エネルギー問題

2020年08月02日

アメリカのシェールオイル企業は中小が多く、社債を発行して資金を集め、それを元手にしてシェールオイルを採掘している。


「池上彰著:知らないと恥をかく世界の大問題11、、KADOKAWA 2020.6.103」
は参考になる。「第1章 トランプ再選はあるのか? アメリカのいま」の概要の印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して自分のコメントもカッコ内に付記して纏めると以下のようになる。
1.新型コロナウイルスによる感染が中国の武漢で始まってすぐ、北京のアメリカ大使館駐在の情報機関職員は、この情報をつかんでワシントンに報告していた。この情報を受けて、ドナルド・トランプ大統領は1月末、アメリカ国民に対して中国への渡航を原則禁止した。ここまでは対応が早かったが、その後、感染拡大対策を取ると経済への悪影響が出て株価が下がることを心配した大統領は、4月になればウイルスは消滅する、などと根拠のない楽観論を振りまいた。その結果、アメリカ国内での感染を防ぐことができず、感染者数も死者数も中国を抜いてしまった。
2.トランプ大統領も万事休す、で2020年3月13日、国家非常事態を宣言した。好調だったアメリカの株式市場は暴落し、本格的な対策に乗り出した。株価はトランプ再選の行方を大きく左右する。アメリカでは日本の確定拠出年金にあたる401kという制度が1980年代に導入され、以降急速に普及した。
3.アメリカの労働者は給料天引きで401kを通して投資信託など株式に投資している。日本よりはるかに多くの人が株式市場の動向に敏感で、株価を上げてくれる大統領がよい大統領というわけである。1992年、民主党候補となったビル・クリントンが、2期目を日指した共和党現職ジョージ・H・W・ブヅシュ大統領(パパ・ブッシュ)と戦って勝利を収めた。そのときクリントン陣営の内輪でのキャッチフレーズが「大事なのは経済なんだよ」というものだった。つまり、2期目を目指す現職のパパ・ブッシュは湾岸戦争で勝ったと言っているけれど、国民は湾岸戦争で勝ったからといってブッシュを支持するわけではない。経済を立て直せるかどうかだ。クリントンとしては経済問題を論戦の中心に据えれば勝てると考えた。
4.スタッフに対して、「経済対策を重点的に訴えろ」と発破をかけた。その結果、ブッシュ大統領はジミー・カーター大統領以来という1期限りの大統領で終わった。大統領になったクリントンは本当に経済の立て直しに成功し、クリントンの任期中にアメリ力経済は大きく成長。さらにはlTバブルにまで発展した。ただし、その後は息子のブッシュが後を引き継ぎ、リーマン・ショツクが起きた際になすすべを知らず、経済がまためちゃくちゃになった。
5.次のバラク・オバマが8年かけてやっと経済を立て直したが、その後に大統領になったトランプが、好調なアメリカ経済について、「俺のおかげだ」と自慢した。しかし新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ経済は危機的状況にある。トランプ大統領としては自分の再選戦略が危機に陥り、なりふり構わぬ対策でこれを乗り切ろうとしている。そこで問題なのは、非常事態宣言を早く止めて、経済活動を元に戻そうとしているが、感染防止対策が不十分なまま宣言を解除したら、再び感染が拡大する恐れがあることである。
6.そんな中、追い打ちをかけるように原油価格が暴落した。2020年、年明け1バレル=70ドル近くだった原油価格が4月には、国際指標となるニューヨークの先物市場で一時マイナスになる場而もあった。マイナスとは、「お金を払うから原油を引き取ってください」ということである。新型コロナウイルスで世界経済が停滞し、石油の需要に影を落としている。先物価格の取引は、石油産業のみならず、投資家も参加できる。原油価格が下がったので、手放そうとしたが、買い手がいない。このままでは原油を引き取らなければならないが、貯蔵場所がない。そこで「お金を払うから引き取って」ということになった。
7.オイル・ショックといえば「供給不足」が一般的だったが、今回は「供給過多」が原因である。アメリカがシェール革命により世界最大の産油国になり、もともと価格が上がりにくくなっていたうえに新型コロナが市場を襲った格好です。2020年3月6日、OPEC加盟国と非加盟国のロシアは、ウィーンで閣僚級会合を開いた。会議をリードしたサウジアラビアは「産油量を減らして、原油価格の下落を止めるべきだ」と主張した。しかし石油市場でのシェア低下を恐れたロシアは減産に反対。交渉は決裂した。この結果、原油価格は一段と下落した。
8.サウジアラビアは、「産油量の削減が認められないなら、むしろ増産してやる」と逆切れ。原油価格は一段とドがったのです。現在、世界の産油国のトップはアメリカ、2位がサウジアラビア、3位がロシアです。サウジアラビアは何が狙いだったのか。いまやシェール革命によって世界トップの産油国となったアメリカの石油産業に打撃を与えることが目的でした。シェールオイルとは、シェール層と呼ばれる地層の中に閉じ込められている石油のこと。2000年代にアメリカで、このシェール層から石油を取り出す技術が開発され、アメリカは一躍世界最大の産油国に躍り出たのです。しかし、採算ラインで言えばいちばん高いのがアメリカのシェールオイル産業で、1バレルあたり50ドル程度(シェールオイル企業の採算ライン)とされる。20ドル台では、中小企業が多いアメリカのシェールオイル企業はバタバタと倒産してしまう。
9.サウジアラビアの採算ラインは低く、1バレルが20ドルでも耐えられる。しかしサウジアラビアの弱点は、石油に対する国の経済の依存度が高いことである。石油産業は採算割れしないがが、利益率は急速に低下し、石油頼みの財政の悪化が深刻である。アメリカのシェールオイル企業は中小が多く、社債を発行して資金を集め、それを元手にしてシェールオイルを採掘している。中小企業が多いので、信用が低く、発行する社債の金利は高くなっている。これは「ジャンク債」という。「ジャンクフード」の「ジャンク」と同じで、「ガラクタ」「低品質」という意味である。
10.アメリカでは、こうした信用がいまひとつのジャンク債でも金利が高いのでリスクを取って購入している金融機関が多数ある。シェールオイル産業は借金をしてオイルを掘っている。原油価格が高ければ借金を返せるが、採算割れが続けば倒産して債務不履行になる。そうなればジャンク債を購入している金融機関は大きな損害を受ける。これに焦ったトランプ大統領は、OPECやロシアに働きかけ、結局、石油の減産で合意したが、価格の低迷は続いている。もし金融不安に火がついたら、リーマン・ショックの二の舞になりかねません。新型コロナウイルスの影響で、ただでさえ世界経済が深刻な状態なのに、そこに金融不安が追い打ちをかけかねない。


yuji5327 at 06:29 

2020年07月20日

LNGはややクリーンエネルギーに近いが、石炭はそうではない。とっくに石炭を使わない状況である。

2020/7/17付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点(発行部数 157,275部)は「エネルギー計画/富士通/米テスラ〜テスラは「電気自動車業界のトヨタ」になれるのか」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日経新聞は10日、「エネルギー政策、不作為に限界」と題する記事を掲載した。政府は、世界的な脱炭素の流れに沿って、エネルギー計画を見直す動きを加速させている。しかし、原発は再稼働が進まない上、国民の信頼回復もままならない。現実を見据えたエネルギーミックスの議論を早急に始めるべきとしている。
2.日本の電源別の発電電力量の構成比を見ると、福島第一原発事故の後、かつて30%以上の割合を占めていた原子力発電が今では10%未満に落ちている。一方で、液化天然ガス(LNG)や石炭の割合が増加しています。LNGはややクリーンエネルギーに近いと言えるかもしれないが、石炭はそうではない。本来ならとっくに石炭を使わない状況になっているはずだった。
3.世界的な脱炭素の流れで、今あらためて計画されているのは、2035年をめどに石炭による発電の約8割を削減していく、というものである。脱炭素を実行するのであれば、8割減などと言わず「石炭をゼロにする」という目標をまず明確に決め、原油生だきなどの中途半端なものも一切やめるべきである。その上で、再生可能エネルギーの割合を全体の約20%まで引き上げる、という方針が良い。この再生可能エネルギーの中には水力発電は含まない。同時に、利用するエネルギー消費の効率も改善していくことが重要である。
4.これは、例えば、エアコンやモーターなどの技術を向上させることで実現可能なはずである。全体でエネルギー消費の効率を40%ほど改善させる必要があると。「再生可能エネルギーの割合を20%まで引き上げ」「エネルギー消費の効率を40%改善する」という、この2つの施策を実行できれば、原子力のエネルギーを使わなくても、ブラックアウトなどを起こすことなく、問題なく生活できる。
5.他国のように、日本でも再び原子力エネルギーを活用できる可能性があるか?というと、やはり非常に難しい。かつての原子力行政は電力会社に任せっきりにしたために、大失敗した。今度は国が主導権を握ってできるか?というと、それを担える政治家が日本にはいない。例えば、反対する人に対して責任を持って説明するという1点を考えただけでも、それができる政治家が思い浮かばない。以前、大前氏が、福島第一原発事故のレポートを書き上げて、政府に提出したとき、何人もの政治家にレポートを見せて説明したが、誰もが及び腰で、「選挙の地元民に合わせる顔がない」などと言うだけで、自ら責任を背負い取り組もうという人は、一人もいない。今後の方針としては、再生可能エネルギーの割合を20%まで増やし、同時にエネルギー消費の効率を40%ほど改善させる、という2点が絶対条件である。
6.エネルギー消費の効率を改善するという点を見逃している人が多い。米国では、建物からエネルギーが逃げないように構造的な工夫を施している。日本の家屋は特にエネルギーが漏れやすいので、こういう事例も参考になる。
7.富士通が国内のグループ会社を含めたオフィススペースを、今後3年を目安に半減させる見通しである。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、国内で働く全社員8万5000人を対象に在宅勤務を推奨したが、今後もこれを継続するとともに、勤務時間や評価など新たな人事制度作りも進める。在宅勤務を前提とする新たな人事制度を作る際、「ジョブ型」の契約書を作ることが大前提で必須になる。
8.しかし、この時点で多くの日本企業が苦戦する。なぜなら、「ジョブ」を定義できる人がほとんどいないからである。例えば、ジョブ型の契約で採用する場合には、「仕事内容」「能力」「経験」「達成度合い」「それぞれに応じた年俸」などを明確に定義する必要がある。大前氏が在籍していたマッキンゼー等の米国企業なら、こうしたことを明記しているが、大半の日本企業では、それぞれの「ジョブ」をあいまいにしている。生命保険のセールスレディなどは、日本の中でも明確に「ジョブ」が定義されている職種と言える。9.富士通でも日立でも在宅勤務に移行する方針とのことだが、人事部の中に、「ジョブ」を明確に定義できる人材がいるのか疑問が残る。今採用されている人たちは「ジョブ型」として採用てないから、「ジョブ型に変更する」と言われても、受け入れるのは難しい。仮に仕事のパフォーマンスが悪くても、日本では簡単に従業員を解雇できないし、制度上の問題が発生する可能性がある。
10.米テスラの時価総額が1日、トヨタ自動車を初めて上回り、世界首位となった。環境規制が世界で広がり、電気自動車(EV)の普及が進むとの期待から、株価が急速に値上がりしている。トヨタの時価総額を上回ったテスラが、電気自動車の業界で、トヨタのような世界的なメーカーとして君臨できるかどうかは、現時点ではわからない。その答えは、イーロン・マスク氏の後、2〜3世代にわたって経営が引き継がれたときにわかる。
11.数十年後の電気自動車業界で、テスラが、今のトヨタやGMに匹敵するような立場になっていれば、今の期待値に相当する企業に成長したと言える。トヨタで言えば、豊田喜一郎氏が創業してから、ファミリー経営者が続き、その後一度は外様の経営者に任せ、今は再びファミリー経営者に戻っている。この数十年を経て、トヨタも今の時価総額に値する企業になっている。テスラに当てはめれば、イーロン・マスク氏は豊田喜一郎氏であり、ヘンリー・フォード氏である。
12.内燃機関の自動車メーカーの歴史を見れば、トヨタ、フォード、GM、いずれの企業も、ここまで成長するのに数十年を要している。これは電気自動車業界でも同様である。イーロン・マスク氏の後継者が、数世代に渡って優秀な経営者として、テスラを成長させなければならない。そう考えると、テスラの時価総額は今がピークであり、今後は下がるしかない。
13.今の高い時価総額を利用して、例えば電気自動車に強みがある日産を買収する、という手を打つのも面白いが、イーロン・マスク氏は自分自身の設計思想を実現していくことに喜びを見出す人なので、現実的に日産を買収する可能性は低い。イーロン・マスク氏は非常に気難しく、また気が短いタイプである。1つの事業に固執せず、嫌になったらすぐに手放すようなところもある。その意味でも、イーロン・マスク氏が後継者を見つけ、かつ、その後継者が数10年に渡って引き継がれていくのは、難しい。
14.トヨタの時価総額を抜いた後、さらに時価総額が増加しているテスラだが、利益面ではいまだに純損失が出ている。将来に対する期待値が高いのは理解できるが、トヨタのような1000万台レベルに成長するのは、並大抵のことではない。



yuji5327 at 06:31 

2020年02月29日

次の選挙、地位を最重要視する政治家・官僚の視界は、3年先である。原子力政策を含むエネルギー政策には、30年先を見通す眼力が求められる。


「橘川武郎(東京理科大教授):官即"ゆがめるエネルギー政策・原発建て替え議論回避の無責任 週刊エコノミスト 2020.3.3」参考になる。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる
1. 電力や都市ガスの小売全面自由化は、きわめて有意義な改革である。結果として、福島第一原発事故後9年近くが経週したにもかかわらず、原予力政策は漂流したままである。次の選挙・次のポストを最重要視する政治家・官僚の視界は、3年先にしか及ばない。しかし、原子力政策を含むエネルギー政策を的確に打ち出すためには、少なくとも30年先を見通す眼力が求められる。
2.このギャップは埋めがたく、日本の原子力政策をめぐっては、戦略も司令塔も存在しないという不幸な状況にいたった。原子力をめぐる諸問題を解決する主体は、政治家や官僚ではなく、あくまで民間事業者だになる。原発のリプレースを決断するのも、国や経済産業省ではなく、民間の電力会社しかない。その「民間の電力会社」になりうる唯一に近い存在が、関西電力であったが、金銭授受問題で関電は打撃を受け、首脳陣は総退陣することになった。
3.関電は美浜原発(編井県美浜町)4号機のリプレースを計画しており、これが行き詰まった日本の原子力政策を変える可能性を秘めていた。老朽原発を廃棄し、危険性が低い原発に置き換えつつ依存度低下を進めるという現実的な政策への役割が期待されたが、そのリプレースを切り出す主体が舞台から退場し、日本の原子力発電の未来は閉ざされた。この点こそが、関電金銭授受問題の本質である。
4.原子力政策を含む日本のエネルギー政策をめぐって、これ以上、「戦略も司令塔も存在しない」状況を放置するわけにはいかない。エネルギー基本計画は3-4年ごとに改定されるから、20年度中にも第6次エネルギー基本計画の策定をめぐる議論が始まる可能性が高い。その際には、今度こそ、「30年に原発比率20〜22%」などという実現できっこない絵空事ではなく、リアリズムに立脚した検討が必要となる。その際、有効だと思われるのは、 峺業無し、石炭火力無し」、◆峺業無し、石炭火力有り」、「原発存り、石炭火力無し」、ぁ峺胸厠枠電所有り、石炭火力有り」という4つのシナリオを想定し、それぞれのケースで、エネルギー政策の基本となる「S+3E」について、何が問題になるかを直視するアプローチである。
5.「S+3E」とは、セーフティー〔危険牲の最小化)、エネルギー・セキュリティー(エネルギーの(安定供給)、エコノミック・エフィシェンシー(経済効率性の向上)、エンバイロメント(地球提暖化対策の推進)のことである.


yuji5327 at 06:29 

2020年02月28日

原子力にとっての最大のリスクは、「政治リスク」、厳密に言えば「首相官邸リスク」である。


「橘川武郎(東京理科大教授):官即"ゆがめるエネルギー政策・原発建て替え議論回避の無責任 週刊エコノミスト 2020.3.3」参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.原子力にとっての最大のリスクは、「政治リスク」、厳密に言えば「首相官邸リスク」である。2018年に閣議決定された第5次工ネルギー基本計画は、30年の電源構成を原子力20〜22%、再生可能エネルギー22〜24%、火力56%とするとともに、50年時点で
も原子力に「実用段階にある脱炭素化の選択肢」として高い位置づけを与えた。
2.一方で、安倍内閣は、それまでと同様に第5次計画の策定過程においても原発の建て替え(リプレース)に関する議論を回避し、問題を先送りした。このことは、明らかな矛盾である。というのは、リプレースに正面から取り組まない限り、30年に20-22%の原発比率を確保することはできないし、50年に原子力を「脱炭素の選択肢」として維持することも不可能だからである。
3.ここでリプレースを強調するのは、原発.をどんどん推進せよという意味ではまったくない。脱炭素の選択肢として原発を多少なりとも使い続けるのであれば、危険性の最小化が絶対的な前提条件となるから、より危険性が高い古い原子炉を積極的に廃止し、より危険性が低い新しい炉に置き換えるべきだと考えるからである。
4.リプレースは、「原発.依存度を可能な限り低減する」という国民世論の期待や安倍内閣の公約と矛盾しない。リプレースを行うにしても、30年の原発.依存度は最大限15%程度にまで押し下げるべきである。可能な限り低い依存度の枠内で原発リプレースを進めることが、将来において原発を使用する際の唯一の責任ある道だと言える。
5.安倍内閣がリプレースを回避するのは、選挙がこわいからである。安倍1強時代が7年以上も続いているのだから、そんなはずはないという反論があるかもしれないが、安倍首相が獲得をめざすのは、国会の議席の過半数ではなく、3分の2以上である点である。6.憲法こ改正をめざす首柑からすれば、原子力のような微妙な問題に深入りすることは得策ではない。安倍政権が続く限り、リプレースが正面から取り上げられることはない。リプレースが取り上げられない限り、原子力の未来は開かれない。原子力にとっての最大のリスクは「官邸リスク」だと指摘したゆえんである。
7.昨年発覚し、大きな社会的批判を呼んだ関西電力の金銭授受問題もまた、原発リブレースのゆくえと深くかかわっている。日本の原子力開発は、「国策民営」方式で進められてきた。福島第1原発事故のあと、事故を起こした当事者である東京電力が、福島の被災住民に深く謝罪し、ゼロベースで出直すのは、当然のことであるが、それだけですまない。
8.国策として原発を推進してきた以上、関係する政治家や官僚も、同様にゼロベースで出直すべきであるが、彼らは、それを避けたかった。そこで思いついたのが、「たたかれる側からたたく側に回る」という作戦である。
9.この作戦は、東電を悪役として存続させ、政治家や官僚は、その悪者をこらしめる「正義の味方」となるという構図で成り立っている。その悪者の役回りは、やがて、東電から電力業界全体、さらには自由化に消極的だった都市ガス業界全体にまで広げられた。10.政治家や官僚は、火の粉を被るおそれがある原子力間題については、深入りせず先送りする姿勢に徹した。このように考えれば、福島第1原発事故後に政府が、電カシステム改革や都市ガスシステム改革には熱心に取り組みながら、原子力政策については明確な方針を打ち出してこなかった理由が理解できる。熱心に「たたく側」に回ることによって、「たたかれる側」になることを巧妙に回避しようとしたのである。


yuji5327 at 06:43 

2020年02月23日

国際海運で排出される温室効果ガスは、世界全体の約2〜3%、ドイツ1国分に相当する。排出ゼロへの取り組みは、ほかの産業にも影響を及ぼす。


「岡田広行著:脱炭素化で船舶が大激変 週刊東洋経済 2020.2.22」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して自分のコメントもカッコ内に付記して纏めると以下のようになる。
1.地球温暖化への対策が急務となる中で、海運や船舶のあり方が大きく変わろうとしている。100年以上にわたって主流となってきた重油などの石油系燃料から、温室効果を持つ、二酸化炭素〔CO2の排出が相対的に少ないLNG(液化天然ガス)への転換が急速に進みそうである。その先は、水素やアンモニアといった、CO2を排川しない燃料や、風力など再生可能エネルギーの利用も視野に入りつつある。
2.国際海運のルールを決める国際海事機関〔IMO〕は2018年4月に「温室効果ガス削減戦略」を採択し、「今世紀中のなるべく早期に、国際海運からの温室効果ガス排出ゼロを目指す」との目標を取り決めた。その際、30年時点での目標として「08年比で単位輸送量当たりの温室効塒ガス排出最の40%以上削減」に加え、50年時点での「国際海運全体での温室効果ガス排出総量の50%以上削減」(単位輸送量当たり温室効果ガス排出量の80%以上削減に相当、08年比)という数値目標が決まった。
3.エンジンの出力制限など30年目標達成に実効性を持たせるための具体的な規制内容については現在、日本やデンマーク、中国などが具体案を持ち寄りIMOの専門委員会で議論を続ける。30年目標については、「現在、考えられている対策でクリアできる」(大手海運各社)とみられている。一方、50年目標の達成については、越えねばならないハードルが多い。だが、どのようなルールが導入されるにせよ、既存の船舶を今までどおり運航させることは困難になるうえ、新たに建造される船舶についても燃料の転換が不可避である。
4.国際的な温室効果ガス削減の動きを見据えた仕組みが、国内でもスタートしている。日本郵船と商船三井、九州電力の3社は昨年12月、LNG燃料で運航する載貨重量9万5000トン級の大型石炭輸送船2隻の導入を内容とした基本協定書を締結した。この規模の石炭輸送船の建造は世界で初めてで、23年4月および6月に竣工する予定である。55.LNG燃料については、九電の子会社が福岡県北九州市に持つLNGの陸上出荷設備から2隻に供給する。LNG燃料の長所は、燃焼時の大気汚染物質排出が極めて少ないことにある。一般的な船舶燃料油であるC重油と比べて、硫黄酸化物についてはほぼすべて、窒素酸化物では約80%の削減が見込まれている。
6.一方、CO2排出の削減率は20-30%にとどまる。LNG燃料を用いるだけでは、IMOが目指す温室効果ガス排出ゼロや大幅な削減には届かない。だが、減速航行、船舶の設計改善、風力の活用などと組み合わせることにより、50年目標達成への有力な手段になりうる。加えて日本の強みも生かせる。というのは、海運大手3社はLNGの輸送実績で世界有数であるうえ、船員の訓練などオペレーションでも、従来のLNG輸送船の経験を生かせる。
7.LNG火力発電や都市ガス供給を通じて、日本は世界最大のLNG輸入国になっている。そのため、30以上の港湾にあるLNG受け入れ基地を改修し、供給機能を持たせることも可能である。造船業では数多くのLNG輸送船の建造実績がある。今後、船舶燃料の大部分がNGに切り替わると思う。今後建造する自動車輸送船の燃料についてLNG化する方針である。
8.商船三井は日本で初めてのLNG燃料フェリー2隻の建造を決定した。LNGを燃科とする自動車輸送船については、日本郵船と川崎汽船の発注によって、国内の造船所で2隻の建造が始まっている。いずれも20年秋に竣.工する予定である。LNG燃料を船舶に供給するためのインフラ整備も進みつつある。タンクローリーから船舶への供給方式に続いて、より大量の燃料を短時間で供給できるLNGバンカリング〔燃料供給〕船による供給も具体化してきた。
9.燃料価格の面でも、LNGに追い風が吹き始めた。今年1月に国際海運全体でSOx排出規制が始まったことにより、排煙脱硫装置を設置した船舶でなければ、硫黄分の多いC重油を燃焼させることはできなくなった。脱硫装置を設置していない船の場合、硫黄分の少ない「規制適合油」に切り替えなければならない。この適合油は従来のC重油と比べて割高である。
10.以前とは状況が変わりつつある。バンカリングに対するエネルギーメジャーの日の色も変わってきた」と指摘する。LNG燃料普及のカギを握るのが供給インフラの整備だ.日本郵船は従来の電力やガス会祉向けLNG燃料の輸送にとどまらず、船舶へのLNG燃科の供給業務を新たなビジネス分野に設定した。そのーつが、伊勢湾三河湾での合弁事業であり、九州・瀬戸内地区でも九電、西部ガスなどと協議を進めている。従来の輸送業のみならず、調達など関連分野にも広げる。海外でも、日本の海運会社はLNG燃料ビジネスを始めている。
11.LNGへの燃料転換は、温室効果ガスの排出最の抑制に効果があるものの、それ自体では排出ゼロにはならない。一方で、LNG化は船舶燃料の脱炭素化への移行をスムーズに進めるために有効である。LNG供給で用いられるインフラは、将来、有力なカーボンリサイクルメタンなど、脱炭素化を見据えた代替燃料にも活川できる。
12.IMOで取り決められた50年時点での温室効果ガス削減目標を達成するうえで、以下の2つのシナリオが有力だとされている。1つは、LNGおよびカーボンリサイクルメタンが、現在、船舶燃料のほとんどを占めている石油系燃料の大部分に置き換わるというシナリオがあり、さらに水素およびアンモニア燃料中心のシナリオもある。カーボンリサイクルメタンは、CO2および水素から合成したメタンである。天然ガスの主成分はメタンであるため、既存のLNGインフラに加え、LNG燃料船の技術も使用できる。ただし、生産過程でCO2を発生させないためには、再エネ電力で水を電気分解し、水素を生成しなければならない。それには再エネ電力のコストを抜本的に低減させる必要がある。CO2は、船舶の運航で発生する排ガスから集めることも検討されている。なお、カーボンリサイクルメタン自体が、新たに環境負荷を生まない「カーボンニュートラル」であるとの評価を得られることが前提になる。
13.一方、水素およびアンモニア燃料中心のシナリオでは、メリットとともに、特有の課題がある。水素およびアンモニアは燃焼時にCO2が発生しないため、ゼロエミッション燃料となる。ただし、水素は液化したときの熱量当たり体積がC重油の約4・5倍と大きく、船内に燃料貯蔵のスペースが必要である。また、液化ではマイナスー62度のLNGよりもはるかに低いマイナス253度に冷却する必要があり、供給インフラも一から造らなければならない。アンモニアはガスタービンでの燃焼実績があるうえ、水素と比べて熱量当たり体積が大きくないことから輸送しやすいといった長所もある。一方、毒性や強い臭気に関して設備や安全面での対策が必要になる。燃焼時に発生するNOxにはCO2の約300倍もの温室効果があるため、NOx低減対策も不可欠である。
14.水素と窒素を合成して製造するため、水素製造のコストにも強く影響を受ける。代替燃料には利点とともにさまざまな課題がある。しかし、IMOの目標である50年までに残された年数は多くない。「船の耐用年数を考慮に入れると、ゼロエミッション技術を盛り込んだ実験船を30年あたりまでに竣工させ、その性能を確かめたうえで、一斉に発注するスピード感覚を持って業界横断的に取り組む必要がある。
15.国際海運を通じて排出される温室効果ガスの総量は、世界全体の約2〜3%、ドイツ1国分に相当する。排出ゼロへの取り組みの行方は、ほかの産業にも大きな影響を及ぼす。



yuji5327 at 06:23 

2020年01月16日

再エネ取引の新たな形が出てきているだけでなく、発電予測の精緻化など技術の蓄積から再エネ電力そのものの価格競争力も高まっている。


「岡田広行(本誌)著:脱炭素化を前進させる切り札 勃興する再エネ新ビジネス、週刊東洋経済2019.12.7 」は参考になる。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2つの取引プラットフォームがある。そのーつが、これまで述べてきた電力取引のプラットフォーム。もうーつが、環境価値をやり取りするプラットフォームである。こちらでは自社開発のICT(情報通信技術)機器を太陽光発電設備に設置し、そこから得られた発電情報をプロックチェーンに記録する。この仕組みによって計測したCO2削減量などの環境価値が、国が運営する「Jークレジット制度」の認証を受けらけるようにする。
2.第1陣として、デジタルグリッドの出資者でもある東京ガスグループ、東邦ガスおよび日立製作所が参画。研究所や顧客の建物の屋根に設置した太陽光発電設備の電力の環境価値を測定し、20年1月にプロジェクトの登録審査を受ける予定である。
3.プロックチェーンを用いた新たな手法が認められることで、ビルや住宅など異なる施設での環境価値をまとめて評価する道が開かれる。さらにその先を見据えて、デジタルグリッドは太陽光発電システムを設置した住宅が相互に電力をやりとりする実証試験も進めている。これは電力の「個人間取引」と呼ばれる。
4.電力会社の送配電ネットワークと結ばれつつも、「非同期連系」という技術を用いて、普段からできる限りコミュニティーの範囲内で電力を融通する。送配電ネットワークとの切り離しが容易であるため、災害時の停電リスクも軽減できる。
5.再エネ取引の新たな形が出てきているだけでなく、発電予測の精緻化など技術の蓄積から再エネ電力そのものの価格競争力も高まっている。その実例が、ソニーと東京電力エナジーパートナー(EP)が構築したメガワット級の太陽光発電設備を活用する、自家消費の仕組みである。
6.ソニーのグループ会社が持つ静岡県内の物流倉庫の屋上に東電EPの子会社が太陽光発電設備を設置し、発電した電力を倉庫で使用する。余剰分は、「自己託送」と呼ばれる仕組みによって、地元電力会社の中部電力の送配電線を経由して、ソニーグループの製造工場に供給する。
7.発電量は天候に左右されるが、東電EPはこれまでの研究成果を用いて発電予測を精緻に行うことで、計画と実際の発電量の誤差を縮め、誤差が生じた際に電力会社(送配電事業者)へ支払うインバランス料金を極力少なくする。
8.こうした取り組みによって、通常の電力購入と比べて遜色ないコストでの調達が可能になる。通常の電力のような燃料費の変動もなく、電力料金に相当する設備の利用料は定額になる。事業計画を立てるうえで、エネルギー単価が一定であることは、1つのメリットである。なお、両社の取り組みでは、全体のコストを極力抑えるために、蓄電池の導入はしない。
9.ソニーはこの取組みを20年2月に開始し、再エネ電力の利用率を高める。同社は、自社で使用する電力のすべてを再エネで賄う国際的な活動であるRE100に加盟しており、物流倉庫での自家消費は重要なワンステップとなる。
10.一方、太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせ、従来のように大手電力会社から購入するよりも安い価格で電力を供給すると宣言したのが、再エネビジネスを主力とするネクストエナジー・アンド・リソースである。同社は世界最大手の蓄電池メーカーCATL(中国)
と提携し、「TPO(第三者所有)モデル」と呼ばれる事業を展開する。具体的には、初期負担を伴わない形で発電設備をユーザーの工場やビルの屋根などに設置し、そこで発電した電力をユーザーに供給する。20年6月をメドに開始する予定で、同社が今年7月に開示した事業計画によれば、20年間での総発電コストは東電管内での平均的な電力価格よりも安くできる。
11.その際、ネクストエナジーは、TPO事業者となる電力小売会社と提携し、蓄電池などの部材を販売するだけでなく、取引プラットフォームを提供し、その利用料を受け取る。また、TPO事業者が余った電力を集めたうえで、数年後に新たに創設される需給調整市場(買いとり主体は大手電力の送配電子会社)で販売するビジネスも視野に入れている。
12.従来、販売代理店どに支払ってきた蓄電池などの流通コストを大幅に削減できることから、TPOモデルこそ、コスト競争力において最強の電源。現在の固定価格買い取り制度終了後の再エネビジネスの本命である。相次いで立ち上げられる新ビジネスは、電力業界の新時代到来を物語る。ただ、再エネの大量導入とともに、電力システムのあり方が大きく変わろうとしている。そうした中、個々のビジネスが将来にわたって持続するかは末知数である。変革の過程で勝者もつねに入れ替わる。どの業界でも当たり前のように起きてきたことが、電力業界にも訪れる。


yuji5327 at 06:33 

2019年08月20日

経団連と言えば「老害」の典型だが、現会長の中西宏明氏の発言は度が過ぎ、小泉純一郎元首相からの公開討論の申し入れにを拒否した。


「大前研一著:何年経っても反省しない絶望の原発提言、PRESIDENT、2019.7.19」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. 経団連と言えば「老害」の典型だが、現会長である中西宏明氏(日立製作所会長〕の原発を巡る発言は度が過ぎた。小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」からの公開討論の申し入れに、「絶対ダメという方と議論しても始まらない」と拒否した。その後の4月、経団連は「日本を支える電力システムを再構築する」と題したエネルギー政策の新たな提言を発表した。会見の席上、中西会長は「日本の電力は危機に直面している」としたうえで、かねて経団連が主張してきた原発の再稼働や新増設を改めて求め、さらに原発の運転期間について初めて言及した。
2. 現状、原発の運転期間には「40年ルール」という縛りがある。東京電力福島第1原発の事故を受けて、政府は原子炉等規制法を13年に改正、原発の運転期間を原則40年に制限して、1回限り20年の延長が認められるようになった。つまり原発の運転期間は最長60年なのだが、中西会長はさらなる期間延長を検討すること、そして3・11以降の原発の停止期間の8年を「40年の2割に相当する」として、運転期間から差し引くように求めた。
3. これは東日本大震災と福島第一原発事故以来の国民感情というものをまったく理解していない発言である。原発メーカーの会長が政府に対して堂々とロビー活動している。「原発を止めてもやっていけた」というのが国民の実感であって、稼働年数の延長など誰も望んでいな。原発の運転年数を延長して再稼働しようにも、住民の反対にあってほとんど不可能である。知事選で原発推進派がことごとく敗北している情勢で、原発の運転年数延長、再稼働にまともに取り組む首長が出てくるとは思えない。
4. 原発を再稼働するためには、原子力規制委員会が自分たちも怯えながら作り上げたさまざまな安全基準を全部クリアしなければならない。そのためのコスト、要するに安全対策費は少なくとも5000憶円はかかる。5000億円といえば新設の原子炉1基の値段に相当する。東芝が叶.き川した米国原発大手ウエスチングハウスが開発した最新の加圧水型原子炉は「AP1000」と呼ばれる。この原子炉は炉心溶融を引き起こす崩壊熱がクールダウンするまで補助装置が白己熱で回り続ける仕組みになっているので、福島型の重大事故は起こさないと言われている。約1100..の山力を叩き川すAP1000の値段が5000億円。中国はAP1000型の原発稼働を進めているDH本では原発の新設なんてまったく考えられないし、計画.か止まっている原発の建設再開もほぼ〔寄能。あと数年もすれば、中国のほ・71が先輩になっているだろう。
5. 大前氏は基本的には原発推進論者である。福島の反省を踏まえて、「こうすれば安全は確保できる」というレポートも書いているし、再稼働のための『原発再稼働「最後の条件」も出版している。原発を推進したければ推進する方法はあると思うが、運用責任者であるはずの日本政府に信頼が置けない。再び原発を推進する大前提は、福島の原発事故を徹底的に究明して、事故の検証から導き出した安全対策を実行し、再稼働の条件を明確化することである。地元や国民に対する情報開示は当然だが、政府は福島の原発事故の説明責任をいまだに果たしていない。
6. 物埋的な安全対策だけではなく、それでも事故が起きた場合に備えて、組織的な危機管理体制も整えておかなければならない。重大事故状態に陥ったときに誰がどういう手順で避難指示を出すのか、自衛隊の出動命令を出すのか等々、事故に迅速に対応する指揮命令系統を確立する必要がある。現実には首相官邸が司令塔になるべきで、私は何度も自民党に説明に行って相応の機関を官邸に設置するように進言したが、まともに取リ合ってもらえなかった。
7. 規制委員会は事故が起きないようにする組織だから、事故が起こったときには、それとは独立した専門家集団が官邸で判断、指揮などを首相に進言しなくてはならない。福島第一のときには保安院の院長が機能不全になり、大前氏がメルトスルー(溶融貫通〕している、と官邸に説明に行っても「そんなはずはない」と叫んでいた。また、「万が一のときはこうしましょう」という話を詰めなければいけないのに、担当したある国会議員は「万が一なんて選挙区で言ったら、私は選挙に受かりません。嫌です」と議論を拒否した。万が一の事故が起きたときに、こんなアホばかりの政府、首相官邸が司令塔の役割を果たせるわけがないし、住民や国民の不安を拭えるはずもない。
8.中西会長は「原子力抜きでパリ協定は守れない」とも語っている。パリ協定は2015年にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21〕で採択された気候変動抑制に関する多国間の国際協定である。パリ協定を批准している日本は「2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比26%減」「2050年までに80%減」などの中長期目標を掲げている。
9.福島の事故以降、原発が停まった日本では石油やLNG{液化天然ガス〕などの化石燃料の比重が8割を超えていて、パリ協定の目標達成は厳しい状況か続いている。だからといって協定遵守を理由に原発の再稼働や運転期間の延長を求めるのは、財界トップとしてやはり無神経と言わざるをえない。パリ協定を念頭に置くなら、まずやらなければいけないのは脱化石燃料である。そして原発に頼れない国内情勢を鑑みれば、再生可能エネルギーの比重を高めるしかない。
10.再生可能エネルギーの安定活用にはまだまだ技術的課題が多い。一番安定しているのは電力量の7%を占める水力発電だが、日本の水力は開発され尽くしていて余力はない。また地熱発電で日本は世界3位のポテンシャルを秘めているが、候補地が温泉の近くだったり、国立公園の中にあったりするので、反対運動や規制が絡んで思うように開発が進まない。再生可能エネルギーのチャンピオンとして期待されているのは太陽光と風力だ。しかし、どちらも「お天道様任せ」「風任せ」というウイークポイントがある。太陽光発電の場合、平均の稼働率は13%程度。風力発電でも19%ほどしかない。あくまでこれは平均値だから、太陽がガンガンに照りつけたり、風か吹き荒れると設備の発電能力が全開になって100%を超えてしまう。プラス80%に相当する電力が一気に放出されたらグリッド(電力網〕はこれを吸収できない。電力ネットワークというのは、地域内の電力の需要量と供給量が一定に保たれてないと不安定化してしまう。それがサージ(過電圧〕という現象を引き起こして、ブラックアウト{大停電〕につながる。
11.再生可能エネルギーもコストや安定供給などの課題があって、活用に限界がある。他方、原発は国民からNOを突きつけられている。そうした認識に立って「日本の電力は危機に直面している」というのなら、経団連会長として政府と国民世論に問うべきは「節電」である。日本のような人口減社会は放っておいても少しずつ電力使用量が減っているのだが、国全体が必死で節電することによって電力使用量は半分で済むようになると思う。
12.たとえば電力使用量が非常に大きい工業用、商業用のモーターやコンプレッサーは、省エネ研究が実用化の段階に入って、少なくとも30%くらいの省電力化の見通しが立っている。車もPHV化することによってガソリン消費量は半減する。各家庭においてもすべての電球をLED化したり、住宅の断執花を義務化すれば、大幅な節電ができる。また日本の電力網は新潟県の糸魚川と静岡県の富十川を境に電源周波数が東は50Hz、西はHzに分かれていて、この糸魚川ラインをまたいで融通できるようにするための変換設備の合計容量は120万kWで、実際に使えるのは40万〜55万kW程度しかない。これを改善して時差に応じて電力を融通しあえる全国的な電力ネットワークを築けば、日本全体の発電量は15%程度抑えられる。「産業界の50%節電は、私が責任と覚悟を持って仲間に呼びかけ、車などの移動体も含めて取り組みます。ついては国民の皆さんにも同じく50%の大胆な目標を持って節電に取り組んでいただきたい。そして政府には家庭のLED化や断熱化を助成していただきたい」と大前氏が経団連会長ならこう提言する。

yuji5327 at 10:23 

2019年06月25日

世界を見ると、原子力の発電コストが最安でないことは、はっきりする。再エネ、中でも風力と太陽光が世界各地で拡大し、ここ数年で発電コストが劇的に低下している。


「風間直樹著:原発は脱炭素化を担えない、実は火力より発電コスト高、週刊東洋経済、2019.5.16」は参考になる。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本の電力はさまざまな課題があり、その問題意識を広く共有できていないという危機感を持っていた、と日本経済団体連合会は、エネルギー政策に関する提言を発表し、中西宏明会長〔日立製作所会長〉は会見でそう述べた。
2.提言では原子力発電所の再稼働や新増設、運転期間延長などを訴えている。提言からは東日本大震災以降、運転を停止した原発の再稼働が思うように進まないことへの産茉界のいら立ちがうかがえる。政府が咋年策定した新たなエネルギー基本計画では、2030年度に全電源に占める原子力の比率を20〜22%とする日標を継続し、「重要なべースロード(基幹)電源」との位置づけを据え置いた。
3.この原子力比率を達成するには30基程度の原発再稼働が必要にもかかわらず震災後の新規制基準の下で再稼働できたのは9基。足元の電源構成(発電電力量)では原子力比率は約3%にとどまる。目標達成はかなり厳しい。それでも政府が数字の見直しを行わなかったのは、発電コストは原発が最も安いという前提があるからである。
4.経産省は15年に総合資源工ネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググルーブで、発電方法別のコスト比較を行った。14年に発電所を建設し一定年数稼働させた後に廃炉した場合の総費用を、運転期問の総発電電力量で除している。この試算によれば、原子力の発電コストは1kWh当たり10・1円以上。一方、火力発.竃のコストは、石炭で12・3円、液化天然ガス(LNG}で13・7円になる。今回の基本計画で「主力.竃源化」が打ち出された再生可能エネルギーはどうか。風力〔陸上設置)は21・6円、太陽光〔メガソーラー)は24・2円に上る。この試算を根拠に、経産省は「原発は火力発電よりも安く、再エネとの比較では約半分のコストに収まる」と結論づけ、原発の経済性は高いとしている。
5.経産省のこの試算に対して、NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、「当時高騰していた資源価格で試算したため、LNGや石炭などの発電コストを過剰に見込んでいる。一方、原発のコストは賠償費用を過小にみている」と批判する。政府は16年末に福島第一原発事故の損害見積もりを総額21・5兆円へ大幅に引き上げているが、試算は14年時点のままで反映されていない。政府の計算式に基づき原子力資料情報室が17年時点の実際の資源価格で算定したところ、原発の単価が10・72円以上となるのに対し、LNG火力は9・17円と大幅に下回った。16年の資源価格では8・58円だ。試算は発電設備を新設した場合であるため、再稼働する原発について直接当てはまるものではないが、松久保事務局長は「少なくともコストの観点から、原子力をベースロード電源とすることは誤りだ」と話す。事故による損害額などがさらに膨らむと、原子力の発電コストはより高まる。
6.福島事故以来、原発の建設コストは、安全対策費などの増加によって、1基1兆円といわれるほど高騰している。そのため、政府が旗を振る英国やトルコへの原発輸出も採算が合わず頓挫した。原子力規制委員会は4月24日、原発への設置を義務づけたテロ対策施設について、完成期限の延期を認めず原発運転停止を求める方針を決めた。
7.再稼働している関西電力、四国電力、九州電力はいずれも期限に間に合わない見通しで、原発9基が順次停止を迫られる可能性がある。テロ対策施設の建設費は1基当たり数百億〜1000億円と見込まれ、完成を急げばさらに膨らむことになる。いずれにしても30年度20〜22%という原子力比率はさらに遠のいた。電力業界からは「原発の事業リスクを民間で負うのは、もはや難しい」といった声も漏れる。
8..世界に目を転じると、原子力の発電コストが最安でないことは、さらにはっきりする。再エネ、中でも風力(陸上設置)と太陽光が世界各地で拡大し、ここ数年で発電コストが劇的に低下している。米投資銀行のラザードが昨年11月に行った分析によれば、ここ数年の全世界の電源別発電コストは、陸上風力と太陽光を、原子力や.右炭火力が大きく上回っている。直近18年に至っては、陸上風力と太陽光に比べ石炭火力は2倍以上、原子力は3倍以上の高さになっている。
9.自然エネルギー財団の石田雅也マネージャーは「大半の国では、新設の原発はほかの発電方法よりコスト競争力で劣っている」と話す。強みとされた発電コストの面からみても、原発が脱炭素化の担い手となるのは難しい。


yuji5327 at 06:27 

2019年06月23日

日立製作所が、風力市場の自社生産から撤退したことは残念。日本の再エネの主力電源化には、洋上風力を含めた数字を示す必要がある。


「大塚隆史著:洋上風力で先行する台湾、日本に足りないものは何か、週刊東洋経済、2019.5.18」は参考になる。印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.洋上風力発電に用いられる風車は、ブレードやベアリングなど約2万点の部品で構成されており、高い品質と信頼性が求められる。そのため、現在の主力産業であるIT機器製造の次代を担うハイテク産業としての役割も期待されている。台風など特有の自然災害にも対応できる製品の生産ができれば、アジアへの輸出拠点に育つ可能性もある。大量導入に先立ち、風力発電機の樹脂メーカーである上緯(スワンコール)が設置した実証機は今日に至るまで大きなトラブルなく稼働している。
2.すべてが順調に進んでいるわけではない。蔡政権のエネルギー政策の柱となってきた脱原発政策が覆る可能性がある。昨年11月の住民投票では脱原発に反対する票が多数を占め、電気事業法の脱原発に関する条文が削除された。再エネ導入を進めることで与野党は一致しているものの、政策が不安定であることは否めない。高めに設定されたFIT価格への批判も根強い。台湾は世界的にも安価な電力料金を強みに産業振興を図ってきた。そのため、洋上風力の導入で「電力料金が大幅に上昇するような事態になれば、産業競争力が弱まる」と、財界からも懸念の声が上がる。
3.能源局の陳組長は「高いFIT価格の設定は、発電事業者に現地調達義務を課したことによるコスト増などを含めたものだ」と説明する。また、台湾中部から最大の電力消費地である台北までを結ぶ電力網の増強工事も、高いFIT価格を原資に賄われる。その工事費用は総額約2200億円に及ぶ。高い買い取り価格は初期のプロジェクトに対して設定されたもので、入札制度に移行したプロジェクトの料金水準は大幅に下がっている。当初1kWh当たり20・6円程度だったFITの買い取り価格は、入札制度の導入後は8・9円程度に安くなっている。しかし、現在のところ、財界を中心に批判が収まる気配はない。
4.18年後半には発電事業者の反発を招いた事件も起こった。FIT価格をめぐる攻防である。台湾政府は18年11月、売電契約を翌19年に締結する場合は、買い取り価格を18年と比べ約12%切リドげる方針を発表した。これに、デンマークの大手電力、アーステツドなどが強く反発した。
5.18年に売電契約を結ぶ予定だったが、台湾側の事務手続きが遅れたことで、19年の価格を適用せざるをえなくなったためである。一時はアーステッドが事業撤退もちらつかせる事態となった。事務手続きの遅れは、洋上風力プロジェクトを多く抱える台湾中部に位置する彰化県での政権交代をきっかけに生じた。18年11月の首長選挙で国政与党の民進党が敗北し、野党・国民党に首長の座が移るや、書類審査などが遅れ、アーステッドを含む発電事業者は必要な手続きを期限までに完了できなかった。ある在台関係者は、前任の首長への反発が影響したのではないか、と分析する。
6.その後、台湾政府が19年分の切り下げ幅を縮小したことで混乱は収束。アーステッドは4月末に最終投資決定に踏み切ったものの、政治リスクの一端を事業者に知らしめた。それでも台湾が洋上風力で先んじた存在になろうとしていることは確かである。後塵を拝した日本が何よりも学ぶべきは、政府による導入目標の明確化である。台湾では26年以降も年間1GW.のベースで洋上風力の導入を継続する方向性が示されている。洋上風力のビジネス実務に詳しいべーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護十は、「日本には洋上風力に関しての長期的な目標がない。これではメーカーが日本での設備投資に踏み切ることは難しい」と危惧している。
7.日立製作所が、風力市場の成長を前に、自社生産から撤退すると表明したことは技術立国を標榜する日本にとって、痛恨事である。昨年7月、日本ではエネルギー基本計画が閣議決定された。そこでうたわれた再エネの主力電源化を実現するには、洋上風力を含め、それにふさわしい数字を示す必要がある。


yuji5327 at 06:39 

2019年06月22日

台湾は2025年までに発電容量で5・5GWに上る洋上風力発電を導入し、それ以降も年間に1GWのベースで導入を進めていく計画である。日本の風力発電の設備容量目標の10GWと同規模になる。


「大塚隆史著:洋上風力で先行する台湾、日本に足りないものは何か、週刊東洋経済、2019.5.18」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.台湾は2025年までに発電容量で5・5GWに上る洋上風力発電を導入し、それ以降も年間に1GWのベースで導入を進めていく計画である。30年には、日本が定めたエネルギー基本計画における風力発電の設備容量目標(陸上風力と洋上風力の合計)の10GWと同規模になる。
2.人口が日本の2割に満たない台湾はなぜ、洋上風力でこのような野心的な目標を掲げているのか。その理由を探るべく、現地を取材した。4月中旬、本誌記者が訪れた台中港(台中市}の発電機組み立てエリアでは、数台のショベルカーが整地作業を進めていた。風力発電プロジェクトの拠点港に位置づけられた台中港ではまだ基礎工事が始まった段階で更地が目立つが、その土地は数年後には、東アジア有数の洋上風力発電の産業拠点になる。
3.すでに風車のブレードメーカーの天力が工場建設を始めており、洋上風力の安全訓練施設も建設される予定である。台中港が面している台湾海峡には水深50m下の浅い海が広がり、風速も8m/sと、洋上風力発電にとって恵まれた環境がそろっている。
4.これまで原干力と石炭火力発電に頼ってきた台湾のエネルギー政策を大きく転換させたのが、16年に政権交代を果たした蔡英文政権だ。発足後問もなく、25午までにすべての原子力発電所を廃止するとともに、発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率を20%以上に引き上げる方針を決めた。
5.背景には11年に発生した東京電力・福島第一原発事故の影響や石炭火力発電による大気汚染、世界で進む脱炭素への対応の必要性があった。台湾は国連に加盟しておらず、パリ協定(温暖化対策の国際的枠組み}の締約国ではないが、脱炭素化に前向きにならざるをえない事情がある。
6.台湾の半導体大手TSMCは米アップルから再エネ電力を導人するよう要請を受けている。自社製品の製造を外部委託しているアップルにとって、製品に組み込まれる部品の最大の供給拠点である台湾で再エネ導入が進むことは望ましい。エネルギー政策を所管する政府能源局の陳崇憲組長も、「豊冨な再エネを備えることが、台湾企業の競争力強化にも資する」と強調する。
7.洋上風力は投資規模が極めて大きい。25年までの導人目標である5・5GW.を実現するための投資規模は、最大9625億台湾ドル〔約3・4兆円)を見込む。出力10MW.級の大型風車〔直径約190m)に換算して550本分が海上に立ち並ぶ計算である。
8.台湾の野心的な目標は、洋上風力で先行する欧州の発電機メーカーや発電会社のみならず、日本企業も引き寄せている。三井物産や双日といった大手商社や、JERA(東電と中部電の合弁会社など日本の発電事業会社も参画する。共通する意図は台湾でノウハゥを蓄積し、日本を含めたアジア各国で洋上風力事業を拡大することである。三井物産は世界で保有する発電容量10・4GWのうち、再エネ電力の割合を30年までに現在の15%から30%へ引き上げる計画である。洋上風力は産業の裾野が広く、部晶や資材調達などで、商社ならではの強みを生かしやすい。
9.外国企業が台湾に続々と進出した理由は、第1は台湾政府の日標数値が明確だったこと、.第2に政府による実証事業が進められており、事業者のやるべきことが明確になっていたことがある。そして台湾政府は、洋上風力を促進するため、固定価格買い取り制度(FIT)に基.つく洋上風力の電力買い取り価格を高めに設定した。ノウハウが豊富な海外企業を呼び込み、台湾に関連産業の集積を促すのが狙いである。台湾政府は高いFIT価格と抱き合わせの形で、洋上風力関連設備の現地調達義務も導入した。海外メーカーが、拡大する台湾市場に入り込むには現地生産を進めるほかない。
10.スペインの風力発電機大手シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーは、台湾企業から風力発電向けの鉄塔や樹脂の供給を受けることを決めた。ライバルのMHIヴェスタス〔三菱重工業とデンマークのヴェスタスの合弁会社)も地元企業と覚書を交わすなど現地調達に対応する方針である。経済団体である中華民国工商協進会は、洋上風力の導入拡大をきっかけに、欧州メーカーと台湾企業との合弁会社設立や台湾への技術移転が進むと期待している。




yuji5327 at 06:41 
池上技術士事務所の紹介
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(常務理事)
 青山賞、春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





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