エネルギー問題
2022年02月10日
アマゾンは25年までに自社で使う電力をすべて再エネ由来に切り替えると表明。オランダではエネコの洋上風力から再エネ電力を調達している。
「大塚隆史ほか（本誌）：洋上風力価格破壊ショック 三菱商事独占の内幕 週刊東洋経済 2022.2.12」は注目すべき記事である。概要の続きを自分なりに纏めると以下のようになる。
１．三菱商事は、「われわれはエネコという三菱のファミリー企業の技術を内製化し活用した、各海域に対して、開発・設計から建設、長期の運転保守のフェーズまで、全事業期間のリスク評価と最適化をかなり深いレベルでできた」(岡藤氏)と強調する。ただ、これだけで異例の価格の説明がつくのか。「三菱商事陣営は下流の事業スキームにも工夫を凝らしたのではないか」とみる競合相手は多い。
２．今回の三菱商事の公募入札では、「協力企業」という位置づけで米アマゾンやNTTアノードエナジー、キリンホールディングスといった名前が並ぶ、いずれも再エネ調達に熱心な企業で、洋上風力開発に関連して各地域の事業を担う。アマゾンは25年までに自社で使う電力をすべて再エネ由来に切り替えると表明。オランダではエネコの洋上風力から再エネ電力を調達している。21年9月には三菱商車とアマゾンの間で太陽光由来の.再エネ電力の長期売電契約を締結した。
３．公募のルールでは海域を占有できる期間は30年、うち20年間問がFIT〔固定価格買い取り制度〕による売電を行うことになる。関係者からは、FIT期間外となる「残り10年間の一部は、再エネ価値を訴求して電力を販売するのではないか」などの見方もある.
４．価格ばかりに注目が集まるが、三菱商事が定性点でも1〜2位になった実績を評価する声もある。秋田県の2つの海域で入札に参加したJERA(東京電力グループと中部電力の共同出資)の矢島聡執行役員は、「地元貞献を含め、三菱商事グループを総動員して高い点数を取りに行った結果だろう。相応の戦略と裏付けがあったことは間違いない」と話す。
５．一方、三菱商事も油断はできない。洋上風力の実績が乏しい日本で計1兆円弱の事業規模となる3案件を同時に完遂するのは容易ではない。先行する欧州と異なり、日本の海底は性状が複雑、海上工事には、自己昇降式作業台船(SEP船)を高額で傭船する必要があるが、気象状況などで工事日程が狂えば採算は悪化しかねない。「絶対にこけられへん」「体制をきっちり組んで、すぐやる」。三菱商事の電力部門トップとして今回の入札の陣頭指揮を執ってきた中西勝也常務は、3海域の総取りが決まった12月24日、幹部らを集めてそう激励した。
６．次なる入札案件は、秋山県八峰町・能代市沖。22年6月に受け付けを締め切り、結果は12月に公表される見通しである。先の入札で三菱商事が落札した海域のすぐ近くで、コスト面などの地の利は明らかである。第2ラウンドは三菱優勢との評が大勢である。。一方、洋上風力入札の有望な区域として23年以降に事業者が選定される見通しの青森県や長崎県、山形県などの海域での情勢は見通しが難しい。戦略を練り直す時間があるほか、入札ルールが変わる可能性もあるためである。
７．足元では、一部関係者から「入札ルールを変更するべきだ」との声が上がる。今回、三菱商事が示した価格では、大手業者しか入札できないという。萩生田経産相は1月7Hの会見で「今回の結果を踏まえ、ほかの人たちも参加しやすい仕組みを検討したいと言及した。
８．山形県遊佐町沖の海域では、東電RPや住友商事などのほか、第ーラウンドに参加しなかった伊藤忠商事が参戦するもようである。関係者からは次は三菱と組みたいと声をかけている、といった情報も出るなど、次の戦いに向けたつばぜり合いや合従連衡はすでに始まっている。
９．企業間の競争以上に重要なのは、日本における洋上風力の産茉を育成しつつ、いかに再エネの低価格化を進めていくかである。サプライヤーからは「いきなりコストを圧縮されては厳しい」という声が上がる一方、今回のように、再エネ価格が大幅に下がっていくことは、日本の産業競争力の維持・強化に欠かせない。国内で前例のない規模の洋上風力案件を完遂できるか。大勝した三菱商事に失敗は許されない。
yuji5327 at 07:11
2022年02月09日
洋上風力は「日本の再生可能エネルギー普及の切り札」と目され、エネルギー業界の主要企業が案件獲得にしのぎを削る。
「大塚隆史ほか（本誌）：洋上風力価格破壊ショック 三菱商事独占の内幕 週刊東洋経済 2022.2.12」は注目すべき記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．2021年12月24日、秋田県や千葉県での大型洋上風力発電プロジェクトの入札に参入に参加していた企業が、3海域すべて、三菱商事が取ったとの情報が伝わると、まさか総取りとは、と驚きの声を上げた。
２．洋上風力は「日本の再生可能エネルギー普及の切り札」と目され、エネルギー業界の主要企業が案件獲得にしのぎを削る。今回、公募人札にかけられた秋山県能代市・三種町・男鹿市沖と、同県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3海域は、その第一弾ととして業界の注目を集めていた。発電容量は3海域合計で約170万ｋW、そこに百数十基の大型風車を設置するという異例の規模である。事前の下馬評では、東京電力ホールディングスの子会社や再エネ大手のレノバが主導する陣営が大本命で、三菱商事や中部電力子会社を中心とする企業連合はダークホースだった。
３．干葉県銚予市沖では東京電力リニューアブルパワー〔東.電RP)と洋上風力の世界最大手オーステッド(デンマーク)がタッグを結成。しかも、東電は13年から銚子市沖で洋上風力の実証試験を行ってきた実績を持つ.、秋川県出利本庄市沖では、レノバや東北.電力を中心とした陣営が早くから海底・風況調査を実施。地元の漁協関係者などとの親交も厚い。
４．三菱商事連合はこうした本命候補を破るばかりか、3海域を総取りした。入札結果が開示されると、関係者にさらなる衝撃が走った。今回の3海域での入札は、売電電価格の上限を1kW時当たり29円と設定している。それに対して、三菱商事が提示した売電価格は、同11・99〜16・49円と海域によっては半値以下。3海域すべてで他事業者に3円以上の差をつけての圧勝だった。
５．SMBC日興証券の浅野達ESGアナリストは、三菱商事が入札した売電価格は、21年度の大規模太陽光発電の入札価格に迫る水準。一夜にして業界の常識が覆ったと説明する。入札で敗北した企業の幹部は、数字を見たときは愕然とした、と言う。この価格破壊は三菱商事にとって思いも寄らぬ波紋を呼んだ。本当にこの値段で洋上風力プロジェクトを運営できるのか、三菱商事は赤字覚悟でこの入札に臨んだのではないか、と一部の関係者から疑問の声が上がった。
６．今回の入札における採点は�，匹譴世碓造で篥轍然覆鯆鷦┐垢襪里�〔価格点)と、��地域への経済波及効果や洋上風力での事業実績を評価する事業実現性に関する評価〔定性点)の2つの得点の合計で決まる。それぞれ120点満点、合計240満点で競うルールである。
７．価格点は最も安い売電価格を提示した車業者に満点の120点を付与。この最も安い金額を基準にして各社の点数を計算する、今回の結果では、三菱商事の圧倒的な低価格により、2位の事業者におおよそ30〜40点の大差をつけた。一方、定性点では、三菱商事が能代市三種町・男鹿市沖で最高得点となったものの、由利本荘市沖と銚子市沖では2番手。由利本荘市沖において定性点で91点の最高得点となったのはレノバだったとみられる。ただ、三菱商事は82点と9点の差しかつかなかった。
８．事業者の間では、価格点はトップなら120点満点。定性点はどう頑張っても80〜90点が隈界。価格点と定性点の比重は一見1：1だがが、実際は異なる。三菱は制度の矛盾を利川した、という見方もある。ただ.こうした採点方式は事前に公開されており、特定の企業に有利に働くものではない。赤字人札ではないか、との見方に対して、三菱商事の岡藤裕治工ネルギーサービス本部長は、与えられた条件下で必要なリターンを乗せ、ボトムアップで精査をした結果である。赤字の事業計画を提出したら、一発でアウトになると否定する。
９．今回の洋上風力事業者公募のルールを定めた、公募占用指針では、失格要件のーつに財務計画の適切性について、事業実現可能性があるとはいえない場合が挙げられている。これについて経産省の担当者は、事業期間内に投資資金を回収できなければ不適切と説明する。つまり、赤字入札は即失格ということである。
１０．三菱商事は太陽光発電並みの価格をいかに実現したのかについて、岡藤氏は、これといった必殺技やマジックはない。いちばん大きいのは、欧州で他社に先行して、洋上風力事業を開発段階から入ってやってきた知見、経験である、と話している。三菱商事は今回落札した3海域とも中部電力グループと組んでいる。両社は20年3月、約5000億円を投じてオランダの電力会社、エネコ(三菱商事80%、中部電力20%出資)を買収。エネコは洋上風力開発の実績があり、社内にエンジニアリング機能を持つ。三菱商事とエネコは13年から戦略提携を締結し、洋上風力発電事業を共同で手がけてきた。
１１．今回の人札では、ほかの事業者も実績が豊冨な外資企業とタッグを組んでいたが、ある企業の幹部は、ある海域の公募では仲間同士でも別の海域では競合関係になる。どこまでノウハウを共有するかは悩みどころだ、と打ち明ける。例えば、銚子市沖では東電RPとオーステッドが手を握ったが、能代市・三種町・男鹿市沖では、オーステッドは日本風力開発やユーラスエナジーホールディングス〔豊山通商と東京電力ホールディングスの共回出資)と手を組んで、東電RPと競合するなど、各陣営の色分けは複雑である。
yuji5327 at 06:58
2022年01月10日
日本のハイブリッドカーはプラグインで充電する必要がない点もいい。低速のときは電気で走り、高速になるとエンジンで走りながらバッテリーに充電していく。
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「大前研一著：信用できない「脱炭素」よりも現実的な「日本モデル」を実行せよ PRESIDENT 2022.1.14」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。１．原油価格高騰の影響で、ガソリンの高値が続いている。11月下旬、岸田文雄政権は原油高対策として初めて石油の国家備蓄の一部を放出する方針を固めた。産油国と消費国がせめぎ合うなか、米国や英国、インドと足並みをそろえた格好である。原油価格は、産油国が過剰生産すれば下落し、生産を控えれば1バレル80ドルを超えるぐらいの高値となる。2020年秋には40ドル前後だったのが、現在はおよそ2倍である。
２．世界の原油市場は、それぞれ事情が異なる産油国の意向が混ざり合って価格が決まっていく。サウジアラビアなどは、井戸元価格（ウェルヘッド・プライス）が1バレル2ドル租度と極端に安い。10ドルで売っても儲かるのに、80ドルでは笑いが止まらない。
３．OPEC（石油輸出国機構）でいつもでかい顔のサゥジは、本音では、原油価格があまり気にならない。ただリーダーシップを示すめに「みんな生産段を絞ろう」と言うにすぎない。イランやイラクは.できるだけ多く稼ぎたいほうである。中東に比べて、他の地域は生産コストが高い。ブラジルの海洋掘削は、深さ800〜1000mぐらいに油田があり、60ドル前後が損益分岐点になる。ベネズエラはマラカイボ湖に油田があり、低コストといっても、サウジに比べれば5倍ほどである。米国のシェールガス.シェールオイルも掘削コストが高く、経済原則から40ドル以上なら参入が増え、40ドル以下なら経営が立ち行かない。
４．ロシアのような全体主義国家は、損益分岐点がいくらだろうと、石油や天然ガスを採掘する。独裁体制を維持するには売り続けるしかない。少し前まで弱っていたプーチン大統領も、原油高騰で自信満々になっている。
５．原油価格は各国の思惑で決まるとはいえ、今後は化石燃料への投資が絞られ、原油などの生産量は減っていくことは間違いない。脱炭素化の流れである。10月末から約2週聞にわたって英国で開かれたCOP26では、日本を含む120以上の国と地域が、50年までにカーボンニュートラルを達成することに合意した。CO2などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるというものである。
６．著者はあまり信用していない。各国のリーダーは、30年後には全員が入れ替わっているからである。責任を追及されない目標は信用できない。英国に集まった世界中の政治家と役人は約束を守れないだろう。CO2排出量が世界一の中国はマイペースだから、カーボンニユートラルは60年に達成すると10年延長した。彼らは、自分がやることは世界で最も正しいと思っている。しかも本気で取り組むとは思えない。習近平は永久皇帝になったとはいえ、任期はせいぜいあと2期10年くらである。
７．世界の政治家がカーボンニュートラルを目指すのは正しいが、政策が実現しないことはいくらでもある。日本のインフレ政策が、9年たっても2%を達成できないのを見てもわかる。COP26で途上国は、カーボンニュートラルの50年達成に反発した。先進国からの資金援助がないと進まない。先進国ほ09年に、途上国に対して20年までに年1000億ドルを支援すると約衷したが、守っていない。途上国はCOP26で資金援助の増額を訴えた。先進国は支援強化を表明し、岸田首相も追加支援すると演説した。
８．例えばインドも、中国と同じ60年達成を目標としている。収入が1日200円以下の人が多い国や地域は、先進国の助けがないとカーボンニュートラルの達成は困難だろう。大きな見方でいえば、米国と中国がCO2排出量を激減させ、インドが排出量を増やさないだけでも、世界はカーボンニュートラルに近づくはずである。
９．温暖化で心配されることの一つに海面の上昇がある。何も対策しなければ、今世紀中に2ｍほど上昇するとの予測もある。海抜が低い地域は、水没への対策を打たなくてはならない。世界一海抜が低いモルディブでいえば、人々が住む島の数を減らし、オランダの干拓や治水の技術を導入する方法が考えられる。国土の約27%が海面下のオランダは、土木工事、浚渫工事の技術が高く、ドバイなどはオランダ企業に工事を発注することが多い。
１０．世界の政治家たちは、心の中でオランダの技術に期待しているだろう。カーボンニュートラルを達成するよりも、海面が2ｍ高くなった場合の防衛策を準備するほうが安くつくとわかっているからである。
１１．COP26では、35年までに主要市場で、40年までに全世界で販売する新車はすべてCO2などを出さないゼロエミッション車にすると共同声明を出した。しかし、新車がすべてEVになっても、その前に販売したガソリン車やディーゼル社は、30年ぐらいは走り続ける。全国〔あるいは全世界〕のガソリンスタンド（SS〕はなくせない。
１２．日本の場合、寒い地域のSSは冬になると暖房用の灯油がよく売れる。地域の燃料供給拠点である。また、都市ガスがない地域は、プロパンガス{LNG}を使っている。著者は長野県の蓼科に拠点があって、冬はマイナス20度になるから、農協がLNGのシリンダー〔ボンベ}を配達してくれないと生活できない。
１３．脱炭素の話には、全国で必要とされる灯油やLNGへの具体的な対策がない。軽井沢や蓼科に拠点がある身としては、「あっしはどう生活すればいいんでしょう」と尋ねたい。したがって、日本の脱炭素は省エネで進めるのが一番だろう。1970年代のオイルショック以来、得意技としてきた技術である。日本の1人当たりエネルギー消費量が、世界トップクラスで少ないのも省エネのおかげである。ただし.現状ではまだ足りない。電気でいえば、商業施設、工場、家庭などに分けて考えれば、改善点はいくつもある。
１４．商業施設では、コンビニやスーパーマーケットなどにあるショーケースの電力消費が大きい。ショーケースは外気温が低いときに冷えすぎるなどのムダがあり、センサーによって解決できる。現在より2倍ほど効率がいいコンデンサは、開発の見通しが立つている。コンデンサを交換するだけで、エアコンやショーケースの電力消費はかなり減る。
１５．工場ではモーターの電力消費が大きいが、効率が2倍ほどになる製品が開発されている。大型モーターの交換は企業の負担が大きく、補助金を出すなどの支援策も必要である。格段に効零が良いコンデンサとモーターの開発は重要課題である。政府が補助金を出して完成を早めるべきである。
１６．岸山政権が進める脱炭素・再生可能エネルギーの拡大政策より、よほど現実的かつ効果的である。ビルやマンションのエレベータも、スピードを遅くするだけで省エネ効果が大きい。電力消費が激しい高速エレベータを休止するなど規制による省エネもある。店舗、工場、家庭の照明をすべてLED化するのも効果か高い。LEDへの交換に補助金を出し、期日までに交換しなければ罰金をとるなど普及促進の方法もある。飲食店が新型コロナ対策に対応しているかを検査するように。LED警察が調べてまわればいい。実際、アメリカなどではLED警察が機能している自治体もある。また、日本の家屋は熱の漏れが大きく、冷暖房の効率が悪い。特に窓ガラスから逃げる熱量が多いので、ドイツで普及している遮熱フィルムを貼るようにする。エアコンの消費電力は半分ほどになる。現在の日本は成長国家でなく、人口減少も進んでいるから、国全体のエネルギー消費は減らしやすい。さらに省エネ技術で一人当たりのエネルギー消費量とCO2排出量を減らせば、間違いく世界の優等生にる。たとえカーボンニュートラルが達成できなくても、文句を言われる筋合いはない。
１７．問題が残るとしたら、自動車とトラックぐらいである。著者か為政者なら、ここはできるだけ長くハイブリッドカーでいく。日本のハイブリッド技術はずば抜けている。トヨタを筆頭に日本メーカーのハイブリッドカーは、外国車に比べたら別次元の効率である。世界最強である。日本のハイブリッドカーはプラグインで充電する必要がない点もいい。低速のときは電気で走り、高速になるとエンジンで走りながらバッテリーに充電していく。ガソリンを燃やすのは確かだが、プラグインで充電するダイプでも、おそらく半分ぐらいは化石燃料で発電した電気を使うことになる。CO2を出す発電所を使うという点では完全EV化でも同じである。途上国には、この「日本モデル」を日本の負担で提供してもいい。2040年くらいになれば省エネとハイブリッドの技術で、日本は低炭素の優等生として世界から尊敬を集めるはずである。
yuji5327 at 07:29
2022年01月07日
今年の冬は、消費者にとっても中央銀行にとっても、エネルギー価格の上昇が懸念材料となっているが、意外なメリットもある。再生可能エネルギー革命の促進がまさにその好例である。
「Rochelle Toplensky(WSJ)著：天然ガス・石炭の高騰、意外なメリットとは 風力・太陽光発電所の建設は今年も過去最高に、週刊ダイヤモンド 2021.12.18」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．今年の冬は、消費者にとっても中央銀行にとっても、エネルギー価格の上昇が懸念材料となっているが、意外なメリットもある。再生可能エネルギー革命の促進がまさにその好例である。国際エネルギー機関(IEA)か12月1日に公表した報告書によると、咋年に続き今年(2021年〉も風力および太陽光発電所の建設が過去最高を更新する見通しである。今年の新規導人容量は約290GWに達するとみられ、これは極めて好調だった20年実績を3％上回る。この傾向はこの先も続き、26年まで年平均305GWの新規導入が見込まれている。
２．コストが大幅に上昇している中でも、風力および太陽光発電への投資は行われている。過去2年間で、輸送費は約6倍、ソーラーパネルに使用されるポリシリコンの価格は4倍以上、パネルやタービン、電気配線に使用される鋼、銅.アルミの価格は50%以上上昇した。
３．電力料金の上昇を受け、再生可能エネルギー発電施設の建設の動きはさらに強まっている。電力卸売り価格は世界中で上昇〔英国、スペイン、ドイツでは2倍以上)しており、これには、暖房や発電に使われるガスや石炭などの燃料価格の世界的な高騰が一因となっている。こうした価格変動は、当初10-25年分の電力を契約料金で販売することが多い既存の風力・太陽光発電所の採算性にはほとんど影響していないが、新規プロジエクトの合意条件の改善につながっている。
４．各国政府や企業の気候変動対策がますます意欲的なものになっていることも、再生可能エネルギープロジェクトへの追い風となるだろう。各国政府は総計約54兆2000億円のクリーンエネルギー投資を約束しており、その大半は24年までに使われる見通しである。IEAの試算によると、26年までには世界的に再生可能エネルギーが最大の電力源となり、欧州では電源構成の半分、中国では40%、米国とインドでは30%を占めるようになる。今年起きたサプライチエーン(供給網)の目詰まりは、このセクターで長く続いた大幅なコスト低下の傾向を覆した。過去12年間で、太陽光パネルのコストは約90%、風力ダービンは約70%低下したが、最近のコスト上昇により、ほとんどの地域で過去2年問の平均よりも10〜25%ほど高くなっている。
５．ダービンや太陽光パネルのメーカーにとって、これは頭の痛い問題である。こうしたメーカーは新規契約向けの価格を引き上げているが、既存契約の一部では、コモディティー〔商品)のヘッジや、現地調達を増やして輸送費を抑側するなどの取り組みにもかかわらず、マージンが悪化している。スペインのタービンメーカー、シーメンスガメサ・リニユーアブル・エナジーは今年になって2回、業績予想の修正を発表した。
６．コストの上昇は、再生可能エネルギーの開発者の 時的な「消化不良」を引き起こす可能性もある。IEAによると、新規プロジェクトが増える 一方で、コスト低下が続くことを前提として進められていたと思われるプロジェクトが約100GW分あるという。これらのプロジェクトは延期されたり、収益の確保に苦労したりする可能性がある。
７．今後1〜2年の間に商品価格や輸送費が正常化するなら、IEAはコストの上昇によって再生可能エネルギーの導入が軌道修正されることはないとみている。より長期的には、プロジェクト費用の大部分は資金調達で賄われるため、最大のリスクはおそらく金利の上昇になるだろう。その一方で、許認可手続きの迅速化や送電網の拡充,発電設備の入札容量の増加といったプロジニクト推進のための政策変更によって、採算性は改善する可能性もある。
８．国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議〔COP26)をきっかけに、政府によるプロジェクト迅速化の取り組みが進められると予想される。IEAが予測する再生可能エネルギーの急速な普及でも、次第に共通目標となりつつある「50年までにネットゼロ(CO2排出量を正味ゼロにすること)」を達成するには不十分である。再生可能エネルギーは依然、世界のエネルギー分野において主要な成長ストーリーとなっており、今年発生した問題が、想定されている到達点を変えることはなさそうである。
yuji5327 at 06:51
2021年12月19日
脱炭素に世界全体で年間約450兆円のクリーンエネルギー関連投資が必要とされる中、カーボンプライシングによつて、技術の普及が後押しされる。
![週刊エコノミスト 2021年12月21日号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51WP0FJzTiL._SL160_.jpg)
「元木悠子(みずほリサーチ&テクノロジーズ環境エネルギー第1部課長)著：カーボン。フライシング 各国で進む炭素排出の見える化 日本は炭素税の導入で攻防続く 脱炭素化を進める上で注目を集めるカーボンプライシング。2050年のカーボンニユートラル達成に向け、日本でも議論の加速化が求められている。 週刊エコノミスト 2021.11.23」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．2020年10月、菅義偉前首相が50年の温室効果ガス排出実質ゼロを表明して以降、カーボンプライシングに対する関心が急速に高まっている。カーボンプライシングとは、炭素排出を「見える化」し、排出に伴う費用負担を求める制度である。
２．カーボンプライシングが導入されると、企業はその支払いを回避するため、限界削減費用(1単位追加的に炭素を削減するのに必要となるコスト)が炭素価格と等しくなる水準まで代替技術の導入を進める結果、削減の深掘りが行われる。脱炭素に向けて世界全体で年間約450兆円のクリーンエネルギー関連投資が必要とされる中、カーボンプライシングによつて、こうした技術の普及が後押しされると考えられる。
３．カーボンプライシングの主な手法に、政府が税率を設定して課税する「炭素税」と、政府が排出量上限(キャップ)を定めて排出枠の取引を認める「排出量取引制度」がある。価格は固定されるが、排出削減量に不確実性のある炭素税に対し、排出総量は固定されるものの、排出枠の取引価格は変動する排出量取引制度と、それぞれ特徴がある。
４．世界銀行によれば、21年4月時点で64の炭素税・排出量取引制度が導入され、世界全体の温室効果ガスの2割超をカバーしている。欧州では、1990年代前半の北欧諸国を皮切りに、多くの国で炭素税が導入されている。税率は着実に引き上げられ、スウェーデンのように二酸化炭素(CO2〉排出量1トン当たりが100ﾕｰﾛを超える国、フランスやアイルランドのように30年に同100ﾕｰﾛに高めることを表明している国もある。
５．欧州連合(EU)は05年から一定規模以上の産業施設や域内航空便を対象に排出量取引制度(EUETS>を導入している。排出枠の取引価格は上昇し、直近では同60ﾕｰﾛを超える水準となっている。EU非加盟の英国やスイスではEUに準拠した制度、ドイツではEUETSでカバーされない燃料の供給事業者を対象とする排出量取引制度がそれぞれ導入されている。
６．EUでは、「炭素国境調整措置」と呼ばれる新たな制度の導入も検討されている。鉄鋼やセメント、アルミニウム、肥料、電気の5分野を対象に、原産国で生産時に排出した温室効果ガスに相当する証書を、EU域内と同等の炭素価格で購入することを、輸入者に義務付ける。23年1月からの移行期間を経て、26年1月から実際の支払いが始まる予定である。
７．北米では、米国11州が参加する発電部門を対象とした米国北東部州地域GHG削減イニシアチブ(RGGI)、米国カリフォルニア州やカナダ・ケベック州などで排出量取引制度が導入されている。カナダでは、連邦政府が炭素価格の下限値(30年にCO2換算1トン当たり170カナダドルを定め、これに満たない州・準州に、バックストップと呼ばれるカーボンプライシングを適用している。
８．アジアでは、韓国が15年に排出量取引制度を導入し、シンガポールが19年に炭素税を導入した。中国も北京市などで実施中の排出量取引制度のパイロット事業の経験を踏まえ、21年2月に発電部門を対象とする全国排出量取引制度を開始した。このほか、インドネシアが22年の炭素税導入を予定し、台湾やベトナムでも排出削減を促す手段としてカーボンプライシングの導入を検討している。
９．日本では、地球温暖化対策のための税(以下、温対税)と呼ばれる炭素税が、石油石炭税の本則税率に上乗せされる形で12年に導入されている。税率はCO2排出量1トン当たり289円で、税収はエネルギー起源CO2排出削減策に充当されている。排出量取引制度は東京都と埼玉県で実施されているのみである。
１０．現在、環境省と経済産業省で「成長につながるカーボンプライシング」について議論が行われている。炭素税の導入に前向きな環境省に対し、産業界の慎重な意見も踏まえ、自主的なクレジット市場の創出を目指す経済産業省との間で意見の隔たりが見られ、炭素税や排出量取引制度がいつごろ、そしてどのような形で導入されるのかを見通すことは容易ではない。
１１．温室効果ガス削減を進める観点からは、政府がキャップを定める排出量取引制度が有効である。地球温暖化対策推進法(温対法)では、原油換算で年間1500kl以上のエネルギーを使用する事業者に排出量の報告を求めており、これをベースに制度設計を進めることができる。
１２．ただし、対象業種の選定や割り当て方法の設計、さらに排出量の第三者検証の仕組みの整備などが新たに必要となり、制度の導入には一定の時間を要すると考えられる。また、発電部門を対象とする場合、小売電気事業者に非化石電源比率の目標達成を義務付ける高度化法との整理も求められる。
１３．他方、脱炭素投資を進める観点からは、炭素の排出に応じた価格負担を求め、脱炭素製品の価格競争力を高める炭素税が有効である。炭素税の場合、価格が安定することから、投資判断を行う企業の中長期的な予見可能性を高めることができ、また、税収を脱炭素投資の原資として企業に再配分することも考えられる。
１４．既存税制との関係など整理すべき点はあるものの、温対税の枠組みを活用することにより、行政コストを抑えつつ、比較的短期間で制度導入につなげることができるだろう。
１５．カーボンプライシングを導入する場合、どの程度の価格が目指されるかは、国際エ
ネルギー機関(IEA>は、世界全体で50年ネットゼロを達成するシナリオにおける先進国の炭素価格を30年にCO2排出量1トン当たり130ドル、50年に同250ドルと予測している。
１６．炭素価格は一般に、削減の野心度が高いほど、対策実施が遅れるほど高くなる。導入による急激な影響を回避するため、当初は低い税率としつつ、削減の野心度に応じて徐々に上昇していくものと考えられる。今や欧米のみならず、アジアを含む世界中でカーボンプライシングが導入され、また、世界の投資家が1.5度目標に整合する炭素価格を各国政府に要求している。日本でも、30年46%削減とその先の50年実質ゼロに向けて、カーボンプライシングに関する議論を加速することが必要になる。
yuji5327 at 10:55
2021年12月18日
OPECプラスとは、湾岸産油国を中心とするOPECとロシアを中心とする石油産出国による価格調整のための「国際カルテル」である。
「福富満久（一橋大学大学院教授)著：資源安保 中東から手を引く米国 サウジに接近する中露 これまでの原油を中心とした化石燃料への依存低下と再生可能エネルギーの普及は、世界の地政学的勢力図を劇的に変えるかもしれない。 週刊エコノミスト 2021.11.23」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．世界が脱炭素に大きくかじを切る中、原油をめぐり米国と中露、中東産油国の激しい駆け引きが続いている。20世紀は、「石油の時代」といってもよいほど、その生産国(中東)とその輸送路(ペルシャ湾)には、極めて高い国際政治上の特権が与えられていた。．ところが今、脱化石燃料への急転換の局面で、エネルギー安全保障をめぐる国際関係の再梅築が模索され始めている。
２．石油輸出国機構〔OPEC)とロシアなどの産油国でつくる「OPECプラス」は10月4日、閣僚級会合を開き11月は予定通り、前月比で日量40万バレルの小幅増産にとどめることを決定した。これにより「米国産WTI原油」の先物価格が一時、2014年11月以来7年ぶりに1バレル：80ドルを上回る高値をつけた。
３．OPECプラスとは、湾岸産油国を中心とするOPECとロシアを中心とする石油産出国による価格調整のための「国際カルテル」である。00年代からシェールオイル革命による石油産出で、世界一に躍り出た米国はOPECが生産量を削減するたびに生産を増やすことで、OPECの価格決定力に圧力をかけた。その米国に対抗して16年に創設されたのが、OPECプラスである。その目的は、化石燃料の価格を管理することに他ならない。
４．OPECとロシアが手を結ぶ引き金になったのは米国の石油生産量世界一だが、米国は自国でそのほとんどを消費するため、輸出キャパシティーの多いサウジアラビアがロシアと手を組み、国際市場で重要な役割を果たしている。OPECブラスは、世界の石油供給の50%以上、確認済み石油埋蔵景の約90%を支配下に収める。1バレル80ドルを超えてきたところで輸入国から悲鳴が上がり始めているが、供給を増やせば価格が下がる。新型コロナウイルスの世界的大流行の新たな波が世界経済に影を落とし、需要が再び低下することも視野に入れる必要があるため、サウジとロシアは一致して供給を増やそうとはしていない。
５．米国は、新しい時代にカーボンニュートラル政策を推進して、次世代エネルギー企業の創出を目指す戦略を加速化させている。今後15〜20年で二酸化炭素を囲収して「カーボンキャプチャー」の利用・貯蔵の経験を積んできた大手の石油・ガス企業が炭素管理企業に転換することが想定されており、電気自動車〔EV)をけん引するテスラのように世界をリードする企業が生まれることを見込む。回収したCO2を油田の残存原油の採収率を向上させるために使用できることから、石油企業も積極的である。
６．産油国のサウジも手をこまねいているわけではない。10月23日、サウジで始まった会議「サウジ・グリーン・イニシアチブ・フォーラム」で、ムハンマド皇太子は60年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする目標を発表した。年間の排出削減の目標を倍にし、再生可能エネルギーなどに約21兆円の投資を見込む。循環炭素経済はサウジの今後を占う上で、最重要視されている政策である。CO2の排出量自体の削減、回収、除去（Reduction,Reuse,Remove）の3つのRを指し、太陽光発電事業を積極的に推進、50年までに世界的に数千億ドル規模になると推測されるグリーン水素などのクリーンエネルギー市場で世界をけん引するとしている。
７．だが、そのような世界が到来するのは30年先である。足元では、サウジとロシア、そして中国との軍事・経済連携が急速に進む。サウジ国防副大巨のカリッド・ビン・サルマン王子が8月24日に、モスクワで開催された「第7回国際軍事技術フォーラム〔武器博覧会〕で、「軍事協力協定」に署名し、両国間の「軍事および防衛協力を強化する方法を模索する」とツイートした。これは、サウジ首脳が米国との関係を見直すという決意表明である。
８．サウジはこれまで安全保障を主に米国に依存してきた。だが、バイデン政権は気候変動のみならず、人権問題にも敏感で、サウジに人権問題改善の圧力をかける一方、イエメンで起きているイランとサウジの代理紛争にも背を向けている。米国は今や湾岸からの石油輸入は総輸人量の10%程度。そのほとんどをサウジ原産が占めるものの、調達を絞っている。米国がアフガンから完全撤退し、イラクからも撤収しようとしているのは、同地域への依存度が急減していることも背景にある。
９．逆にサウジにしてみれば、大口顧客でもない米国の言うことを聞かなくて済む。サウジがロシアのS-400防空ミサイルを購入した場合、トルコが同ミサイルを購入した際に米国との関係が悪化したように、サウジー米国関係は悪化する可能性がある。だが、イランとの関係が深いロシアを取り込んでおけば、サウジと対立するイラン戦略で保険にもなる。地政学や国際政治の観点から見れば、「見捨てられる恐怖」と「巻き込まれる恐怖」をもたらす同盟構築を逆手に取って、二重、三重に保険をかけておくこの戦略は賢い。
１０．一方、中国はアフガンから手を引いた米国を横目に、タリバン政権といち早く関係を築き、さらにロシア、イランと手を組むことで、地域の覇権を手中に収めようと動いている。最近の報道では、遅くとも21年末から22年初頭にかけて
ペルシャ湾岸で、イランー中国―ロシア3力国共同での海軍演習が予定されている。
１１．他方サウジとは3月に、中国の王毅外相が同国を公式訪問した際、中東に中国は偏った利害を有しないとして、戦略的パートナーシップに合意している。中国が力を入れるアジアインフラ投資銀行〔AIIB)加盟国は、現在104力国まで増えている。そこには米国が撤退したアフガンの他、イラン、サウジを含むペルシャ湾諸国がすべて加盟。投資と引き換えに石油を引き出す狙いである。中国のしたたかさと影響力の高まりがここでも見え隠れする。
１２．日本のエネルギー安全保障は依然として中東頼みである。本来であれば、脱炭索社会の到来は、化石燃料を輸入しなくてはならない日本にとってチャンスのはずである。しかし残念なことに、クリーンエネルギー革命を先導していく気概もなければ、勇気もない。大口顧客であるはずなのに中国の影響力にも圧倒されている。グリーン革命にも乗れず、燃料も満足に輸入できないとなれば、失われた30年どころか、日本沈没はすぐそこである。日本はどこにかじを切るのか。紛れもなく日本の未来が試されている。
yuji5327 at 06:54
2021年12月14日
カーボンニュートラルを目指すなら、温室効果ガス排出が石炭よりも少ない天然ガスやLNGを使いながら、再エネやアンモニア、水素などの代替エネルギーの開発を進めるべきだ。
神崎修一/斎藤信世(本誌編集部)著：化石燃料の逆襲に遭う欧州、日本は「悪い円安」の重荷 週刊エコノミスト 2021.11.23」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．「欧州は化石燃料の逆襲を受けている」。欧州エネルギー取引所の高井裕之上席アドバイザーは、欧州で発生した電力危機をこう解説している。欧州は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を世界的にけん引する地域である。風力や太陽光などの再生可能エネルギーへの転換を進め、シンクタンクの英エンバーなどによると、欧州連合(EU)における総発電量に占める再エネの比率は38%となっている。火力発電の燃料も石炭から二酸化炭素の排出が少ない天然ガスにシフトしている。
２．しかし今夏は天候に恵まれず、風力など発電量が大きく落ちた。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、10月現在で欧州の天然ガス貯蔵率は77%と前年10月(95%)に比べて落ち込んでいる。そこにコロナ禍からの回復で電力需要も増大した。
３．その結果、天然ガス価格が高騰し、電力需要が高まる厳しい冬を迎える前に電力危機を引き起こした。天然ガスの指標である「オランダTTF」は、1年前の1MW時当たり15ﾕｰﾛから一時120ﾕｰﾛまで上昇。足元でも80ﾕｰﾛで推移している。一時的に8倍に高騰し、いまでも高水準が続く。
４．欧州の天然ガス急騰のあおりを受けて、本来連動しないはずの液化天然ガス(LNG)価格も上昇。北アジア向けスポット(随時契約>LNGの指標であるJKM(ジャパン・コリア・マーカー)は、日本や韓国に入ってくるスポットベースで、100万BTU(英国熱量単位〉当たり6ドルから50ドル超に上昇し、足元でも30ドル前後と高値止まりしている。50ドルという価格は、原油換算で1バレル：約290ドルにも相当する。
「パーフェクトストーム」と高井氏は、今回の欧州電力危機を表現している。最悪の事態が同時に起こったという意味である。
５．米国では8月末に南部を襲った大型ハリケーン「アイダ」により、メキシコ湾周辺の石油・天然ガス関連施設が大規模に操業停止を余儀なくされた。ブラジルでは過去最悪レベルの干ばつに見舞われた。ブラジルでは総発電量のうち6割超を水力発電が占めるため、火力発電に頼らざるを得ない状況である。そのため海外からのLNG調達も増やしている。
６．中国では9月以降、各地で停電が頻発している。主力電源である石炭が不足し価格も高騰していることが原因の1つとみられている。中国がスポットのLNG市場で"爆買い"を始めるなど、天然ガスやLNGの世界的な争奪戦が、欧州に前代未聞の電力危機を引き起こした。
７．日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員は「今回の価格高騰の特徴は、原油やガス、LNG、石炭などほぼすべてのコモディテイーが、さまざまな地域で同時多発的に価格が上昇していることである。このような例は今までにない」と指摘する。
８．スポットのLNG価格が上がっても、日本は長期契約だから問題ないとは言い切れない。LNGも脱炭素、脱化石燃料のカテゴリーに含まれれば、20〜30年の長期契約は、カーボンニュートラルに反する行為と映るからである。今回の欧州電力危機は、中長期的な化石燃料の位置づけを大きく左右するかもしれない。
９．ポイントは、天然ガスやLNGを化石燃料として石炭同様にエネルギー源とはしないとするかどうかである。この点については、「欧州の電力危機が、天然ガスやLNGの重要性を再認識させる追い風」と高井氏は指摘している。石炭同様に天然ガスやLNGも脱炭素に向け使用不可とすれば、世界的な電力不足を招き、経済社会活動は大混乱するとの懸念が強まつたからである。
１０．「カーボンニュートラルを目指すなら、過渡的に温室効果ガス排出が石炭よりも少ない天然ガスやLNGを使いながら、再エネやアンモニア、水素などの代替エネルギーの開発を進めるといった現実的なロードマップを描くべきだ」との専門家の声もある。
１１．油田やガス田への投資(20年〉はコロナ前に比べ約3割減となった。脱炭素へ急速にかじを切ったことで起こりうる「副作用」も懸念される。JOGMECは、「原油や天然ガスへの投資が滞ってしまうと、今後10年程度で生産量に影響が出る。この間にカーボンニュートラルへの取り組みを急速に進めることは難しい。このままではエネルギー価格の高騰を招き、世界経済にとってハードランディングになりかねない」と指摘している。
１２．22年冬に大寒波が襲来することになれば、原油、天然ガス、LNGなどの価格はさらに高騰し、世界を大きく揺るがしかねない。米国産標準油種(WTI)価格が1バレル：100ドルにまで達するとの予測もある。特にエネルギーの大半を輸入に頼る日本への影響は甚大である。ドル・円相場は1ドル＝113円前後で推移しており、さらに円安が進むことになれば、海外からの調達価格が上昇し、企業収益は大きく圧迫される。まさに「悪い円安」の状況である。原油高、ガス高、円安の「3重苦」の状況が続けば、日本経済に大打撃となる。
yuji5327 at 06:57
2021年12月04日
中国は今年、日本を抜いて世界最大のLNG輸人国となる。LNGの価格形成などで中国が主導権を握る。日本に大きな影響が及ぶ。
![週刊エコノミスト 2021年12月7日号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51gX7pddjZL._SL160_.jpg)
「岩間剛一（和光大学経済経営学部教授）著：中国が世界最大の輸入国へ 日本のエネルギー安保に影 週刊エコノミスト 2021.11.16」は注目すべきである。 概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．極東アジアのLNG(液化天然ガス)のスポット(随時契約)取引価格が過去最高を更新している。その最大の要因は、中国によるLNGの急速な輸入増加である。中国は今年、日本を抜いて世界最大のLNG輸人国となる見通しで、LNGの価格形成などで中国が主導権を握ることになれば、日本のLNG調達にも大きな影響が及びかねない。
２．LNGスポット価格は10月6日、100万BTU当たり56ドル超と、史上最高値を記録している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の減少により、昨年4月には1.83ドルと史上最安値に暴落していたが、世界的な景気回復とともに上昇。今年10月21日時点でも34・34ドルと高値の水準で、今冬の暖房需要期に向けて価格上昇への懸念が強まる。
３．LNG価格上昇には米国での天然ガス生産設備のトラブルなども影響しているが、押し上げ要因として大きいのが中国による輸人の急増である。中国は今年に入ってから、電力需要の増加や国内の石炭供給量の削減策などにより各地で停電が頻発しており、発電用のLNG輪人量を増加させている。今年1〜8月のLNG輸入量は5181万トンと、日本の5138万トレを抜いて世界最大の輸人国となっている。
４．LNGは石炭に比べ炭酸ガスの排出量が半分程度であり、中国はそれ以前からも習近平国家主席が目標に掲げる2060年のカーボンニュートラル(炭酸ガス排出実質ゼロ)達成に向け、炭酸ガス排出削減や大気汚染防止策として石炭火力発電からLNG火力発電への切り替えを進めていた。
５．中国の今年のLNG輸入量は8000万トンを超え、7500万トン程度にとどまる日本を抜き、通年で世界一となることが確実視されている。日本は1次エネルギーのうち天然ガスが22・4%〔19年度〉を占めており、ほとんどがLNGとして輸入される。中でも、発電用ではLNGは37%と最大の電源だが、国内市場の縮小や再生可能エネルギーの普及もあり、今後も大幅に増加するとは見込みにくい。
６．世界の天然ガス市場は今、大きく変化している。10年ほど前までは、米ルイジアナ州ヘンリーハブ渡しを指標とする北米市場、欧州とロシアを結ぶ天然ガス・パイプライン・ネットワークによる欧州市場、四方を海に囲まれ、LNG輸入に依存するアジア市場の3市場に地理的に分断され、天然ガス価格も北米市場は100万BTU当たり3ドル、欧州市場は8ドル、アジア市場は18ドルといったすみ分けがあった。
７．特に、日本をはじめとしたアジアは、原油価格に連動した長期契約のLNG輸入が中心だった。しかし、カタールや米国からのLNG輸出が増え、現在の需給関係を反映したLNGのスポット取引もそれにつれて増加すると、欧州諸国の天然ガス価格とアジア諸国のLNG価格に裁定が働くようになり、世界の天然ガス価格・LNG価格は一体化が進んでいる。
８．LNG価格と原油価格の連動性の高まりも見逃すわけにはいかない。LNG価格が高騰し,原油価格換算で米国産標準油種(WTI先物)の2倍以上となると、アジア諸国で天然ガス火力発電から石油火力発電への切り替えが進む。その結果、原油需要が増加して原油価格上昇の要因となる。サウジアラビア国営石油サウジアラムコは、足元でLNG価格の高騰により日量50万ドルの石油需要の増加が発生していると推計している。
９．1969年に日本がLNG輸入を開始してから50年を超えた。天然ガスをマイナス162度に冷却し、液化して体積を600分の1とする高度な技術を先駆的に築き上げ、世界最大のLNG輸入国として日本は国際LNG市場における指導的な地位に君臨してきた。しかし、中国が世界最大のLNG輸入国となると、そのインパクトは計り知れない。
１０．第一に、LNGの売買取引におけるバーゲニング・パワー〔価格交渉力)が低下することが挙げられる。LNG購入の取引量が多ければ、買い手は売り手に対して強い取引交渉力を持つことができる。中国は強大化するバーゲニング・パワーを背景にLNGスポット取引を行えば、今年初めの寒波来襲時のように日本はLNGのスポット取引で買い負ける場面も増えてくるc
１１．第二に、LNG価格の指標性の主導権争いにとっても、日本は不利な状況となる。東京商品取引所は来年4月にもLNG先物市場の創設を計画し、LNGを円建てで取引しながら東アジアの指標価格とすることを目的としている。しかし、今後は中国が世界最大のLNG輸入国として、LNG価格形成の宅.導権を掌握する可能性が考えられる。例えば、日本はかつて世界最大の石炭輸入国であり、豪州-日本間の石炭輸入価格が国際石炭貿易の指標価格だった。しかし、10年代半ばに中国が世界最大の石炭輸入国となってからは、豪州-中国・河北の石炭輸入価格が国際指標価格となり、中国による発電用一般炭の輸入動向が、国際石炭価格を左右するようになっている。
１２．第三に、日本はLNG輸送、LNG受け入れ基地、LNG火力発電の高度なノウハウを持っており、アジアにおけるLNG貿易の指導的な地位を維持しようと、米国とともにインドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの東アジア諸国へのLNG関連のインフラ輸出を構想している。しかし、中国がLNG輸入のノウハウを蓄積すると、強力な競争相手となる可能性が高い。
１３．アジアでは今後もLNG需要が大幅に伸びることが見込まれ、経済産業省は昨年3月、日本企業によるLNG取扱量30年度に1億トンとすることなどを目標に掲げた「新国際資源戦略」を策定した。アジアの炭酸ガス排出削減とエネルギー安全保障の向ヒに寄与することを目的としているが、その目前には中国が大きく立ちはだかっている。
yuji5327 at 07:29
2021年11月17日
クリーンエネルギーの分野では現在、余剰生産能力を確保しているOPECのような組織は存在しない。
「グレッグ・イップ（WSJ経済担当チーフコメンテータ）著：サプライチェーン危機、グローバル化は後退へ 週刊ダイヤモンド 2021.11.06」は注目である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．頻繁な異常気象と、化石燃料ほど供給能力に余裕がない再生可能エネルギーへの移行によって、気候のリスクは大きくなる可能性が高い。原油市場はグローバルである。ある場所の供給が他の場所の需要を満たせる。原油価格は変動し得るが、石油輸出国機構(OPEC)の余剰生産能力、民間在庫や政府の緊急備蓄のおかげで、供給が途絶えることはほとんどない。原油ほど移動しやすくはないものの、天然ガスも貯蔵が可能で、液体の形状で輸出されることが増えている。
２．対照的に太陽光や風力エネルギーは一般的に生産された地域で消費され、風あるいは太陽光を欠いていれば消滅してしまう。クリア・ビュー・エナジー・パートナーズのリサーチディレクター、ケビン・ブック氏は最近のリポートで、「クリーンエネルギーの分野では現在、余剰生産能力を確保しているOPECのような組織は存在しない」と指摘した。
３．この問題は送電部門や蓄電池への投資を通じてしか解決できないが、国際エネルギー機関〔IEA)は先遇、化石燃料への投資が横ばいになっているにもかかわらず、こうした部門への投資は発電部門への投資に比べてはるかに遅れていると指摘した。IEAは「早急に何らかの対応が必要であり、そうでなければ世界のエネルギー市場は混乱の時代に直面する」と警告している。
４．保護貿易主義は、少なくとも世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が頓挫した08年以降、サプライチェーンを侵害している。米中貿易戦争はこの摩擦を新たなレベルに引き上げた。貿易紛争の勃発を受け、米国・中国・欧州はいずれも、半導体や電池など主要分野で自給自足体制を目指している。
５．温室効果ガス排出量の多い輸入品へのグリーン関税など、新たな脅威も広がった。一方、恣意的な輸入禁止措置や〔中国在住者の)拘束は現在、中国の外交政策の常套手段である。これに対し輸出規制が米国の対外政策の1つとなっている。国内目標を推進するため貿易相手国を制裁や関税で脅すドナルド・トランプ前大統領のお決まりのやり方は、同氏がホワイトハウスを去ったことで終わった。しかし、企業や貿易相手国は、今後数年のうちにトランプ氏が復帰する可能性を想定しておく必要がある。
６．サプライチェーンに対する全ての圧力がグローバリゼーションに逆行するものではない。とりわけサービス分野においては、テクノロジーのおかげでアウトソーシングを引き続き拡大させる可能性がある。しかし、企業は、最小限の在庫しか保有しないことや、政治的にリスクの大きい場所から主要部品を調達することなど.かつては当然と考えられていたやり方を再検討する可能性がある。
７．バンク・オブ・アメリカのエクイティーストラテジストは今週のリポートで、S&P500種株価指数を構成する企業の米国内の製造拠点は2000年時点で、18年に比べ、2%多かったことを明らかにした。これに対し、アジアでの拠点は18年比で5%少なかった。
８．金融危機の際に銀行や規制当局が効率性よりも強靱さを優先させたように、サプライチェーンの危機によって生産ネットワークは不測の事態への耐性を高める公算が大きい。ただし、下がり続ける価格で多くの選択肢を提供して消費者を喜ばせることはあまりできない。
yuji5327 at 06:38
2021年11月14日
地熱発電の方式で、低温・小型のバイナリー方式が勢いを増し、高温・大型のフラッシュ方式が採用されにくくなった。バイナリーは熱水を全て地下に戻すため環境負荷が低い。
2021/10/29付の 大前研一さんの「 ニュースの視点」（発行部数 150,154部）は「地熱発電／再生エネルギー機器／中国EV大手〜モビリティー革命に向けて考えておくべきこと」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．日経新聞は12日、「地熱産業、揺らぐ日本優位」と題する記事を掲載した。地熱発電の方式で、低温・小型の「バイナリー方式」が勢いを増し、日本が約7割のシェアを持つ高温・大型の「フラッシュ方式」が採用されにくくなっていると紹介。
２．バイナリーは比較的小規模な開発ですむのに加え、発電用に汲み上げた熱水をほぼ全て地下に戻すため環境負荷が低いとされることも追い風で、日本企業もバイナリーへの対応に動いている。
３．地熱発電は米国のシェールオイルと同じように、地層に穴を開けて発電エネルギーを得るもので、地熱貯蔵層より地熱流体を取り出してタービンを回転させて発電する。従来のフラッシュ方式は大型だが、バイナリー方式は小型で開発コストを低く抑えることも可能で、認可に要する期間も短いというメリットがある。
４．日本は地熱資源量において米国、インドネシアに次ぐ3番手のポテンシャルを持っているにもかかわらず、実際の地熱発電量は世界で10番目ほどに留まっていて、ポテンシャルを全く活用できていない。
５．また、従来のフラッシュ方式による地熱発電用のタービンでは日本勢メーカーが世界のトップシェアを独占していたが、バイナリー方式では海外メーカーに勢いがあり、日本勢は完全に出遅れている。
６．日経新聞は18日、「太陽も風も、再生エネに油断」と題する記事を掲載した。太陽光、風力など再生可能エネルギーに思わぬリスクが浮上してきたと紹介。シリコンを主原料とする太陽光発電パネルは中国が世界シェア7割を占める一方、新疆ウイグル自治区では強制労働の疑いが浮上しており、「再生エネに石油のような地政学リスクはない」という楽観論は揺らいでいる。半導体、液晶、太陽光パネルにおける日本の凋落ぶりを見ていると、お家芸のような負けパターンである。
７．さらに、もう1つ注目したい領域が「電池」である。電気自動車（EV）にシフトする流れにおいて、電池の需要が増加することは必至である。しかしこの領域でも車載電池でトップを独走する中国CATL（寧徳時代新能源科技）を代表に、中国勢や韓国勢の強さが目立つ。
８．日本はかつて強かったのに、今では中国や韓国の後塵を拝している。EV、自動運転の未来を迎える準備としてするべきことについて、日経新聞は12日、「中国、商用EVを対日輸出」と題する記事を掲載した。世界的な脱炭素の流れで国内の物流大手がEVシフトに動く中、中国のEVメーカーが日本市場に攻勢をかけている。
９．日本車メーカーのEVシフトが遅れ、価格の安い中国車を選んでいる現状で、早期に巻き返さなければ国内市場を奪われかねないとしている。設計から商品化まで4〜5年ほどかかるから、早期に巻き返すのは極めて不可能に近い。
１０．日本郵便、ヤマトホールディングス、佐川急便のような配送業者が中国製EVと契約してしまったら、それをひっくり返すのは一筋縄ではいかない。配送業者にとっても、EVを利用することで、街を汚さずに配送している、と言えるのは大きなアピールになるから、どんどん中国勢のEVへシフトする動きが強くなっている。日本メーカーはテスラを中心とした乗用車ばかりに目を向けていたが、完全に裏をかかれた。今後EVにシフトしていくことは間違いないが、HVを併用しながら段階的にシフトして行くべきだと思う。
１１．「カーボンフリー」という言葉などが取り上げられる機会が増え、EVへの期待が高まるのはわかるが、一気に推し進めるとガソリンスタンドをどうするかなど様々な問題が出てくる。そのためには、ロビー活動が重要である。これまでのガソリンというインフラを活用しつつ従来の10分の1のコストに抑えることができるなど、HVの良さ・メリットを政治家にわかるように説明するべきである。
１２．ロビー活動に力を入れるタイミングとしては、今から5年後くらいが適切である。今はその時に備えて準備しておくことが大事である。また、EVに加えて自動運転まで実用化すると「モビリティー革命」が起こる。これは自動車産業に限った話ではなく、ありとあらゆる産業が多かれ少なかれ影響を受ける。例えば、鉄道やバスなどの公共交通機関やウーバーのようなライドシェアサービスも大きく影響を受ける。
１３．また、交通規制を取り締まる白バイやパトカーが不要になり、高齢者の免許返上もなくなる。また、それに伴って、様々な保険サービス大きく変わる。自動車産業とは無関係に思えるような農家の人でも、農作物を出荷の時に自動運転の技術を活用することもできる。
１４．「モビリティー革命」をどう活用するかについては、自分の今の事業に活かすには
については、あらゆる産業の人が未来を見据えて考えておくべきである。
１．日経新聞は12日、「地熱産業、揺らぐ日本優位」と題する記事を掲載した。地熱発電の方式で、低温・小型の「バイナリー方式」が勢いを増し、日本が約7割のシェアを持つ高温・大型の「フラッシュ方式」が採用されにくくなっていると紹介。
２．バイナリーは比較的小規模な開発ですむのに加え、発電用に汲み上げた熱水をほぼ全て地下に戻すため環境負荷が低いとされることも追い風で、日本企業もバイナリーへの対応に動いている。
３．地熱発電は米国のシェールオイルと同じように、地層に穴を開けて発電エネルギーを得るもので、地熱貯蔵層より地熱流体を取り出してタービンを回転させて発電する。従来のフラッシュ方式は大型だが、バイナリー方式は小型で開発コストを低く抑えることも可能で、認可に要する期間も短いというメリットがある。
４．日本は地熱資源量において米国、インドネシアに次ぐ3番手のポテンシャルを持っているにもかかわらず、実際の地熱発電量は世界で10番目ほどに留まっていて、ポテンシャルを全く活用できていない。
５．また、従来のフラッシュ方式による地熱発電用のタービンでは日本勢メーカーが世界のトップシェアを独占していたが、バイナリー方式では海外メーカーに勢いがあり、日本勢は完全に出遅れている。
６．日経新聞は18日、「太陽も風も、再生エネに油断」と題する記事を掲載した。太陽光、風力など再生可能エネルギーに思わぬリスクが浮上してきたと紹介。シリコンを主原料とする太陽光発電パネルは中国が世界シェア7割を占める一方、新疆ウイグル自治区では強制労働の疑いが浮上しており、「再生エネに石油のような地政学リスクはない」という楽観論は揺らいでいる。半導体、液晶、太陽光パネルにおける日本の凋落ぶりを見ていると、お家芸のような負けパターンである。
７．さらに、もう1つ注目したい領域が「電池」である。電気自動車（EV）にシフトする流れにおいて、電池の需要が増加することは必至である。しかしこの領域でも車載電池でトップを独走する中国CATL（寧徳時代新能源科技）を代表に、中国勢や韓国勢の強さが目立つ。
８．日本はかつて強かったのに、今では中国や韓国の後塵を拝している。EV、自動運転の未来を迎える準備としてするべきことについて、日経新聞は12日、「中国、商用EVを対日輸出」と題する記事を掲載した。世界的な脱炭素の流れで国内の物流大手がEVシフトに動く中、中国のEVメーカーが日本市場に攻勢をかけている。
９．日本車メーカーのEVシフトが遅れ、価格の安い中国車を選んでいる現状で、早期に巻き返さなければ国内市場を奪われかねないとしている。設計から商品化まで4〜5年ほどかかるから、早期に巻き返すのは極めて不可能に近い。
１０．日本郵便、ヤマトホールディングス、佐川急便のような配送業者が中国製EVと契約してしまったら、それをひっくり返すのは一筋縄ではいかない。配送業者にとっても、EVを利用することで、街を汚さずに配送している、と言えるのは大きなアピールになるから、どんどん中国勢のEVへシフトする動きが強くなっている。日本メーカーはテスラを中心とした乗用車ばかりに目を向けていたが、完全に裏をかかれた。今後EVにシフトしていくことは間違いないが、HVを併用しながら段階的にシフトして行くべきだと思う。
１１．「カーボンフリー」という言葉などが取り上げられる機会が増え、EVへの期待が高まるのはわかるが、一気に推し進めるとガソリンスタンドをどうするかなど様々な問題が出てくる。そのためには、ロビー活動が重要である。これまでのガソリンというインフラを活用しつつ従来の10分の1のコストに抑えることができるなど、HVの良さ・メリットを政治家にわかるように説明するべきである。
１２．ロビー活動に力を入れるタイミングとしては、今から5年後くらいが適切である。今はその時に備えて準備しておくことが大事である。また、EVに加えて自動運転まで実用化すると「モビリティー革命」が起こる。これは自動車産業に限った話ではなく、ありとあらゆる産業が多かれ少なかれ影響を受ける。例えば、鉄道やバスなどの公共交通機関やウーバーのようなライドシェアサービスも大きく影響を受ける。
１３．また、交通規制を取り締まる白バイやパトカーが不要になり、高齢者の免許返上もなくなる。また、それに伴って、様々な保険サービス大きく変わる。自動車産業とは無関係に思えるような農家の人でも、農作物を出荷の時に自動運転の技術を活用することもできる。
１４．「モビリティー革命」をどう活用するかについては、自分の今の事業に活かすには
については、あらゆる産業の人が未来を見据えて考えておくべきである。
yuji5327 at 07:39
