エネルギー問題

2017年05月17日

アメリカが急にサウジアラビアに冷たくなったのは、アメリカが世界一の産油国になったから。シェールオイルが大量に生産でき、サウジの石油に頼らなくてよくなった。

「池上彰著:
知らないと恥をかく世界の大問題7、Gゼロ時代の新しい帝国主義、KADOKAWA、2016年5月10日」は参考になる。「プロローグ 新しい帝国主義時代の到来」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.アメリカがイランと急接近すると心穏やかではないのはサウジアラビアである。サウジアラビアは、イランとの関係を見直してほしい、とアメリカに申し入れたが、アメリカは聞く耳を持たなかった。スンニ派の大国サウジアラビアはいつも、シーア派の大国イランを恐れている。国防予算はサウジアラビアのほうが多いのに、兵力はイランのほうがかなり多い。サウジアラビアは過去に戦争経験がないが、イランはイラクと8年にわたって戦争をしている。経験もイランのほうが上である。
2.サウジアラビアは2016年に入って、イランとの国交を断絶した。サウジアラビアは、アメリカに「サウジをとるか、イランをとるか」とメッセージを送っている。アメリカが急にサウジアラビアに冷たくなったのは、アメリカが世界一の産油国になったからである。シェールオイルが大量に生産できるようになり、サウジの石油に頼らなくてよくなり、以前よりもサウジアラビアの重要性が下がった。
3.サウジアラビアは、ロシアとの接近を図った。副皇太子のムハンマド・ビン・サルマンがロシアを訪問し、原子力平和利用分野における2国間協力協定に調印した。平和利用と言うが、核の開発に限りなく近い準備を、ロシアの協力を得てやっていく決意があらわれている。パキスタンは核保有国だが、これはサウジアラビアが資金援助してつくった。4.イランが核を保有するや否や、パキスタンからサウジアラビアに核を移転する秘密協定を結んでいるらしい。今後、核の拡散が起きる危険性が極めて高くなっている。さらに「自称イスラム国VSイラン革命防衛隊」という構造と、「サウジ対イラン」の構造が結びついたら大変である。過去の中束戦争はすべてイスラエルがからんでいたが、今回はイスラエル抜きの第5次中東戦争に発展する可能性がある。
5.サウジアラビアとイランは昔から仲が悪かったわけではない。東西冷戦時代は、資本主義のアメリカチームと、社会主義のソ連チームに分かれ、対立していた。アメリカとソ連は、お互いが対立するために、いろいろな国を自分の陣営に引き込んだ。アメリカは中東を味方につけようと、イランとサウジの仲を取り持ち、イランとサウジはいい関係を築いた。
6.1979年のイラン・イスラム革命で事情が変わった。それまでのイランはアメリカが連れてきた国王による独裁国家だった。こうした独裁や欧米化に反対したイスラム教徒が革命を起こし、ホメイニ師をトップに担いで、自分たちの新しい国をつくった。イランはイスラム教シーア派が治めるイスラム国家となった。
7.スンニ派大国のサウジアラビアは、危機感を持ち、イラン革命は王制を倒したので、王制のサウジアラビアとしては、革命が自国に飛び火することを恐れ、1988年には国交を断絶。中東全体でイランを封じ込めようとした。スンニ派の国々ではイランを目の仇にする構造が生まれ、イランは中東で孤立し、反米の国となる。
8.アメリカは、サウジアラビアが石油を売ってくれるので、サウジはいい子、イランは悪い子としたが、その後、事情が変わった。イラクのフセイン大統領が、中東の覇権を握ろうと、革命で混乱するイランに攻め込み、「イラン・イラク戦争」を起こした。フセインは、シーア派が勢力を伸ばすイランをアラブの国々は恐れているので、アラブの国々はみんな支援してくれるだろうと思っていた。
9.イランの中には、ホメイニ師のような原理主義者もいれば、イランを共産主義の国にしようという共産党員もいた。パーレビ国王追放の一点で協力し、王制をひっくり返したが、その後の政権を誰が担うかで内輪もめの状態になっていた。
10.フセインはイランに攻め込んだ。これで、イラン国内は自国防衛のために団結した。イラン・イスラム革命は成功し、イラクと対決。この戦争は8年間(1980〜1988年)も続き、イラ・イラ戦争と呼ぼれ、どちらも決定打を打ち出せず、停戦を迎えた。イラクがイランを攻撃しなけれぼ、イランは大混乱が続いていたのかもしれない。フセインが攻撃したことでイランがまとまり、イラン革命が成立した。
12.フセインは、1990年8月、クウェートに侵攻した。戦争をしたためにイラクは大きな借金を抱えた。イラクのすぐ横にはクウェートというお金持ちの国がある。もともとオスマン帝国時代はひとつだったのに、イギリスが勝手に線を引いてできた国がクウェートである。クウェートはもともとイラクの一部だと思っていたフセインは、莫大な財産と石油を自分のものにしようとクウェートに攻め込んだ。
13.この行動に対し、アメリカを中心とした多国籍軍がイラクを攻撃した。これが1991年の湾岸戦争です。このとき、イランとサウジも、同じ中東の国としてフセインを封じ込めなければと、一時は国交を回復した。イラクという共通の敵を持つことで手を組んだ。14.2002年、イランが秘密裏に核開発をしていたことが発覚し、またしても関係が悪化した。そんな中、起きたのがアラブの春をきっかけに、関係はさらに悪化した。サウジアラビアのペルシャ湾岸沿いの石油が出るところに、一部シーア派が住んでいて、彼らが民主化運動を始めたからである。サウジアラビアは、シーア派が国内を混乱させようとしたと考え、これを弾圧し、ついにはシーア派の指導者を処刑し、2016年に入ってまたもや国交断絶となった。
15.イランの最高権力者は大統領でも首相でもない。トツプは「最高指導者」である。イラン革命をきっかけに、「最高指導者」が生まれた。イスラム教はスンニ派とシーア派に2分される。預言者ムハンマドが亡くなった後、誰をムハンマドの後継者=最高権威者にするかで分かれる。スンニ派は、最高指導者(カリフ)を、知識や誠実さがあり、イスラムの慣習を守る人なら誰でもかまわないと考える。シーア派は、ムハンマドの娘ファーティマとその夫でムハンマドのいとこのアリーの血を引いていなくては指導者の資格はないと考える。シーア派は、ムハンマドの血統を引き継ぐアリーを初代のイマーム(指導者)とする、として、スンニ派のカリフを認めなかった。


yuji5327 at 06:49 

2017年05月04日

原発再稼働の見通しが立たない以上、再生エネ比率の向上が現実的な解決策であり、エネルギー効率化はエネルギー需要増大に対してもっとも安価・容易でクリーンな対応策である。

「横山渉(ジャーナリスト)著:震災前よりも発電所48基分のエネルギー消費が減った?、
エコノミスト、2016.5.10」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.工場やオフィス、運搬や家庭で実際に消費されたエネルギーのことを「最終エネルギー消費」という。それが2011年3月11日の東日本大震災以後、大幅に減っている。経済産業省が毎年発表している「エネルギー.需給実績」によると、大震災前の10年度と14年度の最終エネルギー消費を比べると、1060PJ〔ペタジュール〕と7・2%も減少している。100万kW級発電所の年閲エネルギー消費量に換算すると48基分の数字に匹敵する。
2.原油や石炭、天然ガス等の各種エネルギーは、電気や石油製品などに形を変える発電・転換部門(発電所、石油精製工場等)を経て、最終的に消費される。発竃・転換部門で生じるロスまでを含めて国全体が必要とするすべてのエネルギーの量を「1次エネルギー供給」.最終的に消費膏に使用されるエネルギー量を「最終エネルギー消費」という。最終消費者に供給されるエネルギー量は、発電・転換部門で生じるロスの分だけ減少することになり、国内1次エネルギー供給を100とすれば、最終エネルギー消費は69程度である。
3.最終エネルギー消費の減少の意味するのは、エネルギーを使わなくなったということ、省エネが進み、エネルギー効率が改善したと言える。震災前10年度の最終エネルギー消費1万4698PJは、14年度には1万3638PJに減っている。発電所が発生させるエネルギー量は、理論値で1kWh=3.6MJ、稼働率を01〜10年の原発の設備利用率平均67.8%を参考に70%と想定する。これらを基に計算すると4年間の減少分は100万kW級で48基分に相当する。1060PJの減少の内訳は電気だけでなく車の燃費改善などさまざまであるから、単純に48基分の発電所が不要になったことになる。
4.エネルギーの消費が減ったもの、増えたものを、発電・転換部門で生じるロス分を除かない1次エネルギーでみると、1次エネルギーの国内供給は、10年度比8.5%減となった。14年度は国内すべての原子力発電所が稼働を停止したことにより、原子力の比率がゼロになっている。そのマイナス分を補ったのは20.3%増の天然ガス(LNG:液化天然ガス)と2.7%増の石炭だった。また、再生エネルギー(自然エネ+地熱)も15.3%増えている。原発停止による燃料転換が進んでいる。
5.日本は1970年代の2度の石油ショックを契機に、製造業を中心に省エネ化が進んだ。90年代は原油価格が低水準だったこともあり、エネルギー消費は増加したが、00年代には再び原油価格が上昇して、04年度をピークにエネルギー消費は減少傾向になった。日本は省エネ努力により、これ以上の省エネは難しいと言われた時代が長く続いた。73年の石油危機以降、85年あたりまでは改善が進んだが、それ以降20年あまり、ずっと停滞してきた。90年代以降は、欧米各国のエネルギー効率の改善が日本を上回っている。
6.電力供給の45.3%を自然エネルギーでまかなうなど持続可能な電源構成にすることで、30年度の年間電力需要は、10年度比で30%削減して、7725kWhにすることが可能という試算がある。熱や燃料を含むエネルギー消費全体については、日本経済研究センダーが14年11月に公表した試算で、50年度までに10年度比で40%削減できるとしている。これ以外にも、国立環境研究所なども30〜40%の大幅な削減が可能という試算をしている。
7.日本のエネルギー消費は、そのときどきの経済成長や原油価格などに左右されてきた。伝統的な考え方は、経済成長にはエネルギー消費の増加が必須というものだったが、今日では、効率化により.、経済成長とエネルギー需要の増大を切り離す「デカップリング」の考え方が国際的に主流になっている。すなわち、エネルギー消費を削減しながら経済成長の実現は可能ということである。省エネ化は新たなビジネスを生み出すので、むしろ新たな経済成長を可能にする。
8.原発再稼働の見通しが立たない以上、再生エネ比率の向上こそが現実的な解決策であり、エネルギー効率化はエネルギー需要増大に対してもっとも安価・容易でクリーンな対応策である。


yuji5327 at 16:46 

2016年11月08日

原子力発電の介護政策をやめ、ターミナルケア政策を進めるべきである。従来の政策は、国民の公共利益に反しており、原子力発電の優遇措置は廃止すべきである。

「吉岡斉(九州大学教授)著:福島後の未来をつくる、原子力発電は介護から終息へ、地域産業転換に向けた交付金創設を、
エコノミスト、2015.10.20」は参考になる。著者は東京大学理学部卒業、11年から12年にかけて政府の東京電力福島原発における事故調査・検証委員会の委員を務めた。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.「ターミナルケア政策」とは、今まで進めてきた事業を、重.大な社会的損失を与えずに終息させる政策である。原子力発電など回復の望みのない事業に対して、損失を最小限に抑えながら終息せるための支援を行う。国際社会は絶えず変化しており、新しく台頭する事業もあれば、滅びゆく事業もある。事業廃止の際には、事業者に損失が発生する。事業廃止の原因が事業者の自己責任の場合は自業自得であるが、公共政策で損失が発生した場合は、その度合いに応じて政府も補償責任を負う。
2.日本の原子炉等規制法では、原子炉の法定運転年数は40年とされているので、それに満たない年数で政策的に廃止させる場合は、遺失利益についての早期廃止補償を、電力会杜が要求してくる可能性があり、政府と電力会社との協議する必要がある。おドイツでは2002年、当時のシュレーダー政権下で政府と業界の合意により原子力法に平均32年の運転制限が導入されたが、早期廃止補償は盛り込まれなかった。メルケル現政権は当初、原子炉の運転制限期間を延長しようとしたが、福島原発事故を受けて政策転換し、02年合意をさらに具体化させた脱原発ロードマップを決めたという経緯がある。
3.公共政策においても、ある事業が没落しそうなとき、放置すれば多大な社会的混乱がもたらされる場合、政府が事業廃止の影響を緩和する政策を講じることは公共利益にかなっている。滅びゆく事業を上手に管理し、事業者の損失が破局的になるのを防ぐ上で、政府のターミナルケア政策は有効である。
4.事例として、原油輸入自由化にともなう国内石炭産業の衰退に対処するため、産炭地域振興臨時措置法(1961年)による企業や地域社会への支援政策がある。これは出発時点には、優良炭鉱の維持拡大と不良炭鉱の廃止の双方を支援する政策だったが、時代が下るにつれてダーミナルケア政策の性格が強まった。
5.個々の民間会社の工場閉鎖による地域経済への影響について、政.府による緩和策は不要である。原子力発電所でも特別扱いする理由はない。しかし国家政策にもとづき全国で、いっせいに多くの原子力発電所が廃止される場合には、社会政策として、産炭法を参考に緩和策を検討する必要がある。
6.2011年3月11日に始まる福島原発事故は、発生から4年半が過ぎたのにいまだ収束していない。福島原発事故による損害額は、現時点ですでに11兆円、将来分も合わせれば数10兆円に上ることが確笑である。避難者数は今年8月現在で10万6700人に達する。福島原発事故によって原子力発電が、他の技術とは異次元の、時間的にも空間的にも並外れて巨大な災害をもたらすリスクを抱えていることが、改めて明らかになった。
7.この過酷事故災害の異次元なまでの巨大さこそが、原子力発電を廃止すべき基本的理由である。過酷事故を起こした原子炉は過去半世紀余りで5基に達する。世界の原子炉炉設計者は、過酷事故を100万炉年(1炉年とは原子炉1基を1年稼働すること)に1度に抑えることを目標値に設定している。しかし、15年春までの原発の運転実績は約1万6000炉年だから、約3000炉年に1度という驚くべき高率である。
8.原子力発電は社会経済にとって不可欠ではなく、他の発電手段〔火力発電、水力発電、再生可能エネルギー発電等〕で代替できる。さらに原子力発電はそうした競争相手と比較して優れていない。安定供給性については、ウラン資源輸入に関する阻害要因が、石油・天然ガスと比べて少ないものの、事故・災害・事件などが起きれば原発は多数の原子炉が一度にダウンし、運転再開までに長時間を要する。
9.環境保全性の観点から見た原子力発電の利点は、有害化学物質や温室効果ガスの排出量が、火力発電よりも格段に少ない。一方で原子力発電は、事故による核物質の環境への大量放出のリスクを抱え、また各種の危険な核物質を生み出す。まず核物質リスクを減らし、次いで温室効果ガス削減に全力を挙げるのが、物事の正しい順序である。
10.原子力発電が経済的に最も優位だという試算が、政府によって数年ごとに発表されてきたが信頼性はない。電力会社による詳細なデータ公開が必須である。政府は原子力発電の経済性が優れていると主張し、それを主要根拠として原子力発電のコストとリスクを政府が肩代わりする「原子力発電介護政策」(電源三法による立地支援、研究開発支援、損害賠償支援、福烏事故処理支援、核燃料サイクルコストの電気料金への転嫁などの政策)を推進してきた。
11.本当に原子力発電の経済性が優れているならば手厚い「介護政策」など不要のはずである。原子力発電の経済的コスト・リスクが実際には高いので、「介護政策」なしには、原子力発電に深入りできない。「原子力発電介護政策」の拡充を条件に協力を続けるという姿勢である。消極的な電力会社もあるかもしれないが、「原子力村」の掟に背くことが難しい。
12.政府が肩代わりすることは国民負担であ。福島原発事故は東京電力による人災の性格が濃厚であるが、損失を国民が負担するのは疑問である。11年3月から4月にかけて東京電力管内で「計画停電」が強行されたが、それ以降今日まで電力危機が生じたことはない。日本の電力消費のべースラインがリーマン・ショックを境に大きく落ち込んでいた。日本の発電電力量は、07年に1兆1950億kWhを記録したが、13年には1兆905億kwhと8.8%の減少となった。今後も人口減少などにより、自然減の傾向をたどる。省エネの推進と、再生可能エネルギーの拡大で、30年ごろまでに全ての原発を廃止しても、エネルギー需給の観点からは特段の困難が生ずるとは思えない。
13.原子力発電の介護政策をやめ、ターミナルケア政策を進めるべきである。原子力発電の維持拡人という従来の政策は、国民の公共利益に反していたことを政府は明確にするべきであり、それを受けて原子力発電の交付金・補助金等の優遇措置は廃止すべきである。
14.既得権の喪失に対する配慮は不要だが、原子炉の早期廃止など電力会社に損失をもたらす場合は、その補償に関する協議は必要となる。地域自治体の財政破綻や地域経済への深刻な打撃がもたらされる場合は、社会政策の検討が必要となる。ただし、過去の石炭産業崩壊に際して、重化学工業の誘致が試みられたが失敗した。過去の教訓に学ぶ必要がある。



yuji5327 at 06:27 

2016年06月02日

ロシアは、自国の持つ唯一の強みであるエネルギー資源を経済的、政治的に最も有効に活用するためにユーラシアという場を活用しようとしている。

「中国が挑む新グレートゲーム(後編)、選択、2015.6」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ユーラシア大陸は中国とロシアの2カ国でほぼ半分の面積を占める。両国は「資源」と「市場」というお互い必要なものを持ち合う関係でもある。今は国際制裁と原油価格下落でロシアが沈み、経済大国、中国が優位にあるが、次にどちらに傾くかは日本と欧州連合(EU)との関係、中東情勢にも依る。
2.5月9日、ロシアの「対ドイツ戦勝70周年記念式典」で、2人は終始、隣り合わせで動き回り、蜜月ぶりを世界に見せつけた。中ロ首脳の親密さは、頼るべき友邦をもたない両国の孤立を示してた。ロシアは経済の命綱である天然ガスの輸出が欧州向けで量的に落ち込みと原油価格暴落で、ダブルパンチになっている。昨年のクリミア半島の併合に反発した国際社会の経済制裁で、外資による大型投資がほとんど止まった。
3.思い起こせば2013年3月、習政権が発足した全国人民代表大会が終わると、習氏はモスクワに飛び、プーチン大統領に面会した。支持率の高いプーチン大統領への敬意とロシアとの連携を中国の新たな発展戦略に組み込もうという計算があった。半年後には2人はバリ島のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で再会、翌年2月のソチオリンピックの開会式の際にも会談を行った。習主席は就任以来、わずか2年で実に9回もプーチン大統領に会うという、大国のトップとしては空前の密接な関係を構築している。
4.今年5月の対独戦勝記念式典では、精彩を欠くプーチン大統領を習主席が元気づけようとしている空気が伝わってきた。ロシアの昨年の成長率は0.6六%まで落ち込み、今年は世界銀行の予測ではマイナス2.9%、欧州復興開発銀行(EBRD)の予測はマイナス4.8%。リーマンショック直後の2009年を除けば、21世紀に入って初めてのマイナス成長になる。昨年7.4%成長だった中国とは明暗が分かれた。
5.それ以上にプーチン大統領を暗くさせたのは、習主席が主導したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の成功である。ロシアは中国のAIIBに近い目的で、カザフスタンなどとユーラシア開発銀行という国際金融機関を設立しているが、鳴かず飛ばずの状況である。カザフ、ウズベキスタン、ベラルーシなど6力国が参加するユーラシア経済共同体(EAEC)を設立。その後、ユーラシア経済連合(EEU)に進化したが、存在感はほぼない。
6.「新シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」からなる「一帯一路」とAIIBで、華々しいユーラシア戦略を展開する習政権との差は歴然としている。ロシアはAIIBに参加し、「新シルクロード経済ベルト」では中国から欧州に至る道の一部には入っているものの、あくまで辺縁にすぎない。中国の描くユーラシア戦略はロシアをユーラシアの中枢から外す「周辺化」でもある。
7.昨年5月、上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)首脳会議に、プーチン大統領はガスプロムのミレル社長を同行し、中ロ間の天然ガス供給契約の締結。30年間にわたり年間380億m^3の天然ガスをパイプラインで供給するという総額約48兆円の大型エネルギー契約を行った。
8.ロシアからの天然ガス供給に長年依存してきたドイツ、イタリアなど欧州諸国は、天然ガスを政治的武器に使おうとするプーチン政権への懸念からエネルギーの脱ロシアを過去10年、着々と進めている。欧州各地にはLNG受け入れ基地が建設され、アルジェリアなど北アフリカからのパイプライン、中央アジアからロシアを経由せずに欧州に至るパイプラインなど天然ガスの調達多様化が図られてきた。
9.ロシアにとっては経済の生命線を断たれかねないリスクだが、プーチン大統領には欧州との妥協の余地は少ない。中国との天然ガス供給契約はロシアが中国に依存して経済を立て直そうとする動きとして、世界は捉えているが、プーチン大統領は欧州がダメなら中国というほど単純でもない。中国は最悪のタイミングで高値の長期契約を結び、ロシアはトルクメニスタンを抜いて中国にとって最大の天然ガス供給国になった、
10.ロシアにはサハリンからの天然ガス供給という切り札もある。さらに、ロシアは東シベリアから太平洋岸に向かう原油パイプラインなどを通じ、中国向けに日量70万バレル(14年)の原油も供給しており、その量は中国の原油輸入量の約10%以上にも達している。知らす知らずのうちに中国はプーチン大統領によってロシアのエネルギー漬けにされつつある。
11.ロシアの天然ガス、原油の大きな流れが東に向かえば、欧州のエネルギー調達の多様化戦略には綻びも出る。昨年12月、プーチン大統領は突然、イタリアなど欧州向けに計画していた天然ガスパイプラインの中止を発表した。ウクライナ、ポーランドを通らずに欧州向け輸出ができる貴重なルートになるはずの約2兆2400億円という巨大事業である。慌てたのは欧州側は、計画の再考をプーチン大統領に打診している。
12.ロシアは、自国の持つ唯一の強みであるエネルギー資源を経済的、政治的に最も有効に活用するためにユーラシアという場を活用しようとしている。死んだふりをしながら、クリミア以降の不利な形勢を逆転しようと図っている。
13. 21世紀のユーラシアではEU、ロシア、中国が東西方向への展開を志向し、中小国は南北で、単なる通過国にならぬように地政学的な価値を自己の存在を主張ている。カギを握るのはイランとトルコで、イランは核開発問題で受けてきた国際制裁が解除されれば、経済は上向き、油ガス田の補修や新規開発、LNGプロジェクトなどが動き出す。天然ガスの埋蔵量だけ見ればイランは世界の18.2%を握り、ロシア、カタールを押さえ、世界トップ。トルコはカザフ、トルクメニスタンからカスピ海を通って欧州に向かうパイプラインを構築しようと動いている。これはアジアと欧州をつなぐブリッジ国家としての戦略である。日本もこのゲームの重要なプレイヤーであることを忘れてはならない。



yuji5327 at 06:35 

2016年03月12日

大前氏が、原発のエンジニアとして、立地についての説明に行くと、石を投げられた。国民の感情問題になってしまうので、仕方がない。

3月11日付けの大前研一さんのニュースの視点は“東日本大震災〜復興計画の肝はスピード”と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日経新聞の調べによると、3月11日で5年を迎えた東日本大震災の復興に向けた政府の取り組みについて「評価する」は31%で「評価しない」が52%である。また原子力発電所については「再稼働を進めるべきだ」が昨年10月下旬の調査より3ポイント低下し26%。「再稼働を進めるべきでない」は4ポイント上がって60%になっている。
2.医療設備など復興しているものもあるが、海側の対策や新しい住宅の建設などは全く進んでいるとは言えない。5年前の震災直後3月19日にも大前氏は、復興計画、及びその実施はとにかく早く進めることが大切で、待てば待つほど住民のコンセンサスをとることは難しくなる、と述べている。
3.東日本大震災の場合で言えば、「津波にやられたところは津波プレーンとして、住まない地域」として復興を考えないほうがいいと指摘した。津波にやられた地域を見て回ったが、東日本大震災よりもさらに深い場所に、過去に津波に襲われた箇所を示す石が置いてあるのを見かけた。つまり、東日本大震災で津波に襲われた地域は、長い歴史の中でも何度もやられていた。
4.もうそこに住むこと自体をやめて、代わりに安全な高台に町ごと移すイメージで復興計画を立てるべきだと主張した。どうしても危険な地域に住みたいなら、自己責任で住んでもらうしかない。
5.復興計画はスピードが肝要です。関東大震災のとき、復興計画は後藤新平が一晩で作り上げた。瓦礫を横浜に持って行き、それが元になって今の山下公園につながった。阪神淡路大震災後も、ほぼ1年半で復興している。こうした過去の事例に比べても、東日本大震災の復興計画はあまりに遅すぎる。
6.明確な復興計画を提示しないために、住民の意見がまとまらずにいる。元の場所に戻って住みたい人が3分の1、二度と元の場所には戻りたくない人が3分の1、高台に住みたいという人が3分の1。にっちもさっちもいかない状況です。日本人にはそういうパターンがある。こんな状況だから、復興政策を評価する人が少ないのは当たり前でである。
7.東日本大震災の復興には無限の資金を投じている。日本郵政グループの上場益など、何かあれば復興財源に充ててきた。これに対して反対意見を言うことは、倫理的に許されない風潮がある。それだけ資金を投じても、また同じような津波が来たらやられてしまうような中途半端な防波堤ばかり作っている。
8.原発再稼動を進めるべき、という意見も少ないが、日本人のメンタリティからすれば当然である。福島第一原発事故の分析を徹底的に行なって、対策レポートも書き上げて公開した。実際に分析してみて、福島第一原発の事故は信じられないルールや仕掛けに端を発しているので、今後対策を講じて同じような状況を避けることは可能だとわかった、
9.全てレポートに、政治家でまともに目を通した人は、細野氏くらいで、他の人はまともに読むこともなく、民衆の意見に流されている。日本も科学技術立国と言える存在であるなら、日本の将来を考えれば、対策を打った上で原発を動かすほうが良い。国民のコンセンサスを得られないなら、再稼働はやめるしかない。反原発運動は、相当強いものである。
10.大前氏は元々、原発のエンジニアで、立地についての説明に行くと、説明を聞き終えるまでもなく石を投げられた。国民の感情問題になってしまうので、仕方がない。それでも個人的にレポートまで作り上げた立場としては、誰か真剣に読んだ上で対策を講じてもらいたい。そして、復興計画全般については、音頭を取って、人的被害をゼロにする街づくりに本気で取り組む人に登場してほしい。


yuji5327 at 06:28 

2016年01月21日

これまでのエネルギー基本計画の発想は、現在の産業構造を維持し、電力需要が今後も増えることを前提とし、供給をそれに合わせる発想からは脱却しなければならない。


「野口悠紀雄著:変わった世界、変わらない日本、講談社、2014年4月」の「第8章:日本経済が抱える深刻な問題」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.貿易収支は赤字に転じることもあるが、所得収支の黒字は続いている。国際収支は、貿易だけで収支が均衡する必要はない。対外経常収支の黒字は、所得収支の黒字で実現することができる。すでに2005年から、所得収支の黒字は貿易収支黒字を上回っている。今後貿易収支の黒字は減少するので、所得収支黒字の重要性は、ますます高まる。対外資産の運用を効率化することによって、所得収支の黒字を拡大する必要性は高まっている。
2.日本は貿易収支の赤字を所得収支の黒字で補う国になった。対外資産の運用を適切に行なうことによって、所得収支の黒字を増加することが必要である。日本が、巨額の村外資産を保有し、そこから巨額の所得収支の黒字が実現していることを考えれば、貿易収支の黒字に固執する必然性は薄れている。今後の日本は、金融をはじめとする高度のサービス業で生きることを考えるべきで、国内の経済構造も、それに見合った形に変化させる必要がある。
3.日本経済が抱える問題は、エネルギー問題、とりわけ電力の問題である。これまでの日本の「輸出立国モデル」は、「原子力発電は絶対安全」という神話の上に築かれたものだった。東日本大震災は、その神話を崩壊させた。福島第一原子力発電所が引き起こした大惨事は、日本社会の豊かさが脆弱な基盤の上に構築されていたことを示した。
4.原子力発電は震災当時、日本の発電総量の約3割を占めており、2019年にはこれを4割超にまで高めることが計画されていた。しかし、今後の原子力政策の見直しは必至であり、新規建設ができなくなる事態は大いにありうる。
5.電力問題には、発電量の側面と、発電コストの側面がある。震災直後に問題とされたのは、主として量の側面である。原子炉の稼働再開については、政治的な要因もからむので、将来を見通すことが難しい。したがって、今後の電力供給には大きな不確実性がある。
6.長期的に見て大きいのは、発電コストの問題である。火力発電へのシフトにより、コストが高まることは不可避だ。2013年には、円安の影響も加わり、電気料金が値上がりしている。今後、コスト高はいっそう深刻な問題になる。これまでも、原子力発電の費用は低くはなかったが、それが隠されていた。たとえば、使用済み燃料処理に必要な費用は示されていなかった。これまで「原子力発電のコストが安い」と言われたのは、こうしたコストを考慮してこなかったからである。
7.これらのコストを明示的に考慮すれば、原子力発電のコストが安いとは言えない。日本の電力産業がきわめて大きな問題を潜在的に抱えていた。エネルギー問題について考え直す場合に重要なのは、「産業構造を所与として、必要な電力を確保する」という考えから脱却することである。
8.これまでのエネルギー基本計画の発想は、現在の産業構造を維持し、電力需要が今後も増えることを前提とし、供給をそれに合わせることだった。こうした受け身の発想からは脱却しなければならない。今後の日本で必要とされるのは、「産業構造を変えることによって、電力需要の増加を抑える」という発想に転換することだ。



yuji5327 at 06:29 

2015年11月23日

水素を輸送するためにもマイナス253度まで冷却して液化する必要があり、大量のエネルギーを消費して炭酸ガスを生じる。二酸化炭素フリーのエネルギーではない。

「疑問に満ちた水素社会元年、政官財が画策する巨大鋼橋事業、選択、2015.1」は参考になる。。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.政府や企業が水素社会に前のめりになっているのは、補助金を軸とした巨大な公共事業と利権を生み出すために過ぎない。水素燃料の需要を創出して流通させるためには、燃料電池車の普及に始まり、水素ステーション、水素液化プラント、液化水素輸送網といったインフラの整備が必要となる。
2.次世代車候補である電気自動車が普及してもそれほど投資は生まない。発電所と送電線というインフラは既に全国で整備されている。急速充電設備も、1基あたりの設置コストはわずか5百万円程度である。
3.水素エネルギーのインフラはほとんど手付かずである。新たな水素製造プラントを整備すれば全国で数千億円規模の投資が行われる。燃料電池車に水素を補給するための水素ステーションを建設するためには1ヵ所あたり6億円かかり、急速充電設備の120倍の資金が動く。
4.政府は、2020年の東京オリンピックを日本が誇る水素エネルギーの展示場とすべく、会場に燃料電池バスを走らせ、東京、名古屋、大阪、福岡の四大都市圏を中心に水素ステーションを拡充する構想を練っている。2015年には100カ所、2025年までには1千カ所の水素ステーションを建設し、費用の半分を国が補助するという。これだけでも3千億円以上の税金がばらまかれることになる。
5.これを後押しするために政府やシンクタンクが弾く水素市場の将来予測にはバラ色の数字が並ぶ。ある企業の試算では2020年に燃料電池車市場は5千億円規模、水素発電市場は9千億円規模にまでそれぞれ拡大すると予測。それは世界でも同様で、デロイト・トーマツが公表した予測では、2025年には世界の燃料電池車市場は、米国で85万台、欧州で71万台、日本で20万台と驚異的なベースで拡大するとみている。
6.水素のイメージ作りにも躍起である。政府は水素が「究極のクリーン・エネルギー」としきりに触れ込む。たしかに、酸素と反応させると水しか排出しないため、低炭素社会の主役にまつり上げるにはうってつけの物質に見える。また、排熱も利用して熱需要に充てるエネルギー供給システムを用いれば、実際に消費される燃料のエネルギー量と、それによって利用できるエネルギー量との比率を表した「総合エネルギー効率」は90%と、通常の火力発電所のエネルギー効率40%とは比較にならないほど優れていることをもって、水素社会の正当性を謳う専門家もいる。
7.仮に水素が目然界に単体で存在している一次エネルギーであれば、こうした見方は概ね正しいが、実際には水素は天然ガスや灯油などの主成分である炭化水素の組成、性質を改良する「改質」によって取り出す二次エネルギーである。
8.二次エネルギーは製造する過程で二酸化炭素を排出する。政府の言う「究極のクリーン・エネルギー」はこの時点で眉唾物であることがわかる。また、水素を輸送するためにはマイナス253度まで冷却して液化する必要があり、ここでも大量のエネルギーを消費して炭酸ガスを生じる。「二酸化炭素フリー」のエネルギーであるかのような現在の水素キャンペーンは捏造である。
9.水素の利用法として、燃料電池ではなく直接燃焼させる水素エンジン車や、水素発電も検討されている。この場合燃焼過程で二酸化炭素は発生しないものの、空気中の窒素が酸素と結びついて大気汚染の原因となる窒素酸化物が排出されることはガソリン車やガス火力発電と変わりない。加えて、水素は分子が小さいため、パイプの継ぎ目から漏れてしまうという技術的ネックはいまだ解決されていない。
10.市場規模の算定方法は、水素の技術的、費用的課題がすべて順調に解決されるという楽観的な予測に基づいている。すべて「画に描いた餅」である。巨額投資の甘い汁を吸える期待感だけが先行しているのが水素元年の現状である。
11.地政学的に見ても日本は水素社会に向いていない。欧州諸国はロシアからの天然ガスのパイプラインが網の目のように敷設されている。一番簡単な水素製造方法で、原油価格が下落していることを考えれば、水素エネルギーのコスト競争力は下がっている。また、1台7百万円という水素目動車は、世界の自動車市場の主戦場となっているアジアでは受け入れられない。
12.天然ガスの改質で容易に水素を手に入れられるとか、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが普及で、余剰電力を利用し水を電気分解して水素を製造するとか、余っている電力を使うので製造コストはタダ同然とか、言うが、日本は、国土にパイプラインが敷かれておらず、天然ガスから水素を手軽に改質できない。再生可能エネルギーも普及の途上にあり、水素製造に回せるほどの余剰電力はない。日本は欧州諸国と比べても割高なLNGやLPガスを中東諸国から輸入した上で、改質して無理やり水素を作っているに過ぎない。水素の製造コストが劇的に下がることは期待できない。
13、水素エネルギーに関連する業界が色めきだっている。政府が2014年6月に取りまとめた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、地球温暖化対策としての切り札として「水素社会」をぶち上げ、2015年を「水素元年」と位置付けた。しかし、水素エネルギーのクリーンなイメージや、魅力的な経済性は「粉飾」されている。
14.実用レベルに達していない未熟な技術を、補助金を使って無理やり普及させようというのは愚行である。このままでは日本の燃料電池自動車は、補助金漬けになった日本だけで流通する「ガラパゴス化」のリスクを孕む。
15.遠い将来を見据えて燃料電池の研究は続けるべきである。たとえば、高価格の原因となっている触媒として使われるプラチナの代る材料は現在、国内の多.くの機関が取り組んでいる。問題は、莫大な投資が見込める「おいしい事業」に政官財が突進しようとしていることである。。



yuji5327 at 06:53 

2015年11月18日

東西の周波数を統一しろ、という声もあるが、家電製品が50ヘルツでも60ヘルツでも動くように、一部の例外を除いては、周波数の違いを乗り越えることは困難な問題ではない。


「大前研一著:大前研一 日本の論点 2015~16、プレジデント社、2014年」は面白い。「11章:エネルギー危機を救うわが私案「業界再編すれば、電力は安定コストが下がる、九電体制の問題は、電力供給が地域バラバラで、全国をつなぐネットワークがないこと。日本の電力網は、新潟県の糸魚川をまたいで融通できる電力が、100万キロワット程度しかない」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2013年4月2日、安倍晋三内閣は発送電分離を含む電力システム改革を以下の三段階で進める閣議決定を行った。15年を目途に電力会社が、地域を超えて電力を融通し合うための「広域系統運用機関を設置」。16年には電力会社が地域独占している「家庭向けの電力小売りを全面自由化」して、18〜20年頃に電力会社の発電部門と送配電部門を別会社にする「発送電分離の実現」を目指すという。
2.原発をどうするのか、電力会社の役割をどうするか、電力の安定供給は誰が担うのか、といった視点を欠いている中途半端なものである。今回の政府の「電力システム改革」の実現性は相当に厳しいものと言わざるをえない。しかし、電力の安定供給を確保するためには、電力業界の再編は必須である。
3.現在、原発を代替している火力発電の燃料費が電力各社の利益を圧迫していて、この状況があと数年続けば債務超過に陥って存続が危ぶまれる電力会社も出てくるだろう。福島第一原発の事故後、東京電力はなし崩し的に国有化され原子力損害賠償法(原賠法)で生命維持されているが、原発が停止したままで燃料費の高騰などによって苦しんでいるその他の電力会社については、救済の手立てが何も講じられていない。
4.日本の電力会社は.地域独占で、北海道なら北海道電力、東北なら東北電力と、9電力に分かれている。沖縄電力は原子炉を持っていない。これは戦時中に電力事業が国家管理となり、「口本発送電」という国策会社が発電と送電を管理して、配電を9社が担ったことに由来している。戦後、日本発送電は分割・民営化されて、発電、送電、配電まで一貫地域独占の9電体制がスタートした。
5.現在の「9電体制」の問題は、電力供給が地域バラバラで、全国をつなぐネットワークがないことである。日本の電力網は、新潟県の糸魚川を境に東は50ヘルツ、西は60ヘルツに分かれていて、このラインをまたいで融通できる電力は、100万キロワット程度しかない。
6.日本は、日本列島の東から西で、大体一時間半程度の時差がある。夏の電力需要のピークが午後2時だとすると、東から西にピーク電力の時差が生じる。全国的に融通し合える電力ネットワークができれば、ピーク時に互いに融通できるから日本全体としての発電量は抑えられる。夏の暑い時期は北から、冬場は南の地域から電力を融通することで、ピーク電力は随分助かる。
7.アメリカやヨーロッパでは電力の融通が可能だが、日本では電力会社の縄張りが決まっているため電力の融通が利かず、それぞれの地域でピーク電力に対応するしかない。福島第一原発事故後に発生した例がそうだったように、トラブル時に他の地域から電力を融通してもらうのも一苦労である。
8.日本の電力産業は、「発電」「送電」「配電」「原発関連事業」の4つに分割する発電するべきである。まず「発電」の部分は完全に自由化する。自由化すれば低コストの発電者が参入してくる。現実的にはCO2排出などの環境規制は必要だが、基本としては、誰でも自由に参入できるようにする。
9.発電会社は、「送電」を引き受ける「高圧送電会社」に売る。高圧送電会社は、9電力がそれぞれ所有する高圧送電網を資産に換算して、各社の資産の比率に応じた全国一律の公社を設立する。9電力が資産を持ち寄って共同経営する。この高圧送電公社は、目安としては3000ボルト以上の電力を扱う。糸魚川ラインを境にした東西の電力会社を結ぶ、「東西グリッド」に関しても、この会社の責任で現状の4倍、400万キロワットぐらい融通できるようにすれば、ピーク電力の時差にも対応できる。
10.「東西の周波数を統一しろ」という声もあるが、家電製品が50ヘルツでも60ヘルツでも動くように、工場のモーターなどごく一部の例外を除いては、周波数の違いを乗り越えることはさほど困難な問題ではない。
11.発電会社から買い取る電力の値段を決めるのも、この公社の仕事である。買い取り価格で競争力がある業者が発電に参入する。



yuji5327 at 06:43 

2015年11月16日

中国は今後10年間で28の原発の新設が予定されている。インドやロシアなど合わせると向こう20年で100基近くの原発の新規建設が見込まれる。1基最低5000億円として、100基で50兆円。


「大前研一著:大前研一 日本の論点 2015~16、プレジデント社、2014年」は面白い。「11章:エネルギー危機を救うわが私案「業界再編すれば、電力は安定.コストが下がる、九電体制の問題は、電力供給が地域バラバラで、全国をつなぐネットワークがないこと。日本の電力網は、新潟県の糸魚川をまたいで融通できる電力が、100万キロワット程度しかない」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.カタールやオーストラリア、あるいはマレーシア、インドネシアなど、日本にLNGを輸出している国が、自前のガスを使って日本で発電までやることもある。長期保証を与えれば、世界中から発電業者が集まってくる。世界最安値の発電会社がやってきて最強のエネルギーコストで発電するようになれば、不明瞭だった発電のコスト構造が明確になる。
2.政府の電力システム改には発電コストが下がるアイデアがない。電力のTPPを利用して世界に門戸を開放すれば、電気料金は劇的に下がる。参入過剰によるダンピングを防止するために、高圧送電公社が中長期的な戦略を持って「買い取り価格」を設定していく必要がある。
3.現在の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)のように、1キロワット42円で買い取る、なんて大甘なことを言っていると、収拾がつかなくなる。しかも買い取り義務があるため、高いからといって中止すれば訴訟問題に発展する。そういう事態に陥らないように適切な「買い取り価格」を提示する必要がある。参入してくる業者に発電施設のロケーションを提案するのも高圧送電公社の大事な役割である。
4.独占は保証しない。例えば企業が隣に燃料電池の発電所をつくってプライベートに発電するときには、地元の配電会社を噛ませないで勝手にやって構わない。配電会社の地域独占が認められるのは、送電会社から買った電力を一般家庭や事業者に配電する事業だけである。「配電」については、現状の9社による地域独占を認めるべきである。地域独占を認めないと、配電インフラそのものが二重、三重投資になり非効率になる。
5.FITの義務としては、高圧送電公社ではなく、地域独占の配電会社が負って、太陽光や風力など再生可能エネルギー由来の電力(3000ボルト以下の小規模電力)を買い取る。その他、電線の地中埋設など環境投資も地域の配電会社の仕事である。原子力発電は、これまでは国策で各電力会社に原発を持たせてきたが、2年前に発生した原発事故により、大きなリスクであることが明確になった。
6.小さな電力会社では人材的にも技術的にも、原子炉の過酷事故には耐えられない。高圧送電公社と同様に、電力会社が原子炉の資産持ち寄りで原子力公社のような一元的組織を立ち上げる。この原子力公社のミッションは4つある。1つは既存原子炉の再稼働とオペレーション。何があっても電源と冷却源を確保できる安全対策を実施して、原子炉の再稼働と運営を行う。存立が経済的に厳しくなっている日本原子力発電はこの組織が吸収合併する。2番目は廃炉。原発の廃炉作業は完了までに30年以上かかる。日本では原発用地はリース契約だから、施設を解体して、放射線を取り除いて、更地に戻して地元自治体に返さなければならない。膨大なコストと時間のかかる仕事である。3番目は使用済み核燃料の処理。中間貯蔵施設に10年保管した後に再処理工場でウランとプルトニウムを抽出し、残りの核分裂生成物を含んだ核廃棄物はガラス固化体にして、地下1000メートルの貯蔵施設に1000年眠らせなければならない。
7.すでに中間貯蔵施設の容量は満杯で、各原子炉サイト内で使用済み核燃料を大量に抱えている。永久貯蔵施設は予定地すら決まっていない。公社は日本原燃を吸収合併して使用済み核燃料処理の道筋をつけなければならない。4番目は、原発を輸出産業として育てる。今や原子炉を完全につくれる会社は、世界に4社しかない。日本の日立、東芝、三菱とフランスのアレバ社である。
8.中国だけで今後10年間で28の原発の新設が予定されている。インドやロシアなどを合わせると向こう20年で100基近くの原発の新規建設が見込まれる。1基最低5000億円として、100基で50兆円。その半分位は日本のメーカーが受注でき。この公社には、日本のメーカーの新型炉の開発と輸出をサポートする開発研究機能を持たせる。原発事故の経験や教訓を生かして、安全対策やオペレーションまでパッケージした原発技術は世界中が欲しがっている。これを前向きに世界に提供していく。



yuji5327 at 06:46 

2015年11月13日

世界第3位の火山国の日本としては、地熱発電に力を入れていい。熱源の大半は国立公園の中にあるが、国立公園法の規制緩和が難点である。


「大前研一著:大前研一 日本の論点 2015~16、プレジデント社、2014年」は面白い。「9章:エネルギー危機を救う「電力50%オフ社会」実現で世界をリードせよ」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.出力変動が少なく、設備利用率が高い再生可能エネルギーとして、バイオマスと地熱が有望視されている。燃料調達やコスト面で課題が多いバイオマスは、大規模発電には向かず、CO2排出の面では必ずしもクリーンではない。ガスの安いアメリカでは燃料電池の開発が進んで、発電効率も70%近いものが出てきている。コスト的にも信頼性のうえでも電力会社から買うよりも自家発電で、というデータセンターなどの採用例が増えてきている。
2.世界第3位の火山国の日本としては、地熱発電にもっと力を入れていい。地熱タービン技術については日本が世界一の技術を有していて、世界中で実績があるからである。だが、熱源の大半は国立公園の中にあるため、国立公園法の規制や温泉観光地との調整などで開発に時間がかかるのが難点である。
3.バイオマスや地熱をエネルギー政策に組み込むにしても、それぞれ5%でトータル10%というところだろう。一定の電気を安定的に供給するベースロード電源は、供給全体の3〜4割を占める必要がある。そのため風力や太陽光などの再生可能エネルギーでは、原発に代わるベースロードにはなりえない。
4.発電コストが安い原発にベースロード電源としての役割を担わせることで、これまでの日本経済は成り立ってきた。原発エネルギーを基にした技術開発の典型が、電気自動車や水素燃料電池などの例である。電気自動車は原発の安価な夜間電力(昼間の約3分の1の電気料金)で充電するため、ガソリン車よりコストが安いとアピールできた。原発がなくなって昼夜の料金が同じになれば、電気自動車の燃費は跳ね上がる。化石燃料を燃やしてつくった電気で電気自動車を走らせた場合は、「エコカー」ではない。むしろ改良の進んだガソリン車のほうが、燃費効率はいい。
5.日本のエネルギー問題の解決方法には、3つの選択肢しかない。1つは原発を再稼働すること。大前提として、福島第一原発事故を徹底的に究明すること。事故の検証から導き出した安全対策を実行したうえで再稼働の条件を明確化する。 地元や国民に対する情報の完全開示は当然である。
6.物理的な対策だけでなく原発の組織としての対応にも問題がある。いかなる手順で誰が避難指示を出すのか、どうしたら自衛隊の出動命令を出すのかといったことも含めて、迅速に事故対応できる指揮系統を確立する必要がある。そこまでやってようやく再稼働が可能になる。
7.活断層に関する議論は意味がない。原発は地震に耐えられるように設計されている。過去に世界で観測されたもっとも強力な活断層型の地震は、2007年7月の新潟県中越沖地震だが、直撃を受けた柏崎刈羽原発はすべて正常に緊急停止している。
8.活断層でどういう加速度の地震が起きるのか。その加速度に今の設計で耐えられるのか。耐えられないとしたらどう設計変更するのか、という議論をすべきであり、活断層発見即停止というのは、原子炉のことを知らずに、再稼働の判断の責任に怯えた規制委員会の逃げ口上でしかない。国民や地元の住民に納得してもらえれば、日本の原発全54基のうち、半分くらいは再稼働に漕ぎつけられる可能性が出てくる。
9.再生エネルギーに依存しない徹底した節電を実施する。これが2番目の解決策である。5年以内に電力使用量を50%削減する、という目標を国策として推進すれば、5年以内に少なくとも30.%程度の削減は実現できるし、そうなれば原発依存度をゼロにできる。
10.1970年代に自動車メーカーがディーゼル規制やマスキー法を乗り越えたときのように、厳しい条件を課されたときのほうが、日本企業は真価を発揮する。電力50%オフ社会が実現すれば、日本企業が省エネ技術で再び世界をリードすることも可能だろう。
11.3番目は、従来にない調達法で、多角的な電力の輸入に取り組む。日本は世界一のLNG輸入国である。LNGは現地で液化してから輸送し、再び日本に到着してから気化させるから非常に効率が悪い。欧州勢はパイプラインを通じてガスのままの状態で買っているから、液化にかかる費用も気化にかかる費用もかからない。100万BTUあたり、日本の15ドルに対して、ヨーロッパでは7ドル程度。アメリカはシェールガス革命の影響で3.5ドルぐらいに下がっている。
12.日本もガスの状態のまま直接輸入できるようになれば、今の価格よりはるかに下がる。1つはロシアのパイプラインが集中しているウラジオストクから新潟まで海底パイプラインを敷く方法。サハリンに発電所を建設して、発電した電力を電力ロスが少ない超高圧直流送電を使用して稚内まで送る方法もある。中国では超高圧直流送電を使って平気で2000kmも電力を送っているから、サハリンから北海道、石狩湾から内浦湾を抜けて、茨城県鹿嶋市近辺までケーブルやパイプラインを引いてきてもいい。
13.電力需給は原発の再稼働と節電で十分にバランスが取れ、ガスパイプラインや電力の直接輸入のインフラづくりをすれば、日本のエネルギーは廉価に、かつ安定的に供給できるようになる。自民党がまず取り組むべきはこうしたエネルギー政策の大枠を定めることである。



yuji5327 at 06:46 
池上技術士事務所の紹介
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池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
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お気軽に下記にメールをください。
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
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