閉塞NIPPONからの脱却〜」にまとめた。
招かれざる大臣 政と官の新ルール (朝日新書)
クチコミを見る
１．霞が関改革を断行し、社会保障と安全保障の新たな体制を築きあげるのと同時に、日本経済を牽引する「メシの種」を育て上げなければならない。ものづくり大国の日本では製造業を中心に国際競争力をつけてきたが、その技術力と伝統を受け継いでいるのが、ハイテク分野のものづくり技術である。
２．情報通信分野では米国のアップル社やグーグル社などが最先端を行き、家電AV分野では韓国や新興国がどんどん技術力をつけてきている。日本はかつてのようにものづくりで優位性をアピールできなくなっている。しかし、ナノテクノロジー（超精密技術）分野では世界のトップクラスである。これを育て、日本経済の成長の柱にしない選択肢はない。ナノテクなど世界最先端技術を活用した環境技術開発、万能細胞をはじめとするバイオ・医療技術で、世界に貢献してお金も稼ぐ。これからの日本は「環境・バイオ技術立国」を目指すべきである。
３．政府は成長分野に集中的に資金を投入する必要がああるが、。そのためには「目利き」が必要である。今は、政府の「総合科学技術会議」が担っている。一定の成果が出ているところだが、そのメンバーによっては目利きにならない。。
４．民主党は「日本版若手ノーベル賞」の創設を提言した。40歳までの若手研究者を総理が表彰し、研究費をつけるのである。他にも「ベンチャー企業への投資を促進する税制改革」「基礎研究支援強化」「外資進出促進の環境整備」「成長を阻害する過度な規制の撤廃」「海外における知的財産権保護の強化」といった幅広い提言を、「民主党・産業再生戦略〜閉塞NIPPONからの脱却〜」にまとめた。
招かれざる大臣 政と官の新ルール (朝日新書)
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2011年10月15日
ジョブズ氏死去後のアップルの今後は？
10月14日付けの大前研一さんのニュースの視点は『ジョブズ氏死去〜一人の天才の死とアップルの今後』と題する記事である。ＩＴ業界に詳しい大前さんのご見解は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．米アップル社を創業し、同社を時価総額世界一の企業に育てたスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者（CEO）が10月5日に56歳で亡くなった。ジョブズ氏は1976年、友人とアップルコンピュータ（現アップル）を創業し、コンピューター産業で米IBMが支配的な存在だったころ、家庭でもコンピューターを気軽に操れるようにと、パソコン「アップル」を発売するなどパソコンが世界の家庭に普及する礎を築いた。
２．今回の訃報に関しては、米オバマ大統領、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏、日本でもソフトバンクの孫正義社長などからコメントが寄せられている。ジョブズ氏の最期の数カ月、アップルはエクソン・モービルを超え、時価総額世界一を達成し、結果としてジョブズ氏はそれを見届ける形になった。
３．ジョブズ氏のような天才的な経営者、リーダーを輩出するのは教育によって可能性について世界の人々が関心を持っている。大前氏は1989年ウォール・ストリート・ジャーナルの100周年記念番組でスティーブ・ジョブズ氏とともにテレビ出演している。その番組でジョブズ氏が語っていた内容は、彼の価値観・考え方を如実に表しいる。その内容とは、
「ものすごく優秀な人が素晴らしい発明をしたが、社長は言うことを聞いてくれない。それなら自分は会社を辞める、という人がいたとしたら、あなたはどう考えるのか？」という質問に対して当時NeXTのCEOだったジョブズ氏は、こう語った。
「例えば石油会社を見ると、従来のロジックでは、前線で穴を掘る技術を 持った人が非常に重要な人材だった、と言える。しかし時代は変わってきている。」
「今は大学を出たばかりの実務経験がない新人であっても、地質学とコンピューターサイエンスに精通していれば会社にとって非常に重要な存在になり得る。例えば、衛星から見るとあの場所に石油が あるはずだと導き出せるのなら、会社の命運を左右する可能性もある。会社としてはこのようなことを認めるべきだし、もし会社に認められないのであれば辞めて別の場所を探せば良い」
４．従来の会社のロジックとは完全に反対であるが、IBMに立ち向かったジョブズ氏の考え方そのものだと感じる。またゼロから自分で創り込んでいくという「非常に尖ったスタイル」も当時から変わっていなかった。スティーブ・ジョブズ氏のような天才を教育によって生み出すことができるのか？への答えは「それだけでは難しい」である。
５．彼のような天才の発想に触れることで、「凡才製造機」である会社の弊害を逃れることはできる。その意味で、伝記などは大いに役立つ。スティーブ・ジョブズ氏の「天才ぶり」と言えば、あの見る人を魅了してやまない見事なプレゼンテーションを頭に思い浮かべる。確かにあのプレゼンテーションは独特なもので、素晴らしいプレゼンテーションである。しかし、「天賦の才能」だけに頼ったプレゼンテーションではなく、練習を重ねた結果である。ジョブズ氏はプレゼンテーションの前に何度も練習を繰り返した。例えば、iPhoneを手に持つなら、どの角度が最も効果的かを、様な細かい点まで映像を見てチェックして、繰り返し修正していた。プレゼンテーションについて天才的な才能もあった上に、さらに練習を重ねていたという事実にも目を向けるべきである。
６．今後のアップルは、ジョブズ氏を失っても急激に衰えることはない。本当の意味でのブレークスルーを生み出すことは難しいかが、彼が残したものは、ユニーク・独特であり、まだまだ発展性がある。
７．これまでのアップルは基本的にメーカーとして自らが作ったもので食べていくというスタイルだったが、今はOSを抑えることで完全にスマートフォンの世界で機先を制することに成功している。メーカーという立場に拘る必要もない。ゆくゆくはテレビという主戦場にも進出できるはずである。次の展開となるとジョブズ氏がいなければ難しいかも知れないが、そこまでの展開はすでに地盤が出来上がっている。
１．米アップル社を創業し、同社を時価総額世界一の企業に育てたスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者（CEO）が10月5日に56歳で亡くなった。ジョブズ氏は1976年、友人とアップルコンピュータ（現アップル）を創業し、コンピューター産業で米IBMが支配的な存在だったころ、家庭でもコンピューターを気軽に操れるようにと、パソコン「アップル」を発売するなどパソコンが世界の家庭に普及する礎を築いた。
２．今回の訃報に関しては、米オバマ大統領、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏、日本でもソフトバンクの孫正義社長などからコメントが寄せられている。ジョブズ氏の最期の数カ月、アップルはエクソン・モービルを超え、時価総額世界一を達成し、結果としてジョブズ氏はそれを見届ける形になった。
３．ジョブズ氏のような天才的な経営者、リーダーを輩出するのは教育によって可能性について世界の人々が関心を持っている。大前氏は1989年ウォール・ストリート・ジャーナルの100周年記念番組でスティーブ・ジョブズ氏とともにテレビ出演している。その番組でジョブズ氏が語っていた内容は、彼の価値観・考え方を如実に表しいる。その内容とは、
「ものすごく優秀な人が素晴らしい発明をしたが、社長は言うことを聞いてくれない。それなら自分は会社を辞める、という人がいたとしたら、あなたはどう考えるのか？」という質問に対して当時NeXTのCEOだったジョブズ氏は、こう語った。
「例えば石油会社を見ると、従来のロジックでは、前線で穴を掘る技術を 持った人が非常に重要な人材だった、と言える。しかし時代は変わってきている。」
「今は大学を出たばかりの実務経験がない新人であっても、地質学とコンピューターサイエンスに精通していれば会社にとって非常に重要な存在になり得る。例えば、衛星から見るとあの場所に石油が あるはずだと導き出せるのなら、会社の命運を左右する可能性もある。会社としてはこのようなことを認めるべきだし、もし会社に認められないのであれば辞めて別の場所を探せば良い」
４．従来の会社のロジックとは完全に反対であるが、IBMに立ち向かったジョブズ氏の考え方そのものだと感じる。またゼロから自分で創り込んでいくという「非常に尖ったスタイル」も当時から変わっていなかった。スティーブ・ジョブズ氏のような天才を教育によって生み出すことができるのか？への答えは「それだけでは難しい」である。
５．彼のような天才の発想に触れることで、「凡才製造機」である会社の弊害を逃れることはできる。その意味で、伝記などは大いに役立つ。スティーブ・ジョブズ氏の「天才ぶり」と言えば、あの見る人を魅了してやまない見事なプレゼンテーションを頭に思い浮かべる。確かにあのプレゼンテーションは独特なもので、素晴らしいプレゼンテーションである。しかし、「天賦の才能」だけに頼ったプレゼンテーションではなく、練習を重ねた結果である。ジョブズ氏はプレゼンテーションの前に何度も練習を繰り返した。例えば、iPhoneを手に持つなら、どの角度が最も効果的かを、様な細かい点まで映像を見てチェックして、繰り返し修正していた。プレゼンテーションについて天才的な才能もあった上に、さらに練習を重ねていたという事実にも目を向けるべきである。
６．今後のアップルは、ジョブズ氏を失っても急激に衰えることはない。本当の意味でのブレークスルーを生み出すことは難しいかが、彼が残したものは、ユニーク・独特であり、まだまだ発展性がある。
７．これまでのアップルは基本的にメーカーとして自らが作ったもので食べていくというスタイルだったが、今はOSを抑えることで完全にスマートフォンの世界で機先を制することに成功している。メーカーという立場に拘る必要もない。ゆくゆくはテレビという主戦場にも進出できるはずである。次の展開となるとジョブズ氏がいなければ難しいかも知れないが、そこまでの展開はすでに地盤が出来上がっている。
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2011年06月24日
スパコン「京」が世界一になったわけ。エネルギー効率では４位。
6月23日付けの「モノづくり総合版 メールマガジン：EE Times Japan／＠IT MONOist共同編集」の「なぜ「京」がスパコン1位を獲得できたのか」という標題の記事が目を引いた。（http://eetimes.jp/）。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．日本のスーパーコンピュータ「京（けい）」が、Linpackベンチマークで8.16PFLOPS（ペタフロップス）という世界最高性能を達成し、第37回（2011年6月版）のTOP500リストで第1位を獲得した。京は、富士通の「SPARC」プロセッサを6万8544個搭載し、巨大規模のクラスタ構成が必要な用途に向けて開発されたものである。
２．最高性能を実現した「京」は、理化学研究所（理研）と、SPARCアーキテクチャをOracleとともに保有する富士通が共同で開発された。日本のスーパーコンピュータがTOP500リストのランキングで第1位を獲得するのは、2004年11月の地球シミュレータ（NEC）以来のことになる。また、富士通のプロセッサとSPARCアーキテクチャが世界最速とされるコンピュータに搭載されたのも今回が初めてである。
３．完成時には864台の筐体が並ぶ。現在、744台を設置済みである。2012年6月末までにシステム整備を終え、同11月からサービスの供用を開始する。前回（2010年11月版）のTOP500リストで第1位の座を獲得したのは、2.6PFLOPSの性能を達成した中国のスーパーコンピュータ「天河一号A（Tianhe-1A）」だった。京は今回、この天河一号Aを3倍も上回る性能を実現した。今回のTOP500リストで2〜6位にランクインした5種類のコンピュータを合計した性能よりも、京の方が強力である。
４．また京は、825MFLOPS/W（メガフロップス/ワット）という高いエネルギー効率を実現し、省エネという観点でもTOP500リストの中で第4位にランクインされる。消費電力は9.89MWと大きく、リスト中第1位である。TOP500リストの中で、消費電力量が1MW以上のスーパーコンピュータは29台ある。IBMの「BlueGene/Q Prototype」は、TOP500リストでは110位だったが、エネルギー効率の面では最も高い2097MFLOPS/Wを実現し、第1位を獲得している。
５．TOP500リストに登場するスーパーコンピュータは年々、消費電力量が増大する一方、エネルギー効率も高くなる傾向にある。消費電力量の平均値は、2010年6月には397KW、2010年11月は447KW、そして今回は543KWだった。エネルギー効率の平均値は、2010年6月が195MFLOPS/W、2010年11月は219MFLOPS/W、今回は248MFLOPS/Wに改善されている。
６．コンピュータの電力効率を高める方法の1つとして、グラフィックス・コプロセッサを採用する傾向がある。TOP500リストのうち、アクセラレータとしてGPUを搭載しているスーパーコンピュータの数は、2010年11月には17台だったが、2011年6月には19台に増えている。
７．GPUを搭載しているスーパーコンピュータのうち、NVIDIAのチップを採用しているものが12台、IBMのCellプロセッサが5台、AMDのRadeonが2台だった。テネシー大学の教授であるジャック・ドンガラ氏は、「NVIDIAのチップが最も多く採用された背景には、ソフトウェアの影響が大きい。ソフトウェアの多くが、NVIDIAのCUDA環境で開発されているためだ」と述べている。
８．京は、独自に開発した富士通の「SPARC64 VIIIfx」プロセッサを大量に搭載した。GPUアクセラレータを採用するという新しい流れには逆行する。チップごとに8コアを内蔵しているため、全部で54万8352個のコアが搭載されていることになる。TOP500リストにある他のどのスーパーコンピュータと比べても、約2倍多い。TOP500リストに登場するスーパーコンピュータが搭載するコアの平均個数は、2010年6月に1万267個、2010年11月では1万3071個だったが、今回は1万5550個まで増加した。
９．SPARC64 VIIIfxは、最大動作周波数である2GHz動作時に、128GFLOPSの演算処理性能を実現する。このとき消費電力量は58Wである。こうした性能を実現する上で重要な鍵となるのが、高性能のクラスタに向けた一連の拡張機能である。この拡張機能を利用すれば、プロセッサが内蔵する6Mバイトの共有L2キャッシュをアプリケーション側から管理できる。SPARC64 VIIIfxは、SIMD（Single Instruction Multiple Data）対応であり、1コア当たり256本の浮動小数点レジスタを備え、コア内部でハードウェアの同期処理を実行することができる。
１０．ドンガラ氏は、この他にも京が成功した要因として、「プロセッサとインターコネクトを同時に設計し、単に組み合わせるのではなく、互いに性能を引き出せるようにうまく適合させた」ことを挙げている。「Tofu」と呼ばれる京のインターコネクトのトポロジ構造は、6次元のメッシュ/トーラスであり、5Gバイト/秒の転送速度を実現する。外部スイッチは不要である。上限である10万ノードの接続を構築すると、10PFLOPSの性能を実現できる。
１１．さらに設計面で優れているのが、ノードがシングルCPUであるという点である。このため、比較的シンプルなメモリ階層をサポートできる上、より高いメモリ帯域幅を実現することが可能である。ドンガラ氏は、「高速なコンピュータシステムを構築するためには、バランスがよく、うまく統合されている必要がある。京は、まさにそれを実現している」と述べている。
１２．京は今回、大差をつけて首位を獲得したが、新たな挑戦者は既に迫ってきている。ドンガラ氏によれば、首位の座を狙える可能性を秘めたスーパーコンピュータは、IBMの「Blue Waters」とCrayの「XK6」である。Blue Watersは、イリノイ大学と、同大学にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所、IBMが共同で開発した。IBMの「Power 7」プロセッサを最大で30万個搭載している。Power 7は、1つのチップに8コアを集積し、1コア当たり4スレッドの並列処理が可能である。ドンガラ氏によると、Blue Watersは現在、設計面で遅れている。
１３．Blue Watersは、インフィニバンド（Infiniband）やIBMの独自設計などから得たアイデアを組み合わせた新型のインターコネクトを採用している。IBMのシングルのハブチップがインターコネクトを実行し、合計1128Gバイト/秒のピーク帯域幅を、各ノードやスーパーノード、汎用入出力タスクなどに振り分ける。
１４．CrayのXK6は、AMDのx86プロセッサとNVIDIAのGPUを搭載したハイブリッド型のスーパーコンピュータだ。カスタム設計のインターコネクトを採用している。IntelのCPUが8割近くを占める
１５．今回のTOP500リストでは、初めて上位10位にランクインした全てのスーパーコンピュータが、PFLOPS級の性能を達成した。米国が5台をランクインさせて先頭に立ち、日本と中国からそれぞれ2台ずつ、フランスから1台が上位10位に入った。
１６．Intelのプロセッサを採用したシステムは今回、TOP500リストのうち387台（シェア77.4％）に上り、圧倒的な優位を維持した。ただし、前回の2010年11月の時点では398台（79.6％）だったことから、今回はわずかに減少した。Intelの「Westmere」プロセッサの採用台数は、2010年11月には56台にとどまっていたが、今回は大幅に増えて169台で採用されている。
１７．AMDのプロセッサは、2010年11月に57台が採用していた。今回は65台（13.0％）に増え、Intelに続く。IBMのPowerプロセッサは、前回は40台、今回は45台（9.0％）に増え、第3位で、3社のプロセッサを合計すると、497台に採用されている。京のSPARCが例外的であることが注目される。
１８．TOP500リストのうち212台のスーパーコンピュータ（42.4％）が、コア数6以上のCPUを採用している。231台（46.2％）が、クアッドコア・プロセッサを採用している。インターコネクト技術では、10Gビットを含むギガビットイーサネットが最も利用されており、233台（前回227台）が採用した。次いで各種インフィニバンド技術が205台（前回214台）だ。しかし、インフィニバンドを採用したシステムの平均PFLOPS性能は23.0PFLOPSと、ギガビットイーサネット採用マシン（11.6PLOOPS）よりも2倍も高い。
１９．TOP500リストに登場したシステムを販売しているのは、IBMとHewlett-Packard（HP）の2社のシェアが高い。性能は拮抗している。IBMは213台（42.6％）、HPは153台（30.4％）である。前回はIBMが200台（40％）、HPが158台（31.6％）だった。
２０．地域別では米国が256台（前回は274台）とトップであり、欧州が125台、アジアが103台だ。アジアは前回84台だったので、上昇傾向にある。国別では中国に勢いがあり、今回は62台に上り、2位の位置にある。国別順位は、米国、中国、ドイツ（30台）、英国（27台）、日本（26台）、フランス（25台）、ロシア（12台）である。
１．日本のスーパーコンピュータ「京（けい）」が、Linpackベンチマークで8.16PFLOPS（ペタフロップス）という世界最高性能を達成し、第37回（2011年6月版）のTOP500リストで第1位を獲得した。京は、富士通の「SPARC」プロセッサを6万8544個搭載し、巨大規模のクラスタ構成が必要な用途に向けて開発されたものである。
２．最高性能を実現した「京」は、理化学研究所（理研）と、SPARCアーキテクチャをOracleとともに保有する富士通が共同で開発された。日本のスーパーコンピュータがTOP500リストのランキングで第1位を獲得するのは、2004年11月の地球シミュレータ（NEC）以来のことになる。また、富士通のプロセッサとSPARCアーキテクチャが世界最速とされるコンピュータに搭載されたのも今回が初めてである。
３．完成時には864台の筐体が並ぶ。現在、744台を設置済みである。2012年6月末までにシステム整備を終え、同11月からサービスの供用を開始する。前回（2010年11月版）のTOP500リストで第1位の座を獲得したのは、2.6PFLOPSの性能を達成した中国のスーパーコンピュータ「天河一号A（Tianhe-1A）」だった。京は今回、この天河一号Aを3倍も上回る性能を実現した。今回のTOP500リストで2〜6位にランクインした5種類のコンピュータを合計した性能よりも、京の方が強力である。
４．また京は、825MFLOPS/W（メガフロップス/ワット）という高いエネルギー効率を実現し、省エネという観点でもTOP500リストの中で第4位にランクインされる。消費電力は9.89MWと大きく、リスト中第1位である。TOP500リストの中で、消費電力量が1MW以上のスーパーコンピュータは29台ある。IBMの「BlueGene/Q Prototype」は、TOP500リストでは110位だったが、エネルギー効率の面では最も高い2097MFLOPS/Wを実現し、第1位を獲得している。
５．TOP500リストに登場するスーパーコンピュータは年々、消費電力量が増大する一方、エネルギー効率も高くなる傾向にある。消費電力量の平均値は、2010年6月には397KW、2010年11月は447KW、そして今回は543KWだった。エネルギー効率の平均値は、2010年6月が195MFLOPS/W、2010年11月は219MFLOPS/W、今回は248MFLOPS/Wに改善されている。
６．コンピュータの電力効率を高める方法の1つとして、グラフィックス・コプロセッサを採用する傾向がある。TOP500リストのうち、アクセラレータとしてGPUを搭載しているスーパーコンピュータの数は、2010年11月には17台だったが、2011年6月には19台に増えている。
７．GPUを搭載しているスーパーコンピュータのうち、NVIDIAのチップを採用しているものが12台、IBMのCellプロセッサが5台、AMDのRadeonが2台だった。テネシー大学の教授であるジャック・ドンガラ氏は、「NVIDIAのチップが最も多く採用された背景には、ソフトウェアの影響が大きい。ソフトウェアの多くが、NVIDIAのCUDA環境で開発されているためだ」と述べている。
８．京は、独自に開発した富士通の「SPARC64 VIIIfx」プロセッサを大量に搭載した。GPUアクセラレータを採用するという新しい流れには逆行する。チップごとに8コアを内蔵しているため、全部で54万8352個のコアが搭載されていることになる。TOP500リストにある他のどのスーパーコンピュータと比べても、約2倍多い。TOP500リストに登場するスーパーコンピュータが搭載するコアの平均個数は、2010年6月に1万267個、2010年11月では1万3071個だったが、今回は1万5550個まで増加した。
９．SPARC64 VIIIfxは、最大動作周波数である2GHz動作時に、128GFLOPSの演算処理性能を実現する。このとき消費電力量は58Wである。こうした性能を実現する上で重要な鍵となるのが、高性能のクラスタに向けた一連の拡張機能である。この拡張機能を利用すれば、プロセッサが内蔵する6Mバイトの共有L2キャッシュをアプリケーション側から管理できる。SPARC64 VIIIfxは、SIMD（Single Instruction Multiple Data）対応であり、1コア当たり256本の浮動小数点レジスタを備え、コア内部でハードウェアの同期処理を実行することができる。
１０．ドンガラ氏は、この他にも京が成功した要因として、「プロセッサとインターコネクトを同時に設計し、単に組み合わせるのではなく、互いに性能を引き出せるようにうまく適合させた」ことを挙げている。「Tofu」と呼ばれる京のインターコネクトのトポロジ構造は、6次元のメッシュ/トーラスであり、5Gバイト/秒の転送速度を実現する。外部スイッチは不要である。上限である10万ノードの接続を構築すると、10PFLOPSの性能を実現できる。
１１．さらに設計面で優れているのが、ノードがシングルCPUであるという点である。このため、比較的シンプルなメモリ階層をサポートできる上、より高いメモリ帯域幅を実現することが可能である。ドンガラ氏は、「高速なコンピュータシステムを構築するためには、バランスがよく、うまく統合されている必要がある。京は、まさにそれを実現している」と述べている。
１２．京は今回、大差をつけて首位を獲得したが、新たな挑戦者は既に迫ってきている。ドンガラ氏によれば、首位の座を狙える可能性を秘めたスーパーコンピュータは、IBMの「Blue Waters」とCrayの「XK6」である。Blue Watersは、イリノイ大学と、同大学にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所、IBMが共同で開発した。IBMの「Power 7」プロセッサを最大で30万個搭載している。Power 7は、1つのチップに8コアを集積し、1コア当たり4スレッドの並列処理が可能である。ドンガラ氏によると、Blue Watersは現在、設計面で遅れている。
１３．Blue Watersは、インフィニバンド（Infiniband）やIBMの独自設計などから得たアイデアを組み合わせた新型のインターコネクトを採用している。IBMのシングルのハブチップがインターコネクトを実行し、合計1128Gバイト/秒のピーク帯域幅を、各ノードやスーパーノード、汎用入出力タスクなどに振り分ける。
１４．CrayのXK6は、AMDのx86プロセッサとNVIDIAのGPUを搭載したハイブリッド型のスーパーコンピュータだ。カスタム設計のインターコネクトを採用している。IntelのCPUが8割近くを占める
１５．今回のTOP500リストでは、初めて上位10位にランクインした全てのスーパーコンピュータが、PFLOPS級の性能を達成した。米国が5台をランクインさせて先頭に立ち、日本と中国からそれぞれ2台ずつ、フランスから1台が上位10位に入った。
１６．Intelのプロセッサを採用したシステムは今回、TOP500リストのうち387台（シェア77.4％）に上り、圧倒的な優位を維持した。ただし、前回の2010年11月の時点では398台（79.6％）だったことから、今回はわずかに減少した。Intelの「Westmere」プロセッサの採用台数は、2010年11月には56台にとどまっていたが、今回は大幅に増えて169台で採用されている。
１７．AMDのプロセッサは、2010年11月に57台が採用していた。今回は65台（13.0％）に増え、Intelに続く。IBMのPowerプロセッサは、前回は40台、今回は45台（9.0％）に増え、第3位で、3社のプロセッサを合計すると、497台に採用されている。京のSPARCが例外的であることが注目される。
１８．TOP500リストのうち212台のスーパーコンピュータ（42.4％）が、コア数6以上のCPUを採用している。231台（46.2％）が、クアッドコア・プロセッサを採用している。インターコネクト技術では、10Gビットを含むギガビットイーサネットが最も利用されており、233台（前回227台）が採用した。次いで各種インフィニバンド技術が205台（前回214台）だ。しかし、インフィニバンドを採用したシステムの平均PFLOPS性能は23.0PFLOPSと、ギガビットイーサネット採用マシン（11.6PLOOPS）よりも2倍も高い。
１９．TOP500リストに登場したシステムを販売しているのは、IBMとHewlett-Packard（HP）の2社のシェアが高い。性能は拮抗している。IBMは213台（42.6％）、HPは153台（30.4％）である。前回はIBMが200台（40％）、HPが158台（31.6％）だった。
２０．地域別では米国が256台（前回は274台）とトップであり、欧州が125台、アジアが103台だ。アジアは前回84台だったので、上昇傾向にある。国別では中国に勢いがあり、今回は62台に上り、2位の位置にある。国別順位は、米国、中国、ドイツ（30台）、英国（27台）、日本（26台）、フランス（25台）、ロシア（12台）である。
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2011年05月23日
金融業界も世界市場で通用する力をつけるには保護政策をやめること
「池上彰著：先送りできない日本、第2の焼け跡からの再出発、角川書店、2011年5月」の「第6章：今か、未来か？ 明日を決めるのはあなた」の「日本の金融業界は保護を外されて力をつけた」は、分かりやすい。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．タイや韓国を通貨危機が襲った1997年から98年にかけて、日本国内では三洋証券が倒産したり、北海道拓殖銀行が営業譲渡したり、山一澄券が自主廃業を決めたり、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が一時国有化されたりするなど、金融不安が吹き荒れていた。これはアジア通貨危機の影響というよりは、バブル崩壊で不良債権を大量に抱え込んでしまったことが原因である。その不良債権処理を進めた小泉・竹中路線の下でも、金融機関がつぶれるかもしれないと騒がれていた。
２．日本がバブルに浮かれていたのは1980年代の後半。そのバブルが1990年にはじけると、大銀行の合併劇が始まり、激しい再編の波にさらされた。1980年代まで、日本の金融機関は、当時の大蔵省によって守られてた。日本の金融界は、一番経営力の弱い金融機関でもやっていけるように、大蔵省が規制をかけて守られてきた。いわゆる「護送船団方式」ですある。
３．銀行、証券会社、保険会社は業種間の仕事をはっきりと分けられ、別の業種からの参入は禁止されていた。激しい競争もなくバブルの追い風を受け、経営効率のいい大手機関は膨大な利益を上げ、社員の給料が上がり、福利厚生にも潤沢にお金が回った。大蔵省の役人を接待したり、天下りを受け入れたりする余裕もあった。
４．その裏側で、当時の銀行は国際競争力を育てるチャンスがなく、世界の金融界で太刀打ちできる力をつけることができなかった。この規制をなくし、自由競争の下で国際競争に打ち勝つ体力をつけさせようとしたのが、橋本龍太郎元首相が断行した日本版金融ビッグバンである。銀行、保険、証券の垣根を取り去り、他業種から、さらには外国からの参人も認められた。開国された途端、日本の金融機関は、未処理の不良債権を抱えたまま苦戦を強いられた。
５．大蔵省(財務省)から分離した金融監督庁(その後、金融庁に)の厳しいチェックを受けることになった銀行は、単独での存続が困難になり次々と合併を繰り返した。1990年には太陽神戸と三井が、96年には東京と三菱が、2002年には富士、第一勧業、日本興業、などの銀行が次々と合併して名前を変えて生き残りを図った。バブル崩壊以降から2006年まで続いた業界再編の結果、三井住友、三菱東京UFJ、みずほの3メガバンクが誕生し、ようやくグローバルマーケットで通用するだけの体力を身につけた。
先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)
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１．タイや韓国を通貨危機が襲った1997年から98年にかけて、日本国内では三洋証券が倒産したり、北海道拓殖銀行が営業譲渡したり、山一澄券が自主廃業を決めたり、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が一時国有化されたりするなど、金融不安が吹き荒れていた。これはアジア通貨危機の影響というよりは、バブル崩壊で不良債権を大量に抱え込んでしまったことが原因である。その不良債権処理を進めた小泉・竹中路線の下でも、金融機関がつぶれるかもしれないと騒がれていた。
２．日本がバブルに浮かれていたのは1980年代の後半。そのバブルが1990年にはじけると、大銀行の合併劇が始まり、激しい再編の波にさらされた。1980年代まで、日本の金融機関は、当時の大蔵省によって守られてた。日本の金融界は、一番経営力の弱い金融機関でもやっていけるように、大蔵省が規制をかけて守られてきた。いわゆる「護送船団方式」ですある。
３．銀行、証券会社、保険会社は業種間の仕事をはっきりと分けられ、別の業種からの参入は禁止されていた。激しい競争もなくバブルの追い風を受け、経営効率のいい大手機関は膨大な利益を上げ、社員の給料が上がり、福利厚生にも潤沢にお金が回った。大蔵省の役人を接待したり、天下りを受け入れたりする余裕もあった。
４．その裏側で、当時の銀行は国際競争力を育てるチャンスがなく、世界の金融界で太刀打ちできる力をつけることができなかった。この規制をなくし、自由競争の下で国際競争に打ち勝つ体力をつけさせようとしたのが、橋本龍太郎元首相が断行した日本版金融ビッグバンである。銀行、保険、証券の垣根を取り去り、他業種から、さらには外国からの参人も認められた。開国された途端、日本の金融機関は、未処理の不良債権を抱えたまま苦戦を強いられた。
５．大蔵省(財務省)から分離した金融監督庁(その後、金融庁に)の厳しいチェックを受けることになった銀行は、単独での存続が困難になり次々と合併を繰り返した。1990年には太陽神戸と三井が、96年には東京と三菱が、2002年には富士、第一勧業、日本興業、などの銀行が次々と合併して名前を変えて生き残りを図った。バブル崩壊以降から2006年まで続いた業界再編の結果、三井住友、三菱東京UFJ、みずほの3メガバンクが誕生し、ようやくグローバルマーケットで通用するだけの体力を身につけた。
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2011年02月04日
歪んでいる日本の大新聞･テレビの中国報道
「丸山知雄著：生活の中の日中関係、日本学士会、U7、Vol.36 February 2011 」の著者は東京大学社会科学研究所教授であり同セミナーで講演した内容を取り纏めたもので非常に参考になる。2009年に刊行された著書『「中国なし」で生活できるか』(丸川知雄著・PHP研究所)の内容をベースにしていることを冒頭に言及している、印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。１．2008年に「毒餃子事件」があったが、その前年から、日本のメディアは「中国食品は危険」というキャンペーンを展開していた。著者は中国の産業経済を研究しており、日本向けの食品や衣類の生産工場などに行く機会が多く、日本へ輸出される中国製品が非常に厳密に品質管理をされている実態とことなり、中国人が日夜頑張っているのに、あたかも中国の肉まんがみんな段ボールで作られているかのような面白おかしい報道で、こうした人々の努力が無になるのは大変おかしいと感じた。餃子事件から2年が経過し、世間の目もようやく冷めてきた時期に、改めて日本の生活が中国製品にどれほど依存しているのかを取り纏、上記の著書を執筆した。
２．民放の報道番組に協力する機会があり、テレビ局の人が、日本の中国に対する貿易依存度は何%かという質問をした。質問者も貿易依存度が何を意味するか定義をしらなかった。同じ質問を毎年のように大学院生にも投げると、大体30%くらいという回答する。そのテレビ局にいたゲストの某食品表示問題評論家も、某シンクタンクの中国経済専門家も30%という答えである。著者の答えは「せいぜい5%。多分、もっと低い」であった。
３．一般に、「貿易依存度」といえば国際経済学では明確な定義がある。例えば輸入依存度の定義は、輸入額を国内総生産(GDP)で割ったものである。日本の場合、輸入依存度は10数%である。中国はもう少し高いが、それでも25%ほどである。「日本の中国に対する貿易依存度」を、国際経済学で使われる輸入依存度に当てはめると、「中国からの輸入額」÷「日本のGDP」になり、2.4%という意外に小さい数字になる。
４．私たちの生活はそんなに中国に依存していない。たしかに、輸入も輸出も中国の存在感は高まっている。日本の最も重要な貿易相手国は、数年前まではアメリカで、戦後一貫して日本の輸出におけるアメリカの割合は30%前後を占めていた。しかし、中国経済が目覚ましく伸びてきて、昨年は日本の中国への輸出が、アメリカへの輸出を抜いた。日本の輸入元としては以前から中国が一位である。
５．私たちは、中国に一体何を依存ているのか？ 一般には中国産といえば衣服というイメージがあるが、現状はもっと多様な製品を日本は中国から輸入している。最近では電気機械の輸入額が繊維製品を僅かに上回っている。電気機械のうちパソコンの輸入が非常に多い。また、繊維製品はほとんどが衣類とその付属品である。中国からの食料品輸入は少なく、大部分はパソコンや衣服である
６．著者が小学生だった1974年頃、中国物産展に行ったが、ほしいものが見当たらず、150円の万年筆を買ってみたが、すぐにインキが漏れて使い物にならなかった。中国製品を買うようになったのは、日本企業が中国で製造を始めてからである。
７．食品について見ると、日本が農水産物を最も多く輸入している相手はアメリカで、中国は意外に少なく、アメリカの約半分である。その割にウナギやシイタケ、餃子など中国製を見る機会が多い。アメリカ産は、ピーナツバターやスナック菓子などしか思い浮かばないのは、アメリカから輸入されるトウモロコシは牛や豚が食べる飼料となり、大豆は搾られて食用油になり、小麦は大部分がパンやうどんになるので、アメリカからの食料品輸入は目立たない。中国産の食品は種類が多い。お菓子、香辛料、果物、冷凍鮫子などの各種加工食品は、種類が豊富なので目立つ。「中国からの輸入量」÷「日本国内での供給量」で計算すると、野菜と果物では、タケノコの依存度が一番高い。日本国内で売られているタケノコの89%が中国産である。同じ89%で依存度が高いのは緑豆であるが、もっぱらモヤシの原料になる。モヤシは100%日本国産とうたっているが、それは中国から輸人した緑豆を日本の工場で発芽させている。
８．落花生は74%を中国に依存している。2種類のピーナツの袋詰め商品が並んでいた。一つは中国産で169円、一つは千葉産で428円です。中国産のほうが多く、有機栽培マーク入りである。これは日本のJAS法で厳しく管理され、日本の係官が畑に行き、間違いなく有機栽培をしていることを確認して付けられる。値段は格段に中国産が安い。1グラム当たり単価で約5分の1である。著者は両方買って食べてみたが、味はほぼ同じである。こんなに値段が違う理由は、千葉産の中間マージンの額の差である。
９．ニンニクも中国産への依存度が69%と高い。マツタケは依存度67%。1953には日本でマツタケが6500トン採れたが、2006年には僅か65トンしか採れなかった。そこで、日本はこの年、1270トンを輸入した。干しシイタケも67%を中国に依存している。りんごジュースの6割を中国に依存しているのも意外である。私たちが買う商品に、濃縮りんごジュースの産地は一切書いていない。日本の工場でその時々に入手した産地のりんごジュースを混ぜ、水で薄めて、「日本産」になる。
１０．中国から輸入されたチンゲン菜は、一つのコンテナの中の何個かを抜き取って検査をする。万が一、農薬が少しでも基準を上回っていれば、全部焼却処分となる。その厳しさのために中国からの輸入農産物は、検査に引っかかる率が低く、2008年は0.29%です。日本が輸入している全食品の平均0.5%よりかなり低い。「中国から輸入される食品は安全性が高い」といって良い。
１１．東京湾で潮干狩りといっても、事前に中国産ハマグリをまいている。だから、東京湾で採ったハマグリを「千葉産」だといったら、産地偽装になる。ウナギは、中国と台湾に非常に依存している。多くのウナギは、かば焼きまで加工されて中国から輸入される。ウナギについては数多くの産地偽装事件が報道されているが、業界の人でも日本産と中国産を食べ分けられない。実は、中国産といっても出身地は日本です。日本の川でシラスというウナギの稚魚を捕まえ、それを中国の養殖池で育て、かば焼きにして持って帰り、中国産である。正確には、生まれたのは南マリアナ諸島で、稚魚になって日本の川に来る。それを中国の養殖池で育てるので、食べてもわからないのは当然である。
１２．日本の食料については、マスコミで自給率の問題がよく話題にされる。2006年には39%まで落ち込み、その後、41%まで回復したが、先進国の中で最悪だといわれる。しかし、食料自給率が低いから問題だという話自体は、もっとよく考えないといけない。食料自給率を問題にする人たちが、その意味を正しく理解しているかどうか疑問である。（大手メディアの勉強不足も問題である）
に思います。
１３．「カロリーベースの食料自給率」と「生産額ベース」で自給率はことなる。日本人は、一日あたりの平均摂取カロリーは2273キロカロリーで、うち、576キロカロリーは米から摂取している。その米は96%が国産です。従って、555キロカロリーまでは国産でカロリーを摂っている。畜産物では一日388キロカロリーを消費している。そのうち、肉として見ると68%が国産である。その肉のうち51%の部分は、輸入された飼料を食べているので、この部分は国産と認められないので、実際は17%しか自給していない。
１４．カロリーが多くて値段の安い畜産物、油脂類、小麦は輸入に頼る一方、カロリーは低いが値段の高い野菜、魚介、果実は国産の割合が高い。ただし、米は例外である。日本のカロリーベースの食料自給率が低いのは、要するに日本の農業が価格の安い小麦や飼料の生産から、価格の高い野菜や果物にシフトした結果であり、経済的に存続するための自然な流れである。カロリーベースの食料自給率を上げたいのであれば、国産野菜の購入を勧めても無意味である。今の野菜の自給率79%を100%にしても、全体に与える影響は僅かである。カロリーベースの食料自給率を上げるなら、日本の農家に小麦や油料作物、飼料の生産を勧めることになるが、それは意味がない。日本の農家を窮地に追いやるだけである。そもそも、食料自給率が低くて何が困るのかという根本問題を日本の政府はきちんと説明していない。
１５．衣服に関しては、中国は、世界の衣服輸出の33%を占める世界最大の衣服輸出国である。日本は中国からの衣服を昔から無制限で輸入している。日本の中国産への依存度は、服の枚数で85%、金額で72%と非常に高い。日本政府が国産品にあまりこだわらないのは、「中国産の衣服」のうち、実際に中国にお金が落ちる部分はごく一部だからである。日本で1万円する服があれば、そのうち3600円は日本の小売業者の取り分で、さらに日本の卸売業者が1500円を取る。工場を出た時の値段は4900円くらい。服の価値の中で、布やボタン、糸などの材料費が大体2割を占める。中国の工場で一生懸命縫っているが、1万円の服なら、その工場が手にするお金はせいぜい1900円である。
１６．パソコンについては、世界のパソコンは大半のが中国製である。中国のクワンタや、コンパルなどの台湾企業が作っている。アメリカのデルやヒューレット・パッカードなどはすべて台湾メーカーに製造を委託している。日本だけが特殊な市場になっている。パナソニックや富士通、ソニーなどが日本向けに、日本でノートパソコンを作っている。電機製品は、中国に生産が集中している。アップルのiPod、ニンテンドーのDS、ソニーのプレイステーションも中国で組み立てられている。請け負っているのは、フォックスコンという台湾企業である。中国本土での従業員が70万人、うち42万人がシンセンの工場にいる。この会社は単に組み立てだけでなく、金型やプラスチックケースに非常にも強い。アップルの目を引くスタイルは、フォックスコンの貢献が大きい。日本も家電製品を中国にかなり依存しており、日本企業が現地に展開する工場で作られている。
１７．日本が中国から輸入する家電製品のほとんどは、日本で設計され、中国は生産するだけと言われていた。しかし、中国には設計能力がないというのは過去の話で、事態は刻々と変化している。例えば、携帯電話の設計は中国でも行われている。NTTドコモが数年前に発売したFOMA「シンピュアN」という機種は、中国の設計会社に委託した。NECブランドでも設計は中国である。
１８．2010年3月に、日本と中国の牛乳工場を見学した。中国の工場は人の姿が一人も見えない超近代的な工場で、産業用ロボットが牛乳パックを搬送していた。その後、東京にある大手メーカーの牛乳工場を見学したが、日本の工場の規模も設備も見劣りした。工業の先端を見るには今後は中国へ行かないとだめだという気になった。餃子事件とか中国産冷凍ホウレンソウ農薬事件などがあったが、そういう事件の後、彼らはその教訓を活かし、さらに強くなっている。私たちの生活は、もはや日本だけでは完結できない時代になっている。
（日本の大メディアは日本の業者と結託して、自分達の既得権を守るために中国農産物や工業製品に対して、日本の消費者に不利益になるような情報を流している）
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2010年11月11日
中国の電気自動車の普及計画
日経ものづくりNEWS：2010年11月9日の清水直茂氏（日経エレクトロニクス）の「中国の電動自動車戦略，まずは大型車と小型車，それから普通車へ」という標題の記事が目を引いた。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．中国・清華大学にあるState Key Laboratory of Automotive Safety and Energyは、2020年までの中国の電動自動車技術の方針について報告している。中国政府はまず，エネルギー効率の高いバスなど大型車の電動化と，小型の「新能源車（新エネルギー車）」の開発に注力する。その後，これらの開発で培った技術を普通車に展開する方針で，2020年までに自動車全体での平均燃費20km/Lを目指す。
２．中国は、電動自動車の普及により、2020年までに石油由来のCO2排出量を20％以上減らす考えである。これは1000万トン以上の排出量削減分に相当する。電動化技術の核となる電池については，中国国内での生産能力が2009年時点で900GWhを、2020年に4000GWhまで高める方針である。
３．電動自動車のシンポジウム（中国・深セン，2010年11月5〜9日）において，State Key Laboratory of Automotive Safety and EnergyのDirectorである清華大学教授のOuyang Minggao氏が発表したところによると、中国では2010年末までに、30kWh程度の電池を搭載し、1回の充電当たりの走行距離が200km程度の小型の電気自動車（EV）が15万台普及する。中国政府はこれを、2015年までに数百万台規模、2020年までに数千万台規模まで拡大する方針である。
４．技術開発としては、今後5年間は要素技術に注力する。電池技術とモータ技術，これらの制御技術である。さらに電動自動車に関する仕様の標準化も推進し、後5年で100以上の標準仕様を策定する方針である。
５．充電インフラの拡充ついては，「Point-Line-Plane（点-線-面）」というコンセプトを掲げる。Point（点）とは，具体的には電池交換システムのことである。交換する電池を管理するシステムなども整える。Line（線）に関しては，都市と都市を結ぶ基幹道路沿いに急速充電スタンドを設置することを意味する。Plane（面）とは，電力ネットワーク網の中に組み込まれた普通充電スタンドを設置することである。
６．中国は電動自動車技術の開発と普及に向けて，2015年と2020年までの目標値を示したロードマップを策定している。それによると，2015年で、車両の航続距離についてはEVで100〜150kmに，プラグイン・ハイブリッド車（PHEV）のEV走行距離で30〜50km程度にする。電池コストに関しては，現状のリチウムイオン2次電池が1Wh当たり4.5元（約54円）を1.5元（約18円）にまで下げる。質量エネルギー密度は現状の80Wh/kgを120Wh/kgまで高める。
７．2015年までの普及のための施策として，政府などの補助金を活用して電動自動車の普及を推進する。充電インフラに関しては，普通充電スタンドや急速充電スタンド，蓄電池の交換システムを広域に設置し，電力網と車両の間で電力をやり取りする「Vehicle to Grid（V2G）」技術を導入する。さらに，新しいビジネスとして蓄電池のリース・モデルを立ち上げることも検討する。
８．2020年の段階では，車両の航続距離をEVで160〜250kmに，PHEVのEV走行距離で50〜70kmにする。電池に関しては、リチウムイオン2次電池の質量エネルギー密度を250Wh/kgに高める。さらに、400Wh/kgを実現できる新材料を使った電池の開発も行う。電池の出力密度は5000W/kgを目指す。
９．普及面では，補助金なしで電動自動車の販売が進む形を目指す。充電インフラに関しては、車両や充電スタンド，電力網などをネットワークでつなぎ、V2Gや「V2H（Vehicle to Home）」，「V2V（Vehicle to Vehicle）」などが可能な高度なシステムの実現を目指す。
１．中国・清華大学にあるState Key Laboratory of Automotive Safety and Energyは、2020年までの中国の電動自動車技術の方針について報告している。中国政府はまず，エネルギー効率の高いバスなど大型車の電動化と，小型の「新能源車（新エネルギー車）」の開発に注力する。その後，これらの開発で培った技術を普通車に展開する方針で，2020年までに自動車全体での平均燃費20km/Lを目指す。
２．中国は、電動自動車の普及により、2020年までに石油由来のCO2排出量を20％以上減らす考えである。これは1000万トン以上の排出量削減分に相当する。電動化技術の核となる電池については，中国国内での生産能力が2009年時点で900GWhを、2020年に4000GWhまで高める方針である。
３．電動自動車のシンポジウム（中国・深セン，2010年11月5〜9日）において，State Key Laboratory of Automotive Safety and EnergyのDirectorである清華大学教授のOuyang Minggao氏が発表したところによると、中国では2010年末までに、30kWh程度の電池を搭載し、1回の充電当たりの走行距離が200km程度の小型の電気自動車（EV）が15万台普及する。中国政府はこれを、2015年までに数百万台規模、2020年までに数千万台規模まで拡大する方針である。
４．技術開発としては、今後5年間は要素技術に注力する。電池技術とモータ技術，これらの制御技術である。さらに電動自動車に関する仕様の標準化も推進し、後5年で100以上の標準仕様を策定する方針である。
５．充電インフラの拡充ついては，「Point-Line-Plane（点-線-面）」というコンセプトを掲げる。Point（点）とは，具体的には電池交換システムのことである。交換する電池を管理するシステムなども整える。Line（線）に関しては，都市と都市を結ぶ基幹道路沿いに急速充電スタンドを設置することを意味する。Plane（面）とは，電力ネットワーク網の中に組み込まれた普通充電スタンドを設置することである。
６．中国は電動自動車技術の開発と普及に向けて，2015年と2020年までの目標値を示したロードマップを策定している。それによると，2015年で、車両の航続距離についてはEVで100〜150kmに，プラグイン・ハイブリッド車（PHEV）のEV走行距離で30〜50km程度にする。電池コストに関しては，現状のリチウムイオン2次電池が1Wh当たり4.5元（約54円）を1.5元（約18円）にまで下げる。質量エネルギー密度は現状の80Wh/kgを120Wh/kgまで高める。
７．2015年までの普及のための施策として，政府などの補助金を活用して電動自動車の普及を推進する。充電インフラに関しては，普通充電スタンドや急速充電スタンド，蓄電池の交換システムを広域に設置し，電力網と車両の間で電力をやり取りする「Vehicle to Grid（V2G）」技術を導入する。さらに，新しいビジネスとして蓄電池のリース・モデルを立ち上げることも検討する。
８．2020年の段階では，車両の航続距離をEVで160〜250kmに，PHEVのEV走行距離で50〜70kmにする。電池に関しては、リチウムイオン2次電池の質量エネルギー密度を250Wh/kgに高める。さらに、400Wh/kgを実現できる新材料を使った電池の開発も行う。電池の出力密度は5000W/kgを目指す。
９．普及面では，補助金なしで電動自動車の販売が進む形を目指す。充電インフラに関しては、車両や充電スタンド，電力網などをネットワークでつなぎ、V2Gや「V2H（Vehicle to Home）」，「V2V（Vehicle to Vehicle）」などが可能な高度なシステムの実現を目指す。
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2010年09月27日
電気自動車の普及のための社会インフラは日本は出遅れている
9月19日付のNHKのBS放送の「世界ふれあい街歩き・アルプスが見える街�轡襯�ーノ〜スイス〜」と、９月16日付けの日経Automotive Technologyに「Daimler社が”Aクラス”のEVを生産開始」という櫛谷さえ子氏の記事を読むと、電気自動車の普及に関してば、日本は必ずしも進んでいないようだ。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。１．スイスのイタリア語圏ティチーノ州のルガーノ市の街歩きで、ルガーノ大学の白亜の校舎に向かって歩いて行くと、正門前の道の路上パーキング見えてくる。良く見ると、車からはコードが伸びていて、道端の機械までつながっている。見上げると機械の標識にはコンセントのマークがある。駐車中に充電することのできる電気自動車専用の駐車スペースである。
２．利用者に聞くと、日々の充電は無料で、年間使用料金は100フラン(約8300円)。使うためには充電器のカバーを開ける鍵が渡される。ティチーノ州すべての充電器を使える。
３．ドイツDaimler社は、電気自動車「Aクラス E-CELL」の生産を開始した。ドイツのRastatt工場でガソリンエンジン車の「Aクラス」と同じラインで生産する。生産台数は500台で、ドイツやフランス、オランダなど、いくつかの欧州諸国でリース販売する予定である。
４．Aクラス・E-CELLのモータ駆動システムは「Bクラス・F-CELL」と同じで、搭載したLiイオン2次電池は「smart fortwo ed」と同じ。駆動システムを前部に、二つのLiイオン2次電池は床下に搭載することで、荷室容量をガソリン車並みの435〜1370Lとしている。
５．電池容量は二つ合わせて36kWhで、1回の充電で走行できる距離はNEDCモードで200km以上である。モータの定格出力は50kW（68PS）で最高出力が70kW（95PS）、最大トルクは290N･m。停止状態から100km/hまで14秒で達する。最大限に加速した場合、電池残量レベルと電池温度によってキックダウン機能が働く。最高速度はリミッタ付きで150km/hである
５．電池の冷却システムは、水とグリコールを混ぜた液冷式で、低温の冷却回路をベースにしている。外気温が非常に高い場合、冷却機能を高めるためエアコンの冷媒も使う。駆動システムと車載充電器は別の冷却回路で冷やす。12Vの車載エレクトロニクスシステムには2次電池からDC/DCコンバータを介して電力を供給する。エレクトロニクスシステムは、2次電池の負荷を最小限にするため、冷暖房などを制御する機能もある。
６．2次電池には単相交流230Vか、家庭の電源ボックスや公共充電システムの3相交流400Vから充電できる。100kmを走行できるまで充電するには、単相交流230Vで約8時間かかり、3相交流400Vでは3時間に短縮できる。smart fortwo edと同様に「SmartCharge Communication」をベースとした充電管理システムを採用する。このシステムにより充電量や個人認証などの情報を充電ポイントに交換することで、電気代の請求が容易になっている。
７．車を長時間使わない場合は、深夜など電気料金が安い時間に充電するように設定できる。誤って充電ケーブルをつないだまま走行しないように、充電中は自動的にイモビライザが作動する。そのほか、充電の進捗状況や電池残量を携帯電話などで確認できる機能も搭載している。
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2010年09月12日
ヒンズー教のインドで資本主義が定着する条件は？
「フランシス・フクヤマ著、渡部昇一訳：歴史の終わり（下）、1992年」を当ブログで何度か紹介しているが、今の時勢と重ね合わせて見ると面白い。最近、ススキ自動車がインドに進出し生産台数は本国の日本と同程度とのことであり、インドへの関心が一層高まっている。本書のインドにかかわる記述の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
１．ヒンズー教は貧困を正当視しているという事例をもとに、多くの社会科学者たちは、宗教は工業化とともに衰退する「伝統的文化」の一つだと考えてきた。宗教上の信念は根本的には非合理的なものであり、それゆえに近代資本主義を構成している合理的な貧欲さの前に屈服しなければならない、というのがその論拠である。
２．ウェーバーやベラーが正しいとするなら、宗教上の信念の特定の形態と資本主義とのあいだには根本的な緊張関係などまったくなかった。たしかに資本主義は、それがヨーロッパ型であれ日本型であれ、天職としての労働、すなわち消費のためではなく労働それ自体のための労働を促した宗教的原理のおかげで、きわめて容易に経済的に発展した。
３．自由主義経済の私欲を満たすという問題に、理性を導入することを通じて際限なく自らを富ませる人間を正当化する教義は、資本主義社会の大部分を説明してくれるかもしれない。しかし、もっと競争が激しくダイナミックに動く資本主義社会については十分な論拠にならない。
４．ある資本主義社会が最高の成功を収めて世界の頂点にのしあがったとすれば、それは、その社会が根本のところで非合理的かつ前近代的労働倫理をたまたま持ち合わせていたためである。一方ではその労働倫理が、労働そのものが報酬と見なされるべきだとの理由から人々に禁欲的生活をもたらす。その点を考えると、われわれの合理的かつ自由主義的な経済活動を維持していくために、あるいは世界の経済大国のなかのトップクラスにとどまるために、ある種の非合理的な「気概」は依然として欠かせない。
５．ヨーロッパや日本における労働倫理の宗教的起源がどんなものであれ、現代社会が全面的に世俗化することによって、いまや独自の精神的源泉から完全に切り離されている、と反論する向きもある。人々は労働をもはや「天職」ではなく、資本主義の諸法則が命ずるとおりの、合理的な私益追求のためのものだと考えている。
６．資本主義的な労働倫理がその精神的源泉から訣別したこと、そして消費を積極的に認めるような文化が成長した現実を見て、多くの研究者は、労働倫理の急激な衰退とそれによる資本主義そのものの弱体化を予言するようになってきた。「豊かな社会」の実現は、人々を労働よりもむしろ余暇の満喫を追い求める方向へと導く。
７．今日では、ウェーバーが描いた禁欲的な倹約の化身のような企業経営者などほとんどいない。だから労働倫理は、「自己実現」とか、単なる労働ではなく「有意義な仕事」をしたいという欲求のような、禁欲主義とは相反する他の世俗的な価値が助長されることによって徐々に崩されていく。労働倫理が依然として根強く残っている日本でも、重役や経営者たちは、欧米の例にならって、自国の文化の精神的源泉から切り離され世俗化しているため、将来的には、この国でも労働の価値の衰退というプロセスが問題となってくる。
８．労働倫理の衰退に関する以上のような予言がアメリカにあてはまるかどうかは、まだわからない。1970年代に指摘された労働倫理の衰退化の傾向は、少なくともアメリカの専門職や経営者層のあいだでは逆転してきたようにも見える。その理由は、文化的な面ではなく、むしろ経済的な面にある。1980年代にアメリカ国民の多くの層は、実質的な生活水準の低下や雇用の不安定化に見舞われ、これまでの生活水準を維持するにはもっと勤勉にならねばいけないことを悟った。
歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間
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１．ヒンズー教は貧困を正当視しているという事例をもとに、多くの社会科学者たちは、宗教は工業化とともに衰退する「伝統的文化」の一つだと考えてきた。宗教上の信念は根本的には非合理的なものであり、それゆえに近代資本主義を構成している合理的な貧欲さの前に屈服しなければならない、というのがその論拠である。
２．ウェーバーやベラーが正しいとするなら、宗教上の信念の特定の形態と資本主義とのあいだには根本的な緊張関係などまったくなかった。たしかに資本主義は、それがヨーロッパ型であれ日本型であれ、天職としての労働、すなわち消費のためではなく労働それ自体のための労働を促した宗教的原理のおかげで、きわめて容易に経済的に発展した。
３．自由主義経済の私欲を満たすという問題に、理性を導入することを通じて際限なく自らを富ませる人間を正当化する教義は、資本主義社会の大部分を説明してくれるかもしれない。しかし、もっと競争が激しくダイナミックに動く資本主義社会については十分な論拠にならない。
４．ある資本主義社会が最高の成功を収めて世界の頂点にのしあがったとすれば、それは、その社会が根本のところで非合理的かつ前近代的労働倫理をたまたま持ち合わせていたためである。一方ではその労働倫理が、労働そのものが報酬と見なされるべきだとの理由から人々に禁欲的生活をもたらす。その点を考えると、われわれの合理的かつ自由主義的な経済活動を維持していくために、あるいは世界の経済大国のなかのトップクラスにとどまるために、ある種の非合理的な「気概」は依然として欠かせない。
５．ヨーロッパや日本における労働倫理の宗教的起源がどんなものであれ、現代社会が全面的に世俗化することによって、いまや独自の精神的源泉から完全に切り離されている、と反論する向きもある。人々は労働をもはや「天職」ではなく、資本主義の諸法則が命ずるとおりの、合理的な私益追求のためのものだと考えている。
６．資本主義的な労働倫理がその精神的源泉から訣別したこと、そして消費を積極的に認めるような文化が成長した現実を見て、多くの研究者は、労働倫理の急激な衰退とそれによる資本主義そのものの弱体化を予言するようになってきた。「豊かな社会」の実現は、人々を労働よりもむしろ余暇の満喫を追い求める方向へと導く。
７．今日では、ウェーバーが描いた禁欲的な倹約の化身のような企業経営者などほとんどいない。だから労働倫理は、「自己実現」とか、単なる労働ではなく「有意義な仕事」をしたいという欲求のような、禁欲主義とは相反する他の世俗的な価値が助長されることによって徐々に崩されていく。労働倫理が依然として根強く残っている日本でも、重役や経営者たちは、欧米の例にならって、自国の文化の精神的源泉から切り離され世俗化しているため、将来的には、この国でも労働の価値の衰退というプロセスが問題となってくる。
８．労働倫理の衰退に関する以上のような予言がアメリカにあてはまるかどうかは、まだわからない。1970年代に指摘された労働倫理の衰退化の傾向は、少なくともアメリカの専門職や経営者層のあいだでは逆転してきたようにも見える。その理由は、文化的な面ではなく、むしろ経済的な面にある。1980年代にアメリカ国民の多くの層は、実質的な生活水準の低下や雇用の不安定化に見舞われ、これまでの生活水準を維持するにはもっと勤勉にならねばいけないことを悟った。
歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間
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yuji5327 at 06:20│トラックバック(0)
